[ 同棲してみました。 1 ]



※ 普通に明るくイチャついてるのがみたい、とリクエストいただいたので、【ほとんどパラレル前提】 での
「押し切られて押し通されて一緒に住んでみたよー」 ネタです。
でも入籍はしてない(爆笑)


そんな前提でお読みください。






某月某日。




[AM 6:30]

音を立てて開けられたカーテンと即座に差し込む朝日の眩しさよりも、
あわよくば寝顔を覗き込もうとする気配の方が気になって、足立はほぼ無理矢理に瞼を持ち上げた。
「もう6時半です」
「なんだよ・・・・」
斜めにうつ伏せ寝の体勢のまま、
「あと15分は寝られるって・・・・」
ベッドのすぐ横に立つ鳴上にもごもごとそれだけ言う。
すると頭上から、
「じゃあ、15分後にまた起こしに来ます」
そんな声が降ってきて、束の間の至福の二度寝を満喫していたら。
「6時45分になりました。 起きてください」
再びやってきた鳴上に、枕を取られた。 それでも足立は諦めない。
「・・・・・・・・・・・・あと5分」
言ってごろりと寝返りを打ち、背を向けて三度寝に入ろうとしたのだが。
「駄目です」
今度は容赦なく毛布を剥がされてしまった。
「寒っ・・・・」
「これで起きてもらえないようなら、ペルソナ呼びますけどどうしますか」
その声に何か付随する気配を感じて、
「は・・・・?」
首を傾けそちらを向く。
と。
眠い目にゆらあり、と映る彼の背後のイザナギの姿。
「〜〜〜〜って、出しながら言わないだろ普通!!?」
「生易しい起こし方じゃ、足立さんに起きてもらえないことを知りましたから」
起きてくれますよね、とにっこり笑われて諦め混じりの白旗。
「・・・・わかったよ・・・・けど眠・・・・」
小さな欠伸と共に無理矢理半身を起こしながら、
「メシ、あと10分でできます」
そう言って部屋を出て行く鳴上を見送った。






[AM 7:30]

「それじゃ、行ってきます」
「はいはい。 行ってきな」
「晩メシは何がいいですか」
「美味しいモノ」
「そういう返事が一番困るんですけど」
「だってそれしか思い浮かばないんだから仕方ないじゃん」
「・・・・・・わかりました。 行ってきます」
「はいはい。 行きな」
チラリと目線だけ向けてやって、マグカップに口をつけた。






[AM 9:00]

署内にて。
出勤直後、堂島が朝イチで何を言ってくるかと思えば。
「おう。 そういやどうだ悠の調子は」
「どうって言われても。 いつもと変わりませんけど」
そう答える以外、返事のしようがなかったから(まさか毎晩毎晩迫られて大変だとは言えない)、
受け流す方向でそう言うと、
「それなら大丈夫だな」
よしよし、と感慨深げに頷かれてしまった。
「大丈夫、って何が・・・・」
唖然としてついそう口にしてしまったところ。
「あ? 色々だ。 いろいろ。 一緒に住みはじめてもう三週間だろう? 始めはてっきり、追い出されてウチに戻り帰ってくるかとも思ってたんだがな」
今のところそんな様子もなさそうだし、お前も元気そうだしいらん心配だったか、とひとりごちる堂島。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そんなの何度追い出しても何回叩き出しても絶対に戻ってくるし、
玄関ドアに内側から鍵をかけて閉め出したところでペルソナを使って強引に入ってくるし(訳注:鍵ごとドアを壊されるという荒業力技)、
最終的に、
「もう堂島さんとこ帰りなよ!」 「嫌です帰らない」 「やっぱりキミと一緒に住むとか、ありえないから!」 「俺は絶対に足立さんと暮らしたいんです」 「僕はイヤだね!!」 「なんと言われようと、俺は一緒にいたいんです!」 「同棲なんて絶対イヤだって!!」 「じゃあ今すぐ結婚してください」 「なにその結論!!?」
こんな口論に陥った挙句、ガチ勝負に縺れ込んだ二週間前。
互いにペルソナまで召喚して、割合と本気で戦ったような気がするのだが、結局勝負がつかないまま、
その余波で部屋の中が惨状にまみれただけで終わってしまったことをうっすら思い出しつつ。
「何とかしてくださいよ、彼」
堂島さん保護者でしょ、と足立が大きくタメイキをつくと。
「無理だな」
きっぱり。
「本当にそう思ってるなら、自分で何とかしろ」
はっきりそう言われ、
「〜〜〜〜〜〜それが出来ないからこうやって朝からタメイキついてるんです」
堂島相手、更に盛大なタメイキをつくことになった。
当の堂島は、
「はは」
小さく、何故だか楽しげに笑った。






[PM 13:00]

少し遅めの昼食をとりに外に出た途端、携帯が鳴った。
見れば、鳴上からで。
三秒だけ思案したあと。
「何ー? 大した用も無いのに電話して来るなっていつも言ってるじゃん。 で、何の用?」
『矛盾してますよね、その台詞』
機械ごし、そんなふうに言ってくる鳴上に同じ言葉をもう一度。
「何の用」
『すみません、今日、もしかすると少し帰りが遅くなるかもしれません。 この前の台風で休校になったときの振り替え補習が放課後にあって』
「いいよ。 全然いいけど。 むしろ帰って来なくても僕的には全然OK」
『帰ります。 終わったら全力で帰りますから』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」






