[ XeCr・1 ]






「・・・・・・・・見つかりませんでした」
「? ん?」
「すいません、最終巻だけ行方不明でどうしても見つかりませんでした」
「んー、いーっスよ一冊くらい。 そもそも最終巻まで読み進めるのにオレ、一ヶ月くらいかかりそうだし」




(たぶん何千分の一かのそれこそ正に [キセキの確率] )、
明日は珍しくもどちらの高校も部活動完全停止の休日で、この黄瀬の自室、
ここにはこの部屋には同い年で元仲間で現・学校とチームは違えどそこを離れた私生活、
つまりプライベートでは一応ラブラブ(?) となっているはずのカワイイ可愛い黒子っちと自分、その二人だけが居るだけで、
ましてや黄瀬の家族は運も都合も良いことに誰も彼も留守、明日の夕方まで戻っては来ない、
そんな今度はいつ訪れるかも定かじゃない何万分の一かの僥倖、
そんな時間、そんな状態。




黄瀬でなくとも、誰がココロの中でゴクリと生唾を飲み込まずにいられようか。




更に設定状況と現状と境遇とを説明するなら付け足すならば、
本気で本意味で告白ってみたところ、
「・・・・黄瀬君のコトは嫌いじゃないから好きってコトかもしれないです」
と微妙に有耶無耶な返事を貰ってしまいながらも大喜びして付き合い始めて数週間、
デート(?) と称する互いの部活後の放課後の長くて小一時間程度、
下手をすれば10分ほどしか時間の取れない逢瀬(???) を重ねつつ、
その最後に本当に軽いキス、触れる程度のチューのみ数回させてもらってはいるものの続くエッチ本番、
・・・・否、身体まではまだ指一本触れさせてもらっていないナサケナク哀しい立場で関係で。
とはいえ、そんなところで止まってしまっている関係に関して黄瀬の思う理由付けは明快単純、簡単だ。
ただ単にコトに及べる時間が無かったため、今までそんな時間が互いにうまく見つけられなかっただけ、だ。
平日はどちらも早朝から朝練で昼間はもちろん通常授業、そして夕方から夜にかけてはまた部活。
ついでに休みも朝から晩まで目まぐるしいほど練習三昧で、
やっと自分の休みが見つけられたかと思えば今度はモデル業が舞い込んできたり、
それさえ無理矢理クリアして何とか半日時間を作ってみれば、今度は黒子の都合が付かず合わずのバッドタイミング。
しかしそれでも、尚且つそんな日々でも時というものはチャンスというものは巡り巡ってある日突然ひょっこり姿をあらわすものらしい。
学校の突然の一方的な理由で丸二日、オフになったとわかった今朝方一番に、息せき切ってダメ元で黒子に連絡を取ってみたところ、
普通なら絶対的にありえないグッドタイミングで誠凛も完全公休、
怖いほどのトントン拍子で話が進み、昼前にはこうして黄瀬の自室、
訪れた黒子の持参した彼から借りる予定の本をパラパラめくってみたり、
揃って休日を過ごしているというの、只今の現状。




誰が次への段階、更なる次への進展を、シタゴコロ有り有りで、望まずにいられようか。








―――――――――――― キセキだろうとモデルだろうと、例外ではない。















「割合と、淡白な部屋ですね」
「え?」
周囲を軽く見回しながらの黒子の言葉に、黄瀬は手にしていたペットボトルを床に置き、
同様に床にぺたりと鎮座し寛いでいる(はずの) 黒子を見遣った。
すると彼は、「ここに来てからずっと思ってたんですけど」 と前置いて、周囲をもう一度見渡してから告げる言葉を増やす。
「ボクが思っていたより、ずいぶん片付いてるなと思ってました。 そうしたら、ただ単にモノが少ないってことに気付きました」
「えー、そうっスか?」
「はい。 黄瀬君のことだから絶対に自分の載っている雑誌のバックナンバーとか、大事にとっておきそうな感じがしたりしてましたけど。 ・・・・・・見当たらないですね」
「いや・・・・貰って一回パラッと見たら捨ててるっス。 正直、それも別にいらないし」
自分のカオなんざ鏡見ればすぐそこにあるっスよ、と答える黄瀬に続けて黒子は。
「あ、やっぱり思ってたよりずっと淡白です。 もっと自分のコト大好き人間かと思ってました」
「〜〜〜〜〜〜。 そ、それって・・・・」
やっぱ周りからそう見られちまってるスか、それって結構ショックなんだけど、とがっくり肩を落とす黄瀬に対し、
「・・・・でも、黄瀬君は良い顔立ちしてると思います」
黒子はきっちり小さなアフターフォローを入れてきたあと、
「ボクも嫌いじゃないですから、そのカオ」
ぽそっと、
しかし確実に黄瀬を有頂天にのし上げ兼ねない褒め言葉を口にしてきて。
「、」
眼前、それも自室でそんな素直な言葉を聞かされ、
思わず息を詰めてしまった黄瀬をどこの誰が責められようか。
・・・・・・・・ただでさえ今日は絶好の好機だというのに。
なのに当の黒子ときたら、
そのテの機微に疎いのか、それともこのテのコトに鈍感が過ぎるのか、はたまた黄瀬を安全パイと確信している(いくら何でもこれは無いと思いたい) のか、
ムクムクと頭をもたげ始める黄瀬のシタゴコロ知らず、
「で、これからどうします?」
・・・・・・・・なんて、
どうもこうも決まってんじゃないっスか! とむしゃぶりつきたくなるような、促す(・・・・何を?) 質問をしてきた。
もちろん、彼に他意は無いことくらい黄瀬だってわかっているのだけれども。




