[ Auf dem Rucken ]



※ 共犯者エンド後、 で、 [Befehl] の続きという前提で見ていただけると嬉しいです






「ね、ゴハン作ってよ」




部屋に着くなり、「三週間ぶりだよねえ」 と出迎えられた途端にそう言われたから、
二つ返事で冷蔵庫を開けて覗いた。
最初から大体わかりきっていたから予測するまでもなく、例によって冷蔵庫の中に食材はほぼ皆無、
妙な等間隔で並んでいるのはせいぜい2、3本の調味料と飲み物の類程度で。
ざっと確認するのに何秒もかからないまま、パタンと扉を閉めつつ鳴上は小さく溜め息を吐きつつ、
昼食を催促してきた当の本人を振り返る。
「材料買ってきます。 何が食べたいですか」
「なんでもいいよ」
当の本人、この部屋の住人である足立は打って響くかの如く即答してくる。
けれどこれまた例外なく 「なんでもいい」 という返答はきっと全国共通、
「一番困る返事」 であることに今も間違いはなく。
「なんでもいい、は困ります。 和洋中だけでもいいですから決めて貰えると」
「んー。 そう言われても、これといってコレ!ってリクエストが無いんだよね。 だから作ってくれるなら何でもいい訳で」
代金なら渡すから、適当に買ってきて何かパパッと作ってよ、と軽く足立は続けてくるのだが、
その 「適当」 というのと 「何か」 というのがよくわからないから鳴上も訊ねているのだ。
これで本当に鳴上の 「お任せ」 で、足立の意見を取り入れずに何か作ったところで十中八九、
「ええー、実は僕これ好きじゃないんだよね」 とか、「中華より和食がよかった」 とか四の五の文句が出てくるであろうことは明白なのである。 かつて知ったる足立透の性格からして。
「・・・・・・。 それなら聞き方を変えます。 嫌いなものはありますか」
「ん? ないよ」
またも驚くほど即答。 いやむしろ即・即答。
あまりに早い返答っぷりと、その返答内容に鳴上は自然、眉を顰めたくなった。
「・・・・・・無い訳が無いと思うんですけど」
繰り返す、が彼の性格・人物像からして嫌いな食べ物が無いはずがない。
なのに何故、それほどまでに自信満々で言ってのけるのかがさっぱり判らず、
顰めた眉間に皺が寄りそうになったところで、
「好き嫌いなんて無いよ。 苦手なものなら沢山あるけどさ」
いつもの調子。 へらりと笑われながら言葉を追加。 された。
これが10も年上の男の言うことなのだろうか。 
「それを好き嫌いっていうんです。 ・・・・足立さん」
眉間だけでなく、頭まで抱え込みたくなりかけた鳴上に、更に足立は追い討ちをかけるかのよう。
「へえ?」
つい今さっきの薄い笑いを、口許だけの小さな笑みに彼は変えて。
「よくさあ、好き嫌いはダメだとか昔から誰もが当たり前に言ってるけどさ、」
まるで、小さな子供に対して諭してくる如く。
もしくは何か唆してくるかの如く。


「嫌いはともかく、好きになるのも駄目なワケ?」


「・・・・っ」


言質を掠めた、意外な問いかけに思わず言葉が出てこない鳴上が一瞬、固まったその隙。


「悠くん」
「?」


突然名前を呼ばれ、反射的に顔を上げたら。
それまで少し離れたところで、テレビを眺めていたはずであるのに気がつけばいつ移動してきたのか、
眼前、すぐ数センチ前に彼の眼があった。
そのまま、喰い付かれたかと錯覚するような、唐突すぎるキスに襲われる。
「ん・・・・ッ・・・」
さすがに驚いたものの、逆らうことなんて出来るはずもなく、
足立のイニシアチブで深くそれは展開されていく。
覚えたばかり、覚えさせられたばかりの、口腔粘膜を使った性欲に色濃く訴えるこの行為。
終わったらこのまま買い物に出るのか、それはそれで色々中途半端なままだとか、そんなことが咄嗟に脳裏をよぎったけれど、ここからどう展開するのか予測が簡単につくはずもなく、
なるようになるしかないな、と鳴上は深くかんがえないことにする。
主導権を全て足立に譲り渡し、貪り重ねられる深く長い時間をかけたキスが終わり、ゆっくりと彼が顔を離していって、このまま解放されるかと思ったのだが、それは随分と見通しが甘かった。


