1011,1100,1101,1110





(・・・・・・ど、どうしたらいいんだ)


宿屋の一室。 ベッドの中。 毛布の中。
横になったまま壁際を向き、その壁に今にも貼り付き兼ねない状態のまま、まるで石化したかの如く固まっているのはガイである。
(どうすればいいんだ・・・・、)
固まったまま、途方に暮れる。


―――――― 何故って原因はただ一つ。


一つ屋根の下・・・・ならぬ一つ毛布の中、くるりと背を向けたまま硬直している自分のすぐ脇、10センチも離れていないところに、
可愛くてかわいくて好きでスキで大切で大切でいとしくて愛しくてたまらないタマラナイたまらない、赤毛のヒヨコ(直訳=ルーク) が、居たりするからである。
ある意味ユメのようなだがしかし決してユメでも妄想でも何でもない代わりにシャレにもならないこの一触即発の状況、
自分の動悸だけが頭に響いて煩くて仕方がない。 しかしどうしようどうすりゃいいどうしたら。
(ど、どうにもならない、だろ・・・)


同じベッドの中、寸でのところで身体と身体はギリギリ触れ合っていないのだけれど、ルークの体温は毛布を通じて伝わってくる。
それだけでも動悸が鼓膜を破るのではないかというほどなのに、
いとしくていとしくて大切で大切で好きで好きで可愛がりたくて可愛がりたくて食べたくて食べたくて食べたくてタマラナイたまらないタマラナイ、
自分が7年間、片時も離れず一緒にいたルークの身体が、否、ルークがすぐそこに居て。
(落ち着け、落ち着くんだ、俺)
気を抜けば今にも暴走してしまいそうだ。
そうだ、こんな時は煩悩を抑えるために心の中で経でも唱えてみたらどうだろう。 物知りガイは何でも知っている。 だから般若心経だって朝飯前で心得ている。
(観自在菩薩行深般若波羅蜜多・・・・)
心中で懸命に経を追いつつ、衝動を必死に自制する。
しかし、普段はあえて意識しないように振舞える、振舞えているはずの理性のタガも下半身にはそろそろ効きそうもない。
「・・・・掲諦掲諦波羅諦・・・・」


「? ガイ? 何ブツブツ言ってんだ?」


と、すぐ背後でルークが首を傾げる気配がした。
「、!」
マズイ。 心中で唱えていたつもりだったが、もしかして口から経がだだ漏れになって出ていたか。
(〜〜〜〜〜〜ッ、)












全ての発端は、10分前にさかのぼる。












日が落ちるのとほぼ同時にチェックインした本日の宿、
いつものように女性陣と男性陣に分かれて取った部屋、食事も入浴も終えてあとは 「そろそろ寝るか」 となったところで。


「一緒に、寝ようぜ」


壁の照明スイッチをパチンと切りながら、突然自分と同じベッドにもぞもぞ入り込んで来たルーク。
「なッ・・・・!!」
素で、喉から心臓が飛び出るかというほど驚いた。 ギョッとした。
「ル、ルーク?」
あまりにたまげて(!) しまい、どう反応していいのかわからずガイが次の行動が出来ないでいると、
ルークはまた悪い方向に勘違い・そして落胆する彼固有の良くないクセを発揮したらしい。
「あ、迷惑だった・・・か?」
心持ち視線を落とし、声も遠慮がちなものになって。
途端に焦って慌ててしまうのは当然、ガイの方だ。
何故かと問われても困るのだが、これはもう7年間の長い付き合いの中、培われてきた職業病のようなもの。
「い、いやいやいや違う!! 違うぞルーク、むしろ大歓迎だ・・・・! って、いや、その、あの、な・・・・」
動転した勢いで何だか余計な言葉までポロリと出てしまったのだが、幸いなことにそのあたりをルークは別段気に留めず、
「じゃあ、いいよな。 へへっ、一人で寝るのって寒いじゃん」
もそもそ毛布の中に潜り込む。
いつの間にか喉はからからで、ごくりとガイは唾を飲み込みながら。
「そ、そうだ・・・・な」
こんな時に限って、ジェイドは夕食を終えると同時に 「野暮用で出掛けるので今夜は戻りません。 どうぞ2人でごゆっくり」 とか何とか言い残し、
さっさと一人で出て行ってしまっているし。
極力ルークを意識しないようにしつつ(そんなこと最初から無理なのだが)、ガイはゆっくり背を向けて、ベッドの端、壁際を向く。
(暴走するな、頼むから勝手に暴走しないでくれよ、ガイラルディア・・・・)
痛いほど切実に自分自身に願い続けると同時、
(3.1415926535 8979323846 2643383279 5028841971 6939937510 5820974944 5923078164 0628620899 8628034825 3421170679 ・・・・・・・)
心を静めるため頭の中で数え始める円周率。
しかし無限に続く数字の羅列、いくら何でも記憶している分にも限度があって、




(・・・・・・ど、どうしたらいいんだ)




冒頭のそれに、戻る。








「ガイ、ガイ!」
「うおあッ!!!?」
前触れもなしにゆさゆさと揺り起こされ(否、元から眠ってはいない。 眠れる訳もない)、 
パッと明かりが付いて顔を上げるとすぐ眼前に翡翠色の瞳、ルークの顔がそこにあった。
不意打ちの接近至近距離に驚きと自制とが一緒くたになり、勢いと反動で器用にも枕を飛び越えた挙げ句、ベッドヘッドから乗り上げ、
「う・・・わッ・・・!!」
ドスン、ゴツッ。
普通では有り得ない、間抜けにも程がある格好でベッドから転落してしまう。
「〜〜〜〜〜〜ッ・・・・!  ・・・あ、痛、てて・・・・ッ・・・・」
おまけにその拍子、備え付けのミニテーブルの角で足の小指も打ってたまらず悶絶していると。
「お前、大丈夫か? なんかさっきからおかしいぞ?」
真正面からひょっこり顔を覗いてくるルークの瞳、再び。
「ああ、大丈夫だ。 ・・・・たぶん」
自制出来れば、とガイは心の中でまた呟いて、冷やっとした床の上、一度、二度、深呼吸。
そして落ちたおかげでどこまで唱えたかすっかりわからなくなった般若心経を止め、今度は。
(1011,1100,1101,1110・・・・・)
煩悩本能欲望欲情性欲に押し流されないよう、理路整然と二進法。
「10000,10001,10010,10011,10100・・・」
これまた頭の中だけで呟いていたつもりだったのだが、ブツブツ言葉でだだ漏れになりまくり、しかし自分では気がついていないガイに。
ルークは最初こそ訝しげに見ていたがすぐ、
「何言ってんだよ、ワケわかんねーぞ?」
とか、ぷうっと膨れるかと思いきや。


