[ スノー・ブラック ]




完璧パラレル。 て前提で見ていただければ助かります。


お互い5周目くらい(笑)、のアナザーエンドの更なるパラレル(何それ) だと思っていただければ・・・・。
クリスマスももうネタ切れになりつつあるのでスミマセン










「先月さあー、いろいろ忙しくって全然帰れなくて、電気料金700円くらいだったんだよね」
「え・・・・?」
「でも考えてみれば妥当なところなんだよ。 たまに夜中帰ったところで寝るくらいだし、昼間は事件で忙し過ぎてずっと署内だったし署内泊だったし。 最終的にはメーター検針員のヒトに 『中の人死んでるんじゃないか』 って疑われたくらいだし」
「!!」
「ま、電気料金が少なく済んで助かったけど」
「それじゃ、」
「ン?」
「それなら、冬はたくさん暖房を使って、生きてるって主張しましょう」
「・・・・・・・・・・何それ」
















などという会話をしたのが、約4ヶ月前。 そろそろ夏が終わろうかという頃。
それからすぐに秋を越え冬を迎え、気付けばクリスマスになっていた。
更に(時すでに遅いのだが) 足立が気付いてしまえば、
いつの間にかどんな間にか、鳴上悠が自室に上がり込んでいた。
思い返してみれば、
特に示し合わせた訳でもなく、
事前にアポ、というか約束をした訳でもなく、
定時で帰途についていたちょうど一時間前、ここを曲がればもうすぐ帰宅、という一番手前の角でばったり遭遇(?)。




『足立さん』
『うわ! 何! なんでいるの悠くん』
『偶然、通りかかって』
『ええ? 手にケーキの箱持って、偶然、はないだろ』
『じゃあそういうことにしておいて下さい』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・僕、時々キミに本気でドン引いてるからね』
『そろそろ、慣れてくれればいいのに』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』




そんなやり取りのあと、どう考えてもストーカーの域に足を踏み入れつつある(・・・・・・・・) 鳴上はさも当然! という風体でちゃっかり一緒に玄関のドアを通過。
十二月下旬、また今にも雪が落ちそうな曇天の冷え切った部屋の中、
冒頭の、
「数ヶ月前にした話、覚えてますか」
とか何とか言いながら家主の足立より先に、暗かった部屋の照明を手探りでパチンと着け、それからエアコンのスイッチをONにする。
元々大して広くない部屋は、電気代に糸目をかけず暖房を全開にすれば数分のうちにそこそこ温まることを経験から覚えたらしい彼は、
これまた足立より早く冷蔵庫に手をかけ、
「ケーキ、とりあえずしまっておきます」 と一人、がさごそ動いている。
それを別段止めることもなく、ただ脇で眺めていた足立だったのだけれど。
着ていたコートを脱いで、ばさりと無造作にテーブルの上に放置したのをきっかけに、




