[ ダブル ]


これはP4G作文です! 誰がなんと言おうとP4Gなのです!(・・・・笑)






「何だコレ・・・・」
みるみるうちに目の前で展開されていく状況を鑑み、足立は頭どころか、身体全体を丸抱えしたくなった。
場所は稲羽市・ジュネスフードコート。 いわゆる 『いつものところ』。
とりあえず現状の説明がてら、時間を今から15分ほど遡ってみると。








本日朝も早々から突然部屋まで押しかけてきた (※いつものことである) 鳴上悠に、
「会わせたい相手がいるんです」 とか何とか捲し立てられ、
「足立さん今日は丸一日休みですよね非番ですよねだから俺に付き合ってください」
と強引に急き立てられ外に連れ出され、どこへ行くのかと思えば着いたところは開店直後のジュネスであって。
連れて来られたのは(※ちっとも良くない) いいものの、
さっぱり訳がわからず 「はあ? 特売買い出し要員の頭数???」 なんて的外れなことを考えていたら、ぐいぐいと腕を引かれて辿り着いたのがここだった。
開店間もないということもあり、鳴上と自分以外まだ他の客の姿はほとんど見えず、鳴上は。
「とりあえず座って待ちましょうか」
「は? 待つって何を???」
入口から少し離れた端の方の四人掛けの席を選び、全くもってどうして突然此処に連れて来られたのか理解できないが仕方なし、疑問符を頭の上に連発しながらも足立もそこに落ち着く。
「そろそろ来るはずなんですけど」
「はあ? 誰が」
時計をチラチラ見ている鳴上に、そういえば会わせたい相手がいるとか何とか言ってたな、と思い浮かべた途端、
「あ、来ました」
言ったが早いか、「こっちだ」 と鳴上は立ち上がって、足立の背後に向け大きく手を振る。
つられて首だけを動かしてそちらに目をやって、「え、誰」 と、フードコート入口から歩いてくる二人組が見えた。 少なくとも、足立の知った顔ではなかった。 遠目に見るだにまだ若い。
一人は天パに近い黒髪に黒縁眼鏡痩身、もう一人は長めのベージュの髪でやはり痩身、揃って私服であるため実際のところは不明だけれど、おそらく鳴上と同年齢、まず間違いなく高校生といったところか。
そこまでアタリを付けたところで、
「・・・・・・、」
気付かなくともよいところに気付いてしまって、たまらず二度見した。 どこを、ってその二人を。 何故って、
手を繋いで(しかも恋人つなぎで!!) こちらにやってきたからだ。
それを凝視して固まっている足立に鳴上は全くもって気が付かず、
「久しぶり」
とか呑気に言っている。
と、「足立さん、紹介します」 と鳴上が。
そして目の前に当の二人組が立ち、ようやく足立は視線を (繋がれたままの) 手から、二人の顔に移すことが出来た。
「初めまして」
言いながら黒い方がぺこりと頭を下げ、
「こんにちは」
ベージュの方がにこりと笑いかけてきた。
・・・・ああ、もしかして。
流石に大体、想像がつく。 モブじゃない。 揃ってこの顔立ちは、鳴上に勝るとも劣らないデザインを持っていて、
「・・・・・・ああコンニチハ。 ええと、キミ達、P5の」
「はい」
返した挨拶が、ついカタカナ表記の棒読みの発音になってしまったが、それに構わず頷く黒縁眼鏡。
「よくご存知ですね。 僕たちになんて、絶対に興味がないと思ってました」
柔らかな口調で答えてくる色素の薄い方。
それに足立は苦笑う。
「はは。 ないよ。 だけど聞いたことはあったから。 っていうか無理矢理聞かされたんだけど」
ねえ悠くん、とあえて鳴上に告げ、
ちょっと一つだけ先に聞きたいんだけどさ、と流れを強引に遮った。
「?」 「?」 「?」 三者三様、高校生がそれぞれの頭の上にハテナマークを出す。
そこで。 P5の二人に向けて。
「・・・・今の男子高校生って、手とかフツーに繋いじゃうモノなの?」
「え?」
「ジェネレーションギャップってやつかな、けっこう僕、驚いたもんで」
言うと、「ああ、」 と色素の薄い方が笑った。
「彼が、繋ぎたそうにしてたから」
駅から繋いで歩いて来てみました、と事も無げに言ってのけ、もう一人の黒い方は軽く頭をかく。
「へえ。 ・・・・そんなもんなんだ」
頷きつつも足立はそれ以上追及することも考えることもやめた。 どうせ自分とは世代も感覚も違うのだ。 理解が及ぶはずもない。 この二人がどうあったとしても、自分に関係があるわけでもないし。
そこまで瞬時に到達し、ふっと意味もなく鳴上に目をやる。 と。
どうやらそんな二人の姿は鳴上には羨ましすぎたようだ。 「俺たちも、」 と手を伸ばしてきたが、当然払い除け、即座に撃沈するP4主人公に。
