ワードプレイ






――――――」


「〜〜〜〜〜!」






――――――、」


「〜〜〜〜ッ!!」






「、――――――」


「!! 〜〜〜〜ッッッ!!!!」






晩秋の気だるい午後である。
探偵事務所内、季節柄問わず年がら年中、毎日毎日毎度毎度繰り広げられている、
魔界生物と女子高生との何やかやの遣り取りに壁の中、あかねはふうっとタメイキをついた。
毎回毎回、よくも飽きないものだと(※二人とも) 感心するほど繰り返されている、
「ネウロ→弥子」 という図式の揶揄というかちょっかいと言うか言葉責めというか、
はたまた彼の一方的な暇潰しというか。
日がな問わず手を出して面白がり続けている彼も彼だと思うのだけれども、
その度に律儀に反応して反論して(結局、その反論もヤブヘビになってしまうことが九割以上なのだが)、
結果、散々に打ちのめされる彼女の学習能力の方もどうかと思う。






が、それにも流石にもう慣れた。
彼の、ネウロのサディスト性質S性癖は元々のものでどちらにしろ慣れるしかないし、
弥子については元来のM、真性のマゾヒスト属性として理解することにあかねはしている。
(そもそも初めからあかね自体に被害は皆無であるし)
そして本日も例外なく展開されていくSMコンビの会話、台詞集はよくよく耳を傾け、
注意しつつ聴いてみると、なかなか研究・分析のし甲斐があって気付けばかなり興味深い。
だから今日も、壁の中にてそれとなく聴いていれば、
探偵机の脇にはいつの間にか彼の長い足の下、むんずと床にて踏み付けられている弥子の姿が。
















弥子(以下、Y)  「いい加減にしてよ・・・!!」


ネウロ(以下、N」)  「能無しが」






Y 「っ〜〜〜〜!!」


N 「ガラクタの方が、貴様よりまだ使い道があるというものだ。 となると貴様はクズか。 チリか。
   いや、チリも積もればゴミの山だな。 だが貴様はゴミにもなれまい」






Y 「し・・・失礼な・・・・。 って今更だけど!!」


N 「サルめ。 貴様はサルを装った人間か? それとも人間を装ったサルか?」






Y 「よ、装っ・・・・」


N 「ん? 違うのか。 それとも床に這いつくばる様は蛆か、苔か」






Y 「ウジって、アンタねえぇぇぇ!!」


N 「喜べヤコ。 蛆もいずれは成長する」






Y 「どういうこと?」


N 「。 いずれはハエになるということだ。 ハエになり、腐った食物の上で手を擦り足を摺る。
   貴様の末路にピッタリだろう」






Y 「冷血ッ! この冷血鳥ッ!!」


N 「ありがたい。 最高の誉め言葉だな。 ・・・ん、そんなハエに誉められたら我が輩、腹が空いた」






Y 「胃拡張なんじゃないの、(小さい事件だったけど) 昨日も食べ・・・」


(言いかけた弥子にネウロは 『かもしれん』 と珍しくも寛容に頷いて)


N 「生き餌が必要なのだ」






Y 「デリバリーでも電話して頼めばッ」


N 「痴れ者め。 我が輩は【生き餌】と言ったのだ」







Y 「い・・・・いきえ?」


N 「(と言う訳で) 手軽に貴様で良い」






さらりと簡単に言い切ったネウロに、弥子は床からひょいと肩の上に担ぎ上げられて。






Y 「ま、まままま待ってよ・・・・!!!!」


N 「ヤコ? 何か異論があるのか」






Y 「すべからくあるわよッ!!」






(肩の上、じたばた暴れつつ捲し立てようとする弥子に、)






N 「累日、学習能力が本当に皆無だな貴様は」






(彼は軽く溜め息をつき、一旦区切ってそれから)






N 「俗悪低俗俗文極まりない貴様の意向など、我が輩の知ったことか」
















フンと鼻先で哂い、(担ぎ上げられてアワアワもがく弥子共々) 隣室に姿を消した。


その際、弥子がいる方とは逆の肩ごし、ひらひらと小さくあかねに手を振る彼の合図もまあいつものこと、
二人が出てくるまでの留守番を宜しく頼むという、あかねとしては 「またか」 の日常茶飯事。
















そしてつい先刻の二人の会話もいちいち反芻し、一言一句を思い出してみればやはりやはり興味深い。
ちょっと聴き、端から普通に聴いているだけであればごく他愛無いやり取りにしかならないのだけれども。






まず弥子の場合。







 い加減に(以下略)」
 〜〜〜〜(以下略)」
 ・・・失礼な(以下略)」
 、装っ・・・(以下略)」
 ジって、ア(以下略)」
 ういうこと(以下略)」
 いけつッ!(以下略)」
 かくちょう(以下略)」
 リバリーでも(以下略)」
 ・・・いきえ(以下略)」
 、まままま待(以下略)」
 べからくある(以下略)」






無論のこと本人がそれとわかって発言しているはずもなく、






ああ、無意識って本当にオソロシイ。
























加えてもう半分、
ネウロの場合も同じようにして最初の一文字のみを読んでいけば例によってこちらも以下略以下同文(???)。






しかし彼の場合になると弥子とは逆に反対に無意識であるはずがなし、






何だか少しだけ二人に妬けて、あかねは三つ編みおさげのしっぽをぷるんと揺らした。




















なんだか昔に似たような話を書いたことがある覚えがあるんですが、
まあジャンルが違うし実際中身も少し違うし、まあいいだろうと(オーイ)。
ちょっと力技のこじつけ部分もございますが、ご勘弁願いたいです・・・・(だって不自然だよね台詞が・滝汗)。
とりあえず文にするにはちょいと恥ずかしかったので(なにを今更)ネウロの方は省略しました。