「あ・・・・そんなにイヤだったのか、一緒に寝るの・・・」


襟足のひよこ毛をひよん・・・、と力なくしおれさせ、下を向いた。
それに足の小指の痛みも忘れ、飛び上がるほどガイが狼狽したのは言うまでもなし、
「ちちち、違うぞ!!?」
「・・・え?」
フォローアップのつもりで、しかし焦ったせいか思いきり声が裏返ってしまった。 けれどもう直しようがない。
ルークには、ルークにだけはそんな顔させたくない一心で。
「違う、嫌な訳ないだろ、逆だ、逆!」
「・・・逆? 逆、って」
一心・・・・で、思わずポロリと口を滑らせ出てしまったガイの本音本心。
自分でも、「あ、」 と言ってしまった直後に気付いたが、時すでに遅し。 覆水盆に返らず。 後の祭り。
「あ、あのな、あのなルーク、」
「・・・・ええと、」
あわあわ取り乱すガイを尻目に、一人考え込むルーク。 そして、疎いなりにそこそこピーン、と来たらしい。
「、 ・・・・」
一瞬、赤くなってそれから。


「・・・・・・っ、と・・・・」


襟足ひよこ毛は元に戻ったが視線は下方に落ちたまま、しかし頬は赤い。
そしてガイは、腹を決める。
「・・・・・・あー、やっぱりお前本人にも感付かれてたか。 そうだよ、好きだよお前が。 ・・・そういうふうに、さ」
こんなところで告白。
こんなところでカミングアウト。
何だか勢いに任せて済し崩し的な感もとてもとても否めなくもないが、仕方がない。
「ガイ、」
何か言いたげにルークが顔を上げた。
それでもガイは先を続ける。 そうでもしなければ、たぶん拙いことになる。
「だからさ、そんなお前が一緒のベッドに入ってきたら焦って当たり前だろ? 俺の理性だって、それこそ持たなくなるって」
「そうなると、どうなるんだ?」
疑問質問と一緒にきょとん、とするルーク。 ここまで来られると、流石に苦笑するしかない。
「どうなる、って、おいおいルーク・・・・。 そうか、俺もお前に性教育はほとんどしなかったもんな」
苦笑しながら屋敷時代を思い出し、
「でも本とかで少しは読んだり知ったりもしてるだろ?」
と確認すると、
「読んだような気もするけど・・・やたら専門用語とか比喩ばっかで、全然理解できなかった。 だからいつかお前に聞こう聞こう思ってるうちに、気がついたら今になってて・・・」
答えているうちにどこか気恥ずかしくなってきたのか、ふいっとまた目線を落としかけたルークに。
ガイは生来の世話根性・説明役グセを無意識に発揮。
自分の今の状態も今だけは棚に上げそれはそれコレはコレ、と完璧に区別し噛んで含める簡単講座。
「そうだなあ、・・・・まあ簡単に言うと、相手の口とか体とかに触れたくなるんだよ。 触って、見て、もっと色々知りたくなるんだ」
そんなふうに、当たり障りなしの説明をしたら。
わかったような、多分これでもほとんどわからないでいるだろうルークは、
「・・・・ジェイドも、きっとお前はそう言うって言ってた」
ガイが思ってもみないような返事をした。
「な・・・・!!?」
そして更にとんでもない続きの言葉。
「けど、俺がイヤじゃなければお前にたくさん触ってもらえって」
「ル・・・・!」
あまりに突然の、しかしあまりに自分にとってオイシイ方向に転がっていく展開に、シアワセ慣れしていない元使用人は哀れにも動転しまくる。
な、何ルークに吹き込んでるんだあの三十五歳マルクト軍人若作り長髪眼鏡、と今宵不在の腹黒大佐の顔を頭の中に思い描いたところで。
「ガイなら、嫌じゃねーよ」
ルークはさらりと、と表現するには心持ちおずおず、しかしその響きに迷いは見当たらず、
「だから、」
ゴクリ。 無意識にガイの喉が鳴った。
「わ、わかってるのか、どういうことをするか・・・・とか」
「・・・・・大体なら」
どくん。
心臓と、それとは何か別のものがガイの体内で跳ねる。 拙い。 拙いまずいマズイ。 これ以上煽られると間違いなく引き返せない。
止めるなら今だ。 ルークを、ではなく自分を止めるのなら、今のうちしかない。
なのに勝手に口が動く。 動いてしまう。
「・・・なら、試してみるか?」
「え?」
どくん。
声を聞くだけで、赤い前髪が少し揺れただけで気が逸る。
「お前の口、触ってみてもいいか?」
「・・・・ああ」
小さく縦に動き、頷いた顎。
その頬に手を伸ばし、ゆっくりガイは顔を寄せていく。
出来るならずっと見ていたい翡翠色の瞳が閉じられると一緒、唇が触れた。
そして優しく柔らかなキスをする。


「触れるっていうのはこういうことだけど、平気かルーク」
唇を離し、初めてのキスの後、おそらくガイラルディア最後の理性。
「今みたいのはほんの触りで、実際はもっと深いところまで、色々するけど大丈夫・・・か?」
「・・・・・・・・・・」
「ダメなようなら当然、俺も無理強いはしないし、勿論明日からだってお前とは親友のスタンスでやっていくから安心してくれ」
そのスタンス、この立場は何があっても変わらない。 譲らない。 譲れない。
そう言って笑ってみせると、
「平気だ」
意を決した返事。 本当にわかっているのだろうか。 少し心配になる。
「本当に大丈夫か、 ・・・・正直、俺も今だからギリギリ自制してるけどこれ以上踏み込んだら後戻りは出来ないし、途中でも止められない」
理性ギリギリ、最後の確認。
なのにルークはどこまでも素直、頑なで。
「それでもいいよ、お前なら大丈夫だから」
一生懸命、控えめにガイに向けて笑ったあと、
「だから今度は、 ・・・試しに触ってみるんじゃなくて、ちゃんと・・・キス、してくれよ」
顔面だけでは足りず耳のふちまで真っ赤にしながら、ガイを、ねだった。
