「こういうのはカワイ子ちゃん二人だから許されるんだよ。 彼らと比べてキミ、全然可愛くないからね」
いや本当だ。 堂島家、自分が手を繋げるとすればせいぜい菜々子だ。 しかしそれも、どうせジュネスで迷子になった菜々子を自分が堂島のところに連れていく、というパターンくらいしか思いつかない。
ハァ、と足立はひとつ溜め息を吐いた。
「キミたちと悠くん、PQ2で会ったんだっけ」
まあ立ちっぱなしも何だから、座れば? と勧めると二人は着席しつつそれぞれ名前を名乗る。
「ああどうも。 キミが雨宮くんでキミが明智くんね。 僕、名乗る必要ある? 今更じゃない?」
半ば投げやり口調になり、我ながらグダグダな対応だと自覚はあったが、そうなるのも仕方がないと割り切った。
何しろP5の主人公と、そのアレのアレ(・・・・) なのだ。 見た目は揃って大人しそうに見えるが、大体わかる。 一筋縄じゃいかない。 おそらく両方、どちらも。
そんな足立を鳴上は、
「言った通りだろ、こういう人だから」
笑顔でP5の二人に言ってのけ、それに 「そうだな」 「そうだね」 と軽く頷く新顔のこいつらもどうかしている。 続けて今後の展開を想像して、足立はたまらず頭を抱えたくなり、鳴上 悠の、
「とりあえず俺と雨宮で何か飲み物を買って来よう。 二人は、何がいいですか」
「じゃあ、僕はアイスコーヒーで」
しれっと頼む明智に、
「足立さんは?」
訊いてくる雨宮。
「何だコレ・・・・」
男子高校生3人に囲まれ(しかも全員自分より背が高い)、
「足立さんもいつもコーヒー、ついでに足立さんに朝メシも食べて欲しいから適当にいくつか頼もう」
とか言い出す鳴上、
「ここのコーヒーは旨い?」
対してどこかずれた質問をする雨宮、
「フードコートだろ。 相応のまあ残念な味じゃない?」
的を得ているけれど、それを言っちゃあ・・・・、というところを突いてくる明智。
みるみるうちに目の前で展開されていく状況を鑑み、足立はやはり頭どころか、身体全体を丸抱えしたくなった。
はあ、と2度目の深い溜め息が無意識に出る。 そうこうしているうちに、鳴上と雨宮はカウンターへと席を立ち、ふと見ると、残ったのは自分と明智で。
気付けば自分を興味深そうに見てくる明智に、「あの」 と話しかけられた。
「ン?」
「鳴上君って、足立さん的に見るとどんなふうなんです?」
僕もまだ、知り合って日が浅くて、と補足する明智に足立は。
「悠くん? ただのきちがい。 きちがいでパワフル。 けど時々、一人でいろいろ抱え込んでぐんにゃりするかな。 そうは言ってもすぐ立ち直るし開き直るけどね」
ばっさり切り捨てた。 何しろ本当のことだし。
そういうキミの方の、雨宮くんは? と尋ね返してやる。 すると、
「ちょっと変態で縋ってくるところがある感じ、ですね。 だけど思いのほか図太かったりしますよ」
明智の返答もなかなか酷いもので、
「そんなのに負けた自分が物凄く嫌になりますけどね」
さらりと。 口調はずっと穏やかで、笑顔のままだったけれどその瞳は笑っていなかった。
ああ、この子供も自分と同じかと足立は一瞬で理解して、
「ホント、やだねえ」
その一言と隣の明智へ向ける眼差しでいろいろ含め置いて、
「躾がねえ。 出来なかったんだよねえ」
愚痴とも後悔とも取れる、ぼやき。
「悠くんにさ、『待て』 を頑張って教えようとしたんだけど。 成功したことなくてさ」
すると明智は少しだけ考える素振りを見せ、
「・・・・・・・・。 『待て』 は教えてないです。 でも、僕も待たせたことはないな」
そのあたり、蓮はわりと躾けられてるかも、とひとりごちる明智。
「えええ?」
たまらず足立は宙を仰ぐ。 どうしたらそうなるのだ。 P4とP5の主人公はそんなに違うのか。 まあ確かに外見も違うし、ストーリーの舞台も田舎と都内一等地との差はあれど、何故に。
「キミもアレ? ・・・・何だっけ、雨宮くんに押し切られたクチ?」
先程自己紹介されたばかりの、P5主人公の名前をようやく思い出しつつ、のろのろと訊ねてみても、
「いいえ、たぶらかしたのは、どちらかというと僕の方から」
苦笑とも失笑ともつかない、微妙な笑顔でこれまた想像外にはっきり答えられてしまった。
「ええええー? どうして」
なんでそんな面倒なコトを自分の方から、と半ば本気で驚くと。
「その方がいろいろ巧く行くと思って。 そうしたら僕の筋書きとは別の方向に行ってしまいましたけど。 でもまあ、彼のことは落とせたし、今こうやって此処で笑っているから結果的にはオーライかなって」
「へえ、そう」
曖昧に頷いて見せつつ、足立は鳴上ともその仲間の子供たちとも違う、共通項は 『彼等と同年代』 というだけの明智から、この短いやり取りの中で自分との同類項を探ってみようとしたのだけれど、当然にしてそうそう見つかるはずもなく。