繰り返すが、
今日と明日は二人揃ってずっとオフの休日で、
自室、ここにはこの部屋には黒子と自分に二人だけが居るだけで、
こんな恵まれたタイミングとチャンスは下手したら二度とやってこないかもしれない、そんな状態。




「く、黒子っち」




「はい」




「く・・・・黒子っち、」




「? はい?」




誰がごくりと生唾を飲み込まずにいられよう、か。




「あの・・・・さ、急で悪いっス、・・・・・・でももうオレとしても仕方なくって」




「? はい???」




誰が次への段階、関係の進展を望まずにいられよう・・・・、か。




















何だかやたら歯切れの悪くなった黄瀬に対し、「黄瀬君?」 と黒子が不思議そうにした直後。
「な・・・・っ・・・」
有無を言わせない身のこなしと勢いの黄瀬が突然、身体ごと黒子に乗り上がってきて、
しかしそれに驚くヒマもないほど唐突に耳元で囁かれた言葉。








「・・・・シよ、黒子っち」




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ は?」




言われてから第一声、それも思いっきり気の抜けた返事を返すことにさえ、
かなり間が空いてしまったのは単に瞬時に黒子が意味が汲み取れなかったからで、
けれど気付けば床の上、自分は黄瀬に組み敷かれてしまっているし、
よくよく思い出してみればここは彼の部屋で、
そういえば最初から黄瀬は 「今日も明日も家族は誰も帰って来ない」 と事あるごとに口にしていたし、
よくよく、よーくよーく思い返してみると突き詰めてみると、
一挙にリアルに自分の立場と窮地とが一緒くたになった現状が押し寄せてくる。
「き・・・・黄瀬、君・・・・?」




これは。
これは。
つまり。
つまり、
これはつまり。




「、待ってくださ・・・・!」
黒子にしては珍しくも慌てながらの制止と同時、もう一つ今になって、気付いた。
黄瀬の片腕はいつの間にか自分の背中にきっちり回っていて、完全に床に抑え付けられている状態で、
加えて耳元の少し上には黄瀬の口許がそこにあって、
「ヤろ、黒子っち」
囁かれる科白を感知した途端、耳に吹きかけられる黄瀬の普段より僅かに低めの、そして情欲の混ざった声。
「な・・・・っ・・・」
思わず抵抗しようとしたものの、こんな態勢になってしまってはどうしたって全てが遅い。
黒子の方としても、いつかそんなふうな時がくることくらいは考えなくもなかったけれど、まさかこんなに唐突に襲われるとは思ってもみなかった。
加えて当たり前だが(黄瀬はどうだか知らないけれど) 初めてで、
知識としては皆無ではないけれど、自分はどうすればいいのかだって実際のところはほとんど知らないし。
などと色々考えてしまって、
「ちょっと、・・・待、ってください・・・・」
そう口にしたっきり、そこから後はどう答えればいいのか、どう返事をすればいいのか全くわからなくなってしまったら。
「平気っスよ、オレに任せてくれれば」
またもまたも耳元で聞こえた黄瀬の科白に、
「・・・・・・信用、できません」
思わず本心本音じみたものを零してしまう、と。
ひで〜〜〜、と一瞬凹んだ素振りをみせた黄瀬の体勢が変わって、真上から正面からふっと顔を覗き込まれた。
「こっち、ちゃんと見て」
妙に優しげな、甘い声。 けれど黒子は視線を合わせられず、ふいっと目を逸らす。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
せっかくの休日なのに、
久しぶりにまとめて読書ができるはずだった連休に、一体ボクはどうしてこんな目に、と自問してみても、後の祭り。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ここに来たことを後悔しているわけではなかったが、
もうこれ以上どうすればいいのか、どうしたらいいのか判断できなくなって、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
固まった。





そのまましばらく固まり続けて、
それから。








「・・・・・・・やっぱりボク、黄瀬君のそのカオには弱いみたいです」




小声でぼそっと呟くと。




「オレのカオだけ・・・・っスか? まさか。 黒子っちに限って、そんなワケないっしょ」




自信満々、嬉しそうな楽しそうなそんな返事が目の前の黄瀬からストレートに返ってきて、
なんだか一気に悔しくなったからきっぱり否定してやろうかとも少しばかり、思ってしまったのだけれども。




