[ そうしたら、負けた (Side 陽介) ]











パーを、出した。








そうしたら、負けた。








息せき切ってパーを出したのに、
ごくごく当然のように鳴上はチョキを出してきて、見事に負けた。


「やっぱりかよ・・・・なんか、勝負する前から絶対こうなるような気がしてたんだよなーーー」


はああ、と宙を仰いでなぜか諦め混じり、陽介は嘆息する。
なんていうかこの結果は、まず結果ありき! 的な展開でありすぎて、
案の定、・・・・というかもはや予定調和だとしか思えない。
当の鳴上は、「いや、偶然だろ」 と大して顔色も変えず、かと言って一度出た結果を覆す気はさらさら無い様子。
「ベッド、このまま使って構わないのか?」
とかぬけぬけと訊ねてきたりしやがって(・・・・・・)、
「ああ。 ・・・・イイけど。 って、このまま以外どうやって使うんだよ?」
つい素直に頷いてしまったあと、当然のような疑問符。
すると鳴上曰く、
「汚したり、あまり濡らしたりしたら困るかと」
「・・・・・・・・・・」
「とりあえず、新聞紙とか敷いてみるとか」
「あーのーなー。 よりによって新聞とかやめろって。 背中とか黒くなるし、ガサゴソしてたら色気も何にもなくなっちまうっての」
せめてバスタオルとか言えよ、と思わず突っ込んでしまうと、
「それもそうか。 ・・・・そうだな」
素直に頷かれ、ここで陽介は 「、ン?」 と一瞬気付く。
コイツの場合、そもそも普段からしてあまり表情を変えないポーカーフェイスでいることが多々あって、
そんな今でも一概に顔色は読めず、大していつもと変わらないようにも見えるのだけれど。
もしかして、
もしかすると、
もしかしたら。
「・・・・・・・鳴上、お前、もしかして結構緊張してたりする?」
ずばり、ストレートに聞いてみた。
すると鳴上は、
「ああ。 してる」
すんなり頷いて、「するに決まってる」、と小さく呟いたかと思ったら。
「ッ・・・・っ!!」
「う、わッ!?」
突如、不意打ちにも似た動きで腕を伸ばしてきて、強く肩を押さえ付けられた。
そのまま、再び口唇を重ねられる。
「――――っ、!」
先ほどのものとはあからさまに違う、ただ貪り尽くしてくるだけの激しいキス。
舌を絡め取られるだけではなく、口唇まで残すところなく上下交互に食まれて、
呼吸さえままならなくなり始め、互いの息が荒くなる。
口内の隅々まで味わい尽くされ、舌の柔らかさに眩暈まで起こしそうになりかけたとき、
ようやく鳴上の口唇が離れていき、
「・・・・・・悪い。 緊張もしてるし、我慢できなかった」
微妙に上がった息のもと、何を言うかと思えばそんなことで。
「お・・・・お前・・・・」
キスの余韻に浸る間もなく、陽介は一瞬、呆気に取られたけれど、自分をじっと見つめてくる鳴上の瞳には、明らかに欲情の揺らぎが見て取れた。
そんな鳴上の様子に、何故だか少し安心(?) して、
「そういうのは 『緊張してる』 っていうんじゃなくて、『興奮してる』 っていうんだと思うぜ?」
冗談めかして言ってやると、
「ああ。 そうみたいだ」
いつも通り。 ふっと鳴上も頬を緩めた。