同時刻、一人ふらりと部屋の外に出たアニスは階段下、
ロビーの脇に設えられている小さな喫茶場所にて悠々とコーヒーなど飲んでいるジェイドの背中を発見し、小走りに近寄った。
その足音に彼は振り向く。
「大佐ぁ、何あの2人で遊んでるんですかあ?」
「おや、気付いていましたか」
「当ッたり前ですーーーー。 昼間だって、なーんかルークにこそこそ耳打ちしてたりするし、その度にルークは赤くなったりしてるし。 トドメ、こんな夜中にルークをガイと2人っきりなんかにもしちゃってるし!」
アニスちゃんの観察眼は全部お見通しです、と無い胸を張る少女に、大佐はいつものわざとらしい(?) 笑顔で。
「2人には存分に青春を謳歌してもらいたいと思っただけですよ」
「・・・・ホントにそれだけですかぁ?」
毎度毎度、彼の笑顔にはどこまでも黒い黒い深い深いウラがありそうで、今回も素直に受け取れないアニスは首を捻る。
そんなアニスにジェイドは変わらない笑顔のまま、
「それだけに決まってるでしょう、善意ですよ善意。 ま、あとは少しくらい面白くなれば良いかなーと」
「・・・・・・・・・・・・やっぱり黒だ」
「アニス? 今なにか呟きましたか〜?」
「いいえーーー大佐ーーー。 で、面白く、って・・・・」
簡単にアニスは 『そんな場合の面白いコト』 を考える。 考えてみる。 考えてみて。
「例えばガイが先走って三擦り半、とか?」
「アニス。 女の子がなんて単語を口にするんですか」
「きゃーーーん☆ 今のは聞かなかったことにして下さーーーい」
エヘッ、と心持ち首を傾げて発言をアニスが取り消した途端、ジェイドは性格のあまり宜しくない(!) ところを存分に発揮、
「ま、三擦り半とまでは行かなくても、急いで焦って超!先出し・・・・、あたりを期待しときますか」
三十五歳が十三歳に向ける言葉には問題がありすぎるにも程がある内容で返したのだが、
当のアニスはもう彼の言動行動発言にも随分と慣れたもの。
さらりと流し、
「でもぉ・・・・。 大佐がルークに何を吹き込んだのかはわかりませんけど、ホントに煽っちゃって大丈夫だったんですかあ?」
アニスちゃんルークもガイも(ホモだけど) けっこう好きだから、もしものことを考えるとちょっと心配なんですけど・・・・と言外、ニュアンスで伝えてみる。
すると察したジェイドは 「平気ですよ」 とあっさり太鼓判を押した。
「世の中には、第三者からきっかけを与えられなければ先に進まない恋愛関係というのも存在するんですよ」
あの2人みたいにね、と言う。
「えーーー、でも、もしそれで他人に言われて、間違った 『思い込み』 しちゃったりしたらどうするんですかあ〜? 好きは好きでも、LikeとLoveは違いますよお?」
「いや、あの2人に限ってそれはないでしょう。 ガイはともかくルークの場合は、ただ自分で気付いていなかっただけです。 アホで子供ですから」
「・・・・まあ、確かに。 見てるコッチが歯痒かったし」
「そして、報われない青年もそろそろシアワセになっても良い頃なんじゃないかと思いましてねえ」
私はあの2人をそこそこ気に入っているんですよ見ていて面白いし、と眼鏡の奥の譜眼が細く笑った。
それに対し、自然とアニスも笑みが浮かぶ。
「ホント、ガイも信じられないくらいルークに一途ですからね・・・・」
「彼は端から見れば常識人ですが、ルーク絡みだと斬新なアホそのものですから」
うんうん、と頷く。
「けど大佐、ここってなんだかムダに防音がカンペキっぽい造りみたいですけど」
アニスがざっと見たところ、壁が厚い。 柱も太い。 緩衝材もやたら豪華に使われているようだ。
だからきっと2人の部屋にコップを当てても聞こえてはこないだろうし、気配も多分感じ取れないと思う。
それとも、大佐のことだからもう何か仕掛けてあったりするんですかと訊ねようとすると。
「それは仕方ありませんから、後日、ルーク本人からでも聞き出せばいいでしょう」
と、ジェイドにしては些か迂遠な消極案。
「ええ?」
「大丈夫ですよ、ちょっと突付けば、きっと簡単に教えてくれますよあの子は。 とりあえず私は彼の親みたいなものですから」
「あーなるほど・・・・」
頷くアニス。 確かにジェイドが突付けば一から十まで全部、包み隠さず聞けそうだ。
自分だってジェイドには足元も及ばず敵わないのだから、大佐に取ってはルーク相手など正真正銘、赤子の手を捻るようなものなんだろう。
「ルークの方も、新鮮なアホですもんねえ〜」
うんうんうんうん、と深く深く頷いて、それからアニスは大欠伸。 壁の時計を見ればもう時間は随分と遅い。
夜更かしは女の最大の敵、肌にはご法度、加えてそろそろ眠くなってきた。
「・・・じゃ、結論が出たところでアニスちゃんはもう寝まーす。 おやすみなさーい、大佐」
言いながら階段を上がる小さな背中のトクナガに、
「おやすみ」
ジェイドが小さく応えたコンマ一秒後。
階段の中腹、くるりとアニスが振り向いた。
「やっぱり、自分のレンアイが上手く行ってると、周囲にも優しくなれるんですねえ〜? ってことで、ピオニー陛下にもヨロシク〜♪」
「、」
不意を突かれ、あろうことか一瞬言葉に詰まったジェイドにアニスはひらひら小さく手を振りながら、そのまま階段の上に姿を消した。
「・・・・・・・・・・。 アニス、 ・・・・やはりあなどれませんね」
果たして一体どこまで知っているのだろう、とジェイドは思わず真剣に考え込んだ。



























