[ Tic Wa! Boo ]







八月某日、午後2時。




その日、いつものように会う約束をしていた陽介が堂島宅を訪れ、
「悪い鳴上、買い物してたら五分遅れた」 と玄関を開けながら声をかけると、中から大層いい匂いが漂ってきた。
と、
「ああ、待ってた」
そう言いながら、『おたま』 を手に、加えてエプロン装備でひょいと顔を覗かせたのはこの家の居候、鳴上悠。
暑いだろ、上がれよとの声に 「お邪魔しまーす。 て言っても、堂島さん仕事だろ? あれ? 菜々子ちゃんは?」
問いかけつつ、靴を脱ぎ、中に入ってもうすでに見慣れまくった室内をぐるりと見渡していると。
「さっき、遊びに出かけた。 5時までには戻ってくるけど」
いわゆるデフォルトで留守ってやつ、と彼は自ら付け加え、
「あと10分だけ煮込んだら終わるから。 それまで少し待っててくれ」
くるりと火のかかった鍋に向かい直った。
陽介としては、今更何を煮込んでいるのか、なんて愚問は口にするまでもない。
漂う、というかこの室内に充満しまくっている 『おでん臭』。
いろいろな具材と出汁の混じりあった、寒い時期ならば問答無用で食欲をそそる匂い。
が、
今は夏。 真夏なのだ。
室内はそこそこ冷房が効いていて、炎天下の外から上がり込んだ陽介的には快適な温度になっているけれど、
ずっと火の付いているコンロの前で、おでん鍋を煮込んでいたらしい鳴上は、額にうっすら汗を浮かべている。
「つーか・・・・なんでおでん・・・・?」
今日の最高気温35℃だぜ、と呆れる陽介に鳴上は鍋をかき混ぜながら。
「素麺ばっかりだと胃が冷える。 だからおでんもいいかと思って」
「極端すぎだろ・・・・」
と、呆れてみせると、
「いや、実は菜々子が」
「菜々子ちゃん?」
「一昨日ジュネスに買い物に行ったとき、菜々子がちくわぶを見つけて。 その流れで夏だけどおでん食べたいって言ったから、そのとき買ってきた」
「お買い上げありがとうございます」
反射的にそう返事をしたあと、エプロン姿で鍋と向き合う、どこまでも菜々子に甘い 『従兄弟のお兄ちゃん姿』 に、ついつい笑ってしまった。
そして自然としみじみと。
「パッと見、似合わないと思いきやお前似合うよなあ、そういう格好」
すると、
「花村だってジュネスエプロンしてるじゃないか」
見当違い? な返事がきた。
「あれは仕事用のだっつの。 お前のは、普通のじゃん」
普通にエプロン似合う男って実はあんまりいないぜ、と一般的に、別段他意はなくあくまで並に感心してみせたのだが。
どこをどう曲解して受け取ったのか、鳴上は首だけひょいと振り向いて、
「なんだ、裸エプロンとかしたいのか?」
とんでもないことを言い出した。
「ちげーよ!!!!」
もちろん陽介は全否定。 即座に否定。
ぶんぶんと頭を横に振りながら、頭まで茹だっちまったんじゃないかしっかりしろよな、と半分は鳴上を心配、そしてもう半分は自分の身を心配(・・・・) し、
「あ、そうだ」
ここにきて遅まきながら、ずっと手にしていた紙袋をテーブルの上に置く。
「五分遅れた理由。 一階で特売やってたから、ドーナツ買ってきたぜ。 ちゃんと菜々子ちゃんの分もあるから」
「ありがとうな。 ・・・・・・、煮込み完了」
頷いてここでようやく鳴上はコンロの火を止め鍋に蓋をして、「鍋を優先させて悪かった」 と言いながらエプロンを脱いで何を言うかと思えば、
「花村、腹、減ってるか?」
「は? いや、別に減ってねーけど」
きちんと昼メシ食ってきたし、と素で陽介がきょとんとすると、彼は真顔で。
「せっかく買ってきてくれたドーナツには悪いけど、菜々子が戻ってくる前に今すぐ花村とイチャつきたい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・鳴上・・・・・・・・・・・・・・・・」
素直すぎる正直すぎるストレート過ぎる要望に、コイツのこんなところにはもういい加減慣れてはいたものの改めて流石に数秒呆気にとられ、
そうして陽介の顔に浮かぶのは苦笑いに似た、了承の笑み。
菜々子に甘い鳴上と同じで、自分も鳴上にはとことん甘い。
そう自覚しながら、
「ハイハイ。 最初っからドーナツは、菜々子ちゃんと三人で食べるつもりだったしな。 そんでもって」
「?」
「俺としてもこれ以上、俺より食い物を優先されたら、お前のコト見限っちまうかもしれねーから」
あくまで冗談、それとわかるように悪戯めいた言い方ながらも、それは鳴上にとってそこそこオソロシイ脅迫内容になったらしい。
即断即決、頷かれた途端、
「よし、部屋に行こう」
「うわッ、ちょ、おま・・・・!!」
腕を捕まれ引っ張られ、階段さえも引き摺られるように自室に連れて行かれ焦る陽介の声と同時、
放り出され、椅子に掛け損ねられたエプロンが床に音もなく落ちた。