気付けば互いに衣服は全てなくなっていて、照れくささを今更覚えるほどの間もないほど性急に、陽介の素肌を鳴上の舌が這う。
胸元から、すぐに下肢へ。
今になってそれを留めるつもりもなかったが、どちらにしろ揃って初めての行為、陽介は一体どんな体勢でいれば良いのかがわからなくなって、とりあえず鳴上の頭に手を置いてみた。
「ちょ・・・・鳴・・・・」
お前なんでそんな迷いがねーの?、と訊ねようとした途端。
直球な鳴上の愛撫は止まらずに、あろうことか陽介の両膝をぐいっと開いて、
まだ大した反応を見せていない性器に顔を落とした。
「ッッ!!?」
ウソだろいきなり過ぎんだろ!!?、と泡を食う陽介に構わず、鳴上は迷いも無くそれをぱくりと口に含み入れてしまう。
「ン・・・・っ・・・」
避けようのない、温かく湿った刺激に喉が仰け反る。
まさか最初の最初から、口淫なんてされるとは思ってもいなかった陽介はますますどうして良いのか分からず、されるがままでいるしかない。
一方で鳴上は一心不乱に陽介自身を貪り続ける。
「ッ・・・・ッ・・・」
唾液を絡ませられながら口内で強く扱かれ、徐々にそこは形を持ち、張り詰め始めた。
少しずつ充血していくその表面を舌で刺激しつつ、口唇も使って愛撫を施され、
性急すぎる展開に陽介は自然と眉を寄せ、激しい性感を堪えようと唇を噛み締めながらも。
「っ、鳴、・・・・っ、待、て・・・・って!」
途切れ途切れ、なんとかそれだけ口にする。
が、当の本人の耳には一切届いていない様子。
何一つ変わらず、顔すら上げようとしない。
激しく愛撫を受け続ける陽介のそれはすでに鳴上の口許で硬く勃ち上がり、張り詰めた先端からは透明なものが滲み出ている。
鳴上はそれも舌先で掬って舐め取りながら、全体時に更に扱きを早め、直接的な快感を陽介自身に与え続けた。
「〜〜〜〜ッ!!、ンっ、ちょ・・・っ・・・、止ま、れ・・・・っ!!」
一方的にあっという間に押し上げられ、陽介は懸命に押し留めようとするのだが、
鳴上は聞こえているのかいないのか、舐め上げた肉棒の先端をきつく強く吸い上げ始めた。
「――――― ッッ!」
鋭い性感に、腰をぞくりとしたものが駆け抜け戦慄いて、
堪えきれない射精感がこみ上げる。
どうしようもない快楽に、陽介は思わず鳴上の髪に指を絡めて握り締めた。
上を向く性器を吸われるその度に、下半身が大きく震える。
「ん、ん・・・・っ・・・」
腰から背筋へ快楽が伝わり、うなじのあたりまでもがぞくぞくする。
もう持たないと感じ取り、陽介は為すすべも無くきつく目蓋を閉じた。
それをちらりと上目遣いで見やって鳴上は、絶頂を促すよう先端を強く長く吸うと同時、
舌先で窪みを抉って突く。
「う、ぁッッ・・・!」
細い背中が反り返る。
鳴上は一秒でも早く高みに押し上げてやりたくて、口だけではなく、手指も使って敏感な裏筋を擦ってやった直後。
「――――イ、く・・・・っ・・・!!」
掠れた陽介の声と共に身体が小さく震え、ほぼ一緒に鳴上の口中で陽介自身が勢いよく精を吐き出した。
それを鳴上は躊躇いもせずすぐにごくりと嚥下して、
まだ足りないとばかり、残りさえ搾り取ろうと吐精したばかりのそこを決して放さないまま、再び扱き始めた。
「や・・・・め、ッ・・・・」
達したばかりの過敏な先端は、弄られるたびに許容量以上の性感を拾ってしまう。
陽介は懸命に身じろいでそれから逃れようとするのだけれど、鳴上は構わず濡れたそこを弄り続け、
きゅっ、と鋭く先端を吸い上げられた途端、間を置かずまた軽い絶頂感に覆われてたまらずに腰が浮く。
「ッ!!」
少量の精液が口中に再び放たれ、鳴上はそれも一口で飲み干したあと、
身を起こしてその味を分け与えるかのよう、陽介の口唇を塞いだ。
「・・・・ん、んっ・・・」
舌と舌が触れ合うたび、濡れた音が生まれる。
息継ぎをする余裕さえないほど、角度を変えては繰り返し、
「花村・・・・」
熱に浮いた囁きで名前を呼ばれながら、
なんだよそんなヤラシイ声で呼んだりすんなよ俺の方がよっぽど切羽詰ってんだけど立場的には、などと陽介は何故かどこか冷静さの残った脳裏でひとり、思う。
あまりに一方的にコトを進められてしまっている気もしないでもないのだが、
何だか今みたいに余裕の無い鳴上を見るのはもしかしたら出逢ってから初めてのことかもしれなくて(何故ってコイツはわりとピンチのときにもいつだって大体悠然と、そして堂々としていた。 ・・・・・・というより単に不敵なだけだったのかもしれないが)、
だからそんな彼を目の当たりにして少しだけ意外で同時におかしくて、
「ははっ・・・」
つい。 小さく笑ってしまったところ。
「? ・・・・どうした?」
当然にして、鳴上が不思議そうに訊ねてきた。
キスの途中。 だからとんでもなく至近距離。 その髪と同じ色の目で見つめられながら、
あーーーなんか悔しいけど近くで見れば見るほどオトコマエだよなーーー、なんてしみじみ実感しつつ陽介は。
「なんでも、ねーって。 それよかやっぱお前ってさ、」
「?」
言いながら自然、笑みがこぼれる。
つい先程まで自分が掴んでいた鳴上の髪の、少し乱れたところに手を伸ばしてそれを直してやりつつ、