決意は固いものの、こういう場合はどうすればいいのか、どうしたら良いのかわからずにいるルークを一旦ベッド上に座らせ、
それからガイはもう一度キスをする。
寄せた口唇で最初は軽く啄ばみ、次にやんわり食んで。
しかし今度はここで終わりにはせず、息継ぎに自然と小さく開いたルークの口唇の間に舌を滑り込ませた。
「――― ・・・・っ」
初めは口腔を味わってみるだけのつもりだったのだが、
舌と舌が触れた瞬間にルークが漏らした小さな息に、たまらず夢中になって深く口付けて貪ってしまう。
おどおどと引き気味な舌を舌で捕らえて絡めると一緒、同じく心持ち後ろに仰け反りかけていた後頭部を回した手の平で支えながら何度か撫でてみると、
僅かにルークの身体から力が抜ける。
そして、キスの頃合をみて一旦、口唇を離す。 すると何度か浅い息をついたルークがますます困ったような顔でガイを見つめてきて、
「俺、自分で服とかも脱いだ方がいいのか・・・?」
嬉しい気遣い。 だが困ったような表情は消えておらず、そうは言いながらも戸惑いの真っ只中にいることはバレバレだ。
そんなルークをひとまず安心させるため、
ぽんぽんと頭のてっぺんを手のひらで軽くあやして、
「いや、いいよルーク」 
ガイはやんわりと首を横に振り、
「ルークが自分で脱ぐより、俺が脱がせた方が早いからな」
言いながら伸ばした手で、ルーク本人が慌てる間もないほど素早く上着を取り払ったが早いか、
ごく自然に腰のベルトまでをも取り去ってしまい、連動する動作で一気に下肢を包んでいたものも下着ごと脱がせきってしまう。
「ちょ・・・・っ!」
ナイトランプの多少薄暗い灯りとはいえ、互いの姿がはっきり視認できてしまう中、あっという間に先に丸ごと裸にされてしまった当人は、無論のこと焦る。
咄嗟に手元の毛布で身体を隠そうとするが、そうはガイが許さない。
「おっと、今更隠したって意味ないぞ」
これまた手早く毛布を剥ぎ取り脇にどけてしまい、
「えッ、う・・・わッ・・・!」
とか何とか相変わらず焦り続けるルークの前、自分も服を脱ぎ捨てた。
そうして、苦笑に近い響きで笑う。
「全く、今更だろうに・・・・。 子供の頃からよく一緒に風呂に入って、お前の世話も色々してただろ?」
だから別に平気だろう? と言ってやると。
平気じゃない、とルークの口が動き、
「・・・・それとこれとは、違うだろ・・・・」
小さな呟きの後、拗ねた感じで、ふいっと横を向いてしまう。
「ル・・・・、」
そんな仕種があまりにも可愛くてガイのツボのツボのツボを突きまくり(!)、で、
思わず一瞬、我を忘れかけそうになる。 が、
「あ・・・・ああ、そうだな、全然違うな。 悪かった」
何とかセーブ。 セーフ。
けれどもしかし、今の状態がそう長く続けられるはずもない。 加えて、夜明けまではまだまだ遠いものの、時間だってそう無限にあるわけでもなく。
「・・・・・・・・、」
少し考えたがこんな時、どう本格的な開始を伝える言葉をかけていいのか思い付かず、
結局何も告げずにガイは横を向いたままでいるルークの肩をそっと押し倒し、
シーツの上、仰向けになった身体の上に自らの上半身を乗り上げさせる形に持っていった。
まずは上半身を愛したくてそのまま手のひらを胸元に、口を耳元に寄せる。
赤い遅れ毛が散る形の良い首筋を口唇で辿りながら、
滑らせた手で胸全体を一旦大きく撫で上げ、次に指先をまだ薄い突起に定めて彷徨わせる。
「っ・・・!」
直ぐに指が胸の突起に辿り着いた。 途端にルークの身体が小さく跳ねる。
その小さな粒を器用に軽く指先で摘まみ上げ、ころころと転がしてみると瞬く間に固くなり充血して色は濃く染まり、
「・・・・っ、ぅ・・・・!」
ルークの口唇からは、声を堪えた代わりに吐息が零れて。
初めて見る敏感なその反応に、ガイは口許を緩めて笑いかけた。
「声、出していいぞ?」
「・・・・・っ・・・」
急にそんなこと言われても、たとえガイが相手でも、やっぱり恥ずかしいものはハズカシイ。
出来ることなら声は出来る限り抑えたいと思うルークとしては困ってしまうのだが。
だから懸命に唇を噛み、我慢していると、
ガイは指先で愛撫している方はそのまま、今度はもう片側に突然、ちゅっと吸い付いてきた。
「ぁ・・・・っ!」
固く尖る肉粒を舌先で丁寧になぞり、不意に転がしたり口唇で何度も吸い付いたりと愛撫を施され、我慢しきれなかった声と共にルークの喉が仰け反る。
その様子に満足しつつ、ガイは胸への愛撫を繰り返し送り続けた。
「っ・・・・、ふ、・・・・ぅ・・・・っ・・」
僅かにルークの頭が横に揺れる。
もしかしてやっぱり辛いのか、と目聡く気付いたガイだったのだが、覗い見たルークの瞳には快楽の色が濃くて、
どうやら嫌で頭を振ったのではなく、感覚に翻弄されてのことらしい。 ああ、可愛い。
安心し、散々味わった乳首を最後に強めに吸い上げてから名残惜しくも口唇を離し、胸元から顔を上げるガイ。
小さく、息をつく。
次に視線の行き着く先は当然ルークの下腹部で、思わずじっと見つめてしまった。
「・・・・・・ッ・・・、」
眼前で、ガイが自分のそんなところを注視しているのを、当然ルークは正視なんてしていられない。
背けられる限界まで顔を背けてしまっている。
一方、見つめられるルークのそこは胸に丁寧な愛撫を送られたゆえか、すでに少々頭をもたげていて。
どくん。
「――― ルーク」
逸る。
気付けば、それに触れていた。
「ん・・・・ッ・・・!」
途端にビクッとルークの身体が跳ねる。
勃ち上がりかけで、芯を持ち始めているルーク自身を手の中に収めて上下に扱くと、
「ぅ、・・・・っ・・・」
熱い吐息を漏らしながらも、ルークは手で口許を覆ってしまう。
塞いでしまうなんて勿体無い。 折角の甘い声なのに。
「声、聴かせてくれ」
だからそう囁きかけてみたのだが、やはりやはりまだ理性と羞恥が邪魔をしているらしく。
「・・・っく、・・・・ん・・・・」
それでも口許を手で覆ったままのルークのものが、ガイの掌中で次第に質量を増し育ってくる。
ついに先端から、じわじわと先走りの蜜が滲み出てきて、
溢れるほどの雫になったそれがつう・・・っと上から下へ肉棒を伝って零れ落ちた。
「・・・・ぁ・・・う、・・・・、ぅ・・・・っ!」
次々と溢れてくる蜜を、堰き止めて拭ってやるようにルーク自身の先端をきゅっと指の腹で擦ると、
拭ったどころか、くぐもった声と共にとぷっと大量の蜜が溢れ出てガイの手を濡らし、
先端がみるみるうちに血液を集めて色を濃く染めていく。 濡れた手が上下するたび、くちゅくちゅと水音が響き始めた。
「可愛いな・・・」
どこまでも素直な身体の反応に、ガイが思わず呟きを漏らした途端、
「〜〜〜〜っ!!」
それが聞こえたらしいルークがガバッと慌てて上体を起こしてきた。
しかし構わず(半分は確信犯で) ガイはその拍子に折り曲げ立てられた両膝に手をかけ、大きく左右に開かせる。
「な・・・・ッ、何してんだよ・・・・っ!?」
慌てて、というよりむしろ上擦るルークの声。
まあ妥当なところだろう、何故ってガイはルークのそこから視線を外せない。
「何、って言われてもな・・・・」
困る。
「離、せ・・・・、そんな・・・・っ・・・・!」
「却下、だな」
「馬・・・・ッ鹿、んな、見るなって、ガイ・・・・っっっ!!」
まじまじと食い入って眺め続けるガイに、ついに耐えられなくなったルークは懸命に逃れようと暴れて身を捩るのだが、
しっかり固定されてしまった膝はどうにも閉じようもなく、蹴飛ばすにも力が入らない。
一方でガイは軽く唾を飲み込んだ。
眼前にある、他人に初めて触れられ、震えて勃ち上がっているルークのもの。
今も少量の透明な蜜を零し続けていて、それは自分の愛撫にしっかりと感じている証拠で。
だから、もっと愛してやりたいと思った。 もっとずっと深い愛撫を施して、どこまでも快楽を送ってやりたくなった。
そして乱れる姿も見たい。
ルークの中に大きく存在している理性と羞恥心をどこかに消してやってしまえば、一体どんなカオをして、どんな声を出すんだろう。
そう考え、無言でガイは前髪を揺らし、頭を下に落とした。 定めた唇が向かう先は言うまでもない。
「え・・・・」
さすがにうっすらとガイの意図がわかったのだろうか、まさか、とルークは息をのみ、
咄嗟に金髪を掴んで彼を止めようとしたのだが、髪に指が触れる前に、口唇が接触する方が早かった。