「・・・・丁重に、取り扱って下さいね」




口が紡いでいたのはそんな肯定の科白で、




その科白の意味が彼の脳に回って届いたらしき二秒後、
軽く口笛を吹いた黄瀬にキスで唇を塞がれた。












「・・・・・・ふ、」
後頭部をLサイズの枕に、そして両手首はそれぞれ両の手でベッドシーツに抑え付けられて固定され、身動き出来ないまま受ける、深くて貪られるキス。
それが終わって唇が離れていくとすぐ、
「もしかして少し、震えてるっスか?」
半分探るような、もう半分は心配されるような口調で耳元で囁かれた。
「え・・・・」
黒子は言われて自覚する。 僅かに手が小刻みに震えていたようだ。
「そんな割に・・・・カオとか、いつもと変わらないポーカーフェイスのままっスね。 そこんとこって黒子っち的にはどうなんスか?」
「どうって言われても」
困ります、と答えるしかない。
変わらない無表情。 黄瀬はそんなふうに見て取ったらしいけれど、黒子からしてみれば当たり前だが普段とは全然違う。
今はまだ昼下がりで、
とりあえずいつの間にかベッド脇のカーテンは閉められていたけれど、隙間から差し込む光はまだとてもとても明るくて、従って部屋の中も同様に明るいし。
何より情欲混じりの黄瀬の顔が、ずっと自分を見据えているあたりが気恥ずかしくてヘンにむず痒く、
その度合いと先ほどの深いキスの余韻とが混じり合い、頬のあたりが微妙に火照っているのが自分では、わかってしまっている。
しかしそれとこれとが表情に表われているか、黄瀬に伝わっているのか否かは微妙なところで、
実際のところ、
「ふーん。 まあそのうち、そんな余裕もすっ飛ぶくらい悦くするっス♪」
と、俄然と彼のやる気を倍増させるにすぎなくなってしまったという結果からしてみると、まったく伝わってはいなかったようだ。
「もう一回」
黄瀬は再々度のキスを強請って奪って、
唇を唇できつく塞ぎながら、乱して外したシャツの釦の隙間から、素早く手を黒子の胸元に滑り込ませる。
そうして器用にもキスの途中、片手のみで黒子の素肌の肩を手際よく暴き、全開にさせたシャツを滑り落としながら細い首から肩口にかけ、
窪んだラインをつうっと指先で辿っていくと、黒子は小さく反応を返して、唇を捕らえたままの黄瀬から逃れようと身体を捩った。
それを見て黄瀬は思いのほかあっさりと、絡めていた舌を解放し、素直に唇を離してやる。
「・・・・・、っ」
やっと呼吸が自由になり、一瞬安堵した黒子だったのだが。
「ッ・・・・!?」
即座に耳に舌を這わせられ、耳朶を唇でなぞられたあと、歯を使った甘噛みを受け、
続けてますます感じてしまう耳腔にまで舌を挿し入れられて、性感に慣れない身体がゾクゾク戦慄いた。
「それ、・・・・嫌、です・・・・っ・・」
黄瀬は黒子の、かぶりを振って逃れようとする様子がとても可愛くて仕方なくて、嫌だと言われても何度も何度も同じように耳元を攻めていく。
「も、やめ・・・・!」
黒子は言っても聞かない、黄瀬の愛撫からなんとか逃げようとするのだけれど、
「・・・・ん、さっきまでのカオと全然違うっスよ、黒子っち」
鼓膜に届いた揶揄めくそんな声だけで、今にも腰から砕けてしまいそうで結局何もできないまま、黄瀬の愛撫は次の段階へと移っていく。
黄瀬は口で耳を可愛がりながら、曝された黒子の素肌の胸元に片手を這わせ、薄い胸をそっとまさぐった。
体温のあまり高くない、手触りの良い胸元を二度、三度と繰り返し撫でていくうち、自然と尖りはじめた胸の突起が次第に手のひらに引っかかるようになり、
