[ すいませんぶん投げました作文 ]


・・・・・・遅れすぎにも程がある(・・・・) ハロウィン? ネタです







「せっかくのハロウィンなのに、何にもしないんですか」




部屋にあげてやった途端、
また、この子供(と書いてクソガキと読む) が面倒なことを言い出した。




「は? するワケないって。 トリックオアトリートとかもう耳タコ。 聞き飽きたよ」




だから足立は言ってやる。 ストレートに、珍しくもあまり偽りのない本心に近いところを。




「悠くんさあ、何やっても面白いって年頃なのはわかるけど、いちいちそれに僕まで巻き込まないで欲しいんだよ」




今日は10月31日、確かにここ数年ですっかり日本にも定着した感のあるハロウィンの日ではあるのだけれども。
だからと言って何故、足立的にはどうして自分まで便乗しなければならないのか納得できないうえ、
子供騙しのコドモの遊びとしてさえも、ひとかけの妥協すらしてやる気にもならなかった。
なのにしつこい鳴上は、重ねて訊いてくる。




「ハロウィン、つまらないですか」




「つまるもつまらないも、興味ないし」




続・正直に吐き出した返答は、どうやら、と言うか結果、当然にして彼のどこかを抉ったらしい。




「・・・・・・・・・・」




途端に口籠もり、がっくり肩を落とす高校生に、足立はタメイキをつく。




「そうやって、『あからさまに傷付きました』 って顔しないでくれる? 無言でやられると、こっちが一方的にいじめてるみたいになるからさあ」




しかも世間の波に乗らない僕の方が異端の分類みたいな気分になってくるじゃん、
クリスマスしかり、新年しかり。 そういう風潮、おかしいと思うんだよなー、と勢いでひとりごちると、
その呟きのどこに引っかかったのか、




「足立さんはイベントとか、楽しいって思ったりは」




鳴上は何やら深刻げなカオになって、また、問いかけてきた。
なんだか自分の部屋に来てから、質問ばかりされているような気がしつつ。




「ああ、無いね」




即答。 こんなにきっぱりはっきり断言できる質問の回答は滅多にない。
すると案の定、まだ世の中の何も知らない子供は、




「、どうして」




まるで信じられないモノを見たかのような、純粋に馬鹿な表情で驚いた素振りを見せた。
だからと言ってどうしてもこうしても、1から説明するのは面倒くさいことこの上ないし、
そもそも足立だって何故に一連のそういったコトに興味を抱かないのか抱けないのか、自分でもわからない。
ハロウィンだろうとクリスマスだろうとニューイヤーだろうと祭りだろうと花火大会だろうとそれは大して変わらず横並びで同じで、
一番近いであろう心情は 『面倒くさい』。
季節イベント&行事に向けて計画を立て、実行。 もしくは行動。 必要ならその場所まで移動。
全てが面倒なことこの上なく、時間も手間も体力も取られる。
それに伴う見返りが何かしらあるのであればともかく、
無理矢理参加したところで、最初から 『面倒くさい』 という概念があるがゆえ、
マイナスからのスタートなのだ。 どこまで行ったところでプラスに転じることなど無い。
と、いうことを理路整然と説明してやるほど自分はお人好しでもないし、
言ったところで眼前の子供が理解する道理もなくて。




「いいじゃん。 僕はそういうタチなんだよ」




何も答えてはやらず、あっさり流そうとして、やめた。




「でもさあ、何やってもつまらないって思う人間より、何やっても面白くてたまらないって人間の方が病状的には重症だと思うんだけど」




皮肉、で通じるかどうかは分からなかったが、
意味もなく含みを持たせてやりたくなって、鳴上の次の言葉を待たずに足立は続ける。




「悠くんキミほんと大丈夫?」




底意地悪いかなコレ、と思いながらもダメ押し。




「トレンドに乗ったり、結果として消費を促したりする行為自体は悪くないっていうか、むしろイイものだとは思うけど、逆に僕はそれに嫌悪を抱いちゃう性質の人間なワケ。 わかる?」




そうして言い切って、当の鳴上を眺めやる。 
と。




「・・・・・・・・・・・・・、足立さん」




僅かに逡巡した後、どんな言葉を紡いでくるのか、多少なりとも待っていたのだ、が。




「ハロウィン、やっぱり俺としましょう」




「はあ!!?」




素っ頓狂な声が出た。
このガキのことは馬鹿だ馬鹿だとかねがね思っていたし知ってもいたし身を持って覚えさせられてもいたけれど、それを越えて馬鹿、の度合いを計り間違っていたようだ。




「悠くん僕の話、聞いてた? 少しでも頭に入れてた???」




「はい」




半信半疑、否、全疑全疑(・・・・・・・・) の確認に、鳴上は自信満々で頷く。
聞いてたならなんでそういう結論に辿り着くんだよ、と宙を仰ぐ足立に、彼はどこか割り切ったような、腹をくくったかのような態度でいずまいで。




「だったら余計、俺が誘わないとダメだって思いました。 ハロウィンは唯一、合法的にイタズラして許される日で、しかもコスプレOKだし。 しましょう、コスプレ」




「おかしいってその結論! ・・・・って、何だよその最後のソレ」




「足立さんに、俺の制服着せたいです」




「却下!! 痛い!! ホント痛いだけだって!! バカじゃないのキミ!!?」




真顔で 「体型も身長も俺と大体同じくらいだし、」 とずいずい迫ってくる鳴上に、
足立の先程までの皮肉めいた台詞は一瞬にして立ち消えた。




「制服が嫌なら、執事服とか、あとは月光館制服に・・・・」




ひとり考え出す鳴上に、「どうしてそんなモノ持ってるのさ」 の突っ込みも、最早入れる気にもならない。
一方で鳴上は、「・・・・でも足立さん、何着せてもあまり似合いそうにないし、だけど何かひとつくらいは」 などとブツブツ言っている。




「・・・・・・・・しつこいよ」




ハロウィンはやらない。 だからキミの制服も変な服もいらない。 絶対着ない。 と宣言。




「粘り強いと言ってください」




「僕、納豆あまり好きじゃないし」




「そう言われると困るんですけど」




「勝手に困ってれば」




問答するにも、もう飽きた。 そして面倒くさい。
四の五の言う時間も暇も、余裕も自分達には無いはずで、おそらく薄々鳴上もそれはわかっていて、
だから。 ほら。




「せっかくのハロウィンなのに、コスプレにも付き合ってくれないし甘い言葉も足立さん、くれないから」








伸びる腕。 触れる長めの、色素の抜けた前髪。  一挙に距離が縮まった。








「せめてイタズラくらい、させてください」








「・・・・・・・結局、こうなるんだよ・・・・・・」








オトナの溜息は、コドモの荒くて甘い吐息にかき消された。










ハロウィン前にヒドイ風邪をひいて何も出来なくなり、今(11月18日) 書いたらこんなんになりました。
正味15分ちょっとで書いた
一ヶ月ぶりのリハビリ作文だと思ってくだされば幸いであります