won't play a trick on you









「私とアンタは元から違うし、ましてや私は私でアヤさんみたいにもなれないもの」








たぶん最初はいつもの普段の事務所内、
喧嘩というにはあまりに一方的で、暴言雑言罵詈罵倒と言いきるには些か児戯混じりの彼の揶揄、
それが切っ掛けだったのだろうと思う。
更に付け加えるならば、彼の傍若無人っぷりに翻弄されこき使われる日々の鬱憤と、
唯一彼が一目置く(?) 歌姫との相対的で総体的な品定め、格付けと値踏みされ続けていた日々に疲れていたというのもあって。
そして半ば投げやりに口を付いて出たその一言は、タイミング悪くもその時の彼の癇に障ったらしい。




「それは嫉妬というものか?」




さぞ興味深げ、面白そうに自分に視線を向けたネウロの顔を見て弥子は息を詰めた。
「、」
詰めながら 『拙い』 と瞬時に気付いたのだがもう遅い。
「なるほど嫉妬心か。 所謂・・・能無しに一番適した競争心だな」
「な・・・・」
何気にさらりと酷い科白を吐かれた途端、ヒュッと彼の長い片腕が伸び、乱暴に弥子の腰に回る。
そしてそのままウエストからもう少し下、腰骨のあたりまで数回撫でられた。
「それにしても毎度毎度貴様は中身と同じでカラダもガリガリの未発達、まるで鶏ガラを抱いているようだぞ」
「う、うるさ・・・・! 〜〜〜〜」
引き寄せるというより羽交い絞めにされる形で抱き込まれ、(その腕には大して力が込められているようにも見えないのに) 身動きひとつ出来なくなってしまう。
「鶏ガラはアンタの方でしょーが!」
とか何とか本当は言ってやりたいのだけれど、この腕の中から逃れようとじたばた足掻くのに精一杯で口にまで頭が回らない。
代わりに出てきたのは、
「離してよ・・・・! ちょ・・・っ・・・!」
独創性も何もない、焦りの色だけ浮かべた言葉。
離してくれないなら(不味そうだけどマズそうだけどちっとも美味しくなさそうだけど!) いっそ腕に噛みついてでも、と悲愴な決意を固める傍からポカリと殴られ、
殴られた痛みに気を取られた弥子が暴れる動きを鈍らせると、ここぞと。
「その気になった馬鹿と己の身の程知らずほど恐ろしいものはないなヤコ。 あまりの卑小矮小、小物っぷりに愛おしさを感じるほどだ」
「やめ・・・・っ」
悪戯めいたネウロの囁きにたまらず頭を横に弥子が振った拍子、ぱさりと自然に柔らかな髪が揺れ、
瞬間ふわりと漂った彼女の香りが香って、それは朝から暇を持て余していた彼をやる気とその気にさせるのに充分だった。
「ヤコ」
腰に回したままの腕で弥子を爪先が床から浮く位置までひょいと持ち上げ、噛み付く勢いでキスをする。
「〜〜〜っ、ん、っ・・・」
弥子は懸命に両腕でネウロの胸を押して逃れようとし、彼がぺろりと舌なめずりをした隙をついて拒否するけれど、
すぐまた深く深く口唇を捕らえられて終わりまで告げられない。
「・・・・っ・・・」
ネウロに触れられるのは初めてではなかったが、ここ最近は諸々(・・・・) それどころではなかったため、
感情と思考では拒絶しようとしていても久し振りの感覚に身体は逆らわず、勝手に力が抜けていく。
快楽原則から来る条件反射が招くこの自分の身体の反応に途方に暮れたくなりながら、掴んだネウロの胸襟が必死で掴んだ手の中でくしゃりと潰れていくのを感じた直後。
やっと口唇が解放された途端にすぐさま身体を掬われ持ち上げられ、探偵机の上に肩を押さえ仰向けに押し付けられた。
そんな弥子の上、ネウロは上体で覆い被さって乗り上げ、
それまで机上に置かれていた(さっきまで課題と格闘していた) 教科書やらノートやらが次々床に落とされていく。
抜け出したくて、切り抜けたくて大きく身じろぐとバラバラと筆記用具らしきものが落ちた音がした。
「やめてよ・・・・! 何、する気・・・・!!?」
諦めて根負けしてしまうことが怖くて怒鳴ってみるのだが、
「どれだけ貴様が馬鹿でも判らないはずはなかろう。 それとも何だ? わざわざ我が輩の口から聞きたいだけか?」
ただ小さく笑われた挙げ句、
思いきり暴れているのにも関わらず簡単に抑えられ、着ている制服はそのままにスカートと両脚の間に手が入ってきた。
「っ・・・」
冗談や脅しではなく、どうやら本気な様子のネウロに思いきり焦る。
「こんなところで・・・っ・・・」
「何がだ? きちんと屋内、それに傍観者も存在せず最良の場所だろうが」
「そ・・・そうじゃなくてッ! 大体、いきなりなんでこんな・・・・!」
「黙れ。 これが不満なら吾代でも誰でも呼びつけてから続行するぞ?」
下手に機嫌を損ねれば、あながち行わないとも限らない言葉に弥子の抵抗が僅かに止まった隙、するりと下着を脚の間から抜かれ、脱がされた。
冷えた空気が動いてスカートの中に入り込む。
上半身はきっちり制服のままで乱されることはなく、下肢のスカートもそのままに足首を捕まれて。
「開け」
「や・・・・っ!」
下着を取られた素肌を外気と視線に晒され、頭と頬に血が昇った。
ネウロは構わず、開かせた両脚の間に無造作に顔を落とす。
やわらかな下腹部に口唇を這わせると、舌でなぞった。
「・・ッ・・・」
濡れた舌に触れられ、弥子はびくっと下肢を戦慄かせる。
すると今度は僅か下、割れ目沿いに舌を持って来られ擽るように舐められた。
「やめて、よ・・・・ッ・・・!」
拒絶の意を表わしながらも手で口を覆う。 ともすればあがってしまいそうになる声を懸命に抑える弥子に、
ネウロは口角を僅かつり上げて 「どこまで持つか」 と言わんばかり柔肉を掻き分け丁寧に嬲っていく。
「・・・ん・・っ・・」
繊細な箇所に甘い愛撫を与えられ、自分の下肢が潤いを帯びてくるのがわかる。
否応なく躾けられた躰は愛撫刺激に素直に反応してしまっているものの、頭ではこんな場所でこんなふうに、と考えてしまい、
とてもではないけれどこのまま身を委ねることなんて出来なかった。
「や、だ・・・・っ・・・・」
「フン、これだけ濡らしておいて何を言う」
「っ、や・・・・―――っ!!」
潤滑の分泌液で濡れそぼる柔肉の奥をぐいっと舌先で強く抉られて、腰が跳ね上がった。
ネウロは引き続き舌で全体を軽く舐め上げ、時折様子を確かめるようにちゅ、ちゅと吸う。
「・・・・っ、ぁ・・・・」
肘を付いて無理矢理なんとか上体を起こし、抑えつけられている腰から下にぼんやりと目をやると、
乱されたスカートと拡げられた両脚、その間に顔を埋めるネウロの頭が見え、
バケモノのくせして私よりよっぽど柔らかそうな髪がほんっと憎たらしい、だなんてまるで他人事のように思った。
反面、こんなところでこんな行為を強制させられていることに羞恥心がはじけそうになる。
「・・・ネウ、ロっ・・・」
「黙っていろ」
ここまできているのにまだ抗うつもりの弥子にネウロは少々気分を害し、心持ち眉を寄せた。
そして、抵抗する気を一気に奪い尽くそうと真っ直ぐ高みに押し上げる。
唐突に激しくなった舌使い。
「ん、やぁっ・・・・!」
過敏な箇所に激しい愛撫を受け、仰け反った喉から堪えきれない声が零れた。
一舐めごとに微かに震える弥子のそこを、ネウロは口腔全体を使って何度も攻めていく。
ほんの僅か、尖らせた舌先を肉襞の奥まで押し入れて探ってやると、
「・・・・っ!!」
声にならない声と同時に腰がうねった。
強制的に絶頂に向かわせられる愛撫に腰が戦慄き、弥子の細い脚がみるみる汗ばんでほんのり色付く。
「、ん―――ッ・・・・!!」
跳ねる下肢を乱暴に押さえつけ、一際強く舌で抉ると同時に口唇で吸い上げてやると、
一度大きく震えたあと、弥子は呆気なく達した。