その度に感じてしまう黒子は、僅かに 「く、」 と喉を鳴らす。
「・・・・ッ、く・・・・」
自分でもわかるほど固く尖った、小さな肉粒の周囲を黄瀬は丁寧に擦ってくる。
ゆっくりと追い詰めてくるかのよう、くるりくるりと周りを円を描くかのようになぞられ、最後にきゅっと軽く指先で挟まれて摘まみ上げられた。
「んッ・・・・!」
途端にびくっと声と身体は反応を示し、黄瀬はますます嬉しげな笑みを浮かべて。
「やべ・・・・。 ホント、喰っちまいたいくらい可愛いっス。 ・・・・っても、実際これからマジ平らげさせていただくんスけど」
「そんな無駄口は、いいです・・・・、っ、あ!」
黒子は黄瀬の軽口に、真正面から思いっきり反抗してやりたかったのだけれど、
間髪入れずくりくりと胸を弄られてしまい、口から出るものは乱れた息に変わってしまう。
一方で黄瀬は、捕らえたその片方を指先で摘まみ、転がして愛撫刺激を繰り返す中、放っておかれていたもう片方の突起に、おもむろに唇を寄せ、ちゅっと吸い付いた。
「、ぁッ!」
たまらず仰け反った黒子は反動で胸を反らせ、より胸元を黄瀬に押し付けるかたちになる。
それを好しとして黄瀬は、吸い付いた肉粒を唇だけでなく、更に舌先まで使ってくすぐるように転がし、舐める愛撫を施した。
「んぁ・・・、ぁ・・・・ッ・・・」
まだ胸元へだけの刺激にも関わらず、しどけない熱は確かに黒子の身体に溜まっていくようで、
組み敷いている黄瀬にも、自然と欲が溜まっていく。
断続して吐息を零す黒子の唇を、
「もっと」
欲しい、と本日三度目、またもやキスで封じながら、
下肢の中心を、服の上からするっと這わせた手でそっと触れ、撫で上げる。
「っ!!」
突然触れられたそこに、黒子は唇を塞がれたまま、瞳を見開いた。
触れた黄瀬の手にはその中心部はすでに熱を溜め、欲を帯び始めていることが伝わって。
「ん、キチンと反応してるっスね」
不感症じゃなくて良かった、と唇を離し、つい告げてやってしまうと、
「な・・・・っ・・・」
何言ってるんですか、と視線を逸らしながらも黒子は、下肢の黄瀬の手を退けようと腕を伸ばしてきた。
が、だからといって決してそこから手をどけようとしない黄瀬から、ゆるゆると優しく揉みしだかれ、伸ばした手も何も為さないままそこはより一層熱を帯び、
身の内から甘いもどかしさが沸きあがって、身体を戦慄かせる。
「ぅ・・・あ・・・・っ・・・・」
もどかしさに堪えきれず、更なる愛撫刺激が欲しいのか、当人の無意識のうち腰が揺らめきだす。
本人より逸早くそれに気づいた黄瀬は、一度軽く自分の唇を舌で湿らせ、黒子からベルトを抜き取ってまとめて一気に下着ごと脱がせ、反応する黒子自身を眼前と空気に曝した。
遮る衣類をなくした黒子自身はすでに軽く勃ち上がり、僅かに先端に先走りの体液さえ、浮かび上がらせている。
可愛いかわいい黒子の、普段は絶対に見せないそんな姿態と媚態とを目の前に、黄瀬はそれを直接そっと手の中に包み込みながら思わず。
「すげ・・・・エロい・・・・」
途端、その一言で一挙に黒子は羞恥心が燃え上がったようで、
きつくきつく黄瀬を睨み付けた後、
「・・・・・・・・・・・・・・やっぱり、やめていいですか」
ここまで来てとんでもない科白をぼそっ、と。
「いやそれは困る、そりゃ無いスよ、すいませんホントすいません、でも大丈夫っス、」
「・・・・・・・・・・」
失言(?) に慌てながら謝りながら、それでも笑いながら黄瀬は口にする。


