[ Left hand ]




※主人公の名前は公式(?) の 【鳴上 悠】 でやらせていただきました 




※既出の [Shake hands、Right、] と対になってます。 11月半ばくらい。
(※CP逆ですのでご注意。 前のを読んでなくても大丈夫・・・・なはず)







「ちょっと一っ走り、ビール買って来てくれないかな」




先週買い溜めておいたうちの、最後の一缶を開けながら、生酔い状態で足立がそう頼むと。
「・・・・・・・・。 高校生なので、俺だと売ってもらえないです」
最初の溜めの数拍は 『呆れ』 、残りのワンセンテンスは 『諦め』 の響きをもった返事がきた。
「あー、そうだったっけー。 そっかそっか、そういえばそうだったよねー」
知ってたけどわかってたけどとりあえず言うだけ言ってみたんだ、と遅すぎるアフターフォロー。
今の絶対堂島さんには内緒にしといてよ、これマジで頼むから。 と続けたところ、
彼は黙って頷いて、それから口を開いた。
「腹が減ってるなら、何か作りますけど」
でも冷蔵庫の中、ほとんど何もなかったですよね、と呟きながら立ち上がる鳴上を、
ビール缶に口を付けつつ、足立はぼんやり眺めつつ。
「あー、いいよいいよ。 面倒だしホントに材料なんにも無いから」
だからこうやってビールで紛らわせてたワケだから、
と同じく自分も立ち上がって高校生の行動を緩く止め留めて、
「それにさ、」
ありありと自覚するアルコールでふわふわ浮付いた頭で、
軽く持論 (というほどの大袈裟なものでも実際のところはないのだけれど) をひとつ。
「ビールは食事の代わりになるけど、食事はビールの代わりにはならないからね」
「・・・・・・・・・・ええと。 よくわかりません」
「だろうねー。 まあ、そのうちわかるようになるんじゃない? 大人になったら」
なれるといいよねー、で、一緒に呑めたらもっといいよねーーー、
とそれこそ色々なイミを込めながらもへらへら笑ってやって相手を窺えば、
つい一時間半ほど前、夜の商店街でぱったり出くわし、
「時間あるなら来なよ。 来る?」 と自室に連れ帰ってきた鳴上は、制服姿のまま、
「足立さん、」
一度名前を呼んできてから、溜め息を一つ。
「早く寝た方がいいんじゃ・・・・。 明日も早くから仕事って言ってましたよね」
「うん。 朝イチで書類と格闘」
キミは休みなんだっけ、いいよねえとこの部屋に来るまでの会話を軽く反芻して、
改めて学生の休日の多さに苦笑いする足立に、重ねるよう鳴上は。
「だったら、もう、日付変わりそうですけど」
腕時計に視線を落とし、それから足立を見てくる。 だから。
「・・・・。 なんで早く寝なきゃ駄目なのさ」
酔っ払い加減も手伝って、
隣で緑茶のペットボトルを手にしている彼にずいっと真正面から問い掛けると、
「なんでって・・・・、明日も早いし、寝ないと身体に悪いです」
十も年下のこの学生の返答は、ごく一般的、ごくごく当たり前の一般論。
それがやたらとつまらなくて、
「その直訳は、僕に身体を壊してほしくないからってことでいいのかなあ?」
ニュアンスで言い換えながら、すたすたと数十センチ、移動。
元々第二まで外していたシャツのボタンの更にその下のものまで次々と外しつつ、
抵抗の間と隙とを与えないタイミングで後ろから若い身体を半ば羽交い絞める形で抱きしめた。