「まあ、不味くはないな」
自らの唾液と弥子の体液とで濡れた口唇を舌で舐め取りながら、ネウロは顔を上げる。
と、脱力してしまい力が入らないながらもおずおずと捲れたスカートを直し整え、秘部を隠そうとする弥子。
「ヤコ」
それを阻むように、彼女の顔を至近距離から覗き込んだ。
「・・・・何よ」
乱れた吐息がまだ落ち着かない弥子は、その目線から顔を背けて少し横を向く。
「我が輩の方を向け」
「・・・・嫌」
「向けと言っている」
弥子の返事など聞こえてはいなかったかのようにネウロは有無を言わさず、顔に手を添え強引に自分に向かせ、
そのまま口を口で塞ごうとしたのだが、弥子は何が何でも拒みたいらしい。
まるで駄々をこねる子供みたいに何度も顔と目線を外し、背けようとした。
先刻の愛撫でその頬は上気しているものの、ずっと伏目がちで明らかに顔をあわせようとせず、
おまけに口付けまで拒否し続ける弥子にネウロは苛立ち半分、興味半分の気分になる。
さてどうしてくれようかと思ったところ。
「・・・・も、満足したでしょ。 私、帰る」
抑揚のない弥子の言葉に、僅かだが興味より苛立ちが勝った。
一度は離していた手を再び膝にかけ、再度両脚を大きく持ち上げ、拡げさせる。
「ちょ・・・・っ・・・!!?」
先ほどよりも更に秘部を空気に晒すかたちになり、
慌てた弥子はいっそネウロを蹴り飛ばしてでも、と何とかこの窮地を脱したく暴れてみるものの所詮最初から勝負は決まっている。
ほとんど何も出来ないまま抑え込まれ、またも露わになったそこに口唇を寄せられた。
「や、っ・・・・!」
先刻の余韻がまだ消え去っていない箇所に舌先の湿った感触が触れたのを感じ取り、息を飲む。
探りを入れてきた舌先は、濡れた肉襞を味わうように数回あちこちを彷徨ったかと思うと一番奥深い箇所を二度、三度と突付いて愛撫をし始めた。
「ぁ・・・っや・・・・ぁ・・・・っ・・・」
懸命に嫌と首を振っても、ネウロは構わない。
躰の中、敏感すぎる箇所を舌先が蠢く感覚に下肢が震え、その部分に甘い疼きが溜まっていくのがわかる。
「先程から貴様は制止の言葉しか口にしていないな。 他に言うべき言葉はないのか?」
「・・・っ・・・や・・・」
もう抵抗は諦めるしかない。
それでも声はできるだけ漏らしたくなくて、弥子は唇を噛んで堪える。
彼の言う通り、言うべきこと、言ってやりたい言葉、ぶつけてやりたい罵倒なんかそれこそ数え切れないほどあったけれど、
こんな状態じゃ口を開いた途端に甘い吐息しか出てこなそうで、ただ我慢するしかなかった。
愛撫のたびに分泌される体液がネウロの舌と口許を濡らして潤わせ、湿った水音を響かせる。
どれだけ否定したくてもそれは躰が順応、反応してしまっている証拠で、
結局最初から最後まで抵抗らしき抵抗が出来なかった自分がとてもとてもいたたまれず、弥子は泣きたくなる。
こんなところでこんなふうに躰を開かせられるのなんて絶対に絶対に嫌なのに、
なのに。
「っは・・・・んっ!」
突如、肉芽の部分を小さく吸われた。
それほど強いものではなかったが、不意打ちともいえる行為に弥子は思わず腰を浮かせてしまい、その様にネウロは小さく笑う。
そして手袋をはめたまま、片手の人差し指と中指とで拡げた肉襞の奥にもう一方の手、指をぐっと突き入れた。
「っっ!!」
濡れた肉襞は、ほとんど痛みもなくその奥にネウロの指先を飲み込む。
「ふむ、まだ狭いな・・・。 とは言え緩んでいるよりはマシか」
「・・・ッ馬、鹿っ・・・・」
揶揄ではなく、感心混じりの呟きにかあっと全身が熱くなる。
いつものように皮肉から発したのではない、もしかしたら誉められているのかもしれない一言なのに、
あまりに内容が内容で、何も言えない。
「――ん、ん――――っ・・・・!」
内側にあるのは第一関節までだったネウロの長い指が、第二関節のあたりまで入ってきた。
手袋の生地越しであるがため、通常では有り得ない感覚が怖い。
「なんだ、怖がっているのか?」
「! や、やぁ・・・! ぁ、あ・・・・」
肯定するのも悔しくて、けれど否定することは出来なくて。
ただ力なくかぶりを振っていたら、
「何を怖がることがある?」