「はいはい、こっちこっち」
「え・・・・?」


驚きの声をあげると同時、もう決まっていたかの流れで動きの手際でぐいっと肩を抱かれ、
隣の狭い寝室に押し立てられたかと思いきや、
「え、ちょ・・・・っ!」
朝、彼が起きてそのままの様子がありありと残る寝乱れたベッドの上、身体ごと押し倒される。
「あ・・・・足立、さん?」
前触れもない有無を言わさず、なこんな展開は、前回もほぼ似たようなものだったのだが、
まだまだそうそう慣れるには程遠い。
慌てる鳴上の上、対照的ににこにこにこ、と嬉しそう&楽しそう&愉しそう&悦こんでいまくりそう、な満面の笑みを浮かべて自分を組み敷く足立に、
鳴上悠、とりあえず、本当にとりあえず出てくる小さな諦め混じりのタメイキはもう隠せないし、
もはや隠す気も起きず。
「昼食、作らなくていいんですか」
「うん、何かキミの方を食べたくなった」
「俺・・・・・ですか」
「そうそう。 前は僕が脚開いてあげたでしょ? だから今日はキミが開く番。 ってことでイイよね?」
何をいわんや、表向きは疑問系で訊いてきてはいるものの、白々しいほど事後承諾を前面に押し出しまくりの、口調だけはいつもながらの穏やかさだが、その実かなり強引な物言い。
どうせここで鳴上が、万が一にも 「嫌だ」 と答えたって、足立のことだ。 きっと黒足立が出てきて強引な展開に持っていかれるだろうし、結局どの道行き着く先は同じなのだ。
確かに前回は自分が抱く立場だったことに間違いはなく、
それが今回は逆転、抱かれる立場に回ることに全くの畏れと不安が皆無というわけではないにしろ、
むしろ一方で、不思議なことに実際のところそれほどイヤじゃないというか、
自分でも驚くほど焦燥感は無い。
だから鳴上としても、確認に対するOKのサインという意味で小さく頷きながらも、
「あの、足立さん」
先日からどうしても気になって仕方がなかったことを、今、改めて自分の上の足立に問いかけ訊いてみたくなった。
「何?」
二人分の体重で、少し身動きしただけで軋むシングルベッド。
しかしそれが妙に現実感を伴いながらも欲動を煽ってきて、
「・・・・・・どうして、俺で、」
いいんですか、
よかったんですか、
どちらの言葉で問い掛ければ、と一瞬迷っていたら。
「ああ、それはね」
と先手を打たれてしまった。
「悠くん美人だし料理も上手いし。 わりと後はどうだっていいって、前にどこかで言わなかったっけ?」
と、あの時の台詞で襲倒。 
「・・・・・・・っ・・・」
まさかここで自分がそんなふうに言われるだなんて思ってもいず、呆気に取られた鳴上に足立は。


「僕がいなけりゃキミもここまで堕ちずに済んだのに、って思うと不憫で仕方なくてさあ」


と少しばかり黒さを醸し出しながらも大事なところを重ねて補足。
直後に何か言いたそうになった鳴上の、開きかけた口唇に先手を打って再びキスを落として塞いで、
まさしく口封じのキス、の終わり際、
「それにね、たぶんキミに負けず劣らず僕もキミのこと大好きだから、」
ときちんとアフターフォローも入れた後。
「また今更だけどさ、一応僕の取り扱い方を一言で伝えておくとね」
「・・・・・・?」
唐突な言い出しに、理解できない鳴上がキスの余韻に息をつきながらも、怪訝そうな顔をしてきたが、一切構わず。