「黒子っちより、オレの方がたぶん10倍くらいエロいっスから」


「?」


黒子がその科白の意味を理解する間もなく、
「ぅ、ん・・・・っ・・・・!」
包まれた手のひらで自身をきゅっと握られ擦り上げられて、溜まっていた体液が先端からつ・・・・、と滴った。
手の内の温かな体温に、濡れた黒子自身が小さく脈打つ。
「キモチ悦くするから」
言いながら黄瀬は、手の中で黒子自身を続けて扱き始めた。
色づくそこは、黄瀬の手が動くたびに確実に熱と質量とを増していき、彼の手が一往復するごとに滴る先走りの液で次第に濡れ落ち、
小さいが淫猥な水音を立てるようになる。
「・・・・ッ、、ぁ・・・・っ、は・・・・っ・・」
他人から触れられることに全く慣れていない、黒子の吐息が荒い。
そこを黄瀬に触れられているだけで荒い呼吸は止められず、不規則なものになっていき、羞恥と快楽に身体がしっとり汗ばんできた。
「っ!!」
と、
扱かれるだけでなく、ふいに先端を指先でぬるりと撫で上げられ、
たまらず黒子は全身を大きく震わせた。
「ココ、いい?」
「違・・・・! 違い、ま・・・・っ、ぁ、あ・・・・ッ!」
違う、というか、感じ過ぎてしまってイヤだと言いたい、言いかけたにも関わらず、勝手に先端を何度も何度もぬるぬるくるくると弄られ、
戦慄く黒子自身は一層、零す体液を増やす。 あわせてびくびく震える腰。
「黄瀬、君・・・・っ、やめ・・・・っ・・・」
「やめない。 だってすげー悦さそうっスよ黒子っち」
断言して愛撫を続けたまま、黄瀬は次の段階へと用意を始める。
細い脚を心持ち開かせ、黒子の身体を巧くずらして上方に移動させながら、しっかりとベッドヘッドに用意しておいたローションの蓋を器用に片手だけで開け、
たっぷり指先と手に取って、双丘の奥、黒子の最奥部分にそっと触れた。
「ッ!?」
瞬間、目に見えてびくッと黒子が震えたけれど、構わず触れた最億の周囲を柔らかく、ローションを塗り込めるように揉み込んで。
加えて彼自身を愛撫し続ける手は休めず、
弄る先端から根元にかけ、繰り返し刺激を送り続けていく。
そうして頃合いを見計らい、黄瀬は揉み込む最奥の入り口が少しずつ綻んできたことを見て取り、更にローションを乗せた指先を浅いところまで挿し入れてみた。
「ン・・・・っ・・・」
その感覚に、黒子が小さく首を振ったけれど痛みはまだ無いようだ。
続けてゆっくりと、浅い部分で指先の出し入れを試み、慣らしていく。
初めてで、結構苦しいかと黄瀬としては危惧していたのだが、ローションの助けもあってのことか、どうやら思っていたよりも黒子の身体はすんなり指を受け入れてくれそうだ。
抜きかけていた指を、不意にくぷりと奥まで埋め込んでみると、
「く、ぅ・・・・っ・・・・」
泣き声に近いような、そんなか細い声が漏れ、埋め込んだ指は狭い狭い内側でぎゅうっと締め付けられて。
と同時、手の中の黒子自身も小さく震える。
黄瀬はできるだけ黒子に苦痛を与えないよう、慎重に指を動かし、内側をほぐしていく。
「痛いっスか?」
く、と唇を噛んだ黒子に眉を顰めて訊ねると、
正直な話、痛みより苦しさを伴った異物感の方が大きいらしい。 戸惑った瞳がそう訴えていた。
「ゴメン、もうちょっと我慢して」
黄瀬本人としても、ここまで来てしまうとさすがに自分の欲もかなり肥大してきてしまっているのだけれども、
行為が行為であるだけに負担が大きいのはやはりどうしても黒子の方で、地道にその場所をほぐし続けてやるしかない。
出来うる限りの時間をかけて、ゆっくり指の腹で内側を擦り、撫で、拡げていく。
その都度、黒子は苦しげに息を吐き、快感とは全く違った感じたことのない感覚に耐えていたのだが。
内部で蠢いていた指先が、それまでとは少し違った角度で触れた、或る部分。
他の場所とは触れた感触が微かに違う、その部分を軽く押した、その途端。
「――――っ、!!」
先ほどまでとは明らかに違う、
身体の中から突然響いた強い性感に、黒子はたまらず仰け反った。
「あ・・・・っ、な、何、で・・・・っ・・・・」
自分でも正体のわからない激しい性感に驚いて、思わず反射的に黄瀬の顔を見てしまうと。
「ここ?」
「ぅあ・・・・っ!?」
それで何かに感付いたらしい黄瀬に、その部位をもう一度確かめられるように押し上げられて、また。
「や・・・・! 待・・・・っ、ダメ、です・・・・っ!!」
反応してしまうと、黄瀬は繰り返し繰り返し、その部分だけを刺激してくる。
痛みはなく、最初の頃ほど苦しくもないけれど、味わったことのない内側からのダイレクトな性感、それを感じ過ぎてしまって。
「大丈夫、イきたくなったらイケばいいっスよ」
黄瀬がそう告げてくる通り、前立腺を攻められて、一気に絶頂へと駆け上がる身体。
「・・・・ッあ、あ・・・・! ぅ、あ・・・・!」
直接的な刺激に連動して、黄瀬の指を内壁がきつく締め付けてくる。
黒子の腰が上下に揺らぎ出し、先端から零れる液体に白いものが混ざり始めた。
「っ・・・・! 出、る・・・・っ・・・・」
「いいっスよ」
ギリギリのところで、訴えられる限界。
なのに、黒子は懸命に黄瀬の肩を掴んできて、ここに及んで何を言うかと思えば。
「汚・・・・しちゃいます・・・・っ・・・・」
「布団なら、オレのもう一組あるから平気っス」
だから問題ナイ、と告げながら、絶頂の目前の黒子自身を擦り、埋めた指先で一際強く前立腺を突き上げた直後。
「あ、・・・・ぁ・・・、 ―――――ッッ!!」
黄瀬の手の中で、音も無く、達した迸り。
弾けた白濁は黄瀬の手と黒子の下肢を濡らし、僅かな飛沫がシーツに滴り落ちた。