「ん、あ・・・ッ・・・!!」


ガイの口唇が、ルーク自身の先端にそっと触れる。
過敏で繊細なその箇所は、ただ口唇が触れただけなのにとくん、とまた質量を増やすほどの快楽を貰ってしまう。
「ガイ・・・・っ、やめ・・・・!」
手で触られるだけでも恥ずかしくて仕方なかったのに、あろうことか口でされるなんてルークは恥ずかしくて恥ずかしくてたまらない。
ともすれば泣き出してしまいそうなほどの羞恥に包まれて、懸命にガイを引き剥がそうとするのだが、
「こうした方が気持ちいいんだ。 おとなしくしててくれ」
あえなく一掃、主導権はとっくにガイが握ってしまっていて。
「ぁ、あ・・・・っ・・・!!」
先端部分をぱくりと含まれ、優しく吸われた。
吸われたところからじんッ、と響いた刺激に思わずルークは腰を浮かせ、ますます下肢に力が入らなくなる。
ガイはちゅ、ちゅ、と数回そこを吸ったあと、今度は舌で小さく舐め上げた。
「〜〜〜んッ・・・・!」
もう、ルークとしてみれば思い切り怒声で文句を連続してぶつけてやりたいのに、
口を開いてしまえば出てくるのは間違いなく甘く濡れた声しか出てこなそうで、再び口許を手で抑えて、必死で声が漏れないようにする。
「・・・・っく、ぅ・・・・ッ、・・・・っ・・・」
ガイの舌先が、零しては勿体無いというように止まらない蜜を丁寧に舐め取っていく。
他人に身体を開くことさえ初めてのルークからしてみれば、この行為自体は勿論、敏感なそこを執拗に舌で弄られることに、
眩暈のするような羞恥に襲われる。
「んっ・・・・、ぁ、ぁ・・・・っ・・・・・」
なんとか口唇を離してほしくて、口許を抑える手とは逆側を使い、
ガイの頭に手をやって退けてみようとするのだが、ちっとも力が入らず何も出来なかった。
するとその時、不意に。
「、」
ずっとルーク自身から離れなかった舌が、突然離れた。 ゆっくりとガイが顔を上げる。
それまで施されていたたまらない感覚から解放され、一瞬ほっとする反面、
ルークの意思とは別に、快感と快楽とを纏わり付かせたまま勃ち上がっている中心部は、刺激を求めてじわじわ疼く。
「っ・・・・、・・・」
どうしていいかわからず、結局ガイを窺って見ることしか出来ずにルークがそうした瞬間、
「声、我慢すると大変だぞ」
そう告げられると一緒、今度はルーク自身全体をぱくりと口に含まれた。
そのまま、口唇を使って激しく摩擦をもって扱き上げられる。
「――― あッ、う・・・・あ、あ・・・・ッ!」
先刻より遥かに直接的な刺激に、喉が仰け反って震え、それだけじゃなく腰からもゾクゾクしたものが背筋を伝って駆け上がる。
噛み締めた唇が息苦しくて、浅い吐息を何度も繰り返すと、
その都度、吐息を通り越えた細い声が喉から溢れ出た。
「ッ・・・、ん・・・・う・・・・あっ・・・・、ぁ・・・・っっ・・・」
ガイは口唇と舌との口淫だけでなく、完全に抵抗の力を失ったルークの内腿を抑えていた手を中心部に持って行き、
滴って濡れたルーク自身の根本に添えて優しく擦り始めた。
「ガイ・・・っ、っや、あ・・・・ッ・・!」
ルークがかぶりを振る。
先端から溢れ零れた蜜でもうすっかり濡れ落ちたガイの指先に、けなげに屹立して戦慄く裏側をくすぐるように辿られ、
「ぅあッ・・・・ッ!!」
先ほどからもう声を抑えることも出来なくなっていて、たまらず大きく仰け反る身体。
慣れない性感と迫る絶頂に、肌が汗を帯びて膝頭がかくかく震え出してきた。
舐め続けるガイの舌先が味わう蜜は、透明だけでなく白色も混ざり始めていて。
ぎゅ、と僅かに髪をルークの指が掴んで握ってくる。
その力加減とこの様子から、一度解放させてやろうとガイは、震えるそこを一際丁寧に舐め上げ、
それから熱く蜜を零す先端の窪みに、くいっと舌先を差し入れながら短く鋭く吸った。
「っ!! ぁ、あ、っ――――ッ・・・・!!」
ビクン、と戦慄き、身体を強張らせてすぐさま吐蜜を誘われたルーク。
口内で弾けていく白蜜をガイはごく当然に飲み干し、
それだけでは足りないというふうに達したばかりのルーク自身を何度もちゅくちゅくと吸って、残滓までを搾って味わい尽くす。
「・・・、・・・・っ・・・っ・・・、ん・・・・・」
執拗に吸われ、ルークはそのたびに小刻みに腰を震わせ耐えていたが、
やっと最後の一滴までを吸い取って満足したガイの口唇が離れた途端に、くったりベッドに沈み込んでしまった。
おまけに今でも物凄くハズカシイのだろう、荒い呼吸の中、首を限界まで横に傾け、
「大丈夫か、」 と身を起こして覗き込んできたガイからふいっと顔を背けた。
そんなルークに苦笑しながら、額にかかる前髪を払ってやると、ぼそっと、
「・・・・信じらんねー・・・」
そんな呟きが聞こえて。
が、怒りの成分は含まれていないようだ。 それとも文句をぶつける気力もないのだろうか。
「気にするなよ。 俺が勝手にしたかっただけなんだから」
「・・・・・・・・・・」
「そう照れるなって」
言った途端に、キッと睨まれる。 まあそんな可愛い顔で睨まれてもちっとも怖くもないし何ともないのだが。
「ルーク」
そんな顔してないで、今さっきみたいに可愛い顔をしてくれよ、
ガイは正直にそう告げてみたかったのだが、言ったらきっと本当に怒り出してしまうだろうから。
「悪い悪い、少しやりすぎた」
「・・・・・・・・わかってんなら、」