「嫉妬深いし、執念深いし、欲深いから。 だから逆らわないこと」


「・・・・・・・・・・・・は?・・・・・・」


「これ、最高法規。 違反したら現逮。 覚えておきなよ」


足立は言いたいことだけ告げて笑って、前回内側で味わってみたのとは反対に、
今度は外側から鳴上の味を確かめてみることにした。



























「・・・っ、・・・・!」
足立の唇が、鳴上の内腿を彷徨いながら吸い付いて、目ぼしい箇所に紅い跡を残していく。
そして握られた片手には、反応を露わにした鳴上自身が収められて上下に擦り上げられ、
緩やかな刺激を与えられていた。
確実に追い上げてくるぞくぞくとした快感に、その先端から透明なものが浮かび始めたところで、
足立は内腿から唇を滑らせ、手の内で小さく震える鳴上自身の先端に口で軽く触れた後、
伸ばした舌先で浮かび上がっていた先走りのそれを舐め取った。
「ッん・・・・っ!」
敏感な場所に落とされた刺激に、たまらず鳴上の腰が跳ねる。
過敏この上なく、自分を愉しませてくれる反応に気を良くして、
そのまま伸ばした舌で足立は鳴上の括れの部分に執拗とも言えるほど、
丁寧に唾液を絡ませた愛撫を送り、たっぷりと濃厚な快楽を与えていく。
「・・・・ッ! ん、・・・・ッ・・・・!」
濃密な愛撫を堪えようと口許を手で抑えても、鳴上は喉の奥から漏れる声を塞ぐことが出来ない。
そんな鳴上の姿に、ちらりと視線を上げて見やった足立は面白気に目を細め、
また続けて同じ箇所、括れを舐めまわしながら、新たに添えた指で自身の根元も扱いてやった。
「ぅ・・・・あっ・・・・ッ・・・・」
たまらなく感じてしまう鳴上が思わず手を伸ばし、足立の頭をそこから引き剥がそうとするのだが、
力の抜け切ってしまった腕と指ではそれ以上何も出来ず、
結局は掠れた声をあげ、荒い吐息をつくだけに留まった。
足立は丁寧に、しかし容赦せず更に若い身体を追い上げ溺れさせていく。
「ッ・・・・っ、ァ、・・・は・・・・っ・・・」
ひくひくと小さく痙攣し始めた自らを休まず舐め続けられ、
鳴上が我慢できなくて、ぐいっと強めに彼の髪を掴んで両手で引っ張ってやると、
「何? 大人しくしてなよ」
キミだって僕に同じことしてたんだからさ、と口許を上げて薄く笑った足立に、
咥えられた自身の先端をきゅッ、ときつく吸われてしまった。
「うぁ・・・・ッ!」
強い強い刺激に、鳴上は腰ごと下半身を浮かせてしまう。
過反応を示し、一挙に乱れたその様子に、「あっゴメン、少し強すぎた?」 と口先だけで足立は謝り、
それでも吸い付いた唇と舌は決して鳴上自身からほぼ離すことはせず、
浮いた反動でより自分の方に差し出される形になったそれに、執拗に愛撫を送りながら、
「そういえば、前々から聞きたかったんだけど、」
今になって思い出したかのよう、楽しそうに。
「悠くん、その髪と目の色って何? アルビノ?」
淫猥に濡れ、舌と唇とで息をつく間もなく愛され続けた鳴上自身から、とろとろと絶えず透明の蜜は溢れ続け、
「劣勢遺伝・・・・・な訳ないか。 カラダ的には、キミ最高のカラダしてるもんね」
ココもこんなに元気だし、と無駄口を叩き続ける足立によって、
直接的に身体に与えられる愛撫と、間接的に鼓膜を通して送られる煽りに、
鳴上自身を伝って零れ落ちる蜜に、いつの間にやら白いものが目立ち始めた。
合わせて絶頂の兆しが腰を駆け抜け、ぞくぞくとした感覚が鳴上の背筋を駆け上がる。
「・・・・っ、ぅあ・・・っ、や、め・・・・ッ・・・」
荒く治まらない息の下、これ以上の口腔と舌による刺激を止めてほしいと伝えるけれど、
聞き入れるような人柄では無いこともお互い、最初からわかりきっていて。
「止めない。 けどさ、」
言いながら足立は透明な蜜と白蜜との混ざり合い、溢れる先端部をぱくりと口中に含み入れ、
心持ち尖らせた舌先で窪みの部分をくいくい、と数回突付くように刺激し、絶頂を促した。
「一回イっときなよ。  ・・・・・・ほら」
「ッ! ぁ、あッ、・・・・ッ!!」
含まれた状態で喋られてしまい、限界の寸前まで膨れ上がり張り詰めた鳴上自身。
ほんの僅か歯が掠めた感覚ですらもう耐えられなくて、がくがくと身体が震えだす。
「離・・・・ッ・・・・!」
これ以上は咥えられているだけでも感じすぎて受け止めきれず、鳴上は足立に訴えるのだが、
彼は口中の鳴上自身を離すどころか、真っ赤に膨れた先端、体液の溢れ出る孔を抉り込み、
ぐいっと舌先を挿し入れてきた。