「ね、しようよ。 ていうか、させてよ」


「・・・・・・え、」
今更ながらも僅かに驚いて、逡巡の意を見せる年下相手、優しく強請る。
「けっこう酔ってるから、そうヘンなことする余裕ないし。 普通に一回で終わると思うからさ」
「でも」
「でも、何。 あんまり四の五の言ってると、酔っ払ってるから逆に何でもやりかねないよ? 僕」
「ちょっ・・・・、」
いつかの何かを即時に思い出してしまったのか、鳴上が咄嗟に顔色を変える。
それに内心、「あ。 あの時のそんなにトラウマになってた?」 と意外さを禁じ得なくも、
「ウソ、ウソ。 そん小細工してる時間も無いし。 ・・・・でも、あー・・・・、けどわかんないなー。 誰にでも二面性ってあるし」
甘い言葉、と脅迫に近いそれの併用。
優しい言葉のあと、少しトーンを落として不穏さ加減のみを強めれば、
優しい言葉だけのときよりもグンと効果は増す。
それに僅かに気おされながらも、鳴上は往生際が宜しくない。
「いつも、呼ばれて突っ込まれるのは俺、ですよね」
十日前もそうだったし、その少し前も、と指折り数えて告げてくる。
「・・・・ふーん。 ってことは、別にやりたくもないのに僕に毎回付き合わせられたってこと?」
対して足立は、物腰はあくまで軽く。 しかし落とし目のトーンで言質を攫う方向で。
「そういう意味じゃないです、・・・・っ・・・ン、・・・・っ!」
そんな口調に多少なりとも焦りを隠せず、鳴上は即、否定の意を示してきたのだが。
噛み付いて襲う勢いで口唇を塞いで、その続きは言わせない。
「んッ・・・・、っ・・・・」
ちょっと酒臭いかもしれないけど我慢しなよ、と逃げ惑う舌を捕まえるが早いか、思い切り吸い上げた。
そのまま満足するまで何度も絡めては離し、離してはまた吸い上げ口腔の味を愉しんで、
そろそろ互いに酸素が足りなくなり、呼吸がせわしなくなってきた頃、ゆっくり口唇を解放する。
直後、間を置かず制服に手をかけた。
「なッ・・・・!」
「それじゃ、確かめてみようか」
「何、を」
「キミが本当に、ただ僕に流されるまま、イヤイヤ組み敷かれてたのか」
言いながらぺろりと首筋を舐め上げてやれば、ビクッと顕著に反応を示す身体。
「ちょ・・・っ・・・!」
否応なしに受け取った性感に、鳴上の顔には、本気の焦りが見える。
だから足立も、この際酔いはどこかに放り投げ、そこそこ本気でなだれ込みたくなった。
「場所ももう面倒だから、ココでいいよね?」
時刻は深夜。
小さなテーブルの上にはビールの空き缶が数本、
視線を床に落とせばすぐ脇に、軽く折り畳まれ置いてある八十神高校の学ラン。
ほとんど玄関が丸見えの、この場所。
しかも、二人揃って立った状態。
「ここ、って・・・・っ・・・・」
「いいじゃん。 玄関鍵かかってないけどさ。 誰も来ないよ。 ま、来ちゃったら完璧にアウトだけどね」
「いくらなんでも・・・・!」
鳴上としては、流石にいくら何でもこんな時間には誰も来ないと頭ではわかってはいるものの、
どうしたってハイそうですよねと頷くわけにもいかない様子で。
けれど足立は構わず、
「ま、キミがしたくないならそんな乱れないだろうし。 すーぐ終わるんじゃないの?」
棘のある言い方で、息を飲む鳴上をずいずいと押し、立ったまま更にその場から数十センチ移動。
壁際まで連れて行く。
こういうとき、家具も生活用品も、どこまでも必要最低限のものだけ、
一般生活必需品、もしかしたらそれすら幾つかは足りていないかもしれないというレベルの、
普段からほとんどモノを買い込まず、どちらかといえばがらんとした棲み処でしかないこの部屋。
こんな自分のライフスタイルはとてもとても都合がいい。
何にも遮られて邪魔されることなく、邪魔にすることなく、鳴上のその背を壁に押し付け、
逃げ道を失くさせてから細い両脚の間に自分の左足を割り込ませた。
間髪入れずに膝でその中心部を刺激してやると、
「・・・・っ・・・、」
その口から吐息が漏れた。
「もう反応してるけど。 ちょっといくらなんでも、早すぎない?」
「違・・・・!」
「違わないって。 思いっきり元気じゃん」
手早くベルトに手をかけ、じたばたもがく鳴上を押さえ込みながら、彼の下肢を覆う衣服を制服ごと全て下にすべり落とす。
「ッ、やめ・・・・!」
露わになったそこをぐいっと握られて、鳴上の身体から一気に力が抜けた。
「若いよねえ? いろいろ羨ましいよ」
「離・・・・し・・・・っ・・・・ッッ・・・・」