「俺のコト、好きすぎだろって」


ド直球、恥ずかしげもなく自ら告げてやったら。
「当たり前だ」
真面目くさって返答されたあと、
「でもそれって今更って感じもしなくね?」
「今更だな」
二人、揃って吹き出した。

















とりあえず慣らさないと、どうすることも出来ない。
うつ伏せで、膝をついて腰を掲げる態勢の陽介の後ろを解す行為に鳴上も真剣になる。
「く・・・・」
すでに中指と人差し指とがそれぞれ第二関節まで埋められ、陽介の苦しげな吐息とは裏腹に、
その内部は時折ひくひく蠢いて、自ら馴染もうとするかのようだ。
それに誘われるかのよう、鳴上は唾液を乗せた舌を二本の指を拡げて作った隙間に寄せ、
少しでも多く潤わせてやわらかくしようと、努力した。
一方で陽介は、分かっていながらもココロを決めつつも、
鳴上の指と舌とが動くたび、自らの最奥から湿った音が聞こえてどうしようもない羞恥心に頭が灼き切れそうだった。
「っ・・・・ン・・・・!」
なのに、時間をかけてゆっくりとそこを蕩かしていく丁寧な愛撫と共に、鳴上の長い指は確実に内側の悦点まで届いていく。
触れられただけで身体が跳ねそうになる前立腺を何度か刺激されて、
頭より先に身体が音をあげてしまう。
内部からの刺激に、再び勃ち上がった肉棒が戦慄く。
「・・・・ッ・・・もぅ・・・っ・・・」
いつまでも弄られ続けては、また自分自身が達してしまいそうで陽介は首を振って鳴上を制した。
「大丈夫か・・・・?」
それを受けて鳴上は口を離し、背中を見せていた陽介の体勢を、自分の方を向かせるように変えながらも訊ねてくる。
そんな鳴上の息も、荒い。
「つったって・・・・お前だってキツイ、だろ・・・・?」
大丈夫かどうかなんて自分だってわからない。
だけど鳴上をずっと 『お預け』 状態にしておくわけにもいかないし、
たぶん。 為せばなる。 ・・・・たぶん。
「鳴上」
言外に、「いーぜ、」 と声色と表情で示した陽介に、
「ああ、」 と頷いて鳴上は細い両脚を抱え上げ、逸るココロを抑えようとして抑えきれず、熱く猛った自らの肉棒を忙しなく押し当てた。
「ッ!」
入り口に先端が埋め込まれ、陽介のそこが必然的に僅かに窄まる。
くぷ、と飲み込まれた切っ先は陽介の体温をダイレクトに感じ取り、
肌よりも熱い内側の肉壁の感触に、一瞬理性が飛んでしまう。
こらえきれず、その部位を押し開くかのよう一気に腰を進め、
「うあッ・・・・!!」
噛み殺せなかった陽介の声と同時、自らを根元まで埋め込んだ。
「・・・・・・・・凄い」
初めて味わう陽介の内側に、鳴上は掠れ声でつい、呟く。
が、侵入を許した陽介の身体には多少なりとも無理をさせてしまっていることは明白で、
「っ・・・・く・・・」
当の陽介は目蓋を閉じきつそうに唇を噛み、息を詰めて耐えていた。
無意識にシーツを握り締めているその指は小刻みに震えていて、
「い・・・ッ・・・、て・・・・」