目も眩むほどの強すぎる刺激。


「―――――― ッ!!」


耐えられるはずもなく、鳴上は足立の口中に、精を吐き出した。



「うッわ・・・・マズ・・・・!」
熱く溢れ出た白濁を足立は眉をしかめ、半分以上は零しながらも、
僅かに口内に残ったそれを何とか飲み込む。
「キミ・・・・よく飲めたねぇ。 前回」
しかも初めてだったのに、まあ僕だって野郎のモノにこんなことしたの初めてだけど、と感心しながら、
やはり自分がするのと相手にされるのとは全然違うのだろう、
気恥ずかしさに荒く浅い息を繰り返しついて、何とか呼吸を整えようとする鳴上の頭を一度撫でてやってから。
「それじゃ、ここからはキミとは違うやり方でやらせてもらうから」
自らの体勢を整え上体を起こし、力が抜け弛緩状態の鳴上の両脚を抱え上げ、最奥を晒した。
「な・・・・・っ・・・・!」
いくらすでに季節は春から初夏に向かう途中とはいえ、普段はあまり晒されない箇所が空気に触れられたせいか、足立の眼前でそこが微かに反応する。
いいから続けて大人しくしてなよ、と告げ、そのまま舌を差し出しそこに触れると、
鳴上はたまらずびくっと身体を震わせた。
「何、を・・・・ッ・・・・!」
「えぇ? だって慣らさなかったら入らないよ? 無理矢理突っ込んだら血まみれだよ? いいの?」
「そ、うじゃなくて・・・・!」
口は止めて欲しい、指でして貰えれば、と言外に訴える鳴上の要望はあっさり却下。
達した直後で、余韻も熱も収まらない身体の、それも最奥に濡れた舌先が這わせられ、
全てが初めての感覚で感触で、おまけに全てが性感であってしまう鳴上は逃れようと、
軋むベッドの上、肘をつき、身体を捩ろうとする。
しかし所詮は組み敷かれた上での抵抗、
足立は容易くその抵抗を封じ込めてしまい、這わせた舌先で最奥周辺をぺろりとまず舐め上げた。
「ん・・・ぅっ・・・・」
その作業を数回重ねて行い、鳴上が息を吐ききり、身体から力が抜けたその一瞬の隙を見計らい、
くっと舌先を内側に差し挿れる。
当然にして固く、異物を受け入れたことが無いゆえに、
頑なに締まってなかなか受け付けない内壁をゆっくりと、だが確実に掻き分け、
足立はその限界まで舌を進め、それから唾液を乗せて柔らかくほぐし始めた。
「・・・ぁ、・・・・ッ、・・・・く、・・・ぅ・・・・っ・・」
自らの最奥、だが浅いところで温かく濡れ、湿った足立の舌が動き回るという淫猥な事実と感覚に、
鳴上は時折身体を震わせ、その手は耐えるようにぎりっとシーツをきつく掴む。
しかし構わず足立は内側に潤いを運びながら、
多少内壁が慣れてきたことを感じ取ると、更に舌先をひらめかせて鳴上の弱い箇所を探った。
「あ、ぅ・・・ぁ、ぁ・・・・ッ!」
内部の粘膜を舌で探り当てるかのように余すところなく舐め擦られて、羞恥にびくびくと鳴上は身じろいでしまう。
唾液を送り込まれてほぐされる、それだけでも感覚に翻弄されていたというのに、
足立の舌が、それまで固かったある一箇所をくいっと力に任せて押し上げた瞬間、たまらない刺激が下肢から全身を走り抜けた。
「あぅッ・・・・!!?」
一際大きく腰を跳ね上げ、仰け反った鳴上の反応に、
足立は何を思ったのか、一旦舌を引き抜いてその顔を覗き込み、
追い詰められつつある鳴上とは反対に余裕で笑う。
「こうやった方が、ローション使うより、犯されてる感じするでしょ? しない?」
「・・・・、っ」
そんなのわかりませんわかるわけないです初めてなんだし、と鳴上としては反論したいのだが、
今の混乱した、あまり正常でないと自分でも思える頭でぼんやり瞬間的に考えてみる、に、
そんなところを舌で舐められ、舌を突っ込まれ、たまらない羞恥心に支配されまくりであることは間違いないのだが、
・・・・・・・・ローション使用、より余程むしろ大切に扱われているような気がするのはやはり気のせいなのだろうか。