縺れるように布団の上に傾れ込み、互いに大して厚みのない、細身の骨ばった身体を重ねる。
それから、手早く衣服を乱しながら鳴上から唇を唇で塞いだ。
「・・・・・・ン、」
そのキスに応えるため、薄く口を開いて舌を受け入れる陽介がとてもいとおしく、
味わうように深く浅くを繰り返しながら、指先は首筋に触れていく。
「ッ、」
敏感な首筋に愛撫を受け、期待通りに反応を返してくれるのを楽しみつつ、
一度離した唇を今度はその耳元に寄せ、今度は耳朶を食んで啄ばんで。
その都度、陽介は僅かに身体を震わせるけれど、声はほとんど抑えている。
だから、
「もっと声、出せ」
と、鳴上が顔を覗き込むと。
「・・・・あのよ、」
自分でも今更だってわかってるんだけどな、と前置きつつ、陽介はここに来てふいっと視線を逸らせながら。
「?」
怪訝に思う鳴上を眼前に、
「・・・・なんか俺、お前相手だとすっげえ甘くなっちまうっていうか、何でも聞き入れちまうっていうか、なんつーか、その」
言いながら、少しずつ声が小さくなっていくのはどうやら照れのせいらしい。
「お前の前だと、デレすぎちまって、・・・・そういうのって、どうしたらいいんだっつの」
ほとんど呟きに近い小声で、おまけに視線どころかいつの間にか顔まで逸らしながらの陽介の言葉に、
鳴上は。
「それは俺も同じだし」
と、さらり一言。
「どうすればいいのか、むしろこっちの方が教えてほしいくらいだ」
事も無くすらりと告げ、
そのまま首筋から胸元、続けて鎖骨のあたりを余すところなく強く弱く吸い上げていく。
合わせてところどころに濃く淡く残す、紅い跡。
一応夏服でもあまり目立たない箇所を選んで刻み付けてはいるのだが、
もしかするとテレビの中戦闘中、身を翻す動きをしたりしてしまえばシャツの端から一瞬見えてしまうかもしれないが、それはそれ。
周囲にバレたならその時はその時、実際、バレたとしても鳴上としては別に構わない。
彼女たちは黙ってくれてはいるが、里中・天城あたりであれば未だに気づかれていない方がおかしいし、
りせにはまず間違いなく看破されている。
けれどそんな女の子たちの気遣い(?)、黙認状態に当の陽介は一向に気づいていない様子で、
自然と零れる笑い混じり、鳴上の手が下肢に伸びると、
「・・・・っ・・!」
ほとんど条件反射なのだろう、陽介が慌てて上半身を起こしかけた。
が、
体勢すら整わせないように、先手を打って胸元、乳首を軽く吸う。
「、ッ・・・・!」
途端、口封じ言葉封じは見事に成功、胸元に濡れた口唇と舌先を感じてしまい、ビクッと陽介の身体が跳ね上がった。
そして間を置かず抵抗を封じるため第二弾、
片腕はしっかり背中に回して逃れる場所をなくさせながら、空いている方の手をすうっと下に降ろして内腿を撫で上げた。
「は、・・・・っ・・・」
熱を帯びた小さな溜め息にも似た声を確認しつつ、数回繰り返して撫でたあと、
中心に息づく陽介自身を手の中に握り込む。
「・・・・・んっ・・・」
たまらずに漏れた喘ぎに満足して、握り込んだまま上下に擦り上げていくと、すぐに勃ち上がってくる彼自身。
その根元の部分、それから括れのところを連続して丁寧に扱いてやると、
みるみるうちに先端から透明な蜜が溢れだした。
「・・・・ん、くッ・・・・」
的確な愛撫から生み出される性感に、陽介の下肢が疼き出す。
元々、そこそこ敏感であるらしい陽介は、
確か先月のこと、何故だかその日は鳴上的にやたら意地悪をしたくなり、特に敏感な箇所を何度も何度も弄り続けていたところ、
迂闊にも(※しかも行為の真っ最中) 本気で怒られ、互いに素っ裸のまま(・・・・・・) 平謝りすることになってしまった事態さえ招いてしまったほどで。
その時は本心から謝罪したし、確かに悪いのは自分の方で、反省もしたのだけれど、
それでも今、また無意識に小さく首を横に振り、懸命に感覚に耐える姿を見ていると、
思わずもっと触れていじめてやりたくなってしまうのだが、そのあたりは何とか自制するしかない。
・・・・・・でも前ほどでなければ、少しくらいなら、
などと不届きなことを考えながら、鳴上は徐々に扱き上げる手の速度と、込める力を強めていく。
「ッ、・・・・、ん・・・・っ・・・・っ・・・!」
途端、陽介の呼吸が瞬時に乱れ、組み敷いた身体がうっすら汗ばんできた。
先ほどからの先走りの蜜で、動かしている手から濡れた音がくちゅくちゅと響いてくる。
「・・・・っは、鳴、上・・・・ッ・・・・」
加えて上擦る声で自分の名前を呼んでくれることが嬉しくて、「わかってる」 とばかり頷き、
背中に回していた腕を外して互いの体勢を変え、ぐいっとその両脚を大きく開かせた。