「・・・・は・・・っ、・・・・は、ぁ、・・・・・あ・・・」
欲を放ち終え、くったりベッドに沈み込んでしまい荒く息をつく黒子だったのだが、
「あ・・・・ッ!」
埋められたままの黄瀬の指が再び動いて、尚も中を柔らかくしようとする感覚の齎す甘い感覚につい、反応してしまう。
「も・・・・少し、待ってくだ、さ・・・・っ・・・」
「ゴメン、待てない」
黄瀬だって逸っているのはわかる。 が、達したばかりで敏感になってしまっている身体に、矢継ぎ早の刺激はたまらない。
「ん・・・・!」
挿し入れられる指が、一本増えた。
変わらず痛みがほとんどないのは救いだけれど、その代わり背筋をずっと伝い続けている、快楽に似た疼きがつらくてつらくて。
と、
何やらごそごそ動いている、と思ったら突然、身体を下方に退けた黄瀬が、達したばかりの黒子自身を見据えていて。
何某かを考えている・・・・・否、思い詰めているかのようなその表情と視線と、その位置。
「・・・・!」
瞬時に黒子は、これから黄瀬がどんな行動に出ようとしているのかを悟ってしまい、
「い・・・・イイです!」
慌てて制止する。
「ん?」
「しなくていいです、そんなコト・・・・!」
「なんでっスか?」
珍しくもあからさまに取り乱し、慌てまくる黒子に黄瀬は不思議そうな顔をする。
「な、んでって・・・・・」
逆に真正面から問いかけられ、どう答えればいいのか分からず口篭った黒子に。
「だってオレ、中学の頃から黒子っちのコト、好きで好きで仕方なかったんスよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
それは、知ってたけれど。
端整な顔で、改めて口にされて告げる言葉をなくしてしまう。
「で、高校に入ってやっと会えたら黒子っち、別のヤローといつも一緒だし?」
それは仕方ないです学校が違うしチームだって違うんだから、と目で言うと、まあそれはわかってるっス重々と、と言われたあと、
黄瀬は真面目くさって。
「でも、今度はいつ会えるかわからないスからね。 こうやってベッドに入るには、オレと黒子っちは普段、遠すぎっス」
「なに・・・・言ってるんですか」
「だからこの、千載一遇のチャンスを後悔したくないんスよ〜。 もうしばらく会えないかもしれないし、それまでヤれないかもしれないんだったら今、後悔しないように思う存分、触っときたいんス」
「・・・・!!」
理屈の通っているような、通っていないような言い草に絶句した瞬間、小さく笑った黄瀬に隙を突かれ、
素早く下肢に顔を落とされてて、ぱくりと黒子自身を口内に含まれた。
「ぅん・・・・ッ!」
生暖かい口腔の感触に、跳ね上がる細い腰。
黄瀬の舌は咥えた黒子自身の裏側を根元から先端部分へゆっくりたっぷりと味わい尽くしながら舐め上げねぶり、
途中の括れでは丁寧に何度も何度も往復してそこを這い回る。
「ぁ! ・・・あ、・・・・ッあ・・・・っ・・・!」
さっきまで、手で弄られていただけでもあれだけ感じてしまっていたのに、今度は口でだなんて。
おまけにただでさえも過敏極まりないところをそんなふうに愛されて、
「・・・っん、あ・・・・あッ、やめ・・・・っ・・・・!」
手とは段違いの、淫らさを伴って絶えず襲い来る快感に涙が浮かんだ。 下肢から、もう蕩けてしまいそうだ。
「んー・・・・ッ・・・!」
再び内部に指が一本増やされて、全部で三本の指が内壁を広げ、溶かしていく。
それらは時折前立腺を掠め、刺激していきながら少しずつ受け入れの態勢を整え、
前の黒子自身から溢れ伝う先走りの潤滑も借りて、黄瀬が指を出し入れするその度に、湿った音が響いた。
「黄、瀬く・・・、あ、あッ!」
止めようとしても、決して黒子自身から離れようとしない黄瀬の舌先はとうとう先端部にまで辿り付き、
じくじく疼いて濡れるその先を、更に欲をねだるように促すようにちろちろ蠢いて。
「ッひ・・・・! い、嫌で・・・・す・・・・ッ!」
どうやら真っ赤に色付いた先端は、黒子のとてつもなく弱い箇所らしい。
嫌と言いながらも、それは快感に振り回されてどうすればいいのかわからずに口をついて出た言葉のようで、
その証拠に乱れ方が先程までの比ではなく、断続的にびくびく全身を震わせて悶える姿に、黄瀬の忍耐もきつくなってくる。
「・・・・・・黒子っち」
「ふ・・・・っ・・・、あぁッ」
舐め上げていた先端から、名前を呼びつつ唾液の糸をひいている舌先を離し、
そのまま指を埋め込んでいる最奥に迷わず口付ける。
「・・・・ン・・・・っ・・・・!」
細心の注意を払って拡げた指の、狭い隙間から懸命に舌先をねじ入れて唾液を送り、一層内側を濡らし柔らかくする努力。
すでに黒子から、抵抗はされなかった。
ただ胸を喘がせ、腰を震わせながら黄瀬の行為に耐えている。
しばらくその行為に没頭していた黄瀬は、黒子のそこが程好く蕩け、潤んで柔らかくなったことを感じ取り、ゆっくりと長い指を引き抜いたあと、黒子の両脚を抱え上げた。
「・・・・入るっスよ」
言葉尻が掠れたのは、最奥に宛がった硬く張り詰めた自分に余裕がなくなっていたからで、
瞬間、直接的な熱を感じた黒子が小さく身じろぐ。
出来ることならあまり切羽詰った姿は見せないよう、ここまではそこそこ頑張ってきたのだけれど、黄瀬当人も本当に限界で自らの逸る心は抑えられず、
構わずにぐぷ、と音を立て先端を埋め、浅いところで具合を確かめるように軽く掻き回した。
「く・・・ぅ、・・・・っは・・・、・・・・ぁ・・・・ッ!?」
と一緒、漏らすか細い艶声と、再び勃ち上がりを見せ始めた黒子自信を逃すまいと、手の中に包み込む。
最奥の粘膜への刺激と、掌中でまた慈しまれた黒子自身は絶えず濡れ落ち、小刻みに震えて、もう今にもまた弾けそうだ。
「・・・ッん、・・・ま、た・・・・っ・・・」
追い詰められ、たぶんほとんど無意識に二度目の絶頂を口にするその様に、まだ先端しか飲み込ませていない黄瀬のそこが脈打ち、大きさを増した。
「ぅあ・・・・!」
たまらず黒子がかぶりを振って淡い色の髪を乱し、刺激に耐える。
その拍子に内壁は浮け入れた先端をぐいぐいと締め上げ、更なる欲を煽った。
「、・・・・中で、いい・・・・?」
嫌ですと言われても、今更自分だってどうすることもできない状態なくせ、黄瀬は一応伺いを立てる。
「・・・・ぁ・・・」
すると肯定なのか否定なのか、よくわからないまま目蓋をとじて僅かに動いた黒子の細い顎。
よくわからなかったけど今のはたぶん縦に頷いたんスよね、きっと。 と勝手に解釈し、
辛かったらすぐ言って欲しいっス、と優しげな声で囁いて、勢いよく奥の奥まで腰を進め、貫いた。
「――――んっ・・・・!! ・・・・く・・・・ぅ・・・」
柔らかな内壁を抉り、擦りながら最奥を穿たれた衝撃に黒子はたまらず二度目の白蜜を吐き出していく。
直後、連動して痛いほど搾り取るかの如く絡み付いてきた内壁に、堪えることはせず黄瀬もそのまま迷わず欲を注ぎ込んだ。