そんな疑問をぶつけてみても、どうせ適当にはぐらかされて終わるであろうことくらいの予測はつくから、あえてもう言ったりはしないけれど。
「・・・・、足立さんて、思ってたよりずっとずっと我儘で強引ですよね」
視線を逸らせたまま、代わりにぼそりと呟いてやると。
「は? 何言ってるのさ」
そんなの今更知ったわけでもないだろうに、と揶揄された。 そして、
「四の五の遠慮してたら勿体無いよ。 そのうち、僕達は死ぬっていうでかい代償払うんだから」
これからどんなに頑張ったってせいぜいあと70年? ぐらいしか生きられないんだからさ、と言ってきて、
「その後は100%地獄行きだし。 僕も。 キミもね」
さらりと。 あっけらかんと。
笑顔で一挙に簡単に一言でそれを言い切ってしまう足立に、
「そう・・・・ですね」
鳴上は小さく、小さく頷き、逸らした視線を落とす。
と、その途端、
「そうなったらそうなったで、どうするかどうなるかはその時考えよう」
「・・・・え? ・・・・・・うぁッ!!」
突然最奥に指先で触れられ、予測していなかった感覚に鳴上は目を見開いた。
構わず足立は、先程まで口で施していた場所に今度は指先で刺激を送りながら、頃合を見てつぷ、と爪の先を埋め込ませてみる。
「ッ・・・・・」
舌とは違う感覚に、鳴上の眉が寄せられたけれど、
より指を奥まで埋めてみると、内側は舌での愛撫によってもう随分と柔らかくなっていて、
内壁はそこまで指を拒むことなく、逆に吸い付き絡み付いてくる動きで迎えた。
が、当の鳴上にとってはやはり、痛みも多少は響いてくるようで。
「く・・・・、ぁ・・・・っ・・・」
僅かだが、苦しげな吐息。 当然といえば当然だ。
ともすれば忘れそうになってしまうが、初めてなのだし。
「我慢しなよ?」
どこまでも口調だけは穏やかに、足立は絶えず内部で指を動かしていく。
「・・・っ、く・・・・」
相応にほぐされてはいるが、きつい内部。
舌より深いところまで届く指先が探す場所は、痛みさえ覆い隠す快感を感じさせてくれる一点。
先程、舌で押し上げた箇所が連なる、もっと奥。
「・・・・はっ、・・・・ぁ・・・・っ・・・」
鳴上としても、苦しくもどかしい。
鈍い痛みと、中途半端な刺激の中、ほとんど無意識なのだろう。 腰が上下に揺らめいて、
快楽をねだる様相は、足立をも誘う。
「・・・・悠くん」
「あぁ・・・・ッ! うあ・・・・っっ!!」
名前を呼ばれ、
たぶんこのへん、とグイッと中の指でその箇所、待ち侘びていた部分を突き上げられ、
弾ける快感に背中が戦慄く。
足立は鳴上のポイントを的確に、そして執拗に指先で押し上げ転がし続け、何度も何度も刺激した。
「ぁ、あ・・・・っ、ぅ・・・・っ・・・・!」
僅かに感触の違うポイントを、時間をかけて愛されて、身体が小刻みに震えて仰け反る。
どうにか感覚を紛らわそうにも、ダイレクトに身体の芯から響いてくる快感は、どこへもやれなくて。
「んッ・・・・!」
前触れもなく指が増やされた。
圧迫感を感じたのはほんの僅かだけで、瞬時にそれは痛みと快感にすり替えられ、
二本の指で内壁を広げられ、擦り上げられるたびに身体は柔らかく締め付ける。
「・・・あ、あっ・・・・、ッ!」
固く目を閉じ、鳴上は唇を噛み締めて痛みと快楽に耐える。
あわせて上気して喘ぐ身体に、足立の喉も鳴った。
「・・・・キミ、ほんと」
「んっ・・・・ぁあッ・・・・」
空いているもう片方の手で、突然鳴上自身を掴まれ擦られ、前の器官から後ろを通ってぞくぞくと快楽が身体を走り抜けた。
足立の手は休むことなく、自身を伝いその下部の双珠にまで辿り着き、
ぐりぐりと手の中で揉み上げて刺激する。
「ッッ! ―――・・・ッ、も、う・・・・っ・・・・!」
前と後ろを同時に攻められ、火照った身体はあっという間に高みを迎えようとする。
がくがくと腰が揺らぎ出した。
「もう一回、イっとく?」
「ぅ、あ・・・っ・・・・!!」
ふっ、と笑った足立に、濡れる鳴上自身を咥えられ、
同時にズッ! と乱暴に指を引き抜かれて。