「・・・・・!!」
濡れて勃ち上がった自らを鳴上の目の前に晒され、直接見られてしまう羞恥に思わず陽介は息を詰める。
とは言えこんな体勢も、有り体に言うならいつものことだ。
それでいて、どうしたって慣れるということはなくて、
「・・・・っ・・・」
いつだって消えてくれない羞恥に、視線だけをなんとか鳴上と自分自身から逸らして堪えると。
鳴上は小さく笑ったらしい。 そうして開かせた陽介の内股を指先で数回撫で、
体液を零し続ける彼自身の先端に迷わず唇を落とした。
「んぁッ・・・・!」
たまらずビクンと震える細い腰。
「、んッ、あぁ・・・・っ・・・・、」
自然と浮かび上がってしまう腰を押さえ付け、構わず鳴上はぱくりと陽介自身の先端を口腔に含み入れ、濡れた舌を絡ませながら、唇を使ってそこを扱き上げる。
手のひらとは全然違う口内での愛撫、淫らな刺激に陽介はそうそう耐えられない。
「・・・・・く、んッ、ん・・・・・ッ・・・・っ・・・」
シーツを握りしめて堪えようとしても、
我慢しなくていい、とばかり舌だけでなく、
軽く歯まで立てられてしまって、それさえ出来ない。
「ぅ、あぁ・・・・っ!!」
それどころか、
陽介自身への口での愛撫を止めないまま、指を僅かに後ろに移動され、その奥深い箇所へ直接触れられる。
「んっ・・・・」
力抜け、との耳元での囁きに、また小さく反応してしまう身体。
「・・・っふ、・・・・く・・・・ッ・・・・」
絶えず前から溢れ出る透明の蜜に鳴上は指を絡め、同じく零れ落ちた雫でしとどに濡れた最奥に少しだけ指先を挿し入れると、
そこは僅かに蠕動し、きつく強く窄まって自然と抵抗を見せた。
けれどそのまま浅い部分に埋めた指で、何度か抽挿を重ねていくと、
「・・・っ、・・・・・、」
僅かな吐息と共に次第に緩く蕩けてきて、更なる指の侵入を受け入れるようになる。
「・・・・ッ! ・・・・っ、待・・・・!!」
根元まで埋め込んだ二本の指先で、探って見つけた内側の過敏な箇所を少し強めにくいっ、と押し上げてやる。
途端、一際大きく反応した陽介が、焦って止めようとしてくるけれど。
待たない。 と悪戯っぽく告げ、
「やっ、待てッ、・・・って・・・・・ッ・・・・!」
制止してくるのも構わず、先程より更に強くその一箇所を擦り上げてやると、
「あ、あぁ・・・・っ・・・・っ・・・・!!」
背中を弓なりに反らせると同時、限界まで膨れていた陽介自身が弾け、腰を震わせながら吐精していく。