・・・・・・・・・・・・別に、いいけど。

更に小さな声で、ぼそぼそっと許してもらえた。
へえ、いいんだお前、とこれまたツッコミを入れてみようかとも思ったが、これもやめておく。
言葉で優しくからかって苛めたりしてみるのはまた今度以降、二回目以降。 今は何より、真摯に触れたい。


上半身を再びルークの上に乗り上げ、片手をそっと頬に添えて固定し、キスの体勢に入る。
「今夜だけで、三度目のキス、かな」
「・・・・生まれてから三度目だって・・・・」
かわいい訂正を貰い、笑いながらガイは柔らかく口付ける。
まず軽く上唇を食んで、それから下唇と順番に。 そして、ゆっくり口唇を塞いだ。
「・・・・・ん、」
三度目ということで多少は慣れたのか、すんなりとルークは口唇を開き、ガイの舌を受け入れてくれた。
そんな素直さが愛しくて愛しくて、ほのかに甘い舌を絡め取り、優しく吸い上げる。
息継ぎのため、口唇を重ね合わせる角度を変えては続けられる長いキスの終わり、
「っ・・・・、ふ・・・っ・・・」
最後に少々強く絡めて吸ってから口唇を離すと、飲み込みきれなかった互いの唾液がルークの口唇の端から伝い落ちた。
それを拭うこともせず、キスの余韻にぼんやり浸っているように、僅かに開かれた口許。
翡翠色をした瞳は潤んでいて、乱れた髪のまとわりついた頬は上気して。
視認してしまい、気付いたと一緒に思わずガイの熱が一段階、上がる。
「・・・・・・ガイ?」
自分を見つめて、短い時間だったが微動だにせずでいたガイを不審に思ったのか、ルークが名前を呼ぶと、
「・・・ああ、すまない。 お前に見蕩れてたんだ」
「・・・・おい・・・・」
本当のことなのだろうけれど(・・・・) そんなことをさらりと(それも恥ずかしげもなく) 言われ、呆れて眉を顰めるルーク。
そんなルークの鼻先に、「ごめんごめん」 と触れるだけのキスを送り、
「じゃ、続けるけど平気か・・・?」
実際、今更跳ね付けられても正直困ってしまうのだが、それを承知でガイは次の行為への確認を取る。
「・・・・・大丈夫、だと思う・・」
返ってきたのは些か心許ない、まあそれも無理も無い、でも了承の返事。
事前に何も用意出来なかったため、ローションもゼリーも無いのだが余計な不安を与えないよう、
「痛かったら、すぐに言ってくれ」
あえて気楽な口調を作ると、
「う・・・・」
痛いの、苦手なんだと言わんばかりにルークの視線が落とされた。
しかしこればかりはガイとしてもどうしようもない。
まだ何とかルークのために我慢は出来ているが、本当は自分も早く挿れたくて挿れたくて仕方がないのに。
少しでも滑潤効果を増やすため、自らの指を唾液で濡らす。
そうして、身体を使ってルークの体勢を自分に向かって腰と最奥とを差し出すものにさせる。
その部分を晒け出された瞬間、ルークが身体を強張らせたが、構わずガイは濡らした指先をそこに持っていく。
一度、二度、感触を確かめるように周囲を軽くさすってから、ひっそり窄まった入口に指先を宛がった。
「ッ・・・・」
通常なら絶対に他人に触れられることのないそこを触られたことに、一時は麻痺していた羞恥心が戻ってきたのか、ルークが息をのむ。
一方でガイは宛てた指を挿入しようとするが、
元々受け入れるためには出来ていないそこはきつく閉じられたまま、爪の先さえ入らなくて。
「ルーク、力、少し抜けるか・・・・?」
不安感のためか、それとも恐れから来るものなのか、強張った身体から全く力の抜けないルークにそう伝えてみるのだけれど、
「、どう・・・やって・・・・・」
どうすればいいのか右も左もわからない、そんな表情をされてしまった。
と、なるとこれ以上無理も言えず、ガイは一旦ルークの気を別のところにやってみようと、
身を屈めて落として、再び口を下肢に移動させ、一度達して萎えたルーク自身に舌を絡めた。
「ひゃッ・・・!」
後ろにばかり気を取られていたルークが、たまらず反応する。
加えてガイは、今度は絶頂に向けての愛撫ではなく快感で優しくあやすように舌を使い、時折キスも落として。
「・・・・っ・・・、んぁ、あ・・・・っ・・・・」
強くも弱くもない、純粋な性感が生む快楽にルークの身体から、少しだが力が抜けた。
瞬間、好機を見計らって素早く入口に指を埋め込み、
「ッ!」
ルークが再び身体を緊張させたが、一度入ってしまえば何とかなる。
しかし問題は、ガイではなくルークの方で。
「痛いか・・・・?」
埋めた指を、きつく締め付けてくる内部。
問いかけに返事を貰えないまま、く、と軽く指を僅かに動かすと、
「い・・・・ッ!」
痛い、と言いたいらしい、脅えた声が上がった。
「・・・・ルーク、」
少しだけ堪えてくれ、すぐに何とかしてやるからと、きつく眉根を寄せたルークに囁いてガイは慎重に指を動かし始めた。
細心の注意をもって、内部を探っているつもりなのだが、
「・・・・ッ、い、・・・・っあ、っ・・・・ぅッ・・ッ・・・」
狭いところを無理に抉られるルークからは、苦しげな息と声が漏れる。
それでも、拒絶の言葉や単語はその中にはなくて、
だから余計に早く内側のポイントを見つけてやりたくて。
「つ・・・・ッ・・・う・・・!」
本当にキツイのか、ルークの瞳に涙の薄い膜が浮かび上がった。
と、それとほぼ同じ頃、ガイは内部を探っていた指先に他とは触れた感触が明らかに違う、求めていたポイントを見つける。
そして、そのポイントを指の腹で軽くくいっと押した。
「あッ・・・・!!?」
途端、ルークが背中ごと仰け反る。 加えて、先ほどの苦痛の混じっていたものとは違う声も上がった。
「・・・・、な・・・・っ・・・、っ・・・!!?」
おまけに突然自分の身に何が起きたのかも全く分からないようで、
落ち着かない瞳で何度も瞬きを繰り返す。
「今のところ、気持ちよかったか?」
「・・・・・・・・・・」
知っていて訊ねるガイの問いにも答えられず、何も言えないまま不安そうに見つめてきた。
「それじゃ、もう一回な」
宣告して、ガイはもう一度その部分を押し上げてやる。
「ひぅ、っ・・・ぅあ・・・・ッ!」
すると今度は明らかに快感を感じ取った声でルークは喘ぎ、
見つけた前立腺を集中して擦り上げていけば、痛み一色に彩られていた瞳が性感の色に取って代わる。
「・・・あ、ぁ、・・・・っは・・・ぁっ・・・、あ・・・っ・・」
惜しげもなく上がる甘い声。
痛みはまだ勿論あるのだろうが、直接前立腺を触られる快感の方が余程大きいのか、自然と腰までもが小さく揺らめき出した。
合わせて、それまで痛いほど指を締め付けていた内壁も少しずつ力が抜けてきて、
前のルーク自身もぱたぱたと透明な蜜を再び零し始めて。
その蜜でもう一本指を湿らせ、二本目も埋めようとした。
が、
「―― う・・・・っ・・・!」
まだ少し早かった。 何とか入ったものの、さすがに辛いらしい。 指を締め付ける抵抗がグンと強くなり、ルークも苦しげな息遣いになる。
見て取ってガイは二本目の指を即座に抜き取り、代わりにそこに迷いもせず口付けた。
「っ!!? や・・・めッ・・・、バカっ、・・・・ん、な・・・・っ!!」
かあっと一気に頭に血を昇らせたルークが、焦って逃れようと身を捩る。
けれどしかし腰はしっかりとガイに押さえ付けられ、おまけに中にはまだ一本指が入っていて動き、
しっかりと前立腺を刺激されている。 抵抗できるはずがない。
「ヤ、だ・・・・っ・・! やッ、や、めろよ・・・・ッ、 、んあ・・・・っ・・・!!」
必死のかわいい拒絶。 でもガイは止めはしない。 どちらにしろもう少し慣らして拡げなければ、更にこの上の段階には進めないわけでもあるし。
構わず指先でぐいぐい強めに刺激を送ると、ルーク自身からとぷっと大量の蜜が滴った。
それもとても可愛くて放っておけず、ガイは空いている手を伸ばして弄る。
「・・・・ッや、うぁあ・・・・ッ!」
口唇で口付けるだけでなく、たっぷり唾液を乗せた舌で入口を割る。
捩じ込んだ舌先で中をそろっと舐め上げれば、粟立ったルークの肌がビクッと痙攣した。
「ぁっ、あ、あ、っ・・・・っ・・・・」
ガイの手指に包まれた肉棒は絶え間なく濡れて粘った蜜を滴らせる。
その蜜が伝ったものと、ガイの唾液とで随分と柔らかくなった最奥は、指を抜き差ししても何も弊害がないくらいまで蕩けていた。
「!! っん・・・ッ!」
先程は無理だった二本目の指を入れると、
潤って拡がった内壁は簡単に飲み込み、もう痛みもないようだ。
もう少し、と埋めた二本の指でそこを拡げ、隙間に舌を深く深く差し入れて限界まで舐め上げる。
心持ち尖らせた舌先で、今さっき見つけたばかりのルークの悦ぶ箇所を転がすと、
「ん、んっ・・・・!・・・っ!」
ルークはむずがるような声を上げて全身をかたかた震わせた。 自身から流れる蜜にも白濁が見える。
察知して、ガイは舌を引き抜くと代わりにルーク自身をぱくりと咥え込み、
埋める指を、付け根の限界まで深く飲み込ませて届く限りの箇所を小刻みに擦り上げていく。
「・・・・っ、も・・・・っ・・・」
高みが近く、ガイの指を包む内壁が蠕動する。
ぎゅっと締め付けてくる誘いを振り切って指を激しく動かすと、ルークの腰ががくがく揺れた。
「ぁ、あ・・・っ・・・ま・・・た、出る・・・・っ・・・・ッ!・・・!」
「ん」
いいぜ、と一際強く内部を突き上げ、咥えた先端を甘噛みしてやると、
「ん・・・・ん、ぁ、 ーーーーッ・・・ッ・・・!!」
喉の奥でルークは啼いて、ガイの口腔にとぷっと吐精した。


