[ Befehl ]



※ 共犯者エンド後、て前提で見ていただけると嬉しいです








キミの乗った電車を背中に、たぶん初めて心の底から笑みを浮かべた。
















『だからご褒美。 花マルあげる。 なんでも言ってみな』


















四月上旬、春休みもあと少し残っているだろうと思う頃、
確認がてら悪戯混じりの思い付きで電話してみれば、その時はコール十回で留守電に切り替わった。
とはいえ別段今更伝えることも無い上、
それでいてどうせ気付いた時点ですぐさま折り返しかかってくるだろうと思っていたのだが、
思いのほか躊躇したのか、彼からかかってきたのは次の日の夕方で。
『何か、』
「別に? これといった用事はないけど、キミがちゃんと電話出るかなって思い付きでかけてみただけ。 あとはしいて言うなら、明日と明後日、珍しく連休取れたからそれ伝えとこうって。 そしたらキミ、こっち戻ってくるかなーって」
『戻るって・・・・』
「じゃあ言い換えようか? そしたらキミ、僕に会いにくるかなって」
携帯越し、彼の声があからさまに固く、戸惑いを一切隠せていないことに苦笑を噛み殺しつつ、
「それじゃ30秒待つから、住所言うからメモるんだったらメモりなよ。 とりあえず、することもないし僕ずっと部屋にいるはずだから。 たぶんね」
そう言って適当に数えた30カウント後、鳴上の返答も何も聞かず、足立は一方的に自室の場所を告げ、そのまま切った。
これまた折り返し、質問なり拒否なり何らかのリアクションのため、再度かかってくるかと半分程度予想もしていたのだが、それは無かった。










その代わり、翌日。 朝。 しかもジャスト8時。










鳴らされた味気ないインターホンの音が目覚まし代わりになり、
何かの勧誘だったなら留守と判断され、もうとっくに立ち去っているであろう程度の時間を置いてドアを開ければ、さすがにそれは予想外プラス、予測外。
一瞬呆気に取られ、しかし込み上げてきた欠伸混じり、足立透、本心からの一言。


「なんで・・・・こんな早くに来るのさ・・・・」


「早い方がいいと思って。 ついでに、朝食も買ってきました」


どうせまたインスタント食品で済ませるつもりなんですよね、と呟いてそこに立つ鳴上をごく自然、
足立は室内に招き入れつつ。
「昨日のうちに向こう出たんだ? こっちに来ること友達とか堂島さんには伝えた?」
「いえ。 誰にも」
「ふーん」
最低限、確認することだけは一応確認しておいて、
「とりあえず、顔洗ってくるから。 適当に座って待ってなよ」
込み上げる薄い笑みをすでに隠すこともなく、いつも通り顔を洗い歯を磨き、
そのまま洗面所から戻って、(さすがに荷物は置いていたが) 生真面目に立ったまま自分を待っていた男子高校生、
自分よりすでに幾許か高い位置にあるその頭に手を伸ばして彼が目を丸くするのにも構わず、
「よしよし」 と二度ほど撫でてやったあと。
「ほんと、いつもいいコだよねキミ。 悠くん」