あえて揶揄ってその顔を覗き込むと、握られて刺激される感覚に、鳴上はかぶりを振って堪えようとしている様子なのだが、今更どうしたって、すでにどうにかしようとして何とかなるものではなく。
「ホント、素直じゃないなー。 反抗期? でもそれってちょっと遅くない?」
「誰、のせいだと・・・・っ・・・」
「責任転嫁はやめといた方がいいって」
言い切って足立は、すとんと鳴上の前に腰を落として膝を付く。
そして、眼前で僅かに震えながら頭をもたげる鳴上の肉棒を改めて間近で見やった。
「もうこんなになってちゃ、言い訳のしようも無いし」
「!!」
羞恥に、鳴上の目のふちが赤くなる。
それをきっかけに、先端を突つくように撫でれば、腰ごとビクンと大きく戦慄いた。
瞬時に示す反応に気を良くしながら今度は指をきっちり絡ませて扱き上げると、みるみるうちに透明な蜜が浮かび上がって伝い落ちてくる。
「アルコールより、よっぽど深酔いしそうだよね。 キミの」
「っ・・・・!」
たまらず息を飲む鳴上に、薄く笑って足立はその肉棒の先端を咥えた。
「やめ・・・・!」
本当に焦った制止の声は何も役に立たない。 雑音としてすら足立には認識されず、
咥えた彼自身を口腔の粘膜で締め付けながら、括れの部分を擦り上げた。
「ぅ・・・、・・・・っっ・・・・!」
思わず腰を引こうと鳴上が動くけれど、背中は壁に密着している状態でどこにも行けず、
せいぜい下肢を震わせるくらいしか出来ない。
それすら足立は両手で抑え付け、次は舌を使いながら濡れた音を立て、丁寧に舐め上げる。
嫌でも響いてくる唾液と口許が起こす淫らな音に、鳴上も煽られる。
足立の勝手な物言いと言いがかり(・・・・) に、観念したくはない、
それに屈して乱れたくなんてないと思っているのに、跪いて自分のものを愛撫する十も年上の男の姿に、
どうしようもなく身体の芯から熱くなった。
「、っ・・・・ッ、く・・・ぅ・・・・っ」
足立の髪を掴んで、何とか引き離そうと力を込めるが、無駄な努力にしかならない。
連続して与えられる刺激に、腕からも力が抜けてしまい、
「ん・・・・ッ、・・・・っっ・・・・」
舌で裏筋をゆっくりなぞられ、ぱくりとその後ろの双珠にも咥え付かれて、
このまま立ち続けていられないほど、脚ががくがく震え出した。
けれど両脚の間には足立がしっかり割り込み、
背中は壁が支えになってしまっているため、簡単に崩れ落ちることも叶わない。
と、丹念にそこを弄っていた足立が、ふいっと顔を上げた。
「悠くん、」
「・・・・っ・・・・?」
「ここ。 もう、キツイだろ?」
告げながら、くいっ、と濡れた先端のぬるつきと、その指先に引いた糸を足立は確かめる。
言わずともがな、弱い弱いそこはもう限界近くて、
真っ赤に色付いた鳴上自身は、
あと少しの愛撫で今すぐにでも吐精してしまいそうなほど、熟れている。
わかっているからこそ、そこでぱったり刺激を送ることを止めた。
この状態で焦らされるのは、かなりつらいことを承知で。 否、それ前提で。
「足、立さ・・・・っ・・・」
「ん? 何?」
「卑怯、です・・・・っ!」
「えー? どこが? 思いきり真正面突破の手法じゃない? これって」
高校生の文句を頭から否定しながらも、そろそろ音を上げそうな鳴上に、足立の頬も自然と緩む。
「ほら、続けて欲しいなら言いなよ」
間近、濡れた先端に足立の息が絡むのを感じ取り、鳴上が身じろいだ。
尚も決して膨れ上がったそこには触れず、足立は彼の脚の付け根のあたり、皮膚の薄い敏感なところを狙って口を落とし、いくつも吸い上げる。
「つッ・・・・・く・・・・!」
もどかしい性感に、限界も限界の鳴上自身から先走りの蜜が垂れる。
「悠くん」
そこで、あえて意識して優しげに名前を呼んでやれば。
「あ・・・・!」
切羽詰まっているつらさと、熱に翻弄される下半身に、至極他愛もなく鳴上は陥落することを決めたようで。
荒い呼吸の間、小さく、本当に小さく掠れた声で名前を呼ばれた。
「も・・・・・・・、早、く・・・・」
目許を赤く染め、その快感に蕩かされた表情で呟かれる。
「イカせて欲しいって?」
諭すよう問い掛けると、素直に顎が縦に動いた。
そうそう最初から素直な方が人生ラクに渡って行けるよ、と苦笑混じりで思いながら、
足立は鳴上が望むままに再び口腔に咥え込み、震える肉棒を激しく扱き出す。
「! あ・・・・ッ、ーーーーッッ・・・・!!」
するとあっという間、驚くほど呆気ない早さで鳴上は精を弾けさせた。


