[ 続・たなぼた ]






【クセ毛】

・毛髪のタンパク質がずれた形で結合を起こすことで生じる。

・生活習慣の乱れやホルモンバランスの崩れなどによっても起こる。

・また縮れ毛は直毛に比べてクッション性があり、保温効果も高く、急所を守るにはうってつけの毛である。












「以上。 ――――――――― ああ、旦那、アタマ弱ェですもんね」 




納得。
とコクンとその可愛い顎を縦に振ると同時に片手はグー、片手はパーでぽんと手を叩きながら、
なるほどなるほどさもありなん、と一人頷いているのは沖田である。
いつも通りのいつもの会話、早番勤務が終わったらしく、互いにとっての他の二人(※近藤&土方・新八&神楽) が不在の隙を見計らい、万事屋に沖田がひょっこり顔を出してきたのが10分前。
そして暇にあかせてダラダラとテレビを垂れ流しで眺めていた銀時の横にすとんと腰を降ろし、
その時たまたま流れていた通販番組の一商品、
『どんなクセ毛も使い続けるうちにツヤツヤストレート! 驚きのシャンプー・コンディショナー』
の商品説明にて掲げられていたクセ毛の原因一因フラップとテロップをいちいちわざとらしく読み上げ、
それからひょい、と銀時の顔(・・・・アタマ? 毛???) を覗き込みながらの一言が上記のものだ。
そして更に、
「ずれて崩れて、ってまさしく旦那の性質と生活そのものじゃないですかい」
とか追い討ちをかけてくる。
が、銀時としてもそんなことにはもうとうの昔に慣れていて、
「沖田くんさァ、なんでそんな拗ねてんだ?」
今にも鼻でもほじりそうな間延びした声で、それでも真実を突いた返答で聞き返したら。
「一昨日、吉原から出てくるの見ましたぜ。 やけにスッキリした様子で」
ヘンな病気だけは勘弁ですから。 とその大きな瞳でこちらも真実を持って真正面から一刀両断。
ヤベェ見られてたのか、とココロの中で息を詰める銀時に沖田は気付いているのか気付いていないのか、
(おそらく前者・しかしここでゴネても仕方がないと理解している上での救済措置で)
「ま、そこんとこは今回不問で。 けど前々からひとつだけ言いたかったんですが、アンタいい歳して星柄のパンツって一体どーなんですかい」
思いのほか割合とあっさり流し、阿呆な質問にすり替えてきた僥倖。
それにほっと胸を撫で下ろしつつ嘆息しつつ、
「アレはたまたまだっつの(※いつかの人気投票順位発表時のアレ)。 普段は違うから」
「・・・・・・・・・。 俺的にはあん時以外にも何回かは星柄を見たことあるよーな気もしないでもないんですけどねェ」
いつも暗いから見間違えましたかね、と可愛い顔して飄々と言ってのける総悟くんに。
「んじゃ、これから確認してみる?」
本日の銀さんパンツ、と期待とシタゴコロとを込めてそっちの方に矛先を向ければ。
「ん。 しても構わねーです」
彼は即座に乗ってくる。 だから良い。 だから彼とだといろいろ話が早い。 無論、手も。
いそいそとテレビのスイッチをオフにする銀時の上、身のこなしも軽く上に跨ってくる細い身体。
その隊服越し、背中に手を回せば沖田は自ら首元のスカーフをほどきながら、
「ついでに言わしてもらえばアンタ最近、またどっかで死にそーなケガしやがったでしょ」
羨ましすぎるサラ艶細ストレートのミルクティー色の前髪を揺らして、この前の一件(ありすぎてもう自分でもどの件のことを指しているのか心当たりが付かないが) について、咎めるような響きで言ってくるから。
「アレ? アレはかすり傷」
ああ、フキゲンの本当の理由は吉原じゃなくてコッチの方か、と妙な安心感を覚えながら銀時はまた、誤魔化す。
「・・・・・一度、旦那と 【ケガの定義】 について腹割って話し合ってみたいモンです」
「人生、死ぬ以外は全部かすり傷だから。 心配すんなって」
「かすり傷が元になって、死ななきゃイイんですけどねえ」
「何、どしたの今日。 やたら優しいんだけどドSの沖田くんが」
誤魔化しただけでなく、上乗せして揶揄る銀時に、
「だって旦那がいなくなっちまったら、俺の性欲処理は誰がしてくれるんですって話になるんで」
沖田はどこまで本心、どこまで本気なのかよくわからないカオで言葉で。
「発散させてくれる人間がいなくなっちまいまさァ」
ま、旦那の場合は俺がいなくなっても吉原で発散させてくりゃイイってだけの話でしょうけど、と嫌味でひとりごちる沖田総悟相手、銀時は一瞬呆気に取られ、それからゴホンとひとつ咳きをして。
「あー・・・・。 ひとつ間違ってんぞ」
「? 何が?」
きょとん、と真顔で聞き返してくる大きな瞳。
「間違ってるっつーか、銀サンの場合は違うから」
「???」
普通に考えてどうしてこんな可愛い野郎が、・・・・じゃなかった、
なんでこんな恵まれた姿形なのに根性と性格だけが問題大アリなんだテメェは、・・・・でもなかった、
本当にいつか訊ねて、互いに曝け出して割った腹をさらにくくって胸底まで探ってみたいことは、
ナニユエに自分とこんな関係でいるのか、
何故にここまで懐いてくれたのか、という自問にも似たこの一点。
けれどそんな日はきっと来ねーだろーな、ということも銀時は薄々感付いているがゆえ、
あえてそれをこんなタイミングでぶつけることもねーよな、と自律して結局、いつも通り。
あっけらかんと。