「だからご褒美。 花マルあげる。 なんでも言ってみな」




確かずっと前に言ったから多分覚えてるだろうし、
もしちゃんと言ってなかったとしてもとっくに知ってただろうけど、
僕一人暮らしだからもう今日と明日は誰も来ないしね、
非番だからよっぽどの事件がない限り呼び出されもしないから安心していい、とも告げる。
けれど鳴上は、こんなところは疎いのかそれとも躊躇しているのか、
「足立・・・・さん?」
不可解、という表情を隠さずに疑問符で返してきた。
それに、まあそんな感じになっちゃうだろうってのは想像付いてたけどね、と小さく笑ってやって、
足立は十も年下の学生に、くれてやる言葉を増やす。
「キミのあの日からの毎日を当ててみせようか。 朝、目を覚ます。 そして部屋の中をぐるっと見渡す。
もしかしたら、時間も季節も戻ってるんじゃないかって確認するために。 それでも現実は現実で、今日は今日であることを確認して、一日を始めていくのが日課だろ? で、夜、布団に入ったときには次の朝、目が覚めるときにはまたあの時まで時間が戻っていればいい、って。 そうすれば今とは絶対的に違う現実を過ごせていたんじゃないかって。 もしくは全部が夢だったらよかったのに、て願いながら眠りにつくんだよね。 どう? 大体合ってんじゃない?」
「・・・・・・・・・違、」
こちらの質問に答える際、
しばらく迷って、迷うくせ、大抵は否定で返す鳴上のクセは、あの頃から変わらない。
まあそう大して時間も経ってる訳でもないし、劇的に変わる訳もないか、君は君のままだしなあ、と一人頷きながら、
鳴上の言葉だけの否定など最初から全く無視をして、
「そんな日々が続いたわけだろ? けっこうキツイよね」
どこまでも物分かりよく、
どこまでもへらりと笑いかけてみせると。
「俺は、・・・・別に」
ふ、と目線を落としながら、それでも否定。 それでも素直に頷かない鳴上に、自然と笑みは苦笑に変化する。
「まったく強情だなあ。 でもま、あの頃からいろいろよく頑張ってくれたからね」
「・・・・・・・・」
答えない彼に、
「ってことで、それじゃあ僕から降参」
オトナになるとさ、面倒ごとは出来る限り省くクセが付いちゃうんだ。 だからさ、と丁寧に付け加えて。
先程洗面所から足立が戻ってきてからずっとほとんど直立不動、
ほぼ動かなかった鳴上の肩を強く掴んで引き寄せ、


「で、実力行使」


まずまず端整な、その口許に噛み付く素振りで口唇と口内を味わう。


「ッ!!?」


突然の行動に、目を瞠る鳴上に構わず、
驚き入ってはいるが抵抗も反抗もして来ないのを良いことに、どちらかといえば長く、
浅かったり、時々深いところまであさってみたりする焦らして誘うキス。
「・・・・ッ、っ・・・・ッ・・・・」
存分に味わった鳴上の味は、予想していたものに程近く程好く、
うんやっぱり嗜好も相性もバッチリみたいだ、と思いのほか期待を抱きつつ、ぺろりと唇を舐めながら解放してやると、
「何、を・・・・っ・・・・」
途端、余韻に落ち着かない喉を僅かに震わせられて、
信じられないといった様相で見つめられた。
だから。
「あのねえ。 ファーストキスって訳でもないだろうに。 そんな驚いた顔とリアクションしないで欲しいな」
君らしくないよ、と明るく伝えてやって、
そのすぐ後、鳴上の表情をまじまじと見るに。
「・・・・あれ? もしかして、初めてだった?」
「・・・・・・・・・・・・」
返事は無い。 けれど。 これは十中八九たぶん。
「あはは、それならそれで別にいいんじゃない? 僕的には、役得ってとこかな」
「そんな簡単に言われるとは思いません、でした」
「だって簡単だろー? ひとつもムズカシイこと言ってないしやってないよ?」
「そう・・・・ですか」
「そうだよ。 ていうか、僕に対していちいちそんな驚いた顔するの、もう終わりにしなよ」
きっちりしっかり男前な顔立ちをしているのに、そんな戸惑ったカオばかりされては勿体無さ過ぎる上、
今更もう隠す理由も、演じる意味も無く。 きっと互いに。
「キミが時々見せたりするふてぶてしい表情とかね、こっちもかなり気に入ってるんだから」
最初の頃はポーカーフェイスを地で行く今どき珍しい子供かと思っていた。 けれど反して全くといって良いほどそんなことはなく。
「さっき言った通り、あの時は菜々子ちゃんの手前、いりませんって言うしかなかった花マル、今日は好きなだけあげるからさ、」
すでに充分近くに居ることを承知の上ながら、手招き。 俗に言う 【おいでおいで】 をしてみた途端。