奥まで侵入してる指。
瞬間、きゅっと反応した肉壁が受け入れた指を締め付け、その反動で弥子の背筋と下肢が激しく疼く。
無論そんな快楽をネウロに隠し通せるはずがなく、
「ん・・・そう締め付けるな、まだまだこれからだろうが」
愉快げに笑われ、言葉とは反対に、不意に。
「っ!!?」
根元まで埋め込まれた指の縁、うっすら充血気味のその皮膚についっと舌が寄せられた。
舌は、指の周りを辿るように丁寧にそうっと這っていく。
奥にある指の刺激と比べると、どちらかと言えばもどかしい感覚を受け、そこは弥子の心など知らずに勝手に戦慄いた。
「もぅ・・・っ・・・やぁ・・・!」
たまらずネウロの髪を掴んで、無駄だとわかっていてもきつく引っ張る。
どうしてこんなふうに、丁寧な愛撫を送ってくるんだろう。
苛めたいなら虐げたいなら、もっと他に手段だってあるはずなのに。
さっきだっておもむろにキスをして来ようとしたりして、これじゃ、こんなんじゃ、
こんなのじゃまるで。
「あ、あ・・・・っ・・・・!」
縁を彷徨っていた舌が、指に添って内側にも入り込んできた。
布越しの指とは違い、生の感触に性感が高まる。
入ってきた舌が、ゆるく内側を舐め上げて。
「・・・ん・・・・っ・・・」
痺れるような、ぞくぞく腰を駆け上がる絶頂の予感に弥子が一瞬呼吸を止めたとき、
ずっ、とネウロが指を引き抜き、一緒に舌もそこから抜かれていった。
刹那、安心した弥子がふっと息を吐く間もなく、いつの間に準備していたのか腰ごと引き寄せられ、激しく貫かれた。
「っん、・・・・――――っ!!」
当初からずっと弄られ、慣らされた奥襞は滴る体液の助けも借りて難なくネウロを受け入れる。
すっかり根元までを埋め終えたネウロが少し腰を揺らしただけで蕩ける水音がした。
「あ、・・・ぁっ・・・ぁ・・・・っ・・・」
貫かれ、一挙に激しくなった弥子の喘ぎに触発されたか、ゆっくりと腰が動き始める。
その都度その都度響く濡れた音が恥ずかしい。
けれど何より恥ずかしいのは、もう止められなくなった自分の声で。
「ん・・・っ、・・・ゃ、あ、ぁ・・・・ッ・・・・」
ネウロが動くたび、押し殺しながらもこらえられない声が溢れてしまう。
この広い事務所内、響くのは躰のぶつかる音と付随する水音、それと自分の吐息混じりの嬌声。
こんな行為をしているにも関わらず、ネウロの息はほとんど乱れていなくて、だから弥子は、 ・・・・余計。
「・・・や・・・! アン・・タなんか・・・っ・・・・」
きちんと声に、言葉になったかどうかわからない。
これが、
この行為が、時々奪われる口唇が、痛みと嫌悪だけのものだったならまだ良かったのに。
その方がまだ救われるのに。
彼の一方的な興味と嗜虐心からくるものだとしても、こんなにも甘い肉体の快楽を覚えさせられて、
もう随分と前から弥子は彼の考えていることの一欠片さえ、わからない。
何がしたいのか、全然わからない。
こんなことしたって空腹が満たれるというわけでもないのに。 それどころか、余計おなかが空くだけなのに。
「ヤコ?」
「・・・っや、だ・・・っ・・・、・・嫌・・・い・・・ッ」
少々不審に思ったらしいネウロに問いかけられたが、ふるふるとかぶりを振って拒絶する。
こんな状態まできていながらも、未だ強情でい続ける頑なさに流石のネウロも少し呆れた。
「いつもの貴様らしくないな。 奴隷は奴隷らしく、下僕は下僕らしくしたらどうだ」
「大・・・っ嫌・・・・い・・・・!」
珍しいほど意地を張る弥子。 いつもならこんな我を通すことはない。
「・・・・話にならん」
ネウロは小さく呆れ混じりの息をつき、身の程をわきまえない言葉を吐いた口を戒めようと、
ぐりっと抉る腰付きで激しく突き上げる。
「ひ・・・・っ!」
深いところを何度も突かれ、頭より躰が先に高みに向かう。
快感に直結した下肢は、快楽の行き場がほしくて喉をついて出てしまう声。
「、ぁ、あ・・・・っ・・・ぁ・・・・っ・・!」
「達きたいか?」
「・・・・ぁっ・・・・やだ、・・・・や・・・・っ・・・・」
一生懸命、拒否の言葉を紡ぎながらも弥子はぎゅっと固く目蓋を閉じる。 高みが近い。
切っ先でズッ、と激しく穿たれて、