「は・・・・っ・・、っ・・・・」
吐精の余韻に、鳴上は自力で立っていることが出来なくなり、
立ち上がった足立の肩越しにもたれ、荒い吐息のもと足立に全身を預ける形になる。
上半身は、普通に制服シャツ着用で。
けれど下半身の衣類は全て床に落ち、しかしまだ足元に纏わり付いているこの様。
「・・・・なんか物凄くはしたない格好だよ、キミ」
「ん・・・・」
「ああでもそうさせたの僕か。 ごめんね?」
先手を取って、小狡い手を使う。 甘く謝って、色素のほとんど無い、その髪ごと頭を撫でてやると、
肩のあたりにあった鳴上の手がぎゅう、と強く掴んできた。
「?」
どうした? と肩口の鳴上のその顔を覗き込めば、
やはり色素の薄い瞳も僅かに揺れていて。 はたりと足立と目が合うと、慌てて視線を逸らす仕種。
先程まであんなに素直じゃなかったくせ、
ここに来てそのあからさまな様子にたまらず足立は笑いを堪えきれなくなる。
「やっぱりカワイイよね、本当にさ」
返事はいらない。 独り言のよう呟いて、よしよし、と再び髪を撫でた。
「・・・・朝イチで出勤だから。 一回で終わりにするから」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・起きられますか、朝」
「そしたらキミが起こしてくれればいいんじゃないかな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6時でいいんですよね」
「6時10分でいいって」