「・・・・ッ・・・・!!」
「ん???」


予測外の勢いと動きをもって伸ばされた長い腕。
瞬時にそれに巻き込まれて抱き込まれ、抑え付けられた。
そうしてそのまま、激しく唇を塞がれる。
ああやっぱりさっきと同じ味だよなあ、とぼんやり感じながら、されるがままでいてみると。
鳴上は揺り起こされた熱と、溜まっていた欲とを瞬く間に身体にたたえ、
それはみるみるうちに行動に反映されてきた。 口唇を離す間もなく、息継ぎさえ巧く出来ていなそうなのに、その片手は性急に足立のシャツの下に潜り込んで這わされ、忙しなく動く。
(・・・・・・あれ、やっぱ僕がこっち?)
足立はほんの少しだけ怪訝に思ってみる反面、まあどっちでもいいけどねとすぐに思い返して、
それならちゃんとイチから教えてあげながらじゃないとツライな、主に僕が。 と内心で苦笑しつつ、
隙を見計らってキスを終えるタイミングを作ってやると、鳴上が落ち着かない息で自分を見つめてきた。
「足立さんが悪い」
そう呟く彼の顔は、三月のあの日、警察署で見た表情とほぼ同じで。
「全部、足立さんのせいですから」
まるで自分に言い聞かせるかのよう呟く、高校生のそれなりに的を得た(?) 責任転嫁(・・・・?)。
「なんでもイイけど。 とりあえず移動しようよ。 こんなところでやったら風邪ひくだけだし背中痛いし」
しかし気にも留めずあっさり流して終わらせ、
「それに悠くん、手も腕も随分冷たいけど冷え性? だったら余計ベッド行った方がお互いのためになるからさ」
他人に体温持ってかれるのあんまり好きじゃないんだ、
と無駄口を騙った本音で、締めた。






















