[ タイトルおもいつかない・前編 ]






正月三が日もとっくに過ぎ去ったとある日、万事屋にて。




コタツに入って、ただぼんやりと銀時がテレビを眺めていたところ。
「ちょっと失礼しますぜ」
ピンポンも御免くださいの一声も無しに、沖田が我が物顔でずかずか上がり込んできた。
そして、コタツから手も足も出さず、
「沖田くん? 何? ガサ入れ?」
と死んだ目で見上げる白髪天パの前、沖田は(さすがに土足ではなかったが) 仁王立ちに近い態勢で、銀時を見下ろして一言。
「旦那。 初詣にでも行きましょうや」
「・・・・はァ? なんで? どーして俺がンなトコ行くって?」
テレビ画面から決して目を逸らさず、ただ口頭だけで銀時は疑問符を連発する。
「そもそも初詣って元旦に行くモンじゃねーの? もう元旦終わったぜ? 元旦どころか松も取れ」
「黙りやがれ天パ。 俺が行くっつったら行くんです」
とか言いながらも沖田の行動は真逆、ゴソゴソと銀時の右脇からコタツに入り込み、上着を脱いだ。
「せっかくのコタツなのに、ミカンとかないんですかい」
「ある訳ねーだろ。 正月で仕事もナシ、懐スッカラカンだっつの」
おまけにクリスマス直後から一昨日あたりまで銀サン風邪ひいちゃってさァ、うつすワケいかねーから新八にも神楽にも有給やっちまったし餅すら食ってねーよ、と嘯くフリをして事実を告げつつ、
「沖田くんこそ、今日は手土産とかねェの?」
ここでやっとテレビから目線を外し、図々しくも単刀直入に訊ねると。
「ありやせん」
別段気分を害した様子もなく、即答する沖田。
「だって仕事中だし。 ココに来たのもパトロールのついでってやつで」
「で? その更についでに初詣???」
沖田くん一体いつ仕事してんの、という呆れ果てた銀時の問いは、
「その言葉旦那にそのまんま返してやります」
という一言で片付けられた挙句、
「あー、やっぱ一回コタツ入っちまったらダメだ。 初詣とかもうどうでもよくなってきた」
眠たげに目を細めてそう呟く沖田は、まるで丸くなった猫のようで、
銀時は、思わず。
「んじゃ、風邪っぴきにかまけた正月の銀サンの仕事サボりも沖田くんのパトロールバックレも、ちょっと遅れてみた初夢ってコトにしとく?」
言い垂れながらひょい、と伸ばした腕。
それをすいっとさりげなくかわして沖田はさらりと。
「ま、初ユメってコトにしときゃ正月早々Sexしたって怒られねェですからねェ」
軽々しい口調から僅かに滲んだ、皮肉めいたそれ。 ヘンなところで耳ざとい銀時は、ついそれに気づいてしまってついつい指摘してしまう。
「待て。 なんでそんなトゲのある言い方してんの」
そして沖田もスルーしてしまえばいいのに、真正面から受け止めて対抗してくる。
「『正月』 なんて言葉で浮かれてやがるからちょっとイラッときただけで。 年が変わったからって太陽の昇る向きが逆になったワケでもなし、天と地がひっくり返ったワケでもなし。 どいつもこいつも正月だからって浮かれてフワフワして何を期待してやがるって話でさァ。 どうせなら今年と言わず来世に期待しろっての」
一言で言うなら長台詞。
沖田にしては珍しい長回し。
しかも最後のほうは吐き捨てるかの如くの口調だったから、ここにくるまでにきっと、正月絡みの面倒くさい仕事か何かがあったのだろう。 お巡りさんもいろいろ大変だ。
だから銀時は、あえて茶化す。
「新年早々、ユメのねェこと言うよなァ。 ま、俺ァ沖田くんのそーゆートコ、嫌いじゃねーけどよ」
「そりゃどうも。 つまり旦那は俺をアイシテルってコトで通訳して解釈しますぜ。 ・・・・・・・・えぇ???  ・・・・・・・・・・・・・重い・・・・・・・・・・・」
「あのさァ・・・・」
まったくもってドS同士の会話というのはタチが悪いというか、面倒くさいというか、どちらも素直になれば良いのに絶対ならないとか、そうなったらもうドSじゃないとか、ちょっと待った会話にドSとか関係ある? とか、まあそんなことどうでもいい、とか、久しぶりに会ったけど沖田くんやっぱ見た目だけは100点満点だよなあ、とか、あーカワイイ、憎たらしいけどすんげーカワイイ、 ・・・・とか。
「ったく・・・・。 かわいくねーガキだな」
なのに裏腹に、口は正反対の言葉を吐く。
負けじと沖田も、
「旦那の大人げなさには負けまさァ」
きろり、と可愛く睨まれ、
「、・・・・・・・・」
銀時はワンテンポ置く。
そうして。


「シていい? て言うかさせて沖田くん? 四の五の言ったけど銀サンもうわりと限界。 な?」


「・・・・・・・・アンタ・・・・・・・・」


呆れ果てたカオをする沖田に、


「クリスマスから今日までずーーーーっと禁欲状態だったし。 それにどっかで誰かが言ってただろーが。 アタマと下半身は使えば使うほど良くなるって」


「そんなん初めて聞きますけどねェ」


「アレだよアレ。 使わない機能はどんどんカットされてくってアレ。 そうならないように銀サンの下半身、使わせてくれよォォォ」


「もう手遅れなんじゃねーですか」


「試して確認してみろって」


「・・・・・・・・ええー???」




言葉とは裏腹に、ふたり、薄ら笑いの忍び笑い。
正月にかこつけて、互いに回りくどすぎた。
これ以上四の五の邪魔をしそうな、うるさい唇は封じてしまおう。















【タイトルおもいつかない・後編】 に続く










いつものことですが後編でヤってます