[PM 19:30]

普通に帰宅すると、玄関の鍵は開いていて、鳴上の靴もすでにあった。
「・・・・なんだ、僕より早かったんだ」
呟きながらキッチンに続くドアを開けると、魚介系とトマトスープの大層いい匂いがした。
それと、鍋に向かう鳴上の姿も。
「ちょうどいいタイミングで帰ってきてくれてよかったです。 今日はブイヤベースにしてみました」
振り向きざまに火を止める鳴上に、上着から袖を抜いて足立はネクタイも外しつつ。
「外、けっこう冷え込んでるし。 ちょうどいいんじゃない」
「本当は、サフランを使った本格的なスープにしたかったんですけど」
時間がなくて無理でした、との弁に、
「仕方ないじゃん? 補習だったなら。 それは次回に期待しとく」
ほんの少しだけ、ニュアンスで甘やかしてやる。
と、それで伝わったらしい鳴上はやたら嬉しげに笑って。
「じゃあ、その時はエビだけじゃなくカニも入れます」
ついでにウニも。 と言ったら、
「ブイヤベースにウニは入れないと思います。 足立さん、本当に値段の高いモノばっかり好きですよね」
基本的に好き嫌い多いし、初めはどうしようかと思いました。 と更に嬉しそうにぼやかれた。






[PM 20:30]

夕食も終え、なんか今日はデスクワークばっかりで疲れたし、そろそろ風呂でも入って今夜はさっさと寝ようと考えていると。
「今日こそ、一緒に風呂に入りたいです」
足立の動向を読み取ったのかはたまた偶然か、夕食の洗い物を片付けた鳴上が真顔でそう言ってきた。
「却下」
もちろん、即座にはね付ける。
「あんな狭い場所に男二人でなんて、絶対ヤだね」
足立としても問題の本質はそこじゃないしそれじゃない、とわかっていながら(・・・・) の回答に、
それでも鳴上はしつこく食い下がる。
「それが夢だったんです。 夢なんです」
「あのね、なんでもかんでも夢って言えば他人が譲歩してくれるって思わないほうがいいよ」
そんなことくらい、とっくにわかってるはずだろキミ、と呆れて宙を仰ぐ仕種をしてやったら。
「足立さん、もう他人じゃないですから」
「え・・・・・・」
構わないです、と訳の分からない理屈。
でも、「バスルームに入ってきた時点でマガツイザナギ呼ぶ」 と、頑として一緒には入ってやらなかった。
さすがに互いに素っ裸でペルソナバトル突入、などということは鳴上としても避けたかった様子で、
今夜のところは足立の物言いで、押し切った。






[PM 21:00]

「僕、もう寝るから」
「早くないですか」
「疲れてるんだって。 ほとんど一日中、ずっと書類とパソコンと向かい合ってたし」
「そういえば、あと数年で足立さん三十路ですしね」
「まあね。 ・・・・・・・・殺すよ?」






[PM 21:30]

ベッド上。
「どうしてキミまでココにいるのさ?!」
「どうせなら俺も一緒に寝ようと思って」
「悠くん時々やたら寝言うるさいんだよ。 だからあっちの部屋で自分の布団で寝なって!」
とりあえず、Sexに縺れ込まない&押し倒されない&追い込まれない(・・・・) 日は、鳴上は持参した布団で隣の部屋で寝ているはずなのだが。
恐ろしいから数えたくもないし、実際考えたくもないことなのだけれど、
おそらく、
おそらく、
一緒に暮らし始めて以来、彼は自分の布団で寝た回数よりも、足立のベッドに潜り込んできて・・・・、
というか乗り込んできてそのまま×××、済し崩しに朝までここで眠ることのほうが多いような気がするけれども、もう繰り返して考えたくもないので(以下略)。
「寝言だけじゃなくて、睦言も聴いて欲しい」
「〜〜〜〜〜〜!!!!」
だめだ。 言葉が通じない。 会話にならない。






[PM 21:35]

根負けしたのはいつも通り普段通り、足立の方だった。
「どうしていつもこうなるかなあ・・・・」
シーツに押し付けられ、下着を剥ぎ取られながら。
「僕、そんなに悪いコトしたっけ・・・・?」
自嘲と自虐1000パーセントの、含み苦笑いで小さく呟く。
すると耳聡く聞いていた鳴上は、


「―――――――――― しました。 取り返しのつかないことを沢山」


さらりと呪いの言葉を吐いて。


「でも俺はあなたが好きなんです。 だから絶対離さない」


面倒な性格してるよねキミ、と返す前に唇を塞がれた。

















【『同棲してみました。 2』 に続きます】




短文だからなのか、わりとサクサク書けました。
2はヤってるだけです! たぶん(笑)
そしていつもと変わりない(・・・・・・) といういつものパターン