[ たまには相手を変えてみよう・VS黒子 ]






「あれ?」
「・・・・あ、」




そうそう頻繁にではないけれど、
決して一概には無いとも言い切れないこんな 『よくある(かもしれない) パターン』。




学校帰り、高尾がとりあえず一人ふらりと帰路を辿っていたら、
横の道から同じよう、一人ふらりと歩いてきた黒子と出会った。


「あれ? 今帰り? ・・・・けど、学校こっちじゃないよな?」
「はい。 駅向こうまで行って、約束をドタキャンされた帰りです」
「あーーー。 そりゃ・・・・気の毒に」
「高尾君は? 今日は、緑間君とリヤカーは」
「今日は別々。 何か、家で用事があるって言ってたな」
「別々にいるだなんて、珍しいですね」
「そっかー? 実際、そこまで珍しくもないんだけどな。 で、何、ドタキャンって。 黄瀬だろ?」
「・・・・・・・・・。 突然補習が入ったとかで」


そのまま別れることもなく、決して都合の悪い相手でもないのでどちらからともなし、一緒に歩き出す。


ちなみに、黒子の話を要約するとこうである。
数日前から本日待ち合わせて映画を見る約束で予定でいたところ、黄瀬から今日になって当日になって今さっきになって、『ゴメンほんとゴメンすいません黒子っち、回避不可の補習が! 今になって補習が入っちまったっス・・・・!!』 との連絡が入り、
わざわざ駅向こうまで足を伸ばしていたにも関わらず、ドタキャン。
それで仕方がないからその足で少し回り道をして大型書店に寄って、雑誌やら文庫やら数冊買い込んでの帰り道、この通りに出たところで高尾とバッタリ、ということだ。
何気に聞き出したところ今現在携帯の電源はオフ、
普段と大して表情の区別がつかない黒子だが、実はひっそりわりと怒って、いや、どちらかといえば拗ねているらしい。
あー、こりゃ黄瀬も後々大変だな、とココロの中で空を仰いで、
高尾はあくまで冗談めかして。
「次、会ったらまず一番に土下座でもしてくるんじゃね?」
物凄い勢いで、と笑いながら言ったところ、
「あ、します。 間違いなく」
さらりと真顔で頷かれ、
「・・・・・・え、」
どこまでも黒子が素で正直に返答したと悟るや、さすがの高尾も一瞬止まる。
がしかし、
「高尾君は、緑間君に土下座は」
下僕としてそのあたりはどうなんですか、と遠慮なしに突っ込まれ、
「まだ、ねーかな。 危うくする破目に陥りかけたコトは何度かあるけどな」
ここは自分も正直に。 黒子相手、隠す必要はない。
「そもそも土下座したところでカンタンに許してもらえるほど甘くないだろ、アイツの場合」


そう言ってけらけら笑ったあと、ふと、隣の黒子の襟足。
ちょうど首の後ろ、後ろ髪の散るあたりに。 ひとつ。


「あ。 ココ、うすーーーくキスマークついてるけど」


「ッッ!!?」


偶然、見つけてしまったその跡を指摘したら。


「どこ・・・・ですか」


思いのほか黒子は(珍しくも) 焦って慌てた素振りをみせる。
だから、あれ? もしかして自分で気付いてなかった? と意外に思いながらも、
「首の後ろ。 自分じゃ見えねーよ」 と親切に 「ココ、」 と指で教えてやって、
「ま、よっぽど下向いたり屈んだりしなきゃバレなさそうだから平気だって。 オレはたまたま見つけただけで」
ついで、フォローまでしっかり入れておいてやる。
プラス、
「あえて自分じゃ気付かないようなトコロに、しかもよーく見ないとわからねー程度に残しといたんだろーな、アイツ」
いーよなー、黄瀬。 と黒子相手、わりと好き勝手やっている(らしい) 彼を羨ましく思いつつ、
フォローの直後のほんの少しの、揶揄。
すると、黒子と目が合った。
「・・・・オレ? つけさせて貰えたコトねーし」
特に聞かれてもいないのに、高尾はひとりごちる。
「万が一にもんなコトしたら、一ヶ月以上は戒厳令で 『接近禁止命令』 が発動されちまうしな」
それによ、と一呼吸言い置いて。


「どっちかっつったら、焼き印くらい入れちまいたいってのが本音。 キスマークとか噛み痕くらいじゃ、全然足りねー」


あくまで軽口に紛らわせた本音を嘯き、


「で。 どうよそっちの近況は」
それからすぐに、当たり障りのない方向にベクトルを変える。
「どうもこうも、ドタキャンされました」
「涼しい顔して、けっこう根に持つタイプかよ。 んじゃ、最近、いつヤった?」
「・・・・・・・・。 それは、答えていい質問なのか・・・・」
当然にして逡巡する黒子に、
「いいんだって! お互い恋バナ恋バナ。 で、いつ頃ヤった?」
重ねて訊ねると、
「確か三週間前、です」
黄瀬君の誕生日でしたから、と取ってつけたかのように言われ、羨ましいぜマジで。 としみじみ思う。
思ったついで、聞きたくなって、
「ちなみに、どっちが誘う? って、まあ十中八九、見てりゃわかるけど」
「・・・・黄瀬君からです」
大抵は。 と付け加える黒子に、「ン? てことはほんの少しはオマエから、って時もあんのか?」 とも気付いていながら、高尾的にあえてそこはスルー。
代わりに、
「じゃ、OKする割合は」
「・・・・・・・・よっぽどの理由がない限り、大体OKしますけど」
羨ましすぎる黒子の回答に、「ちょっと待てマジでアイツが羨まし憎くなってきたかもオレ、」 と歯噛みしかけると。
「だけど、緑間君じゃそういうわけにも行きませんよね」
「・・・・おう」
黒子にぼそっ、とつぶやかれて思わず頷いてしまった。
「絶対に襲わせてくれねーし、たとえ襲ってみたところで返り討ちに遭う確率も高いんだよな」
「じゃあ、どんなときに」
イチャつくんですか? と真正面から聞かれて。
「アイツがそこそこ溜まってるとき」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「っても真ちゃん、あんまそういうの表に出すヤツじゃないからな。 いろいろ見計らってやるのも、オレの仕事ってワケ」
下僕はツライんだぜ色々、と軽いオチに持っていき、
「ま、お互い頑張ろうなって黄瀬に伝えといてくれ」
「ボクが、ですか」
「他に誰がいるって」


ダラダラとそんな応酬をしているうち、少々広めの交差点にたどり着く。


「ボク、ここで右です」
「あ、オレ真っ直ぐ」


ちょうど直進の、歩行者信号は赤だった。 黒子も一度、足を止めたから。


「んじゃ、またなー」


ひらひら手を小さく振って、そんな別れの挨拶をすると、何故だか怪訝そうなカオをされてしまった。


「・・・・また?」


「そうそう。 また。 『じゃあな』 より 『またな』 の方が、さっきみたいな偶然にしたって、すぐ会える確率が高くなるような気がするだろ」


だからそう言っただけだぜ、オレなんかヘンなこと言ったか? と不思議に思った途端。


「高尾君、」


「ん?」


「高尾君て、誰にでもそんなカンジですか」


「あ?」


「・・・・・・・・緑間君の気持ちがちょっとわかったような気がします」


「は???」


「いろいろハイスペック過ぎるのも、気が利き過ぎるのも問題アリです」
























・・・・・・・・・・・・そう言われても。


苦笑いするしか、ない。









緑間様の一切でてこない(笑) 高緑+黄黒ー。
しかし十分イチャついてると思います。 両CPとも。