[ オールドパル ]


※捏造に継ぐ捏造に次ぐ捏造です・・・・




「ねえ、こうやって歩いてて、ボクたちどんなふうに見えるのかなあ」




三月ももう終わろうかという頃の夕刻、連れ立って帰路についていた歩道で突然、
脇に居る子供はそんな問いかけを発してきた。




「さあ・・・・?」




一概には見当もつかず、問われた赤井なりに正直に(しかし即座に) 首を傾げたまま問いに対して問いの形で返してみると。




「やっぱり、親子かな?」
更なる疑問系で返事が戻って、


親子? まさか。
年齢的にはとともかくとして、顔立ちは似ても似付かず、どうしたってそんなふうには見えそうにない。


「それとも、年の離れた兄弟とか。 ・・・・・やっぱちょっとムリかな」
それは無理だ。 まず間違いなく。


「じゃあ、全くの他人?」


「他人同士なら、連れ立っては歩かないだろう」
こんなふうに。


そう言ってやると、コナンは小さく嬉しそうに 「へへ」 と笑ったあと。


「じゃあ、誘拐犯と、その被害者ってのはどう?」
「それは・・・・」


「一般的には大人が犯人で、子供が被害者ってのがセオリーだけど、ボク的にはどっちがどっちでもイイよ?」
僅かに挑発的な目線と、物言い。
こんな、あえて与えようとする子供の言質に、赤井はいつも少々困惑感が否めなくなっている。
ただ構って欲しいだけの戯言なのか、それとも一片だけでも本心が混ざっているのか。
しかしながらタワゴトであるのならまたそれはそれとして年齢的に問題があるし、
ないしザレゴトであるのならばそれもそれとしてやはり問題でもあって、
だからとはいえ後者、つまり本心が多少混ざってしまっていたりするのであれば大問題、
かと言って 「どこまで本気なんだ、ボウヤ」 だなんて訊いてしまえばまず100%、
「全部本気だって。 マジで本気。 ついでに言うならボク、正気だから」
とかいう可愛げの無い返答がくることは訊かずともわかっていて、
赤井は否定だろうが肯定だろうがいかなる相槌を返すという判断は却下の方向を取り、
最終的に疑問系で終わった語尾のコナンに対しては、
軽いタメイキを一つ、返答として与えることとなった。
けれどコナンからしても、すでに赤井のそんな態度は常套的で、
会えばほぼ毎回毎度交わされる(その都度内容中身は違うけれど) 似たようなやり取りであり、
大抵大概、言葉に詰まる赤井の嘆息で幕が降り、終わる。
そしてそれは今回も例外はなく、
「あーあ」
コナンは赤井のそれより、大きなタメイキを一つ、伸びと同時に行って。


「ロマンが欲しいのにさ!」


突然、突拍子もない台詞を唱えてきた。


「ロマン[ス]でも、冒険活劇のほうのロマンでも、古き良きミステリ(ミステリー、じゃないよ)の世界でもなんでもいいから、ロマンが欲しいんだけど。 くれない?」


「無理を言わないでくれないか」


ロマンスもスペクタクルも推理的世界も、たぶんこの子供は全て経験済であるはずなのに、
むしろそうでなかったら自分とは出会っていないはずでさえあるのに、今更何を。


「えー、ボク無理は言ってない。 ちょっと無茶は言ったかもしれないけど」


つれない赤井にぼやくコナン。
まさしくそれは定石通りの日常で、しかしある意味とてつもない非日常で。
「何か飲むか?」
ふと目に付いた大手清涼飲料水会社の自販機の前で立ち止まり、
自分はブラックコーヒーを選んでボタンを押しつつ聞けば、
「じゃあ、コーラ」
この花冷えの寒い夕刻に、冷たい炭酸飲料を選ぶあたりはやはり年相応の子供、なのだろうか。
取り出し口から出てきたコーラを差し出した後、
微妙にぬるい(まだ補充されてから大して時間が経っていなかったらしい) コーヒー缶を口に運べば、
その様子をじっと見上げていたコナン曰く。
「おいしい? そのコーヒー、今日発売されたばっかりの新商品なんだよ」
「・・・・よく知ってるなボウヤ」
「だって今日の朝、テレビでCMやってたから。 ねえ赤井さん」
「?」
「そうやって、新商品のコーヒーに手を出すみたいに、ボクにもパッと手を出してほしいんだけど」
「・・・・・・・・・・・・」
赤井としては手を出すも出さないも、とりあえず無糖なのが前提、
コーヒーの銘柄をわざわざ選んだわけでなく、ただ無意識にボタンを押しただけだったのだが。
そう告げてやると、コナンは声を張り上げて。
「無意識、って・・・・余計そっちの方がイイじゃん! 無意識にボクも手、出されたい!!」
「犯罪だろう、それこそが」


―――――― 稚児趣味は、たぶん自分には無い。


如何せん全てが無理で、無茶だ。 この子供の存在も、自分の過去も境遇も。
しかしひっくり返せば、それは全てどうにでもなる、
どうにかなってしまう伏線にもなり得るオールマイティ、最後の切り札的なものなのか、それとも単なるジョーカーか。
考えても今はまだ欠片さえ掴めないそんなことを茫漠と思っていると、
「今、ボクのことでちょっと悩んでたでしょ」
当のコナンに、下からくいっと袖を引っ張られた。
「相変わらず、聡いな」
「うん。 アタマ悪かったら、狙った獲物は絶対手に入れられないからさ」
そして相変わらず、カワイクナイ。




「ボクも、さっきからずっと考えてたんだけど」
「何をだ?」
「赤井さんとボクの共通項って、『組織の被害者』 ってところだよね」
「・・・・・・・・」
「被害者同士ってさ、すっごい凶悪な共犯者にもなれるんだってこと、赤井さんならわかってくれると思う」
「・・・・・・・・」


煽っているのか、これもいつもの戯れ言なのか、情けないが子供の言葉に一概に返す言葉がまたも見つからなくて、仕方なく黙っていたら。
ごめんね、また悩ませちゃったねと言われた。 しかし。




「そうやってずーっと悩んでくれてていいよ。 そしたら、その間はずーっとボクのこと考えててくれてるってことでしょ?」




それが恋愛の第一歩目だよね、と勝ち誇るように宣言するコナン。




「、」




当たってはいないが、あながち外れてもいない。
だがしかし。
繰り返すが相手は子供で、(しかし子供らしからぬ子供で)。








―――――― 恋愛感情は今のところたぶん、無い。
―――――― 稚児趣味も、無い。 たぶん。








だから大丈夫だ。 たぶん。












―――――――――――――――― たぶん。













最初に出したものとはたぶん続いてません。
もしかしたら時間軸的にはこっちが先・・・・なのかもしれませんが、基本バラバラです。
でもはじめてものがたりは絶対やる!
やおいはファンタジーの世界だから、コナンでもなんとかなるはずだとおもい たい