[ コットン ]


※ネタ的なのものがやりたかっただけの、ただの阿呆な話です   すみません






休み時間、教室で机の前での他愛無いやりとり。
陽介としては別段、特に何を意図した発言ではなかった。




「そういや、昨日、ジュネスのトイレ前のベンチに足立さんいたぜ」




「へえ」




片眉を上げて、小さく反応した鳴上にどこまでも本当に雑談の一端、
昨日のバイトの途中で見かけたから、ただ事実を事実として伝えただけだった。
「俺には気付かなかったみたいだけどな。 俺も仕事中だったし、声かけなかったけど。 いつものところから、サボり場所変えたのかな。 あそこ、穴場って言えばスゲー穴場だし」
「・・・・・・・・・・へえ」
「ん? どした?」
いつも一緒にいるからわかる(※わかってしまう)、鳴上の意味深な相槌と、
「そんなところにいたのか」
などと呟きつつ、ほんの僅か口許を緩めて笑ったような表情に、反射的に聞き返してしまったら。
彼は、さらりと。
「この前から、あからさまに避けられてて逃げられて居場所がわからなかったから、助かった。 目撃情報、ありがとうな」
「は? ・・・・・・・・・・・ナニ・・・・・・やったんだよ・・・・・・・」
(※二度目) いつも一緒にいるからわかる(・・・・・・わかってしまうのだ)、
鳴上の足立への執着心と、
「別にそう大したことじゃない」 なんて表向きは軽く流しつつ、今度は明確にうっすら笑ったそのカオ。
聞きたくない。 なんとなく、あんまり知りたくはない(・・・・・) ながらも100%の義務感に支えられ、
「鳴上」
これまた尋ねてしまい、
鳴上がどう答えるかと思えば。




「キャベツの保存の仕方って知ってるか?」




「?  何、何の話???」
突如、全くもって関係がないと思われる話題を振られ、陽介が混乱しかけたところ、
「家の冷蔵庫で、なるべく長くキャベツを保存する良い方法。 この時期、葉物野菜ってそう長く持たないだろ」
「ああ・・・・まあ・・・な、業務用のチルド冷蔵庫でもない限り、そりゃ」
「だから、」
なかなか話について行けない陽介を尻目に、彼は滔々と語り出す。
「キャベツ、大量に買って持て余してるって言うから、長く保つ保管方法を伝えたんだ」
「?   で?」
陽介は首を傾げた。 それが何だというのか、まださっぱり分からない。
すると鳴上曰く、キャベツの保存の仕方レクチャー。
「丸ごと一個なら、引っくり返して芯を抜いて冷蔵庫の野菜室で保存。 芯を抜くだけで、そこそこ長く保つようになる」
「あ、それどっかで聞いたことあるな」
「もっと保たせたいなら、その抜いた穴に濡らした脱脂綿を詰める。 これで更に劇的に保つ」
「ふ〜ん。 ・・・・・・・で?」
主婦の知恵、に興味がないわけではなかったが、イマイチ掴めない話の流れに、先を促す。 すると。




「伝えた後、それを足立さんでも実践してみた」




「ふ〜ん。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はあ!!!??」
「出来るだけ、長く保って貰いたいと思ったんだ。 俺より10歳も年上だし」
「・・・・・・実践て、お前・・・・・・」
二の句がつげない陽介に、鳴上はこれまた滔々と。




「引っくり返してうつ伏せにして芯、は元から無いから柔らかくしたところに、俺を詰めた」




「全ッ然ッ!! 違うっつの!! キャベツと!!」
たまらず大声でツッコミを入れざるを得ない。 だって脈絡がなさすぎる。
なのに目の前のコイツは、
「公式で 『キャベツ刑事』 とかアオリが付いてるんだからほとんど同じようなものだろ」
とか、言い出す。 もうワケが分からない。
「待て。 それはまた別のタイトルで、 ・・・・ていうかお前の時空系列と時間軸と次元、全部メチャクチャになってるから! ダメだろ今この時点で一緒にしちまったら」
「いいんだ。 ゴールデンな日々を何周やっても俺は足立さんにオチる」
「あーーーのーーーなーーーー」
わかっていた。
わかってはいた。
わかっちゃいたが、陽介は頭を抱える。
そんな陽介の狼狽知らず、鳴上はまるで独り言のよう、




「濡らした脱脂綿の代わりに俺の(濡れた) 海綿体。 ほとんど一緒じゃないか」




「 同 じ な の は 漢 字 一 文 字 だ け だ ろ ! ! ! ! 」




より一層の大声で、思いっきり突っ込んでしまったあと、
「そりゃあ・・・・避けられもするよなあ・・・・」
「どうして」
「・・・・・・・・・それ・・・・真顔で聞き返すか・・・・」
呆れながら、陽介は大いに足立に同情する。
そしてしみじみ、ココロの底から思うのだ。
「俺、お前の標的にならなくってホント、ホント、良かった・・・・」
今更も今更、本音の吐露。
すると、
「ん? それはちょっと聞き捨てならない」
ヘンなところで当の本人に咎められ、
「あ? だってお前」
足立さん一筋ってさっき自分で言ったばっかだろ、と怪訝に感じたら。
「基本、俺はお前も大好きだからな」
そうでなかったらこんな話、しない。
と、きっぱり言い切る親友に。




「嬉しい・・・ような・・・・・嬉しくないような・・・・」




複雑すぎる呟きで返して、やっぱり陽介は改めて足立に同情した。
と、休み時間が終わった。

















放課後、
「トイレ前のベンチだな」
と何度も念を押され、
「・・・・北側の。 駐車場の横の、一番利用者が少ないところ」
そう補足まで加えたあと、
「よし。 わかった」
見つける気捕捉する気捕獲する気まんまんのオーラを纏い、身を翻して教室を出ていく鳴上の後姿を眺めつつ、
「・・・・ごめん。 足立さん」
陽介はココロの中で十字を切った。








最後、去り際に鳴上がぼそりと漏らした、
「皆月に渡してたまるか」 の言葉の意味は、わからなかった。

















アホなのが書きたかったんです
一切足立の出て来ない(笑) 主足。 あと、ちょっとだけP4U2ネタ(・・・・)。