「・・・・ど・・・して、待たねーんだよ・・・・」
一度目の精を鳴上の掌中に吐き出すと、身体から力が抜け、
荒い吐息と一緒にぼやきながら、どさりと体重全部を陽介は鳴上に預け、呼吸を整えようとする。
けれどそんな暇もなく、
ずっと受け入れたままでいた内側の指が再度動き出し、
花村の弱いところはここだっけ、と先程より意地悪さ五割増しの笑みで、鳴上が陽介の一番過敏に感じてしまうポイントをまた刺激し始める。
「っ、んぁっ・・・・!」
先程とはまた違い、より一層純粋に快感のみを増幅して受け取ってしまうその部分、
そこはただ撫でられただけでも我慢しきれない声が漏れてしまい、狙って擦られると腰ががくがく戦慄いた。
「・・・・っン・・・・、っ・・・・」
それでも、加減を知る指は優しい動きで触れてきて、
一撫でされるごとにその箇所が蕩けてしまいそうなほど快楽に支配され、
「ふ、ぁ・・・・っ・・・・」
視界がとろんと滲んでいく。
器用に的確な愛撫を繰り返され、
触れられている内側で長い指がくいっと折り曲げられ、角度を変える都度、弱い箇所に何度も何度も引っかかり、
刺激となって重ねられる快感に一度弾けた陽介自身も再び頭をもたげ始めた。
「ッ!!? う、ぁッ!!」
と突然、敏感な自身の先端をきゅっとつままれ、予測もしていなかった直接的な刺激に悲鳴のような声を上げてしまった。
一度弾けたばかりの自身はとても敏感で、
その刺激は快楽というよりも、どちらかと言えば責め苦に近かったらしい。
「馬、鹿・・・やろ・・・ッ・・・・ッ・・・・!!」
馬鹿と言われてしまい、その通りの馬鹿である(・・・・) 鳴上はそれを黙らせるよう、
構わずもう一度陽介の一番弱いポイントを狙って大きく押し上げる。
「やめ・・・・っ!! も・・・・っ・・・!」
前と内側、両方を刺激されてしまい、堪えるよう陽介はかぶりを振る。
程なくして十分に最奥が柔らかく解れていることを確認し、鳴上は熱い吐息と共に埋めていた三本の指を引き抜いた。
続いて、こちらも充分に猛って熱い彼自身を蕩けて熱を持ったそこに押し当てる。


「・・・・花村」
低く名前を呼ばれながら、
慣らすようにゆっくりと、けれど確実に侵入してくる熱と欲。


「ぁ・・・・っ・・・、ッあ・・・・!」
「・・・・ッ、」
腰を進めるたび、絡み付いてくる内壁に鳴上も小さく息をつく。
割り入れられる感覚に耐えつつ、陽介がその表情を伺うと、
何かを堪えているのか噛み締めた唇と、
隠し切れない荒い息、揺れる前髪。