「・・・・・っは・・・ぁ、ッ・・・・、っ・・・・っ・・」
黄瀬の放った熱を自らの内側に感じて、黒子の身体がびくびく戦慄く。
「ん、・・・・黒子っち」
「・・・・・・・・はい」
まだ中に居ながら、名前を呼ぶと律儀にもきちんと返事をしてくれるその唇に口付ける。
心地の好い唇と口腔とを満足するまで味わって、名残惜しみながらも唇を離すと、
「なんか・・・・変、です・・・・」
快楽に蕩けた表情なのか、それとも戸惑った表情なのか定かではないような、どこか浮いたような落ち着かない目で黒子が見上げてきた。
「痛くは・・・・ないスか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・はい」
躊躇しながらも帰ってきた返答はそれで、黄瀬は内心で会心の笑みを浮かべる。
「んっ・・・・!」
上目遣いの黒子に触発され、再び熱と欲情と硬度を蓄えつつある黄瀬が動き出すと、内部で放った自分の精液が狭いところで掻き回され、淫猥な音を立てた。
「な・・・・っ・・・」
身の内から響く濡れた音と、初めての感覚と感触にどうすれば良いのかわからず、
抗う気はないものの混乱せざるを得ない黒子が必死で黄瀬を押しのけようとするのだけれど、
黄瀬は体格の差を利用して抵抗にならない抵抗まで封じるため、細い両手首を両手を使ってシーツ上に抑え付け戒め、
逃げ場を封じてから繋がった内部を隅々まで擦り上げ、余すところなく刺激を与えるため、腰をグラインドさせる。
「ぅあ、・・・・ッあ、あ・・・・ぁッ・・・・っ・・・」
痛みを覆い隠すほどの快楽に煽られて、声が止まらない。
抑えたくとも抑えようのない黒子の甘い声に、内側の黄瀬自身は嫌でも確実に質量を増していく。
弾力を失わない内壁を、どこもかしこも突いてくる黄瀬に、その身体の間の黒子自身も三たび勃ち上がりを見せ、密着した黄瀬の腹部に当たった。
「ん・・・・ッッ!!」
ぴくぴく震えるそれを、黄瀬の空いた手で捉えられ、激しく上下に扱かれる。
「あぁ・・・・ッ!!」
加えて、人差し指の先で先端を引っ掻かれてしまい、
全身を捻じって反応した黒子の、黄瀬を受け入れた最奥も連動して感応してしまい、ぐっと締め付けられたその強さに黄瀬も息を詰める。
「ッ・・・・、キツ・・・・」
「・・・・っ、ぁ・・・・っ・・・」
絡む吐息。 互いの身体と同じくらいに。
表情を見やり、そろそろ仕上げ、とばかり黄瀬が前立腺をぐいぐい押し上げると、
「ひぁ・・・・ッ! や・・・・っ、やめ、ダメで・・・・す、ッ! やめ・・・・っ・・・!!」
「・・・・ホントに?」
「や・・・・め・・・・っ・・・・」
初めての身体には、さすがに直接的に抉られ続けるのは辛かったらしい。
痛いほどの性感に、黒子は唇を噛み締めながらかぶりを振って悶え、制止してくる。
「そ、こ・・・・止め、て、下さ・・・・っ・・・・」
「、」
苦しげに訴えて来られ、慌てて黄瀬は動きを止めた。
それじゃココはまた次の機会スね、と勝手に先送り、
それから内部での自らの角度を変え、そこをゆっくり突いてみた。
「ふ・・・・ッ・・・・!」
先刻までの強すぎる快感とは違い、偶然にもその部分は穏やかな快楽を持ってきたようで、鼻にかかったような悦い声が黒子から洩れる。
切っ掛けをそれにして、黄瀬は再び激しく動き始めた。
意図せず前傾姿勢になり、互いの上半身が自然と近くなって、黒子の耳の至近距離から聞こえる黄瀬の荒い息遣いと、下半身から響く接合の音。
耳元で響く黄瀬の息に、どうしようもなく頭の中と身体とが熱くなる。
「っ・・・・、ん、・・・っ・・、ぅあ、あ・・・・ッ・・・!!」
穿たれていく内部から突き上げる快感に合わせ、
扱かれ続けていた黒子自身の先端を、指と指とで強めに挟まれた。
そこからびりッ、と背筋を伝って身体全体に響いた、鋭い快感に全身が急速に絶頂に上り詰め、細い下半身が戦慄く。
内部も一際強烈に蠕動し収縮を見せ、黄瀬自身を激しく締め付けた。
「ん・・・・ッ、――――ん・・・!!」
本能的に黄瀬の背中に回した腕、
衝動に任せて立てた爪を彼の背中に喰い込ませながら黒子が絶頂へ達する。
「ッ、・・・・く、・・・・っ・・・」
続いて黄瀬も後を追い、中に二度目の欲を吐き出した。
途中、内壁に熱い飛沫がかかるたびに黒子は身を震わせ、残りの蜜を零していく。
一方で黄瀬は自分の欲を全て注ぎ終えるため、中で何度か挿出を重ね繰り返し、最後の残滓までをきっちり搾り出してから、やっとそこで自らを引き抜いて。
「・・・・・・なんかもう、絶対離したくないし離せねーし逃がさないし逃がせねーし、マジで死ぬほど好きなんだけど、どうしたらいいっスか黒子っち」
半ば放心状態、今にも意識を飛ばしてしまいそうな黒子に、
かなり真面目くさって問いかけてみたのだが。
当然にして彼に答える余裕なんて一ミリグラムもなかったため(そもそも問いかけ自体、耳に届いていなかったようだ) まるっきり無視をされてしまい、
仕方がないから最初と同じ、深くて長いキスをした。


