「、 ――――――― ッッ!!」


強く強く内壁を擦り上げられ、その抜かれる瞬間の刺激に、即座に鳴上は二度目の欲を吐き出していく。


「・・・・・・・やっぱり、マズイね」
びく、びく、と断続的に口の中で放たれた精。
やっぱり慣れないと思うなあこの味、とぼやきながらも足立はそこそこ飲み干した。


「ん・・・・っ、・・・・ッ・・・・」
快楽が激しく全身を通り抜けて、どさりと鳴上は身体を沈ませて弛緩する。
そのまま荒い吐息をついていたのだが、
唇の端を手の甲でぐいと拭って身を起こした足立に、続けざま脚を肩の上に担ぎ上げられた。
無意識に息を詰める鳴上に構わず、足立は猛った自らを最奥に宛がう。
「挿れるよ」
「、ぅ・・・・っ・・・・」
迷わず腰を進めて楔を埋め込んで。
「んっ、・・・・っふ、ぅ、・・・・っ・・・・!」
二度も先に達した鳴上の身体はとにかく過敏この上なくなっていて、
正面から擦り上げられ、奥の奥まで侵入してくる足立の感覚、
頭の芯が痺れてくるほどの感覚に、全身が戦慄いた。
先行する痛みと、今までの舌や指とは段違いの圧迫感と質量感に、息が乱れる。
「・・・・つっ・・・、う・・・・く・・・・」
それでも、足立が奥まで貫き終えると、
鳴上の内部は自然に動き出し、
「・・・・・く、」
急激に収縮する肉壁の歓迎に、埋めた足立も引き摺られ、思わず息をつく。
「キツ・・・・」
「・・・・っあ、ぅ・・・・ッ・・・」
足立のその言葉にか、また圧迫感にか、喉を晒して鳴上は小さくかぶりを振った。
「苦、し・・・・・!」
噛み締めた唇ながら、訴えてくる。
「大丈夫、我慢しなよ。  ・・・・・・ほら、キスしたげるから」
力抜きな、と告げ、限界まで上半身を近づけて寄せた唇。
鳴上の身体から力を抜かせるため、足立は唇と唇とを重ねて触れ、軽く食んだ。
「・・・・っふ、ん・・・・ん・・・っ・・・」
キスによって少しずつ締め付けを解きはじめた鳴上の身体、その内部を、
まず軽く掻きまわすように腰を使うと、
互いの身体の間で擦られた鳴上自身が反応し、塞がれた唇の間からくぐもって漏れる掠れた声。
「ぁ・・・・っ、あ、あっ、・・・・っ・・・・!」
息継ぎの合間、こらえられずあがる嬌声と鳴上の表情を伺いながら足立は緩い律動を繰り返す。
若い、弾力のある内壁を擦り上げるたび、接合部である部分から、粘着質な水音が聞こえ始めた。
と同時、鳴上自身からもとろとろと蜜が伝い落ちる。
「・・・っふ、ぅ・・・・っ・・・・」
続けられているキスと、緩やかな刺激に少しずつ鳴上の身体から緊張がとけていく。
その表情と身体とを見るに、痛みはもうあまり感じなくなったようで。
唇を離し、吐息と吐息が絡んだのを切っ掛けとして、
足立は体勢を整え上体を起こし、鳴上の背中をシーツに押し付ける形で固定させ、本格的な抽挿を開始させた。
「あ・・・・ッ!・・・・ ぁッ、く・・・・ぅ・・・!」
腰が動き、足立自身が引き抜かれ再度またぐいっと奥を突き上げるたび、
淫らな水音が鼓膜を打ち、互いを煽り煽って。
足立も荒くなる吐息をつきながら、内部の前立腺に狙いを定め、
思いきり乱暴に突き立てた。
「―――――― ああぁ・・・ッッ・・・・!!」
途端、全身を貫いた痛みと見紛うほどの強い強い快感に、びくっと鳴上の身体が跳ね上がる。
同時に締め付けも激しくなったが、
足立はなんとか耐えてグイッと前立腺を容赦なく押し上げ攻め込んだ。
「ッあ! う・・・・あ、あ・・・・ッ、足、立さ・・・・っ・・・・!」
「平気平気」
何がどう平気だというのか、さらりと一蹴され、
襲い来る性感に思わず退きかけた腰を力ずくで引き戻され、より深く穿たれる。
「あ・・・・ぅッ! んぁ・・・・ッッ・・・・!!」
更に押し込まれた先端でぐいぐいと刺激され、あまりの快感に意識が一瞬途切れかけた。
強く強く突き上げられるたび、掠れて甘い声が漏れる。
「う・・・・ぁっ、あ、は・・・・ッ、・・・・っ・・・」
それは我慢しようと思っても、どうしても抑えきることは出来なくて、今にも理性が消えていきそうで。
「ほら、こっちも・・・・イイんじゃない?」
快楽のあまりぼやけた視界と、朦朧としてきた脳裏に聞こえた声。
と突然、それまで放っておかれていた鳴上自身にするりと足立の指が絡みついてきた。
淫猥な動きをみせるその指は、いつの間にか膨れ上がっていた鳴上自身を根元から先端にかけてついついと何度も何度も往復し、先端部をくちゅくちゅと指の腹で数回捏ねまわす。
「い・・・・ッ、ぁ、あ・・・・!」
「・・・・そんなにイイ? それともイヤなのかい?」
「・・・・あ、・・・・いっ、・・・・う、ぁぁ・・・・ッ・・・!」
与え続けられる刺激に、目の前が眩んでもう自分でも何を言っているのかわからない。
足立は鳴上のそんな様子を見て取って小さく笑い、再び内部を突き上げた。
「う・・・・あッ!? ん・・・・っ、」
指の絡んだままの鳴上自身からは絶えず蜜が溢れ出し、
繋がって熱く爛れた結合部にまで滴っていく。
外側では自身を弄ばれ、内側は絶えずずっと攻め込まれ続け、そろそろ限界が近い。
内腿が断続的にびくびくと震えて痙攣を始めた。
「・・・・っ・・、も・・・う・・・・っ・・・・!」
身体が絶頂へと駆け上がる。
強くきつくシーツを掴んでいた手が小刻みに震え、
しがみつくものが欲しくて、懸命に腕を上げ足立の背中に回す。
一層密着し、勢いで内壁も蠕動し足立自身を乱暴なほど強く締め付けた。
最上の締め付け具合に足立の吐息も荒い。
「っ・・・・!、」
今にも鳴上に持って行かれそうになるのを堪えて息を詰め、
自分の高みを求め思いきり荒々しく最奥目掛けて貫き、
手の内の張り詰めた鳴上自身も同じくらい激しく扱き上げると同時。
内側に、熱い熱液が吐き出された直後。