いいよなあお前のストレートの髪、と猫っ毛の陽介はこんな状況ながらも、思う。
ないものねだり、なのはわかっている。 きっとおそらくお互いに。



そんなことを考えながら、鳴上の顔を眺めていたら。
彼は視線にやっとここで気づいたらしい。
首を傾げ、「どうした?」 と訊いてきた。
「別、に・・・・」
何でもねーよ、と陽介はしらばっくれる。
それでも、どこか心配そうに、
「痛むか?」
などと気遣わられ、
「違うって。 ・・・・お前、イイ男だよなって」
改めて実感してた、と誉めたら。
「それはどうも」
「あ・・・・ぅっ・・・・!!」
嬉しそうに目が細められた直後、埋められた熱で、中を正面から大きく突き上げられた。
続けて内部を、ぐいぐいと捏ね回される。
「あっ、ぅあ・・・・ッ・・・・!」
奥の奥まで埋め込まれたまま、力任せにぐっと片脚を肩の上に担ぎ上げられ、勢いで角度が変わった内壁の一点、
それが偶然にも前立腺の位置を突いていて、その箇所を猛った先端で力強くぐいっと押し上げられてしまい、
「ああぁ・・・・っ!!」
強い強い刺激と圧迫感に、
再び熱を含ませられていた陽介自身は、先端から僅かだが白蜜を弾けさせた。


「っ・・・・ぅ・・・・」
「ッ、」
陽介が軽く達すると同時、内壁が一際収縮し、中の鳴上を強く締め付ける。
狭い内側、そしてこの上なく熱くて柔らかくて心地悦いその感触に鳴上も思わず引き摺られてしまいそうになりながら、
何とか耐えて互いの腹部にかかった白蜜に視線を落とし、
密着した上半身で、悦かったか? と訊ねながら、白く濡れた陽介自身になぐさめるように触れた。
「ッッ!! やめっ・・・・!」
軽くとはいえ、達したばかりの過敏この上ない箇所にそんな愛撫刺激を受け、
腰の奥からズクン、と甘く痺れたものが背筋を走り、陽介はぞくぞくと全身から力が抜けてしまう。
「さ、わんな・・・・っ・・・・、ぁ・・・・ッ!」
必死で制止しているのに鳴上はやめず、充血した先端をくりくりと撫で回されると、
びくびく内腿が戦慄いて震え出す。
「っ、っや、め・・・っ・・・・!」
透明なものと白いものを交互に滴らせるそこは、痛いほど性感を集めて感じ取り、
堪えきれない快感に跳ね上がる身体と、内壁は内側の鳴上をきつく強く締め付けて。
「ひ・・・・あッ・・・・!!」
ビクン! と全身が仰け反ってしまったのは、突然最奥を激しく抉るように突き上げられたからだ。
「ッ・・・・っっ・・・・!」
それを皮切りに、激しく腰を使って揺らされる。
息をつく間もなく、続けて何度も何度も突き上げられ、湿った音と共に激しく動く鳴上自身。
挿入を繰り返されるたび、ずるりと入口付近まで抜かれる際、
括れが内壁を引き摺るように弱い箇所を掠めて引っ掛けて、その度に陽介はびくびく仰け反った。
そのうちに腰だけでなく、身体全体を揺さぶられ、
快楽と熱で蕩けた思考はもう何も考えられない。
「ああぁ・・・・っ・・・・!!」
ただ鳴上が動くたび、快感に意識が飛びそうになってしまう。
と、
「――――ひ・・・・っ!!」
繋がっている箇所のすぐ近く、双珠の片方を指の腹でやんわりとなぞり上げられて、
思ってもみなかった部位への愛撫にたまらず出てしまった嬌声。
受け止めて鳴上は、得たりとばかり何度も何度もその部分を撫でてくる。
「そ、こ・・・・ダ、メだ・・・っ・・・・」
その柔らかいところは過敏に刺激を集めて伝えてきて、
鳴上が指でなぞるたび、時折手のひらを使って揉み込まれるたび、内壁も快感に震えて蠢き、
陽介だけでなく鳴上にも快楽と悦楽を齎した。
「あ・・・・あっ・・・・、っ・・・・」
繰り返すうち、また天を向いた陽介自身も限界で、すぐそこまで高みが来ている。
「う、あっ、ぁ、・・・・ッ・・・・、も・・・・っ・・・!・」
濡れ落ちた声、きつくシーツを握る手に力が込められたと一緒、
「・・・・ッ、花村・・・・っ・・・」
掠れ気味に呼ばれたあと。
「ん・・・・ッ・・・・!!」
一瞬、呼吸が出来なくなってしまったほど荒々しく突き上げられ、
堪えきれず陽介が喉を仰け反らせた直後。


