[ プレイ ]







ベッド脇、カーテンの隙間から低い位置に見える月はやたら明るい満月だった。
道理で夜なのにやたら外が明るいと思った、と頭の片隅で思いながら足立は欠伸、ひとつ。
「最近、寝付きが悪くってさ」
だから昼間とか日中、あとはこんな中途半端な時間に睡魔に襲われるんだよねー、と零すと。


「足立さんを襲っていいのは俺だけなのに」


また訳の分からないことを鳴上が言い出した。


「・・・・・・・・・・。 キミより睡魔の方がマシだよ」
どうしてキミごく当然のようにココ(※足立部屋)に居るんだよ、とか、
どうして自然に夕食(※と明日の朝食)の材料を冷蔵庫に入れてるんだよ、とか、
どうして必然で泊まっていく素振りで着替えとか(※歯磨き・洗面セット含む)ちゃっかり持ち込んでるんだよ、とか、
どうしてそれを僕は認めちゃってるんだよ、とか。


・・・・・・おそらく最後に関しては、認めるというより 【諦めた】、もしくは 【放り投げた】、というスタンスが正しいと思われつつ、もう一度足立は欠伸を噛み殺し、そして。


「そうやって夜、眠れないときの選択肢は二つあってさあ。 『寝れないなら仕方ない』 って、眠れない夜を無駄に過ごすか、『無理矢理にでも寝よう』 って睡眠導入財かなんか飲んで、朝まで無駄に眠るか」


あえて口にはしなかったが、その結果はと言えばどう足掻いても、どっちにしろ目覚めは最悪なのだが。
すると黙って聞いていた鳴上が、
「もうひとつあります」
ドヤ顔で、何を言うかと思えば。
「誰かと一緒にいて、一緒に眠るか」
「・・・・・・・・・・言うと思ったよ」
想像に難くない子供の言葉に苦笑して、足立はベッドに腰掛けた。
安いベッドは型通りの安い軋み音を立て、続けて隣に座った鳴上の分と、二人分の体重を受け止める。
伸びてくる若造の腕に、「ええ? もう?」 と眉をひそめると、
「はい」
有限実行にも程がある、鳴上悠の見事な行動力(※というか性欲)。
「言うことを聞いてくれないと、叔父さんに言いつけます」
「なんだよその脅し・・・・」
堂島を盾に取って、絶対的優位を保とうとする子供に込み上げるタメイキ。
しかしその脅しは何より効力を発揮する。 メガンテよりタチが悪い。 そして結果、どう転ぶかパルプンテより予測不可能なのだ。(※!! ゲームが違う!!)
「あのさ、僕、眠いんだけど」
ほぼ100パーセントの諦観を持ってとりあえず、一応の一応、伝えてみる。 が。
「それじゃ、睡眠不足プレイで」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
最早、「何ソレ」 と突っ込む気にもならない。
その一方で鳴上は、
「どんなことでも、『プレイ』 をつけると楽しくなるような気がするんです。 俺だったら 『補習プレイ』 とか。 足立さんなら、そうですね、 ・・・・・・『残業プレイ』 とか、『徹夜プレイ』」
前述に輪をかけて訳のわからないことを滔々と述べる。
たまらず、
「全然楽しくならない」
即決で即答。
けれど鳴上の言葉を当てはめてみるなら、今のこの現況はどう表現すればいいんだろう。
差し詰め、仲良しプレイ? 気づいてないプレイ? 気づかないふりプレイ?
どれもこれも違うような気がして、ああやっぱり面倒くさい、と考えるのをやめたところ。


「うわッ!!」


突然引き倒され押し倒されて、その弾みにガツッ、とベッドヘッドの木枠で僅かだが頭を打った。
「痛いって!! 後頭部強打して、バカになったらどうしてくれるんだよ!」
瘤、まではいかないだろうがまあ、普通に痛い。
反射的にそこに手を持っていこうとすると、さりげなく鳴上にその手首を捕まれ、阻まれた。
「・・・・・・すみません。 でも心配しないでください。 万が一そうなったとしても、俺の気持ちは変わりませんから」
「そういう問題じゃないんだよ・・・・・・」
ぼやきながら、続けて足立は言葉を告げる。
「・・・・・・少しでもヘンなことしたら、すぐ逃げるから」
「それが足立さんにできるなら」
笑う鳴上。
「ホント、生意気すぎるんだよ、キミ」
「すみません」
片手首を掴まれたまま、性急な高校生のキスに甘んじてやることにした。
口調とは裏腹に必死に掴んでくるその手なんて、その気になればいつでも振りほどけることを知っているから。



































ほわーん、と半ば放心状態でいるのは鳴上である。
今にも頭の上でチョコボが輪になって踊りだしそうなコンフュ状態、と言えばそこそこ近いだろうか。(※!! またもやゲームが違う)
「まさか足立さんが、あんなコトまでして&あんなコトまでさせてくれるなんて…」
夢見心地? 的にそう呟かれ、たまらず思わず、
「違うだろ!!? 勝手にやりたい放題ヤられただけだろ!!?」
事実を叫ばざるを得ない。
寝乱れた、否、寝乱された頭をがしがし掻きむしって、足立は枕に顔を埋めながら。
「腹減った。 何か作って」
「はい。 十五分だけ待っててください」
やたら嬉しげに、いそいそと鳴上は衣服を身に着け出す。
それを横目で見ていると、
「たまには足立さんも料理、すればいいのに」
「あ、無理」
鳴上の言葉に、間髪入れず即答する。
「? どうしてですか」
ええー、わざわざ答えなきゃ駄目かなあ、と一度渋っておきながらも、
どうせこの子供は足立の答えを聞くまで諦めないしきかないし、そうなるとこれまた面倒くさい。
だから端的に、事実を。
「前、挑戦してみたことはあるよ? 砂糖と塩をおんなじ量だけ入れるレシピだったからさ、プラマイゼロだと思って何にも入れなかったら味がなかった」
それ以来、もう何にもする気力が起きなくなったね、と纏めたところ。
「・・・・・・・・・・・足立さん、」
「ん、何」
「それ、素ですかそれとも考えて行動に移した結果なんですか」
真顔で聞いてきた鳴上の真意がわからず、
「え? 特に何も、ただフツウにそう思ったからそうしたんだけど」
そう答えた途端。
「カワイイ」
(何故にカタカナ表記?) ぼそっと呟いた鳴上悠、
一度身に着けた衣服を再び脱ぎ出し、
もそもそと再度ベッドの中に潜り込んできた。 そして、
「は????」
と目を疑う足立の上、
カーテンの間に浮かぶ、いつの間にか高い位置に移動していた満月を横目で見ながら。
「すみません、もう一回」
「冗談・・・・じゃないって!! 何考えて・・・・!!」
「だってあまりにも足立さんが萌えることばっかり言うから」
「言ってない!!」
懸命に却下を訴えてみるけれど、
「今日、満月じゃないですか」
「それが何だよ!?」
暴走モードに突入した鳴上には、通じないし伝わらない。
唇の端だけで楽しそうに笑われて、
「俺、身体がMAGで構成されてるから満月に近付けば近付くほどたぎるんです。 すみません」








「〜〜〜〜〜〜〜!!!! ゲームが違うだろ!!!??」







悲鳴は寄せられた口唇にかき消された。



















ドラクエネタとFFネタとメガテンネタを入れたかったのであります
と言うかイチャを書きたかったんだ・・・・
そうしたら、ゲロ甘になってしまいました。 逃げたい