鳴上が僅かに身動きしただけで、濡れた音と共に苦しげに声を漏らした。
それでも、懸命に慣れようとしているのか、努力して深い呼吸を繰り返す。
途端に心配になった鳴上が、
「痛む、か・・・・?」
痛みを与えないよう最大限に注意をはらいながらその顔を覗き込めば。
ゆっくりと目蓋を持ち上げて陽介は、「そりゃ、な」 と苦笑して答えた。
「けど、さ」
続ける陽介は、自分のすぐ上、繋がりながら真摯に見つめてくる鳴上に告げる。
「お前の方こそ、大丈夫かよ」
違った意味で、と小さく笑ってやる。
だって埋め込まれた内側で、鳴上自身が熱く脈打っている。
自分は一度達したからともかく、愛撫を施すばかりで欲の行きようがなかった鳴上が、こんな状態で無理矢理暴走しない方が不思議なくらいだ。
それだけ気遣われていることをわかっていたから、
「、マジでヤバいってなったら、そう言うからさ。 ・・・・好きに、動いていーぜ」
言って、何故だかわからないがなんだか物凄く今になって恥ずかしくなった。
うう、俺もコイツのこと好きすぎだっつの、と内心でタメイキをつく陽介のその表情に、鳴上はだいぶ安堵したらしい。
「わかった」
言って顔を寄せ、軽く口付けてくる。
まだ腰は止めたまま、柔らかく啄ばんでくるその口唇に、
「・・・・・・鳴上?」
陽介が怪訝に思うと。
「無理は、するなよ」
そう言ってくる声は、ただただ優しい。
「無理してんのはどっちだって」
「・・・・その様子なら、大丈夫だな」
ふっと口許を緩めた鳴上が、戯れの応酬を終わらせようと今度は深く口唇を重ねた。
二度、三度と軽く強く吸い上げながら、唾液と体液とで濡れた陽介の肉棒も指を使って揉み込まれ、
「つ・・・・っ・・・」
痛みを覆い隠してくれる快感を与えられて、陽介の口から吐息が零れる。
そして徐々にだが、内側もヒクヒク蠕動しつつ鳴上に絡み付いた。
「ッ、く・・・・」
今にも暴発しかねない自身をきつく締め付けられ、鳴上も眉を寄せて堪える。
我欲のまま、乱暴に貪りたくなる気持ちを無理矢理抑え込み、
腰だけを使ってゆっくりと、陽介の奥を突いた。
「あ・・・・ッ!」
途端に細腰が一度震え、鳴上の掌中の性器もピクンと反応する。
もう一回、と確かめるために同じようにして突いてみれば、一層内壁が強く締まり、くぐもった接合音が微かに響いて。
陽介の表情を伺い見るに、痛みは今のところ大したものではなさそうだ。
見て取った鳴上は今度はゆっくりと自身を引き抜き、擦られる粘膜の抵抗感を味わいながら。
「ン、ん・・・・っ・・・・」
浮きそうになる腰を片手で固定して、再び確実にはっきりと奥まで埋め込めば、
徐々に蕩け始めた陽介の内側は鳴上自身を包み込み、
締め付けられる快楽に鳴上も目許を上気させながら内部を軽く擦り上げた。
「あッ・・・・、っう、ぁ・・・・ッッ・・・!」
上擦った声をあげる陽介からは少しだけ力が抜け、それとは反対に内壁は強く鳴上自身を締め付け、