季節のカテゴリーはすっかり春とはいえ、兎にも角にもまだ肌寒く、
きちんとヒーターを点けたあとベッドの上まで移動して、ごく自然に服を脱いで合い向かい、無造作に自分から鳴上のその手に触れてみる。
「ほら、僕よりかなり冷たい」
大丈夫キミちゃんと生きてる? と軽口を叩いてみると、
「これから温まります」
生真面目な返事が囁きで返ってきて、甘さを増した彼の声に口許が緩む。
二人で乗ったシングルのベッドは正直、狭い。
いつも一人で眠っていたから気にもならなかったけれど、サイズ的にも縦はともかく、横幅などはあからさまに。 けれど今は逆にその狭さが、
狭いがゆえ、否応なしに身体と身体は密着せざるを得ず、まるでこれから及ぶ行為を全面的に後押ししているかのようで。
「うーん・・・・」
まじまじと眼前の若い身体を眺めやる。 それこそ、爪先から頭の天辺まで。 まあ正確には揃ってベッドの上に座り込んだ状態だったので見えない箇所も多々あるにはあったのだけれど。
それでも、ついついあまりにじーーーっと見つめ続けていたもので、
「何・・・・ですか」
鳴上もさすがに不審に思ったらしい。
眉を寄せ、俺どこかおかしいですか、と聞いてきたから。
「いやー、悠くん、さあ」
「・・・・?」
「イイ身体してるよねー。 背も高すぎない程度に高いし、細いのに細すぎないし、幅も均整取れてるし。 羨ましいよ」
「足立さんだって、そんなに変わらないんじゃ」
「違う違う。 全然違うって。 背はともかく、幅とか僕やたら薄いから」
けどそう言って貰えてちょっと嬉しいかな、と笑ってやって、
「それじゃ喋るのはこれくらいにして、始めようか。 やり方わかる?」
改めて、切り出せば。
「多分。 大丈夫です」
思いのほかストレートな返答に、「お、意外」 と思った束の間。
ふっと寄せられた唇で、ぺろりと耳を舐められた。
「、」
意外な行動の早さがこれまた意外で、一瞬目を丸くしている間に、鳴上は首筋に顔を埋めてくる。
と、丁寧に舐め上げられ、ところどころ強く弱く吸い上げられた。
「跡、残したら駄目ですよね」
「・・・・ん。 駄目」
至近距離、自分でも呆れるほどの睦言。
「一つくらいなら隠せませんか」
「ダメ。 絶対」
「それって、何かの標語なんじゃ・・・・」
小さく笑った鳴上の唇が首から鎖骨のあたりに下りてくると同時、胸元に手のひらが這わされた。
「ん・・・・!」
性感というよりは、ただ冷たいその手の感触に、つい反応してしまうが、構わず指先は乳首を捕らえてくる。
続けてもう片方には一層下降してきた唇が寄せられ、ちゅくちゅくと吸い上げる。
「・・・く・・・・」
触れられているうちにぷくりと硬く尖ったそれを、飽きもせず集中して弄られ続け、
「っ・・・は・・・・」
足立の意思とは別に吐息が口をついて出た。
と、反射的に顔を上げた鳴上と目が合う。 すると彼の髪と同じ色の瞳が僅かに嬉しげに細まる。
「良かった。 不感症じゃなくて」
「あのねぇ・・・・」
なんだか軽く蹴飛ばしてやりたくなったが、面倒くさくなってここはタメイキひとつで終わらせた。
一方で鳴上は、そんな足立に構わず、手を脇腹に滑らせて、腰骨のあたりを何度も何度も撫でてきた。
「俺、足立さんの腰、好きです」
「はは、ピンポイントで腰? それってどうなのかなあ・・・・」
「もちろん腰だけじゃないですけど」
言うと同時、ずっと腰にあった鳴上の指が、すっと動いて前の性器に絡んだ。
「・・・・・・んッ、」
胸への愛撫で反応しかけていたそこに直接触れられ、小さく身体が仰け反る。
遠慮のないその指は、先端をから零れ始めた体液を絡ませ、上下に扱いてくる。
「ちょ・・・・、待・・・・」
「待ちません」
「早・・・い・・って・・・!」
「待てません」
性器への愛撫を続けながら、鳴上は再び胸元に吸い付く。
若さゆえか、性急なその行動を止めたいのはやまやまなのだが、止めたところでそう大して変わるわけでもない上、彼の状態を見るに、押し留めてみたとしても、留まるものでもなさそうだ。
「全く・・・・」
結局、抵抗を諦めた足立を余所に、愛撫に夢中になった鳴上に何度も扱かれたそこからは、彼の手指の動きに合わせて濡れた音が響き始める。
「・・・・は・・・っ、っ・・・・・」
「足立さん、」
吐息を漏らした直後、名前を呼ばれ、「?」 と目線だけで答えたら。
答えた途端、鳴上の頭が下方に素早く移動して、濡れた性器に齧り付かれた。
「ッ!! ぅあ・・・・っ・・・」
咄嗟突然の強い刺激に、思わず声が漏れてしまう。
「な・・・・何、いきなり・・・・?」
慌てて後頭部の髪を掴んで制止する。 けれど。 瞬時、少しだけ考えて。
「悠くん、さあ・・・・、」
「はい、」
おとなしく止められたまま、鳴上がじっと視線を合わせてきた。
さすがに、まさか突然口で咥えられるとは思ってもいなかった。 けれど。
「・・・・・・・・。 ま、いいか。 今更、何されても驚くほうがアレかな」
勝手に自己完結。 今までの彼の行動をざっと素早く思い返し思い出し、一人で納得。
「ゴメンゴメン。 続けていいから」
それまで髪を掴んでいた手で、なでなでとその頭を撫でてやる。
するとどこまでも素直に鳴上は行為に戻る。
すっかり上を向いたそこをいとおしむかにキスをしてきて、それから口内に招き入れられた。
そして軽く先端を銜えられ、舌は亀頭部分を丁寧に舐めてくる。
一方その間も手は休むことなく根元を扱き続け、
「っ・・・・、く・・・・」
思いのほか巧みな愛撫に、足立も少しずつ追い詰められていく。
生真面目に敏感な部分を攻められ、呼吸もみるみる荒くなってくる。
鳴上はそんな足立の状態を、咥えた彼自身で理解したのか、絶頂を促すように性器全体を喉の奥まで咥え込み、唇全体と舌とを使って激しく締め付けてきた。
「・・・ッ、ッ・・・・!」
押し寄せる快感に、腰が浮く。
噛み締めても口許から零れる吐息は隠しようがなく、押し寄せる絶頂感に下半身が震え出したのを鳴上はきっかけとしたらしい。
強引に、敏感な先端の窪みに舌先をねじ込んできた。
「・・・・っ・・・・!!」
たまらず、強い刺激に足立の精が弾ける。
すぐに離すかと思っていた、鳴上の口許は全く離れていく様子もない。
何度かに分けて吐き出されていく白濁を、彼は眉を顰めながらも零さず、飲み干した。