「ふうん。 そうやって笑ってみせての 『シアワセな現状』 アピールもなかなか悪くはないけどさ」
おそらく自分と似たりよったりの立場と境遇であろう、このキレイなカオをした子供に向け、少しだけ棘を向けてみる。
「シアワセの設定値はどこにするの? 低けりゃ低いほどラクだよね、お互いに」
自嘲混じり、薄く嗤えば明智はふっ、と少しだけ真顔になった。 そうして何か口にするかと思えば。
瞬時に表情を切り替え、再び貼り付けた笑顔で。
「僕、足立さんのこと結構好きですよ」
前触れもなく、てらいもなく言ってのけるクソガキにうわ、と足立はドン引く。
まったくもって答えになっていないうえ、突拍子が無いにも程ってものがあるだろう。
そのあたり、鳴上の無茶苦茶ぶりにもどこか通じるところがあるような錯覚まで起こしかけた。 最近の高校生はみんなこうなのか。 それとも彼等だけが特別なのか。 わからなかった。
「・・・・あのさ」
テーブルに崩れ落ちたくなるのを堪え、
「はい?」
「僕とキミとが会ったのは、間違いなくつい今さっきが初めてだと思うんだけど」
「そうですね。 PQ2に足立さんはいませんでしたから」
「間違いなく初対面。 なのに、そういうことを会ったばっかりの相手に臆面もなく言える常識のなさが胡散臭すぎる」
「そうですか? ・・・・あはは、嫌われちゃいましたか」
あっけらかんと微笑むその向こう、遠くに見える鳴上と雨宮はまだ戻って来ない。 みればトレイに大量の食物を積み上げたまま、レジのところで待たされている。 カウンターの向こうの店員の動きからして、何某かのレジトラブルでもあったのか。
それをスルーして、
「いやいや、キライじゃないよ」
言ってへらりと足立は笑う。
「明智クンはさ、彼等なんかよりよっぽど人生経験多そうだし。 その経験値も人生のイベントクリアボーナスもそこそこ積み上げてそうだし」
「・・・・・・ええ、まあ」
下手したら僕より値は多いかもね、と付け加えて。
「ただ一回、ちょっとミスっただけだろ。 理不尽だよねえ。 彼等は何回間違えたって軌道修正がきくのに、僕達にそれはなかったワケだから」
「・・・・・・・・」
またもふっと表情を変えた明智は何かを口にしようとして、やめたようだった。 そうして。
「さっきの答えですけど」
「?」
「幸せの暫定値はその都度、僕が決めさせてもらいますよ。 ほとんど狂っていたって、幸せなこともある」
「はは。 ・・・・それ全然答えになってないけど。 まあいいや」
答えたくないのか、それとも答えが出ていないのか。 おそらく五分五分。
どうしてわかるかといえば、自分も同じようなものだからだ。 彼等より10年多く歳をとったがゆえの経験則。
ふう、と足立はひとつ息をついた。 そんなこんなのうち、どうやらやっとのことでレジ会計が終わったらしい鳴上と雨宮がこちらに向かって戻ってくるのを他人事に眺めつつ、
「キミ、案外話しやすいね。 心は開かないけど」
キミじゃなくて僕が、と心の中で補足。
と、明智も二人が戻ってくることに気が付いて、
「足立さんも、思ってたより話が通じやすくてよかったです」
とりあえずこの話はここでおしまい、と無言で交わす。 途端、
「すみません、通信エラーか何かでレジで電子マネーが使えなくなってて」
「俺も雨宮も、現金ほとんど持っていなくて。 直るまで焦りました」
それぞれのトレイいっぱいに、ドリンクやらバーガーやらポテトやらをてんこ盛りにした二人が帰ってきた。
「え? 悠くんも雨宮くんも、現金持ってないの? 嘘だろ?」
こんなに大量に誰が食べるんだろうと凝視しながら、足立はかなり本気で驚いたのだが。
雨宮曰く、「スマホにはチャージしてあったんですけど・・・・」
鳴上曰く、「俺も最近はあまり現金は持ちません」
そうして最後に明智曰く、「ジェネレーションギャップ、ですね足立さん」
「・・・・ははは」
乾いた笑いで誤魔化して、今更ながら足立は隔たりを痛感した。 そうしてまた、やっぱり頭を抱えたくなった。
それには全く気付いていない様子で、
「随分待たせてしまいましたけど、その間、」
「二人で何の話をしてた?」
鳴上と雨宮に続けざまに訊かれて足立は 「秘密」、
明智は 「内緒」。
同時に答えたあと、一斉に顔色を変えた主人公二人に揃って苦笑した。








――――――――― えええもしかして今日1日、このガキたちの引率?








遅ればせながらそう足立が気付くのは、3分後のことである。








→→→ 【ダブル・ダブル】 に続く






こういうアホなのが書きたかったのです!(笑)