「・・・・・ルーク」
吐き出された蜜を飲み込んで、それからガイはルークの真正面に身体を向き直らせる。
二度目の絶頂、しかも今度は前立腺に触れられて持っていかれてしまったルークの息はなかなか落ち着かない。
それでも、とろんとした表情ながらもガイと目が合うと、
「・・・・・・・・・・・・よく、そんなの飲めんな・・・・」
感心したような、はたまた呆れたような口調で言ってきた。
「はは、そりゃもう七年越しのものだからなあ、なんてったって」
「不味く、ないのかよ」
こんな行為の真っ只中なのに、あどけない顔であどけない問い。 可愛らしすぎる。
そんな問いにガイは直接には答えず、それじゃ今度俺ので試してみるか? と軽くかわし、
「う、」
返事に詰まるルークに、
「・・・・そろそろ、挿れるぞ」
耳元に口を寄せ、これから行うことをしっかり伝え、体勢を整えてルークの脚を抱え上げた。
柔らかく熱く蕩けたそこに、すっかり猛った自分の切っ先を宛がうと、
「ん・・・・!」
熱を感じて一瞬、ルークがきつく目を瞑る。
くぷ、と先端部分を埋め込めば、その眉が苦しげに寄せられた。
やはり指とは質量と圧迫感が段違いなのか、ルークは唇を噛み締めて、声をあげないように耐えていて。
「キツイか・・・・?」
「っ・・・・」
訊ねても、ルークは首を横に振る。
けれど表情を見れば無理をしているのは一目瞭然なのだが、それでも何とか根元までをゆっくり挿れてしまえば、一旦息が吐けた。
そのままガイは動かず、ルークの身体が馴染むのをじっと待ちながら、上半身だけをそっと寄せてキスをする。
しばしそうやって啄ばむキスをしていると、受け入れ当初は痛いほどきつかった締め付けも少しずつ緩くなり、
それでもまだ痛いのか、それとも別の感覚か、うっすらルークは目をあけてガイを見た。
そして、少しだけ笑う。
「・・・はは、ガイ、お前、結構限界じゃん」
「当たり前だろ、お前相手なんだぞ」
「なんだそりゃ・・・・」
困ったように笑うルークにガイは安心する。 どうやら見たところ、痛みはそれほど強く感じている様子ではなかったため、
埋めた自身を僅かに抜き挿ししてみた。
その刺激に、ルークの指が無意識にシーツを掴んで握る。
すうっと深く息を吸い込み、そろそろと引き抜いたあと、同じくゆっくり奥をズクンと突くと、
ルークはビクッと腰を大きく震わせて仰け反った。
同時、きゅうっとガイ自身全体をきつく柔らかく包んでくる熱い内壁。
ぞくり。
ガイの背筋をたまらないものが駆け抜ける。
・・・・・もう、無理だ。 つい今さっきまではどこまでも丁寧に、ゆっくりと動こうと思っていたのだけれど、
到底無理だ。 我慢出来ない。 そもそもよくよく考えてみれば、ここまで持ち堪えられたのが奇跡のようなもので。
「・・・・悪い・・・・ッ・・・」
「うあッ・・・・ッ!!?」
ルークの中の蕩ける熱と、自身を締めて淫らに動く秘肉の快楽に翻弄され、ガイは激しく腰を使い始める。
突然突き上げられた腰が、強すぎる打ち付けから反射的に逃れようとするのを力ずくで引き戻し、奥の前立腺を目掛けて何度も突いていく。
「あ! あぁッ! ぅあ、あ・・・・っ!」
「・・・・っ・・・!」
ポイントを突くたび、きゅうっと締まるルークの粘膜がガイを締め上げてくる。
かと思えば柔らかく誘うように蠢き、そして搾り取るようなうねりも猛ったガイにはたまらない。
振り切るつもりで乱暴なほど内壁を擦って貫くと、ルークはぱさぱさと髪を振り乱して喘ぎ悶えた。
「っは、あ、あ・・・・っ、やだ、そこ、・・・・っ! ガイ・・・・っ!」
「・・・ん、ここか? ・・・・ルーク?」
「ひぁ、ぁ・・・・ッ!!」
嫌だと口走った性感を感じる箇所に、先端を擦り付けて刺激する。
と、互いの身体の間で天を向いていたルーク自身が、小さく蜜を噴き出した。
その後も勃ち上がったままのそれをやんわり握り込み、軽く扱いてやると、
「・・・・あ、ふ・・・・ッ・・・」
ルークは素直に快楽の声を上げ、
「ぁ、・・・・ぁっ、っく、ぁう・・・・ッ・・・・!」
もう声が止まらない。
ガイはルーク自身の先端をくりくり弄りながら、自らは根元まで深く埋め込んだまま最奥の一点を小刻みに擦り突く。
続けて、腰の動きを止めずに自分の手を重ねてルークの両手をシーツに抑え縫い付け、身体ごと倒して重なる体勢で耳元至近距離、囁きかけた。
「イイ、か・・・?」
「ん・・・んっ・・・・」
頷いたのかそれともかぶりを振ったのかわからないルークに苦笑し、今度は突く動きではなく、
中をぐるりと掻きまわして抉るように腰を進めて。
「・・・あっ、ぁ、・・・・う、ぁ・・・・!」
「ん? ・・・どうして欲しいんだ? ルーク・・・・?」
「・・・・ぅんッ、も・・・っと、ぁッ、もっと・・・・ッ」
快楽に、より強い愛欲を求めて形振り構わずの可愛いおねだり。
腰もガイの動きに合わせ、少しずつだが揺らめきを見せる。
ガイも迫る絶頂を堪え、括れで前立腺を抉って穿てば、悦んだ内壁粘膜がうねって収縮した。
「あ、あ、あ・・・・っ・・・・」
ルークの身体から幾筋もの汗が伝って流れ落ち、下半身が不規則に戦慄き出す。
そろそろ、互いに限界だ。
「く・・・・ッ・・・」
絶頂を求め、ガイは乱暴に腰を突き入れた。
ルークの喉が、ひッと声にならない声で鳴り、重ねられた両手、絡めた指をぎゅうっと強く握り締めてくる。
痛いほど急激に収縮するガイを包んだ内壁。
「ッ・・・・、」
ルークの身体で迎える高みまであと少し、ほんの僅か。
自ら息を止め、ガイは自身を熱くしなやかなルークの粘膜で擦りながら、音がするほど激しくグイッと貫き突き上げた。
「、いッ・・・! ―――― あ、う・・・・ッ!!」
達するルーク。
ガイも自身が大きく脈打ったのを感じて、ズッ・・・・とルークの中から自身を引き抜き、
それからルークの忙しなくあえぐ腹の上に、溜まった欲を吐き出した。