「ぁ、あ・・・・ッ・・・・!!」


あともう少しで無理矢理達かさせてしまいそうになったその瞬間。




―――――――― 脇に置いてあった鞄の中、携帯電話が鳴った。




「・・・・!」




時と場所を選ばない着信音に、思わずビクッと躰を震わせ、
鳴り響く聞きなれた音律に弥子は顔を上げる。
ネウロも一旦行為を止め、鞄に視線だけをチラリと流した。
「・・・誰からだ?」
「わ・・・わかるわけ、ないじゃない・・・・」
答えながら息を飲む。
見てもいないのにわかるはずがない。
それにしても着音は未だ鳴り響いている。 随分と長い呼び出し音だ。 叶絵か、それとも母か。
とりあえず笹塚ということはないだろう。 彼は五回鳴らして弥子が出なければ即切るし。
加えて吾代ということも多分ない。 吾代だったら二回のコールで終わりだ。 気が短いにも程がある。
と、ようやく音が止んだ。
「あ・・・・・・」
息遣い以外の静けさが戻り、現状が再び襲ってきた弥子の様子に、ネウロは愉しげに言い放つ。
「別に通話しても我が輩は構わなかったのだぞ? 鞄に手が届かなかったのなら取ってやればよかったか」
「じょ、冗談じゃ・・・・! ッ!」
怒鳴りかけたところ、中で動かれて言葉が途中から出なくなってしまう。
一度中断していた行為を再開され、熱の溜まった躰を大きく揺らし上げられて。
ゆっくり腰を上下にグラインドさせられ、切っ先に抉られる躰の奥からゾクゾクする快感が背筋を伝ってくる。
が、着信音で僅かながら冷めかけた躰の高みは先程より遠いところにあった。
それでも早く達きたくて、弥子の腰がおずおず揺れる。
見越したネウロが嗤った。
「ほう、もう限界か・・・・?」
「ん・・・・ッ・・・・!!」
その表情から、焦らされて虐められるかと思ったがそんなことはなく、
「それなら達けばいい」
深く深く乱暴なほど穿たれ、そして根元まで埋め込まれたまま、激しく揺らされた。
「・・・・あぁ・・・ッ・・・・!!」
奥の奥。
そんな深いところまでは滅多に侵入されたことはなく、僅かな恐怖と痛みさえ感じる。
なのに、恐怖と痛みも一瞬で消えるほどの感覚と激しい快感があとからやってきて、ネウロの腕の中でがくがく躰が震えた。
もしかしたら涙まで滲んでいるかもしれなくて、顔を見られたくなくて必死で顔を背けるけれど。
「・・・っ・・・ん、ん・・・・っ・・・っ」
断続的に揺さぶり続けられ、狭い中を彼が蹂躙するたびに全身が悦ぶのがわかる。
「あ、・・・だめ・・・・っ・・・、も・・・・ッ・・・!」
爪先がぴんと張り、左足の靴が脱げ落ちる。
そろそろ潮時かとネウロは寄せた唇を耳朶に寄せ、軽く噛み付いてやりながら腰をグイグイとより一層進めた。
「や、ぁ、 ぁ、――――――っ!」
ぐずり声にも似た声を漏らし、瞬間、弥子の強張った躰から徐々に力が抜けていく。
同時に熱を搾り取ろうと肉襞が内側のネウロを強く締め付け、
誘われた彼も相応に溜めていた欲を、吐き出した。








以前から、「種族が違うため孕むことはない」 と言われていて事実実際その通りだったけれど、
中に放たれた熱はとてもとても熱く、余韻をもって弥子の体内に留まっている。
「・・・・んっ・・」
その感覚に翻弄され、躰の自由が上手くきかない弥子に低く彼は囁いた。
「悦かったか?」
ぼうっとした頭にその言葉の意味が届くまでに少し時間がかかったが、理解できた途端、やりきれない思いが心の底から沸き上がってくる。
「離・・して・・・・ッ」
「何?」
「もう、触んないで・・・・っ」
珍しくもいきりたってネウロの腕を振り払う弥子に、大して驚いたわけでもないだろうが彼は黙って身体を離した。
その隙に乱れたスカートを直し、込み上げてくるものを堪えるためグスっと鼻をすすって耐える。
「・・・・ヤコ?」
名を呼ばれ、たまらなくなって弥子はきつく睨みつける。
今まで、ここまで強く怒ったことは一度もなかった。 
けれど怒りの言葉は不思議なことに何も出て来なくて言葉になってくれなくて、
「・・・・・・・・」
・・・・・・仕方なく、のろのろ躰を起こして下着を拾う。
まず身に着けたかったが、今の状態ではただ汚してしまうため手にしたまま洗面所兼、トイレに向かった。
ネウロの脇を通り過ぎる際、高い位置からじっと彼が自分を見おろしてくるのがわかり、
つい反射的に顔を合わせてしまったけれど。
静かに見つめてくる化け物の鳥の眼からはいつもの表情しか見て取れず、
一秒にも満たない間で振り切り洗面所に駆け込んだ。




「・・・・・・・・」
固く固くドアを閉め、息を殺して隔てた向こうの気配を探る。
ネウロがここまで入ってきたらどうしようかと不安になったが、しばらく待ってもその兆候はなかった。
足音も何も聞こえず、ということは何処かへ出かけたらしい。
ほっとする反面、弥子は泣きたい気持ちになった。
でも泣くだけ無駄だとわかってもいたから、意地で泣いてなんてやらなかった。





