「・・・は・・・、っ・・・・。 キミ、ねぇ・・・・」
一通り吐き出し終え、脱力しつつも、呆れた。 呆れてみせた。
鳴上は口許の白いものを指先で拭いながら、そんな足立を怪訝そうに見上げてくる。
「マズくない・・・・?」
「美味しくはないですけど」
大丈夫ですか続けていいですか、とけろりと訊ねられてしまった。
「・・・・ん。 いいよ」
「それなら、」
「ああちょっと待った。 ・・・・これでイイ、かな」
次の行為のため、身を起こしてきた鳴上に合わせて、足立は体勢を変えてやる。
向かい合う姿勢は変わらない。 ただ膝立ちになり、後ろから手を回して解しやすくしてやるためと、何より自分が少しでもラクになるように。
ついでに枕元、昨日電話で話した後に潜ませておいたローションの小瓶を指し示す。
「わかる? できる?」
主語は無い。 というかあえて言わなかった。 しかし案の定、鳴上は足立の言わんとしていることは充分、承知のようで。
無言でコクリと頷き、頬に唇を這わせてきたあと、器用にローションの瓶を片手で開け、
指先に纏わせて濡らした後、ゆっくりと一本、差し入れてきた。
「く・・・・」
漏れる声。
そんなに簡単に入るわけもない。 どうしたって第一関節のあたりで止まってしまう。
けれど鳴上は辛抱強く、ローションも最大限に使って丁寧に解す努力を続ける。
そのうち、
「・・・ぅ・・・っ・・」
自然と第二関節まで入るようになり、少し深くまで埋まった指の異物感に眉根を寄せた足立がその手で鳴上の肩を掴むと、更に奥まで侵入させ、弱いところを探してくる動きになってきた。
「・・・・、・・・く・・・、っ・・・」
快楽にはまだ程遠い。 どちらかといえば痺れるような痛みの方が強い。
なのに噛み締めていないと、いや、噛み締めていても、声が漏れてくる理由が自分でもわからない。
そんな足立の押し殺した声に鳴上が気付き、
「苦しい・・・ですか」
遠慮がちに訊いてきた。 なのに指の動きは一切止めてこないあたり、ある意味、彼らしい。
「・・・・・痛・・・いし、キツイし。 ・・・・ヒリヒリするし。 苦しいって言葉じゃ全然足りない」
「安心しました。 それだけ喋れるなら」
言葉通り安堵の笑みを浮かべ、内側をやわらかく刺激してくる。
少しずつ、少しずつ内壁が解れて緩み、ローションの助けも今度は借りずに二本目の指が入れられてもそこまで抵抗がなくなった頃。
「このあたり、とか」
突如、前立腺をグイッと強く押し上げられた。
「つ、ッ・・・・!!?」
予測していなかった、そこから身体全体を走り抜けた性感。 狭いそこを蹂躙される痛みなど、一瞬で消し飛んでしまうほどの。
ビリビリと響くその快感の余韻が消えもしないうち、
「ここ・・・・ですか?」
もう一度、今度は確かめるように長く、ぐりぐりと触られる。
「、ア、っ・・・・!、っ、う・・・・っっ・・・」
ピンポイントで刺激を与えられ、こらえきれず、びくびく身体が震えた。 声も抑えられない。
がり、と鳴上の肩口に強く爪を立ててしまったが、構ってなどいられない。
「バ・・・・・っカ、も・・・・やめ・・・ッ・・・・!!」
「やめません」
すごく悦さそうですよ足立さん、と真顔(・・・・) で言われ、
鳴上はその部分をしつこく弄り続けてくる。
