[ R.I.P. ]





[ R.I.P.] ―――――― (訳:安らかに眠れ)




[ R.I.P.] ―――――― Requiescat  In  Pace (訳:死者のための祈り)




[ R.I.P.] ―――――― Reductus  In  Pulvis (訳:塵に還った)
























「・・・・これで終わりだ」


ベッドの上の当事者に背を向け、オブライエンは吐き捨てる。
それは先程まで行っていた自堕落で不品行な行為、
つまりSex(正確にはその行為の真似事か) だけに向けられたものではなく。


まるで昼ドラマのようだと思った。
陳腐な科白に陳腐なシチュエーション、
しかし現実は得てして作り物よりよほど作り物のようで、
役者よりこんな現実の素人の方が、余程演技力を必要とする。


「同じ方向なんて見ちゃいなかった。 お前が見ているのは自分だけだ」


押し出すよう、ながらも堰を切るよう苦しげに言葉を吐き出す際に絡む彼の吐息がたまらなく好きだと思ったのはいつのことだったか。


シェフィールドは薄く笑う。


「何だ今更。 それでも噛み合っていただろ?」


「・・・・・・・・噛み合わなくとも歯車は回る。 軸さえあれば」


「軸? あの子供か? 詭弁だなヒート」


薄く、うすく哂う。
僅か嗤って、それから。


「おかしいな、お前は僕に同調してくれてると思っていたのに」


「お前と俺とは、ずっと不協和音しか響いていなかった」


「・・・・へえ。 けっこう耳がよかったんだな」


一瞬、一度間を置いた彼は皮肉ではなく、意外そうに感心してみせた。
そんな芝居めいた行動に、オブライエンが気付かないはずはない。
ぎりっと鋭く睨まれるが、シェフィールドとしては別段意に介することでもなかった。
「ヒート、」
だからあえて大袈裟に、苦笑混じりの溜め息で芝居がけてその背中目掛け、
真っ向から名を呼んでやる。
嘘がつけない彼相手には、自分さえ誤魔化しきれない相手にはこの手法が一番いい。


「聡いお前は大好きだ。 でも、利口すぎてもいただけない。 お前だって一つくらい面白いことを成さないと人生退屈だろう? それとも、お前は失望しながら死にたいか?」


「・・・・お前は狂ってる」


あまりに月並みな罵倒の科白。
しかし月並みだからこそ、月並みだからゆえ、もしかしたら正鵠を得ているのかもしれず。


「それじゃ僕は生まれたときから狂ってるんだろうな。 それならお前はどうなんだ?」


「・・・・・・・・・・」


「狂ってる僕と、多かれ少なかれ同衾しているお前はどうなんだ?」


答えられない。
不協和音は不協和音。 どこまでいっても交ざり合うことはなく。


「・・・・・・・・黙れ」


押し殺した声。
悦い声だ。 交ざり合わないくせ、響き合わないくせ、たまらなく耳に心地良い。


「黙れと言われて黙ってやるほど僕は優しくもないし甘くもないね。 ヒート、狂気は罹患しないとでも思っているのか?」


「、」


彼は答えない。
答えられるはずもない。


「・・・・・・・・狂ってる」


くすくす笑うシェフィールドに答える代わり、オブライエンは同じ言葉を繰り返し零し、
背を向けたまま立ち上がって踵を返す。


「おやすみヒート、良い夢を」


グッドナイトの挨拶はドアに向かう彼の背中に当たって空しく落ち、
結局初めから一度も振り向くことなく、オブライエンは部屋から立ち去った。



































どうしても遂げたいことがあって、
彼を殺してまで欲しいものもあって。
















―――――― そうまでして欲したものは、すでに失ってしまったのだけれど











わけわからなくなりました。
書いた本人が一番わかってないとおもいます