翌日、学校帰りに相当気が進まないながらも弥子は昨日と同じように事務所の扉を開けようとしていた。
理由はただひとつ。 諦めたからだ。
自分が事務所に顔を出さなければ彼のこと、いつかのようにきっと自宅にまでやってくるだろうし、
自宅ならまだしも、下手をして学校にまでこれまたいつかのように来られてしまったらそれこそ困る。
だから感情を押し殺してドアノブに手をかけた。
「・・・・何でもないもん」
あれくらい、と口の中だけで呟く。 せいぜい悪い鳥につつかれた程度。 そんなものだ。
だから平気。
それともこんなふうに思うこと自体、全然平気じゃない証拠だろうか。
重い重い溜め息をつきながら、それでも出来ることなら彼が留守でいればいいとどこかで願いつつ、投げやりに開けたドアの向こう。
やはり見えたのは長身の背中・・・・、と視認した直後。


「ギャーーーーッ!!」


ブンッ、と宙を唸って一直線に投げ付けられた物体が。
それは弥子の顔面すれすれ、1cm横を通り過ぎ後ろの壁に当たって砕け散った。
振り向いて残骸を見れば、大きな大きなカボチャである。
「何すんのよッ!!?」
「思っていたより早かったではないか」
「・・・・・・・・」
暴挙に食って掛かってもいつもの通りネウロはものともせず、事務所入口に立つ弥子に歩み寄り無造作に腕を引いた。
「・・・!」
乱暴ではなかったが、強引に引き寄せられ今更ながら戸惑う。 どうすれば良いのかわからない。
ただ。
「そう拗ねるな」
「・・・・別に」
反射的に反抗的な態度をとってしまい、また彼の機嫌を損ねるかと少しだけ危惧したのだけれど。
「昨日の貴様は 『嫌』 としか言わなかったが」
「・・・・それが何。 ・・・って、え・・・っ!? ちょっ・・・!」
頷きながら答えたが否か、ずるずる腕を引っ張られてベッド代わりにもなるソファーの上にぽいっと放り出されてしまった。
あまりの唐突さに弥子が体勢を立て直す間もなく、身体ごと圧し掛かられる。
「なに・・・・ッ・・・」
「昨日の続きだ」
怒気混じりの問いかけにネウロは拍子抜けするほどあっさり答え、昨日とは反対に制服のリボンを外し始めた。
昨日とは確実に違う雰囲気だが、同じ轍を踏んでいきそうな展開に慌てざるを得ない。
「ふ・・・ざけないでっ・・・・! ッ!」
まくし立ててやろうとした文句は突然のキスで遮られ、
外されたリボンの次はブラウスに手が掛かったところで本格的にもがくのだけれど、やはり昨日と同じく抵抗らしい抵抗にならず、
瞬く間にそれも腕から抜かれてしまった。
「や・・・だってばッ!! そういうコトがしたいなら、別の相手を探してよッ・・・ッ!!」
・・・・今になって自分で気付いた。 涙声になっていた。 昨日は泣きたくても泣けなかったのに。
「・・・・何だと?」
ピタリとネウロの手が止まった。
その隙に言ってやる。
「私じゃなくていいじゃない! そういう気分を晴らしたいならもっと別の、余所でやってよ!」
叫ぶように怒鳴りつけてやる。
そんなことをしたらまた天邪鬼でS気質の頂点でもあるこのバケモノに虐げられる、と充分すぎるほど承知していても止められなかった。
・・・・だけれど。
突然、パシッと頭を叩かれて。
「何の勘違いだ、 ・・・・ヤコ?」
真正面からキョトンと凝視された。
「我が輩が、弄り倒そうと思うのは貴様だけだぞ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え」
あんまりにもごく当然、ごくごく普通にさらりと言われ。




「なに・・・・それ・・・・」




そんなのまるで。




まるで。




「なんなのよ、・・・・・・」




それ以上、二の句が告げなくなった弥子にネウロは。
「そういえば今日はハロウィンというやつだったな。 先刻のカボチャはくれてやる」
見事に砕け散ったが貴様なら拾ってかき集めたもので十分だろう、と言い放ち、
呆気に取られポカンと固まった弥子が抵抗も忘れて呆然としているうちに、ふわりとそれはそれは有り得ない、
たぶんそんな触れ方は初めてのやわらかなキスをした。
