気がつけばいつの間にか、もう一本指も増えていて、それすら抵抗もなくなると、今度は前で再び勃ち上がったままの足立自身に指が絡められた。
「ちょ・・・、ま、待ッ・・・・」
「待てませんやめません」
鳴上は、捕らえた性器を強く握り、絡めた指で擦り上げながら人差し指の腹で、とぷとぷ蜜を零す先端のぬめりを確認するように、何度も弄る。
「・・・・っ、は・・・・!」
盲目的ともいえる勝手な愛撫に耐えられず、前触れもなしに二度目の精が弾けた。
間を置かない連続しての吐精に、がくりと足立の膝が砕け、シーツの上に腰ごと崩れ落ちる。
「平気ですか・・・・?」
「平気なワケ、ある・・・・?」
慌てて覗き込んできた鳴上を、「これだけ勝手にやられてさあ、」 と、思いきり恨めしげに睨み付けてやった。
「でも、悦かったからイったんですよね」
「・・・・・・・・・・。 キミに対して、今はじめて殴ってやりたい衝動にかられたよ」
わりと本心をさらりと口にして、しかしこたえる様子もない若造に、ふう、と溜め息をついてから。
「でもそんな体力使うのも馬鹿馬鹿しいし。 ・・・・ほら、」
続けようか、と脚と腰を開く。
「悠くんだってもう持たないだろ? 我慢してないで、来なよ」
「・・・・はい、」
ごく、と喉を鳴らした鳴上の先端が、くぐもった音を立てて侵入してきた。
「く・・・・」
指とは違う質量に息が漏れたが、先程まで丁寧に準備の段階を踏んでいたその箇所は、
思っていたより痛みもなく、柔らかく鳴上を受け入れる。
「ッ、足立、さん・・・・」
「・・・・、何・・・・?」
ゆっくりと侵入される感覚の中、名前を呼ばれてその表情を見れば、
「・・・・・・・中、凄い」
快楽に浮かされたカオでそう囁かれ、続けざまにぐりっと内側を捏ね回された。
「う、あッ・・・!」
即座に反応してしまう足立に、鳴上は嬉しそうに笑って、
上体を倒し、内側からの刺激に軽く喘ぐ足立の口を唇で塞いできた。
「ん、ん・・・んん、ッッ・・・・!」
キスをしたまま、ぐいぐいと奥を突き上げてくる。
互いに呼吸が荒く、こんな状態で動きながら、突き上げられながらそう長いキスを続けていられるはずもなく、すぐに酸欠状態一歩手前に陥りながらも。
「は、・・・・っく、はッ・・・・っっ・・・」
角度を変える合間に呼吸して、再び貪り合う。 更に激しく。
鳴上自身の抽挿に連動し、下肢からは湿って粘った水音が響く。
内壁の熱さと、締め付けてくる強さと狭さに鳴上の息が上がる。
「ッ・・・・!」
より深いところまで繋がりたいのか、容赦なく奥を抉ってくる切っ先。
加えて、つい先程指で知り得た足立の弱いところを狙って、そこを集中して突き上げてきた。
「ひ・・・・あッ・・・・!!」
ピンポイントで前立腺を刺激され、おまけに互いの身体の間で勃ち上がっている足立自身が彼の腹部で擦られ、がくがく身体が戦慄く。
最大限の絶頂が近付くにつれ、鳴上を包み込み締め付ける内壁粘膜がこの上なく激しく収縮し、
「く・・・・ッ、もう・・・・!!」
先に果てた鳴上が、中で弾けた。
注ぎ込まれる白濁が、敏感な内部を濡らし上げる。
「つ・・・・っう、・・・・、・・・・ッ・・・・!!」
その熱さに引っ張られるように絶頂を迎え、吐き出した精が、互いの腹を伝ってシーツに落ちた。
そうして、ずるりと引き抜かれる鳴上の肉棒。
と、思いきや。


