[  喩 エ テ 云 ウ ナ ラ ]





謎を引き寄せるためと使用されて、

空腹を満たすためと利用され、

素性を隠すためにも代用させられ、

引き換えに私は物凄い勢いで何かを消耗していく。




それでも時折貰える別の何かが欲しいから、私は今日も使われる。
























【食欲は、食べるにつれ出てくる】

どこの国の諺だったか。 自問しても自答しようにも思い出せないし、

飽食は七つの大罪のひとつ。 ということくらいしか浮かばなかったけれど。








そう、喩えて云うならまるで足許を絡め取られるぬかるんだ湿地帯。

濁った底無し沼。

足を取られて崩れ落ちた途端に掴まれて、そのままずるずると引き摺られるような。

息も出来ないほど深くて底の無い、生温かい沼の中へ引き込まれて行くような。








「離さんぞヤコ」








邪気なく嗤って彼は、私の頭を乱暴なほどかき抱く。

陶酔を誘う匂いと強さとを持って、私を奈落の暗澹の底へと引き摺り落とす。








「だからいい加減に諦めろ」








離す気はない。 解放する腹積もりなどある訳もない。

解剖学的に私を眺めるその眼は愉しげにそう云っていて、








「・・・・・・・・」








実際、触れる肌もちっとも隔たりはせず、








―――――――――――――――― 低体温。








人間では無い、到底ヒトではないと触れればわかる温い身体。

触れて感じるのは体温などではなくて、

髪を手でつかまれて、

戯れに頸に指が食い込んで、

爪が腰を深く噛んで、自分が軋むような錯覚を覚えても。








「ヤコ」








なんてワガママな化け物なんだろう。 こっちの答えも聞かないで口を塞ぐ。

でももう、一旦囚われてしまったから今更逃げ出せない。

妥協じゃなくて、適応してきたつもりだけれど。








「・・・・ほんと、仕方がないっていうか、・・・・困った化け物だよね。 あんたって」








「どうとでも云うがいい。 食欲と貴様と。我が輩は満たされればそれでいい」








ほら、また。

温い身体で、触れたところからちりちりと低温火傷をしてしまいそうだ。

同時、ぐいぐいと飲み込まれ沈んでいく何処まで行っても底に辿り着けない沼。








「・・・・あはは」








「何がおかしい?」








「なんでもないよ」








「・・・・。 三秒以内に答えなければ、プチッと潰すぞ?」








訊かれてもきっと言葉では伝わらないから。

なんでもない、ともう一度云って私は目を閉じる。

そうしたら、「ああ、殺す暇も惜しいな」 なんて独語と共に、奥深く感じた低体温。








落とされて引き摺り込まれた私はもう逃げ出せず、抜け出せもしないけれど、

あんたも同じように出られないってことに、いつか気付くのかな。

それとももしかして、そんなことくらい既に知っているのかな。

複雑でも何でもない。 けれどきっと決して解けず、互いに囚われ逃れられない。








ちりちり灼けていく私の中で、

ネウロはゆるゆると温く、熔けていく。








ふと思いついて、ガーッと五分くらいで書いてみたんですが(汗)、
結局何がやりたかったのか自分でもわからない・・・・。
捻くれヤコたん? けどこの二人はこんなイチャラブは絶対しないと思います。
でもネウ→ヤコのラブラブがスキなので出してしまいました。

・・・・けっこうヤバイ話だと思う・・・・。