「え、と・・」
なんでこんな展開になってるんだろ、と混乱の冷めやらぬまま、流されまくって結局ソファーから抜け出ることは出来なかった。
そして今、ネウロの手は弥子の露わになった胸を撫でている。
消え去らない羞恥は残っていたけれど、ともすれば 『優しく』 と形容してもおかしくないかもしれない愛撫に、弥子は混乱の度合いを深くする反面、少し安心する。
「・・・・んっ・・」
決して大きくはない胸の膨らみを確かめていた指先が、小さく淡く色付いた乳頭に触れた瞬間、
薄い胸がふるりと揺れる。
ネウロの指先は矢張り今までにないほどの優握さで胸の尖りを軽く摘まみ、
そうして指の中で転がすような愛撫を送った。
「ぁ、・・・・ッ・・・・」
敏感な胸をいじられ、反応してしまう弥子が上体を捩ると、逃したくないらしい長い両腕が背中に回って抱き上げられ、
胸をネウロに向けて反らさせる形の体勢にされて、
今度はついっと口唇を寄せられた。
「や、・・・待・・・・っ・・・」
ぷるっと震えた乳頭を口唇で挟み込み、そして緩く引っ張る。
そんな愛撫を数回受けたあと、
「――― ひゃッ・・・!?」
小さく硬く尖ったそこを、不意打ちで軽く舌が弄っていき、思わず変な声をあげてしまった。
「気に入った」
満足気な声のあと、ネウロは重点的にその部位を愛し始めた。
子供のように吸って、時折舐め上げて、手を使って揉みこんで。
徹底的なその愛撫、擽ったさとぞくぞく下肢に直結する甘い快楽に弥子の頬は上気し、細身の躰が少しずつ熱を溜めていく。
「・・ぁ、ん・・・!」
最後にかりっと僅かだが歯を立てられ、たまらず甘い吐息が漏れた。
きちっとそれを聞き取って、より満足度を深めたネウロが再び頬を捕らえ、キスをしてくる。
歯列を割り、奥歯の方まで舌が口腔に侵入してきたが不思議なほど不快感は全くなかった。
彼のキスはとても巧みで、上顎を舐める所作に頭の芯がぼうっとしてきた。
一方、横腹のあたりではホックを外され、はらりと床に落ちる制服のプリーツスカート。
下着だけになった腰骨のあたりを手が何度も撫でていく。
口唇を吸われながら、腰を往復して彷徨うネウロの手がくすぐったさと一緒に妙な疼きまで連れてくる頃、ようやく口唇が離れた。
「・・・・ん・・・っ・・」
けれど未だ、撫でる手の動きは止まらない。
まるで宥めるかのように、そしてこれから下肢に触れるということを示すかのよう、何度も何度も往復する。
昨日とは違い自分が(それなりに) 従順だということも少しは関係してはいるのだろうが、それを差し引いてみても。
「・・・・っ!」
ずっと腰骨を撫でていた指先が、やっとそこに触れた。
下着の上から、伺うようにやんわりと触れてくる。
直接的ではない、もどかしい刺激にひくっと戦慄くその箇所。
「、っは・・・・んっ・・・」
ネウロは先程の腰骨の時と同じく、指の腹で同じところを何度も何度も触れていく。
曖昧な刺激ゆえ、ゾクッと背筋を貫く感覚に身を竦ませた弥子の反動でソファーが軋んだ音を立てたのを切っ掛けに、
唯一身に着けていた下着を膝まで一挙に滑り落とされた。
「少しでいい、膝を上げろ」
「あ・・・・」
低い声の命令に、ただ言われるまま従って上げた両膝頭を通って完全に下着を脱がされてしまい、
ついでに両膝に手をかけられ、ぐいっと脚を開かされると、
突然激しい羞恥に襲われた。
乳房への愛撫と、先程少し触れられた余韻にすでにそこは濡れはじめていて、
そんな状態を、その元凶に眺められる。 頭では仕方ないとわかっていても、感情が追いついてくれない。
「や・・・・」
たまらず目を閉じ、ふるふる頭を横に振ろうとしたところで、
ネウロの喉が小さく上下したのに気がついた。
こんな自分の姿に欲が沸いたのか。
まさかそんなことあるわけない、と思いながらも本当のところはわからず、
「あ・・・・!」
目蓋を閉じるタイミングを逃したまま昨日と同じように潤いを帯びているその箇所にネウロの吐息がかかるのを感じて、
ひくっと腰がひける。
「、ん・・・・ッ・・・!!」
ゆっくりそこに口付けられた。
口唇が吸い付いてくる感覚、糸を引く分泌の体液をちゅうっと啜られる淫らな快感に、どうしても腰が逃げ打つ。
それを簡単に押さえ留められ、より口での愛撫を施されるたびにそこから蕩けてしまいそうな感覚を覚えた。
「っ・・・っ、あ・・・っ・・・ぁ、・・・っ・・・」
上擦って鼻をかかった切ない声が口をついて出てきてしまう。 恥ずかしくて恥ずかしくて何とかしたかったけれど、止められない。
襞部分を軽く舌先でなぞられ、何度も繰り返される。
昨日だってほとんど同じことをされていたにも関わらず、今日は、今は我慢がきかないほど気持ちいい。
やわらかく丁寧に施しを受けているような、
彼らしくなく、まるで大切に扱われているかのような錯覚に捕らわれそうになって、
慌てて否定しようとするも、でも実際本当に信じられないほど優しい触れ方で。
ぴちゃ、と濡れた音がする。
唾液の糸なのか、それとも体液の引くそれなのか、はたまた両方の混じったものなのかよくわからない細い糸を舌先から引くネウロに、
ついでのつもりなのか内腿まで舌を這わされて折り曲げた両膝がかたかた震えて止まらない。
「や・・・違・・・・っ・・・・」
触ってほしいのは腿じゃない、と弥子は本音を呟いてしまうが、自分ではそう口走ってしまったことにも気付いていない。
けれどネウロの耳は確実にその言葉尻を捕らえていて、滑らかな柔肌を啄ばみながら満足気に目を細めた。
それなら望みのままにしてやろうと再び口を中心部に持って行かれて、余すところなく粘膜を探られていく。
「あ、んん・・・っ・・・・ッ、っ、・・・・!」
流れ出る分泌液が目に見えて増し、ネウロの顎を伝って落ちる。
次々と湧いてくるその蜜を舐め取りながら襞へ刺激を与えていくのだけれど、
刺激されるたび大量に溢れるそれは結局堂々巡り、むしろ追いつかない。
ネウロは弥子の体液で喉を潤そうと、舌を使って掻き集め、ちゅるっと吸って激しく啜った。
「だ・・・、め・・・・っ・・・!」
迫る高みを堪えきれず、弥子は腰を跳ねさせる。
「達くか?」
啜られる途中で喋られて、敏感なところに息の振動まで感じ取り、余計追い詰められる。
ここまで来てしまったら、もう意地もどこかへ消え去り、たまらず素直に小さくコクンと頷いた。
すると。
彼は口唇を離し顔を上げ、素早く体勢を変えたかと思ったら突然顔を胸に埋めてきた。
「え・・・・っ・・」
戸惑う弥子に構わず、ネウロは尖った乳頭に口を寄せ、口唇でツンツン突付く。
「なっ・・・・、」
今更胸を弄られたって大したことじゃないはずなのに、
たまらないほど感じてしまう。
下肢に溜まった甘く重い痺れはそのままに、新たに甘い愛撫を胸に受け、
快感のやり場のない躰は疼いて疼いて仕方がない。
「っ・・・やっ・・・だ、やだ・・・・ッ・・・」
嫌じゃない。 こうされることは本当は全然嫌じゃない。
でも言葉になる声はそれだけで、それ以外の何かを口にしようとすれば間違って、全然別の、自分でも信じられないほど甘い言葉を告げてしまいそうで。
「・・・ッ!? や、ぁ・・・っ噛まないでよ・・・・っ」
乳頭に歯を立てられたまま軽く引っ張られ、悲鳴に似た高い声。
当たり前だがしかしネウロとしてはやめる気などほとほと無い。
弄られ、散々刺激を受けて鮮やかに色付く尖りを、慈しむかのように何度もそろっと舐め上げながら、
ちゅくっと音を立てて吸い付く。
「――――― きゃふッ!!?」
それだけのことにも、元々限界まで高まっていた躰は簡単に、極みに連れて行かれた。