彼にも快楽を与えることになる。
「く・・・・っ・・・」
鳴上としてももう抑えようがなくて、たまらず腰を使い始めた。
「ッ・・・・っは、っっ・・・・」
鳴上の律動に合わせて内部を蹂躙されるたび、陽介は身体を仰け反らせる。
何もかも初めての行為のはずなのに、苦痛はほとんど感じない。
突き上げられるたびに響く性感と、どうしても零れてしまう声が互いの熱を煽っていく。
「、花村・・・・」
「――、ッッ!!」
突然、名前を呼ばれて丁寧だけれどどこか強引に体位を変えられた。
枕を支えに、繋がったまま身体を起こされて陽介は両腕を鳴上の背中に回してしがみ付く形になる。
そうして接近した耳元、口唇を寄せられて、「痛く、ないか?」 と吐息混じりで囁くように訊かれ、
びくりと首を竦ませる陽介の奥を絶えず突き上げながら、鳴上は互いの腹の間で勃ち上がり気味になった彼の肉棒を、再び擦ってやる。
「ぅあ・・・・ッ・・・!」
内側も外側も刺激されたその身体が小刻みに震え、陽介はたまらず小さくかぶりを振って悶えた。
「・・・・ン・・・、」
「ッひ、ッッ!!」
探るように鳴上が前立腺を捜して突くと、引き攣った声が上がる。
同時に内部がきつくきつく締まり、絞り上げて鳴上の絶頂をも促す。
鳴上の吐息も上擦って荒くなった。
「・・・・ッ、一回・・・・」
「ぅあ、ぁっ、あ・・・・ッッ・・・・!!」
激しく腰を穿つ鳴上の動きに陽介は翻弄され、揺さぶられるままに縋った背中に爪を立ててしまう。
耳元では鳴上の荒い息遣いがずっと聞こえたままで、
それが余計、身体だけでなく意識も思考も高みに持って行かれそうで。
「・・・・ッ、花、村・・・・っ・・・・!」
背中に爪の感触。 痛みまでは行かないその心地良さを感じながら、鳴上はほとんど夢中で陽介の中を味わった。
突けば更に奥へと誘い込み、逆に引き抜く時には名残惜しいとばかり絡み付いて引き止める内壁に、
すでに自分も限界近い。
もうあまり持たなそうで、どうせなら一緒に達しようと既に先走りの体液を先端から滴らせる陽介自身を、手のひらで全体的にきつく扱いた。
「ンあ・・・・ッッ!!」
途端、陽介がビクンと身体を震わせる。
構わず鳴上は更に激しく扱き上げ、今にも弾けそうなその先端を、人差し指の先でくいくいと突付いて刺激した。
「っは・・・・っ、離・・・・っ・・・・せ、ッ、無理・・・・!」
泣き出しそうな陽介の声に、鳴上の方ももう限界だ。
滾った自身を、音がするほど勢いよく陽介の奥の奥に打ち付けた。
「――――― 、ッ!!!」
強く鋭いその衝撃に、陽介は堪えようもなく白蜜を噴いて達する。
「・・・・っ!!」
鳴上も唇を痛いほど噛み締め、息を詰めて陽介の内部に白濁を解いて注ぎ込んだ。
「・・・・・ぁ、・・・・っ・・・」
自分の奥深いところに熱い飛沫が迸り、陽介の目許に僅かに涙が滲む。
ほぼ同時に達し、繋がったまま抱き合ったまま、しばらく揃って荒い呼吸を繰り返していたのだが。