頷いて鳴上の顔を上向かせ、衝動に任せてキスをした。















「え・・・・、ちょ、待・・・・っ・・・」
「何?」
「ど、うして・・・・っ・・・・ここ、で・・・・」
主語は無いけれど、鳴上が言いたいことは一つしかない。
何故、この場所で続行なのか。
そう言われても頑として足立は場所を変えず、ここで鳴上を立たせたまま、行為を続ける方向で。
先程とは身体の向きだけを逆に、今度は鳴上を壁に向けて立たせ、引き続きシャツ越しに背中から首筋や襟足を啄ばみながら、後ろに指をこじ入れて性急にそこを解していく。
「く、・・・・っ・・・、うぁ・・・・っ・・・」
ぐち、と中を掻き回されて鳴上が大きく仰け反った。
「だって場所移動してる時間ないし。 大丈夫だって」
「そんなの、一分もかからな・・・・っ・・・」
「時間は大事だよー? 一分だって一秒だって無駄には出来ないからね」
「っ・・・・、あぁッ・・・・!」
詭弁にもならない駄弁で流しつつ、本当は、たまにはこういうのもイイんじゃないかな気分を変えて、
とニヤつく足立の表情は鳴上からは見えない。
「ぅ、あッ!! あっ・・・・・、やめっ・・・・」
弱いところを転がすように指先で擦り押されて、がくがく腰が砕けそうになる鳴上の身体は、
背後から再び両脚の間に割って入った足立の脚に支えられ、
壁に挟まれてようやく立っている、そんな状態で。 だからこの体勢もそう長く持つわけじゃない。
足立もそれを見越していたから、溶けてきたことがわかると、素早く指を引き抜き、
先程隙を見てくつろげた腰ごと下半身を押し付け、そのままズッ、と侵入させた。
「ッッ!!」
突然貫かれ、突き上げられた衝撃に鳴上は声も上げられず、身体だけが反応する。
「・・・・凄い、いつもよりキツい」
「ぁ・・・・! ・・・・は・・・・っっ・・・」
揺らめく腰を両手で掴み、ぐいぐい突き上げて抉れば、
「い・・・ッ・・・、ッア、あ、あっ・・・・!!」
鳴上は声を殺すことも忘れ、がり、と壁に爪を立てる。
首筋に当たる足立の荒い息を感じ取り、全身が震えた。
こんな、慣れない態勢で貫かれてしまっているため、
身体のどこに重心を持っていけばいいのかわからない。
ただでさえも性感に身体は支配されてしまっているというのに、冷たい壁には縋りつけなくて、
ただ爪を立てたまま、後ろからの律動に耐える。
「ちょっと、イイかな」
「・・・・ッ?、ん、ん・・・・っ・・」
突如、一度中から肉棒が引き抜かれ、続けざまにぐいっと身体を反転させられた。
その行為の意味が分からず、されるがままでいる鳴上の片脚を、足立は大きく上に抱え上げた。
片脚立ちで更に不安定になり、反射的に鳴上が掴まろうと手に力を込めた瞬間、
再びグイグイと深く、弱いところに突き込まれた。
「ひ・・・・ッッ!! いっ・・・・、うぁ、あ・・・・っっ・・・!」
脚を抱え上げられたせいで、先程とは内部で足立自身が抉る角度が変わって、
前立腺をピンポイントで突かれる。
直接与えられる快感に、身体ごと腰を鳴上は引こうとするのだけれど、
「どこ、行くのさ・・・・っ・・」
「ぁう・・・っ! 、ッ・・・・ッ・・・・!?」
引いたところで逃げ道はなく、絶えずポイントを攻め立てられる刺激に、身体は絶頂に上り詰めた。
「・・・っは・・・っ、はっ、あ・・・・、あ・・・・!!」
足立が揺さぶるたび、もう止まらない甘い声があがる。
「顔、見せて」
言って、汗で乱れた前髪を払ってやる足立も限界近い。 腰の動きが早くなる。
「! ッ!! 達、く・・・・ッ・・・ッッ!!」
「・・・・ン。 僕も・・・・っ・・・」
切羽詰まった鳴上の声に、つられて強く強く最奥目掛けて突き上げれば、
「ん・・・・っ・・・・!」
全身で仰け反って、鳴上は白蜜を放つ。
「・・・・っ、は・・・」
続いて足立もその内部に吐き出し、最後まで残さず注ぎ込んだ。
その熱に、彼が小さく喘いで喉を鳴らした音が聞こえ、
思わずまた唇を塞いでやろうかと思ったのだけれど。
今日はもう、既に二度ほど交わしていたから。 止めた。