「・・・ん・・・・」
躰に力が入らない。
ソファーに沈み込み、くったり動けずにいた弥子の前、ネウロは多少乱れた自分の髪をかき上げ直しながら無造作に両の手袋を外す。
弥子が霞のかかった頭で眺めながらもその意味と理由がわからずにいると、
「・・・・。 胸だけでは完全に達けんだろうが」
たぶん弥子本人より、余程肉体と躰のことをわかっているらしい。 当然のように言われた。
「・・・・・・・・」
なんだか少し否定してやりたかった気もしたけれど、事実、下肢はまだ疼いていて。
「・・・・・・・・」
どう返事をすれば良いかわからなかったから、ただ睨むフリをしてその顔を見た。
「? 不満か?」
「・・・・・・・・違うけど」
小さく否定しておいて、ふいっと横を向く。
とは言え、どうせ横を向いてみてもすぐにくいっと真正面を向かされるということは経験でわかっていたのだが、
意地が邪魔をして向かずにはいられなかった。
そんなことも、きっとネウロは弥子に関して全て最初からわかりきっているのだろうけれど。




この体勢を取らされるのは何度目になるだろう。
潤って瑞々しい襞に、ついっと舌が侵入をしてきた。
「・・・っ・・・・」
ぴくっと震える躰。
言われるまま膝を立てて開いた弥子の襞の奥まったところは、そっと舌が掠めただけでヒクリと戦慄いた。
「ん・・・・っ」
ネウロの舌が肉襞を割って深くまで挿し入ってくる。
熱いはずなのに、人肌を感じさせないぬるい体温は淫靡な異物感に摩り替わって、
下肢の疼きの度合いを更に悪化させた。
より奥まで進む舌。
「・・・・く・・・んっ・・・!」
しかし悦ぶ箇所、ちょうどその手前で舌先が蠢く。
本能的についもっと奥でそうしてほしくて無意識に腰が動いてしまうけれど、長さが足りず奥までは届かなかった。
「・・・っん、ぁ・・・・っ・・・っは・・・・っ」
いやいやをするようにかぶりを振る。
もどかしくてたまらない。 もっと奥まで触れてほしいのに。
どうしようもなく揺らめいてしまう腰は、もう弥子ではどうにもならなくて。
察したネウロがフッと笑って舌を抜き、代わりに指を宛がった。
「・・・・っ!」
みるみるうちに指が埋め込まれていく。 舌より質量のあるものを欲しくて欲しくてたまらなかった爛れた襞は、
長い指を濡らしながらもっと奥へ奥へと誘って離そうとしない。
興味深げだったがネウロは結局何も言わず、そのままもう一本、指を増やす。
普段なら、「このインランが」 とか 「淫猥が」 とか絶対絶対言われるはずなのに。
「―― ひゃ・・んッ」
奥で指を動かされて、びくびく躰が悦んだ。
ずっと届いてほしかったところを突いてもらえ、喉が仰け反る。
弥子の感触を確かめるかのように、ネウロは指を繰り返して動かす。
「ぁ・・・・あッ、ん、・・・・ぁっ・・・・」
戯れのよう、気まぐれに強く弱く出し入れされる指に、立てられた膝と脚が小さく震えだした。
肌が粟立って、性感からくる涙が目じりに浮かぶ。
「やぁぁ・・・・ッ!!」
突如、あられもない声で身悶えてしまったのは、もう片方の指先で肉芽を剥かれ、舌先で転がされたからで。
愛撫を痛いほど感じ取ってしまう小さな萌芽に耐え切れず、涙が零れた。
肉芽を弄られている間も、指は襞を割って出し入れを繰り返されていて、込み上げてくるものに翻弄される。
「・・・っだ、め、だ・・め・・・・ッ・・・」
今にも消え入りそうな弥子の喘ぎと懇願に、口許をネウロが緩ませる。
「何がだ?」
「っや・・・・ぁッ!」
くりくりと指先で摘ままれて軽く捩られた。
これ以上、そこをいじられ続けられたら、彼自身を受け入れる前に意識が飛んでしまいそうになって、
弥子はネウロの名前を呼んで、それから。
「・・・・も、・・・しないで・・・・っ・・」
言葉自体は制止で拒否、それ以外のなんでもないのだが、
含まれている響きと口調と訴えかける目と躰の全部は、先をせがんでねだって促すだけのもの。
「・・・・フン」
良いだろう、と軽く息をつかれ、
両脇腹に腕が回った直後、造作も無く深くソファーに腰掛けた彼の上に向かい合って乗せられる形になった。
それから緩やかに躰を降ろされていく。
ネウロの猛ったものが真っ直ぐ、肉襞を擦りながら貫いて挿入ってくるその感覚に、
小刻みに震える躰を止めることはできなかった。
「・・・っ・・・・、・・・」
躰は、弥子の意志とは無関係にきつくネウロを締め付け包み込み、蠕動し続ける。
その反応に満足したのか、軽くネウロは抜き挿しをした。
「あっ・・・、ぁ・・・!」
こうやって向き合って乗せられる体位は初めてで、どうしたら良いのかわからずに俯く弥子を宥めるように、
腰を使ってゆっくり捏ね回す。
「ん・・・・!」
細い躰を片腕で支えられ、背中に回っている腕が肩甲骨を辿り、それに一瞬気を取られた途端にぐっと奥を小刻みに突かれ、
たまらず弥子は目を閉じ、唇を噛む。