「・・・・・・・・・・え、・・・・・・・・?・・・・・・・・」


まだ自分の中にある鳴上自身が微かに動いたことを感じ、
ふわふわ浮いた頭ながら、陽介は自然と鳴上に目を向ける。
大量に内側に精を放ったにも関わらず、こうしているうちにもそれは陽介の中で再びまた熱と硬度とを増していく。
「嘘・・・・だ、ろ・・・・?」
「何が」
思わず口から出てしまった呟きに、真顔で返されてしまった。
「お前・・・・、また・・・・?」
「まだ一回だけだ」
そしてまたも真顔で返答しながら、鳴上はゆっくり腰を動かし始める。
その動きに合わせて、ぞくりと腰が融けていくような快感が広がってしまい、
「待・・・・てっ・・・・!」
たまらず陽介は彼を留めたのだが、所詮無駄で。
聞く耳なんて何一つ持たないまま、何度か抜き挿しを繰り返され、下肢から響く濡れた音に陽介は恥ずかしいやら(※今更?)、困り果てる(※・・・・何故)やら。
なのに当の鳴上は、陽介のそんな心境なんて知ってか知らずか、妙に器用に下肢を使ってくる。
「ん、ン・・・・っ・・・・」
思わず声が漏れてしまうほど、敏感なところを擦られた。
すると内壁もきゅうっと締め付け返す。
「ッ・・・・ん・・・・っっ・・・・」
与え合う快楽に、なんだかもう歯止めが利かない。
気付けばまたしがみ付いていた指先までが軽く甘く痺れて快感に染まり、
蠕動する内側は鳴上自身を促して唆して、もうどれほど陽介が否定しようとしたって、全く持って意味がない。
「っ・・・・っ、あ、あ・・・・ッ・・・」
ゆっくりと、だけれど的確に追い上げられる感覚。
甘い声が漏れてしまう。
と、
「、ッ!!」
前触れもなく突然、鳴上の指が陽介自身の括れたところを揉んできた。
あまりの性感に、つま先がぴんと反り返る。
「うあ・・・・っ・・・、あッ・・・・!!」
続けて数回揉み込まれ、陽介自身の先端はもう真っ赤に充血しきっていて、溢れる蜜にくるまれ今にも弾けそうだ。
たまらず喘ぐ陽介に、鳴上は力技で覆い被さるように上体を倒し、その口唇をキスで塞いだ。
まずやんわりと舌を絡めて吸い上げ、それから甘えるように弱く軽く啄ばむ。
まるで子供のお遊びのようなキスの直後。
口唇と口唇が離れた瞬間、はふ、と陽介が安堵にも似た吐息をついた途端。
「、!! ―――っっ・・・・ッ!!」
そのポイントを寸分違わず、思い切り突き上げられた。
痛いほど性感を感じてしまう箇所を、鳴上の切っ先でぐいぐい押し上げ擦られる。
「あッ、あ・・・・ぁッ! 、ぅ・・・・っ!」
あまりの刺激に、声を殺す余裕もなくした陽介を鳴上はどこか満足気に眺めつつ、
自らの欲と熱をも同時に高みに追い上げていくため、激しく腰を突き入れながら内側を攻め、特に弱いと思われる箇所をあえて狙って突いていく。
「―――ッ! 、っんッ、ん・・・・!」
連続して鋭く悦点を突き立てられる激しさに、陽介の全身から汗が伝い落ちる。
ただでさえも近い絶頂。
鳴上はそんな陽介自身の括れた部分を絶えずさすり続け、確実に高みに向かわせて。
「ッ・・・・!」
触れる吐息のその感覚さえも、下肢に直結してとくとくと新たな蜜を零す愛撫になる。
「・・・・っは、・・・ッ、・・・あ、あ・・・・っ・・・・」
陽介の呼吸が忙しなく、上擦ったものになってきた。
同時、搾り取るように絡み、締め付けてくる内側に鳴上にも二度目の限界がやってくる。
自然と鳴上の息遣いも荒いものになり、
結合部から響く粘った水音と混じって互いを煽りあった。
「う・・・・ぅ、んッ・・・・っ・・・」
「・・・・ふ・・ッ、」
絶頂の一歩手前、陽介の下半身に力が入り揺らぎ始め、
一層ぐいぐいと締め付けられる強さに、
「・・・っ、そろそろ、・・・・」
鳴上は小さく呟いて、一旦ギリギリまで引き抜き、それからズクン、と激しく一気に最奥を穿つ。
柔らかで、どこもかしこも敏感な内側の肉壁を思うさま蹂躙されて、
一直線に陽介の身体は絶頂に上り詰めた。
「鳴・・・・上・・・・ッッ・・・・!」
激しくかぶりを振って、限界を告げる陽介。
「く・・・・ッ、・・・・っ・・・・!」
合わせて鳴上も強く強く自身を包み込まれ締め上げられて、同時に訪れる絶頂。
「ッう、ぁ、あ・・・・ッ・・・・!!」
最後の仕上げ、とばかり思いきり奥深くを抉られて、
限界を迎えた陽介自身が二人の身体の間で音もなく弾けて達し、白蜜を噴き出す。
つられて鳴上も全てを放ち、
互いに身体を弛緩させたあとはベッドの上、今度こそしばらく重なりあっていた。
