「今日はクリスマスイブ、です」




改めて鳴上が宣言してきた。




「・・・・だからって別に。 僕個人としては、クリスマスに何の意味もないし」
世間はやたら浮かれてるけどねー、と肩をすくめてやる。
すると鳴上は生意気にも即座に否定。
「意味がないなんて、そんなはずないです」
「?」
「足立さんが、やることをわかっていないだけです」
「やること、っていうか、僕、キミの言ってることがわからない」
思わず本心を返したのだが、
「一緒にイブを過ごして貰えれば、わかってもらえるかと」
「・・・・あれ?」
ふと、目に付いた。
「悠くんさ、」
妙に、顔が赤い。 特に目許が。
ついでに普段よりどことなく、声も熱を内包している感じで。
「もしかして、風邪ひいてる?」
率直に問い質す。 と。
「・・・・・・・・ひいていません」
僅かな逡巡のあと、かぶりを振った。
「ふーん。 でもどう見ても、風邪っぽいけど?」
「・・・・・・・・風邪じゃないです」
「ふーーーん? 熱、少しありそうだけど?」
「・・・・・・・・大丈夫です」
頑なに否定する鳴上に、
「病院行ったら? まだこの時間ならギリギリ外来受け付けてくれるんじゃない?」
重ねて事実で追い討ちをかけてやると、
「せっかくの足立さんとのクリスマスなのに、風邪とか熱とか言っていられない」
ぼそり。 呟かれる。
「いや・・・・だから僕は別にクリスマスとかどうでもいいし」
零した足立の台詞は、何故か必死に否定された。
「どうでもよくないです」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「俺は平気です。 病院に行った時点で 『風邪』 って診断される。 だから行かなければ、これはただの違和感で終わるから」
「・・・・・・・・アタマの方の病院に行きな」
呆れかえってそう告げながらも、何故か、
少しだけ、ぐらついた。
「って言ったところで、キミが行くわけないか。 まあ、そこまでしてクリスマスに拘るんだったら、譲歩してあげてもいいけど」
自ら言い直して 「ちょっと甘やかしすぎかな、コレ」 と苦笑すると、
「全然そんなことないです」
この上なく嬉しげな顔をされた。
その鳴上の私服、
シャツの胸ポケットに、折りたたまれた眼鏡。
「あれ? 悠くん目、悪かったっけ?」
素朴を装った疑問符に、
「これ、伊達眼鏡ですよ」
「へえ。 かけてみてよ」
興味で偽装した唆しは、
「・・・・・・はい」
黙って実行されて、足立はまじまじと眼鏡を着用した鳴上を眺めやる。
「それ、いつかけてるのさ? 僕見たことないけど」
「ええと、遊びに行ったりしてる時とか」
「ふうん」
こんな無意味すぎる会話をしているうちに、外では雪が降りだしていた。
この田舎町では、ホワイトクリスマスは特に珍しいという訳ではないらしい。
けれど、降りはじめから勢いよく空から落ちてくる綿雪は、みるみるうちに窓の外を白く覆っていく。
降りしきる雪。
「でも、もうかけないと思います」
「なんで?」
「半年くらいずっとかけていたから。 もう、飽きました」
「ま、伊達眼鏡だしね。 視界が変わるってわけじゃなさそうだし」
積もる嘘。
「はい。 それに、」
「?」
「・・・・・・・・・・・・意味が、ないから」
そしてその中、ほんの一片ほどの真実。
思わず 「そうだねー」 と頷きかけたところで、何かを振り切ったかのよう、
妙にさっぱりとした表情で鳴上は眼鏡を外し、
「あの、」
ケーキは後で食べましょう、その時は俺が夕食も作りますから、と言ってきた。
「いいよ。 でも冷蔵庫、中身ほとんど入ってないけど」
「さっきちょっと覗いたから知ってます。 でももう慣れました」
笑う鳴上。 「なんだよそれ」 とつられて苦笑してやろうか少し迷っていたら、
「・・・・・・足立さん」
呼ばれて、なし崩しに衣擦れの気配。
続けて、長めの色素の薄い彼の前髪で視界が閉ざされる。




風邪がうつる、など野暮なことは今更口にしない。
触れてくる口唇に、やっぱりちょっと熱が高いと見て取れるくらいだ。
キスの合間、




「ケーキ、何買ってきた?」
「普通にイチゴのホールケーキです」
「イチゴかあ」
「もしかして、チョコレートの方がよかったですか?」
「いやあ別に? 僕、何だっていいし」
「それじゃ来年は、チョコレートにします」




拙い、まるで子供同士のような会話。
そしてそれは、
「来年、ねえ?」
気まぐれに声のトーンを僅かに落とした足立によって妨げられる。
「キミ、こんなことしてていいの?」
吐息が絡むほど近く、その目を見据えて。
「もうすぐ終わりが来るよ? 悠くん、もうとっくに詰んじゃってるってわかってるかい?」
すると鳴上は戸惑うどころか、迷うことなく、




「足立さんと離れるくらいなら、世界ごと終わらせた方がマシです」




言い切った。
そして、まるで囁きのキスの続きのように。
「仕返しです、全部。 足立さんを否定した全てを、俺は絶対許さない」




躾は上々に仕上がっていたようだ。




「何それ。 あーもう、虚勢も張りすぎるとただ滑稽なだけだよー?」




揶揄りつつ、一方で飽満。
効かせ過ぎの感が否めないヒーターの温風と鳴上の高い体温とで、むしろ今は、暑い。
外は雪と霧とで煙るほど白く、寒いはずなのに。
足立は自らネクタイを解く。
そうして腕を伸ばして引き寄せてやって、




「熱、あがっても自己責任てコトで。 それでいいなら、来なよ」




雪のように瞬時に解けて消えるシアワセをかき集めて、鳴上悠にご褒美。








きっと最初で最後のクリスマスを、絡み合って過ごそう。














一応、主足のつもりなんですが足主でもよかったかもしれない。
と書いてから思いました。

いつものことですが、やっぱり時間軸とかぐちゃぐちゃなんで、共犯者エンドの完璧パラレルてことでどうにか見逃してやってください。 ・・・・・・・・すみません!