「―――――ッッ!! あっ・・・・、ぅあ、あ・・・・・ッ・・・・!!」


一際大きな快感が下半身で弾け、
ほぼ同じく、自分の中の深いところに勢いよく鳴上の熱いものが吐き出される。
内壁を灼かれるその熱さに身体が戦慄いたと思ったら、
「花村」
嬉しそうにキスをされ、まだ繋がったまま、痛いほど抱きしめられた。


























「夏バテしたかもしれない」
「んあ?」
シャツに腕を通しながら、鳴上がぼそりと呟いた。
同様、自分もTシャツを頭からかぶりつつ、陽介が聞き返すと。
「間違いない、やっぱり少し夏バテしてるみたいだ」
「? どうしてだよ」
唐突にそんなことを言い出され、なんだ突然、と怪訝そうな顔をしたら。
「一ラウンドで満足しかけてるあたり、ちょっと深刻だと思う。 困ったな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「もしかすると、最大HPも最大MPも減少してるかもしれない」
どうすればいいんだブツブツ、などと顎に手を当て、鳴上は真剣に考え込んでいる様子。
そんな彼に、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゴキブリ並みの生命力でよく言うぜ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
思いきり呆れてみせたところ。
「?  丸めた新聞紙で叩いたら死ぬってコトか?」
「違う!!」
またも陽介は思わず反射的、本日二度目のまたもや即座の否定。
「???」
素なのか惚けてみせたのか、一概に判別のつかない真顔で反応する鳴上。
これだけ深い仲になっても、コイツのこういうところが未だよくわからない。
ホント不思議なヤツだよなあと改めて感じ入っていると、


「ただいまー!」


下の玄関から、元気な菜々子の声がした。
「おかえり。 今、花村が来てる。 一緒に下りていくから、もらったドーナツ食べよう」
「わーい!」
素直な可愛い菜々子と鳴上とのやり取りに、
「お、菜々子ちゃん? ・・・・って、もうそんな時間か」
時計を見ればもう夕方5時5分前。
確かに行為自体は一ラウンドでしかなかったけれども、
なんやかんやで今までイチャイチャしていたし(・・・・・・)、後始末も含めて少なくとも二時間半程度は二人、引っ付いていたようだ。
と、
「そうだ、」
思い当たったよう、鳴上が。
「? どした?」
「お前の都合が悪くなければ、今日はお泊りコースで」
「は? いきなり?」
「実を言うと、おでんも作りすぎた感が否めない。 叔父さんは帰ってくるかどうかわからないし、菜々子と俺の二人だけじゃ絶対に余る」
「まあ、ヒマといえばすっげーヒマだし。 菜々子ちゃんがいいって言ってくれるなら、泊まってってもいーぜ」
「よし。 二ラウンド目、決定」
「・・・・・・・・・・・・・・・・あの。 そーゆー、『あわよくば』 的なシタゴコロはもう少し隠して欲しいかな・・・・・・・・」
「今更だろ?」
「そりゃあそうだけどよ」
「出来れば三ラウンド目にも挑む方向で」
「あーのーなー」
やっぱお前ちっとも全然夏バテなんかしてねーって、と呆れるフリで笑ってやって、
「よし! それまで菜々子ちゃんの宿題、手伝ったりとかするか」
陽介は大きく伸びをした。
















そのあと、クマに、『今日は鳴上んとこ泊まってく』 と電話をしたら、


『ヨースケ、センセイバテしないよう、気をつけるクマー』


と、あっけらかんと言われてしまった。















そんなの、




―――――――――――――――― するに決まっている。
















VS足立(笑) と違って、どこまでイチャってても大丈夫(・・・・?)なので、
とてつもなく書きやすい二人です(笑)。
イチャラブがやりたくなるとこの二人に戻ってくる気がする!