「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ありえねーって・・・・・・・・・・・・・・・・」
今になって腰と身体の奥が、重く鈍く痛い。
ぐったり。
シーツに顔を埋めて伏せながら陽介はぼやく。
お初で抜かず(・・・・・・・・) だなんて一体どういうアレなんだよ・・・・、と力なくぐんにゃり状態の陽介に対し、
「? 何がだ?」
あっけらかん、と鳴上はどこまでもマイペースというか何と言うか。
「満たされたか?」
しれっ、と今、そんなことを聞いてきた。
何も深く考えず、ほとんど反射的にシーツから顔を上げて陽介は 「あ? ああ、」 と素直に頷いてしまいそうになったのだが。
寸でのところ、それを堪えて。
「・・・・・・・・、んー・・・・、よくわかんねーってのが本音」
それだけ口にして、またぼすっとシーツに顔を埋めた。
すると頭の上から、
「そうか」
やけに穏やかな鳴上の声が降ってきたから、
「そーだよ」
伏せたまま自分も穏やかにそう答えてやって、それから。


「お前、余裕ありそうで、全ッ然!! ねーし!!」


ずっと、
ずっと言ってやりたかった言葉をぶつけてやったら。


「・・・・・・・・悪い。 初恋だったから、正直どうすればいいのか迷ったところもあって」


「おおおおおおおい!!!!????」


いくらなんでも俺が初恋ってウソだろマジかよだとしたらそりゃアレ過ぎんだろちょっと待て鳴上、
と陽介は再びまたがばっとシーツから顔を上げる破目になった。


「?」


と、互いにまだほとんど裸のまま、ベッドの上、不思議そうな鳴上と目線がかち合う。
途端、
なんだか。
なんだか自分たちはとんでもないヤツをリーダーにしてしまって、
なんだか自分はとんでもないヤツととんでもないコトをしてしまったんじゃないだろうか。
とんでもない仲になってしまったんじゃないだろうか。
そしてそれが陽介的に、全然嫌ではなくて、
それどころかむしろ、
・・・・・初恋と聞いて妙に納得、というか妙に面映い気がして、
意味も理屈もなく、突然陽介は何かを理解する。


「・・・・・・・・あーーー・・・・、もう、こうなったらこの際なんだっていいけどな」


照れ隠し。
そう呟いてひとりごちて、「ははっ、」 と最上の笑みをみせた。












ヤバイ。




とんでもないくらい、自分もコイツにベタ惚れだ。











限界までハズカシクやってみた!!(爆笑)