後付けの僥倖だが、小さいが客室に浴室まで付随していたのには助かった。
腰を筆頭に、何だか身体全体が痛いしダルイと訴えるルークにとにかくガイはシャワーだけでも浴びさせて(そして自分も浴びて)、
それから体力回復もはからねばならないため、まだ水気の残った自分とルークの身体ごと、
パパパッと手早く片付けた(こんな時、元使用人としての手際の良さはとても役立つ) ベッドにごろりと倒れ込む。
最初にルークが潜り込んで来たときは気が動転していたため、そして行為の最中はそんなこともそれこそ気にもならなかったため、
全く留意していなかったのだが、やはりダブルでもキングサイズでもない、ごくごく普通サイズの宿屋設えベッドは男2人が寝るには多少手狭だった。
「お前がでかいから、余計狭く感じるんだ・・・・」
どこかいじけたようにルークが言う。
「ん・・・・まあ、身長はそこそこ伸びたからな」
「・・・・・・・・・・俺は全然伸びねーのに・・・・」
いじけの理由は、それか。 あまりに分かり易すぎる起因に、ガイは苦笑を隠そうともせず。
「そりゃ、食べ物の好き嫌いが多すぎるんだルークは。 それに尽きる」
「う・・・・」
一言のもとの、宣告。
「ざっと挙げただけでも魚にニンジン、キノコにミルク。 他にも数え上げたらキリがないだろ?」
「う・・・・・・・」
特にミルク嫌いが致命傷だ、と通告も。
「だから何でも食べろって、俺は昔から言い続けてきたんだがなあ」
「う・・・・・・・・・・・・」
「なのにお前は、好きなものより断然嫌いなものの方が多いまま、育っちまったもんな。 な、ルーク?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もう寝る!」
苦笑をヒトのワルイ笑いに変えるガイの、非の打ち所の正に一つもない言葉にぐうの音も出ないのか、
狭い毛布の中、ルークはごそりと寝返りを打って壁際を向いて背中を向けてしまう。
でもまあ、当然だが本気で怒っている訳でもなし、拗ねているわけでもなし。
「そうだな、おやすみ」
告げながらヒトのワルイ笑みを今度は深く優しいものにして、ガイはナイトランプの灯りを消した。
















でもそれからしばらくして、
「でもお前のこと好きすぎるから、食べ物の嫌いぐらい別にいいじゃんか・・・・」
小声の小声のルークの呟きは、すでにまどろみ寝入りばなのガイには残念ながら聞こえていなかった。
















どのあたりの話なんだろう・・・・と考えてみましたが自分でもよくわかりませんでしたスミマセン。 たぶん一回目のロニール雪山あたり???
ルークがおぼこ過ぎてスイマセン。 ガイが何が何やらでスイマセン。 あとジェイドはこんなにイイヒトではないとおもう(笑)