「・・・・・え?」
互いに荒い息を整える暇もなく、深く、深く口付けられた。
「ん、ちょ・・・・、こら、・・・・っ・・・」
一旦制止しようとしても、強引に何度も何度もせがんでキスを繰り返してくる。
そんな鳴上の姿に、ああもう好きにしなよ飽きるまでそうやってていいよいっそこの際さあ、と白旗を掲げて為すがままにされていると。
満足するまで存分にキスを堪能したのか、やっと解放されて。


「好きです」


突然、そんな科白をぶつけられた。 何を今更。


何て答えてやろうか。 コンマ一秒だけ間を置き、そして。


「ああ。 知ってる」


苦笑しながら、手を伸ばして頭を撫でてやったら、


「ですよね」


何故だか泣き笑いみたいな顔をされたあと、痛いほど強く抱きすくめられた。


























「いたた・・・・」
Sexの最中より、その後の方がカラダがつらかった。
内部の鈍痛はもちろん、普通に腰も痛い。 おまけにどこか背中の筋も違えたようだ。
ついでにベッドはぐしゃぐしゃのぐちゃぐちゃで、替えのシーツも無い。 後で鳴上がジュネスで買ってきますとか言っていたけれど。
「流して、ユニットバスも軽く掃除してきました。 まだ痛みますか?」
情事の後、シャワーを浴びて戻ってきた鳴上に、
「うん。 物凄く」
けろりと肯定してすぐ。
「あのさ悠くん」
「・・・・はい」
「欲しいなら欲しいってきちんと言わないと、わからないからね、僕」
面と向かって、あらためて。
「とっくに想像ついてるだろうけど、そういうとこ麻痺してるからさ」
「・・・・・・俺だって、」
「んー?」
何と言いたかったのか、何て言うつもりだったのか不明なまま、鳴上は言葉を終わらせてしまう。
よくわからないけど言葉が続かないならまあいいや、と足立は頭を切り替えて。
「ってコトだから、ゴハン作った後でいいから、帰るまでにレポート用紙に三枚以上書いて提出すること。 きちんと採点したげるから」
「何ですか、それ・・・・」
「キミの抱負と今年の誓い。 あと今言いかけたコトの続き。 それの出来如何によって、僕の態度変わるよ」
「それって、」
「言っとくけど僕の休みは明日までしかないし。 次はいつ連休取れるかわからないし、悠くんの休みと重なるかどうかも不明だし」
いわゆる遠恋ってやつ? と唆す。




一番思惑違いをしてたけど、
一番思い通りになったのはキミ。
バカな子ほどカワイイってよく言うけど、
なんだかもうカワイイを通り越して愚か過ぎていとおしい。




実際、ほんわか薫る程度の狂いっぷりで収まるかと思っていたけれど、




どうやらそう簡単にもいかないみたいだ。




「なに、笑ってるんですか」




「いいじゃん笑ったって。 人間、楽しかったり嬉しかったりしたら笑うだろ?」




















目を覚ます。 そして部屋の中を見渡す。
あれは夢ではなかったかと確認するために。
よし、夢じゃない。 そう確認して一日を始めるのが日課。
そしてまた夜には次に目覚めるときも、
この現実が現実であることにたまらなく愉快な気分で目醒めるよう、願いながら眠りにつく。




























「それじゃまた。 暇ができたら連絡するからさ。 あ、悠くんも普通に電話とかしてきてイイからね?」
「はい」
「霧、今日も深いから気をつけて帰りなよ」
「・・・・・・・・。 はい」




いつからか懐いてきた、若い若い、可愛い飼い犬。
鼻が効き過ぎて、逆に何の役にも立たなくなってしまったハウンド犬。
試してみれば案の定、呼び戻しコマンドは一度で成功。




でも、キミが覚えなきゃいけないコマンドは他にもたくさんあるから、




「あ、そうだ」




「・・・・?」




「スキだよって一度も言ってあげてなかったよね僕」




「???」




「好きだよ? ちゃんと」








そう告げて足立は、ふにゃりと嗤った。










とりあえず主人公×足立でやってみました・・・・。
えっなんでこんなラブラブなの どうしてこんなイチャついてるの って自分が一番思った
実は書き出すまで主足なのか足主なのか自分でもずっとわからなかったです。
今回は主足ですが、リバ充分いけるだろ! て思うのでどっちも頑張ってみーるー