「性欲はオンナで発散させるモノ。 で、発散させたソレを満たしてくれるのは沖田くん」


「・・・・・・・・・・アンタねェ・・・・・・・・・・」


予想通り、思いっきり呆れたカオをされた。 しかし本音本心であるから銀時は一分もひるまない。


「オマケに沖田くんなら、興味と探究心まで満ち足りるから一石二鳥ってトコ」


さらりと言ってのけて、もうこれ以上何も言わせないようにキスで口唇を塞いだ。




































「興味と探究心は満たされましたかィ」
寝乱れて心持ちばさばさになった前髪を無造作に指で払いながら、沖田が半身を起こす。
この時期、あたたかな人肌は暖房費節約対策プラス、実際のところこのまますんなり帰すにはまだまだ到底惜しい時間で時刻で、
んだよ沖田くん、帰るには早えーだろどうせなら夜まで引っ付いてよーぜそうすりゃストーブ付けなくて済むしさァ、とばかり、「んー、もうチョット」 と持ち上げた腕をついっと払われ、
「俺ァ、旦那とは3DSで一緒にいるんで」
まったく訳がわからない台詞で返された。
「えっナニ、メガドラ? ゲームギア? プレイディアにバーチャルボーイ???」
「・・・・・・・・・・・・メガドラはともかく、他のはマニアックですねェ」
「ピピンアットマークってのもあったよなァ」
「すいませんそいつぁ知りやせん」
ジェネレーションギャップってやつですかね、と暗に年齢差を黙示され、
「・・・・・で、3DSがどうしたよ」
そ知らぬカオで銀時が脱線させた話を元に戻して訊ねると、沖田は一息のもとに。


「打算・妥協・惰性・Sex」


どうですれっきとした3DSでしょ、と探るような目でじっと眺めてくる。
それに銀時は思わず苦笑い、そしてココロのどこかで妙に納得しつつ、
「打算でも妥協でも惰性でも、俺としちゃ棚ぼたで沖田くんと仲良くなれて嬉しーぜ?」
オトナの余裕、めいた態度で受け流してやったところ、
「ナニ言ってるんですかい旦那」
片眉を上げた沖田は、更なる余裕をありありに浮かべた表情で。
「俺が自分で棚こさえて、あえて落ちるようギリギリんとこにぼたもち山積みにして、自分で下から揺らしたんでさァ。 そうでもしなけりゃ、こんな上等なぼたもちなんか落ちて来ませんや」
アンタそこんとこわかってます? とじいいいいと凝視され、僅かだけ銀時が返答に迷ったその隙、
ぐいっと首っ玉にかじり付かれた。 その耳元、寄せられた口から。


「それっくらい仕掛けねえと、モノに出来ねえってわかってたんで」


その言葉がどんなカオで囁かれたのかは、至近距離すぎて分からなかった。


「なァ、沖田くん」
「何です?」
「もっかい」
「元気ですねえ。 旦那」


近すぎて分からない互いの表情と内心のまま、
縺れ合う身体と体温。


「だってよォ、いろいろ思い出にしてーじゃん?」
「思い出にする前に、どっちかがいなくなるよーな気もするんですが」
「なら尚更。 もっかい」
「そこ否定しねェあたり、やっぱアンタ駄目ですぜ」


鋭いダメ出しとは裏腹に、混じる笑みの欠片。
それが本音なのか、タテマエなのか、そもそも自分に向けたものなのか彼的にダメという意味なのかも結局のところやはり不明で、
何もかもが曖昧であやふやなまま、カラダの距離だけが密接になっていく。


「つまみ喰いは俺だけにしといてくださいよ」
「いや銀サン糖分が主食だから」


つまみ喰いなんかじゃねーって、と心持ち本音、少しだけ本心寄りな言葉で笑ってやる。 すると。


「・・・・・・・・。 訂正しときやす。 やっぱ、4DSで」


「何ソレ? いつ発売されんの」


「でも旦那ダメオトコですからねえ。  ・・・・・・・・だけどスキですけどね」


そう言って、沖田は 「じゃあフルコースでもっかい、」 と挑みかかってきた。








いつかの勝負のときのよう、
「マジ勝負になったら負けねーよ銀サンは」
軽口を叩きながら受けて立つ。




でも、勝てもしない。




それが惚れた弱み。 だともダメオトコなりに分かってもいる。





















そして、「・・・・・ン? 最後のだと5DSじゃね???」 と銀時が気付いたのは、
とっくに夜の帳がおりた頃、
沖田が 「じゃあまた。 気が向いたら来やす」 と万事屋を辞して5分後のことである。










イチャイチャしたかったんです・・・・ただそれだけ!
総悟たん相手だとどうしてこんなに甘くなるのか不思議でありますうちの銀サン(笑)。