自分と彼とに、一日三回のキスは多すぎる。

























「・・・・うわ。 もう1時半過ぎてるよ」
ゆっくり風呂に浸かっている余裕はなかった。
手早く浴びたシャワーの後、まだ水分の残る髪をがしがしとタオルで拭きつつ、
「こりゃ本気で早く寝付かないとツライなあ」
などと呟きながら戻って来た足立に、鳴上は珍しくも果てしなく機嫌を損ねて拗ねて。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もうそんなに若くもないですしね」
床に座り込み、その視線はダラダラとついたままのテレビ、
つまらなくはないが大して面白くもない深夜番組に向けたまま、
普段の彼であれば滅多に口にしない、トゲのある言葉で返してくる。
それに足立は苦笑することしか出来ない。
「何もさあ、そんなに怒らなくてもいいだろー?」
「怒ります。 仮にも刑事にビール買って来いって言われて、断ったら逆ギレされた挙句、屁理屈で押し切られて襲われたら誰だって怒ります」
「しかも、立ったままだしバックだし???」
「〜〜〜〜〜〜!!!!」
反省の欠片もない足立の茶化した台詞に、たまらず顔を上げ、また何か反駁しようとする鳴上の先手を取って。
「あー、冗談だよ冗談。 ごめんごめん、大体のところは僕が悪かったって」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「それじゃ、正直なところを言おうか。 あのね悠くん」
「・・・・・・・・・・・・・・なんですか」
苦笑混じりの足立に、じとー、と鳴上は半信半疑の視線を向けてくる。 だから。


「キミのことついついココに呼んじゃうのはさ、なんていうか、この部屋に入れるの凄いラクっていうか、
僕の巣の中に入れても、不思議なことにわりと居心地が良いままだからさ」


「、」


意外だったのか、息を詰める鳴上に、
稀有な例だよ? これって。
と、今更たぶん不要であるはずの補足も忘れず、苦笑を消してそこそこ普通の笑みを作って。




「信用してるから、キミのこと」




さらりとそう告げたら、


「・・・・・・・・・・・・・・・・ありがとうございます」


よくわからないけれどお礼らしき言葉が返ってきた。
照れ隠しなのか何なのか、
当の鳴上の顔はテレビの方に向けられたままで、惜しいことにほとんど見えず。


「それじゃ僕、寝るから。 どうする一緒に寝る? 狭いけど」


「・・・・・・・・。 このまま、朝まで起きてます。 そうしないとたぶん俺も深く眠り込んで、時間になっていも足立さんを起こせなくなりそうなんで」


「んじゃ、テレビ見ててもいいしこっちの部屋は明かりつけたままでも何しててもいいから。 じゃあね、おやすみ」


「はい」













そんな会話を交わし、鳴上を隣の部屋に残して一人、ベッドに潜り込みながら、
足立はつい今さっきの自らの言葉を反芻する。








――――――――――――――― 信用してるから、キミのこと。








それは本当だ。 けれど。 実はわりと略して伝えたわけで。








『 信 じ さ せ て 利 用 す る 』  →  略 し て 『 信 用 す る 』 。








僕的には、実際のところこういう直訳になるんだよね、と本心を伝えたら、彼はどんな顔をするんだろう。








それともそこそこ聡い彼は、そんなこととっくに気付いてでもいるんだろうか。












まあ、そんなこともうどうでもいいか。












どうでも、いいや。














我儘アダッチーを書きたかったのです。 が。 このヒトいつでもどこでもずっとワガママだったよー。
て気付いたのでえろは抑え目にしてみました。 たまには。

ちなみに横文字の足主足文のタイトルは、犬用の命令語から拝借しとります。
上から順に 「Befehl → コマンド」 「Auf dem Rucken → 指示が出るまで動くな」
「Shake hands、Right → お手」
で、この話 「Left hand → (お手の) おかわり」
だから何という訳ではありませんが、補足してみた(笑)。