「――――ヤコ」
「っ・・・や・・」
耳のすぐ近くで囁かれた低い呼び声。
それほど甘い韻が含まれているほどではなかったけれど、こんな時にそんな呼び方は反則で、腰に来る。
でも無言より、何にもないより余程よくて、 ・・・・そう気付いてしまった自分がもうわからない。
おまけに今の抱き方は乱暴なものでも凶暴なものでもなく、どちらかといえば躰の熱を味わうような。
「・・・ぁっ・・・・ん、・・・んっ・・・・っ・・!」
緩く動かれるたびに痺れる快感が全身包み込み、下肢が蕩けて濡れた。
彼の肩口に回した腕も、かたかた震えて全く力が入らない。
奥まで突き上げられる衝撃。
たまらず弥子は背中を反らせ、白い喉もくっと仰け反る。
けれど逃してもらえず、激しく穿たれて。
「は・・んッ・・・・」
下肢がびくッと一際大きく戦慄いた。
一旦軽く達したのか、今にも崩れ落ちそうになる弥子の上半身をネウロは支えながら、僅かに開かれた口唇を塞ぐ。
「・・・・んっ・・」
狭く小さな口内で絡めた舌は躰の中と同じように熱く、舌を吸い上げるたびに肉壁が収縮し、
息継ぎのため、薄く口唇が離れた隙に弥子がうっすら目蓋を開けるとすぐ間近に彼の顔を見ることが出来た。
「・・・・・・・・・・」
至近距離で見る化け物であるはずの顔は、
悔しいけれどとても認めてやりたくなんかないけど、弥子が見てもきっと誰が見てもとてもとてもいい男で。
なのに中身は人でなしでワガママで傲慢で冷徹で気まぐれでサドっ気全開で、
ここ最近の弥子の被る受難災難のほとんどはコイツのせいだっていうのに。
「能無しが」
「・・・・えっ・・」
「今、余計事を考えていたな?」
「・・・・・・、」
「そんな余裕があるとは驚きだ」
「っ! や、動かな・・・・っ・・・!」
意地悪そうにニヤリと哂ったネウロに腰を揺らされて、また目を開けていられなくなって固く目を瞑った。
攻められる下肢だけでなく、うなじのあたりまでぞくぞくしてくる。 もう躰が持ってくれない。
気のせいか、ネウロの動きも心持ち激しくなったような気がする。
・・・・・・こんな行為に耽っていながらも彼に、そんなはっきりわかる肉欲と情欲があるのかは未だによくわからないのだけれど。
「・・・・ぁ・・・!」
波のようなものが躰を襲う。
ともすれば意識まで持っていかれそうだった。
全身だけでなく、奥歯までかたかた震えて音を立て始める。
「ひ・・・、ぁ・・・っん・・・!!」
限界まで抉られて、躰が強張った。
もう、息も上手にできない。 なのに甘い声だけ出てしまうのが不思議なほど。
そんな弥子を見て、ネウロはこれで仕上げとばかり一度ギリギリまで引いた腰を激しく深く突き上げ、
「んっ・・・ゃ・・ぁ、あ・・・・! ―――――っ・・・ッ!!」
一際高く甘い嬌声をあげながら、弥子は体内に吐き出された同等の熱に浸り、
それから僅かの間だが思考を余韻の向こうにやって、まどろんだ。

























・・・・までは良かったのだが。
寒くて震えて目が覚めたのは三十分後のことである。




10月も末日、明日からは11月のこの季節。
目を開けた途端にくしゃみが連続して三つも出た。
寒い。 とんでもなく体が冷えている。
「ええええ!!?」
それもそのはず、(当然といえば当然だが) 自分は先刻の格好のまま、つまりほぼ何も着ていない状態でソファーの上に放り出されていて、
慌ててあたりを見回してみれば無人、彼は姿を消していて、何の気配もない。
おまけに来たときには確かに稼働していたエアコンのスイッチもご丁寧に 『切』 になっている始末で、
「アイツ・・・・!」
出来ることならやっぱりぶん殴ってやりたくなったところで、鼻水まで出てきて止まらない。
間違いなく風邪をひく一歩手前、もしかしたらもうすでに手遅れかもしれない。 証拠に悪寒までしてきた。
「寒・・・・っ・・」
兎にも角にも服を着て、もう今日は家に帰る。
帰ってまず温かいお風呂に入って暖まったら晩ご飯をたくさんたくさん食べて、眠くなったらそのまま眠って、
明日の朝起きてから、それからこの混乱している頭と心とを整理してまとめていろいろ考えてみようと決めた。
うん、なんだか弥子は驚くほど前向きだ。












もちろん事務所の廊下で砕け散っているカボチャを集めて拾って持って帰ることも忘れずに、
カボチャには冷え対策の効能があるというから、家に着いたら晩ご飯の前にでも早速食べようと思った。










―――――――――――― ハロウィンより食い気。












モ ウ シ ワ ケ ゴ ザ イ マ セ ン デ シ タ 。 
ニ ド ト ヤ ラ ナ イ ト オ モ イ マ ス 。

あれ? あかねちゃんの存在は・・・・? と自分でも書き終わってから気付きました。
どこかに出張に行ってたとでも思い込んでください。 スミマセン。