拗ねているのかふて腐れてしまっているのか、はたまた照れてしまっているのか定かなところは不明だが、
あれからずっと、黒子はベッドの中、(気配こそ消してはいないものの) 頭から布団をかぶってしまって出て来ない。
従って後始末も何も出来ていないままで、
あーもー仕方ないっスね、と頭を抱えつつもシアワセの余韻にやたら口許が緩んでしまって仕方のない黄瀬は、一応自分は衣服を軽く身に付けるだけ付け、
五分後にはすぐにでも風呂に入れるよう浴室の準備も滞りなく整えておいてから、
布団越し、声をかける。
「身体、どっか痛いっスか? 腰とかツライ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「黒子っち?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「く、黒子っち・・・・・・???」
二度目の呼びかけの後、ほんの一瞬だけ毛布の隙間から顔が覗いたと思った途端、また頭からばさっと布団をかぶられて。
数秒、もしくは経っても十数秒の僅かな間のあと、
「・・・・・・・・本」
「?」
想定外の単語がその口から発された。
「黄瀬君、最近ボクからよく借りていきますけど、君がそんな読書家だったなんて知りませんでした」
読んでる時間もそんなになさそうなのに、と続く。
鋭いところを突いてこられ、どう答えるべきか黄瀬は少々迷ったが、
「んー、ぶっちゃけると借りるのは黒子っちに会うためで」
素直に正直に、答えることにした。
「え?」
「借りとけば、返すとき次にまた会えるから」
再会への、約束? 予約? 前約? どう表現すれば善いのかわからないが。
すると、
「・・・・・・口実にしてほしくないです」
ズバリ。 布団の中からは手厳しい返答。
「え、いや、借りたらちゃんと読んでるっスよ? 黒子っちのスキなものなら、なんだってオレも・・・・!」
言い訳といえば言い訳だ。 が、慌てまくって泡をくいまくりつつ抗弁しかけた黄瀬相手、
「そうじゃないです」
彼は布団から半分だけ顔を出して。
「ホントならそんな口実、いらないはずじゃないですか」
「、」
「・・・・・・本を理由にしなくてもイイと思うんですけど」
「く、黒子っち・・・・!!」
なんだろう。 言葉自体はかなり地味な、でもだけど黄瀬からしてみればやたら嬉しいワンブレス、否、ワン・センテンス。
感激のあまり次の言葉が出ないでいたら。
「て、こんな感じに甘やかせばイイですか?」
「はい???」
改まったその言葉に、結局出たのはクエスチョンマーク、疑問符のみ。
「実は先日緑間君に言われたんです。 そろそろ黄瀬君が何だか色々マズイから、どうにかしとけって」
「み、緑間っちに?」
「ハイ。 もう少し甘やかしてやれと言われたので」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。 緑間っち・・・・」
何故に。 何故にそこで緑間。 しかもいろいろマズイってなんだ。 どんな神託だ。
しかし確かにもうそろそろいろいろ限界だったのは間違いじゃなくて、どうにかしとけって、どうにかしたい(!) ホントどうにかしたかったのだって本当で、
しかししかし現状はもしかしたら緑間のその御託宣(?) によって齎された結果、なのであったりしたらそれはそれで複雑すぎて、
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
だから。
「き・・・・黄瀬、君?」
不穏な空気を読み取ったのか、黒子が半分だけだった顔を全部、布団から出してきたが構わずがしがしと自分の頭をかいて、迷わず振り切った。 そして叫んだ。


「足りねえ!」


「・・・・はい?」


「足りねっスよ! そんなんじゃ全然ぜんぜん足りねえ!」


大声で宣誓のような宣言をして、先制。
そして体格差にモノを言わせて布団の中から無理矢理抱き上げた。
「風呂、行こ」
「ちょっ・・・・!」
彼を抱え上げたまま、黄瀬はすたすた部屋を出ながらも、慌てる黒子の姿に自然、笑みが浮かぶ。 だってこの場合なら専制???


「大丈夫、引き続き丁重に丁重に取り扱うっスから♪」


甘やかすならもっととことん、








どうせならついでなら、好キナヨウニサセテ。










好キナコトヲサセテ。
















―――――――――――――  後半戦は浴室、にて。





















ウン年前に書いて、しばらくサイトにも乗せてあったシロモノです。
だから見たことある方もいらっしゃると思う・・・・。 ※たぶん手抜きではない

黄黒は今までにないくらい書きやすい(笑)です。 どっちもかわいこちゃんだから(笑)。