「っうぁ、ぁっ・・・・、―――――― ァ・・・・っ・・・・!!」


掠れて声にならない声をあげ、限界を迎えて鳴上は足立の手の中に三度目の白液を弾けさせ、
僅かな飛沫が互いの間に飛び散った。






























「・・・・足立、さん?」


たぶんうとうとまどろんでいたのはほんの一時間にも満たない程度だと思うのだが、
鳴上が顔を上げてみたら、つい先程まで居たはずのその姿は寝室内には見当たらなかった。
だから何も考えず、そのまま身体を起こそうとして、
「つ・・・・ぅ・・・ッ」
下肢に響いた鈍い痛みにたまらず呻く。
前回、情事の後に足立がぼやいていた理由を身を持って知り、
(明日には治まってくれないと・・・・)
そうでなかったら帰るのにも一苦労だ、と息をつきながらも視線はドアの向こう、足立を捜す。
耳を澄ませてみても、彼の気配は近くには感じられず、
「・・・・く・・・」
だるくて重くて痛い身体でとりあえず最低限の服を着て、
寝室からリビング兼玄関に繋がるドアを開いた瞬間、


「あれ? もう起きたんだ」


玄関が開き、外から足立が入ってきた。 手にはジュネスの袋をさげている。
「カップラーメンとか、出来合いの惣菜とか適当に買ってきたから食欲あるなら食べなよ。 あ、その前に風呂かなキミは」
「・・・・・ジュネスまで行ったんですか」
「うん。 何、一緒に行きたかった?」
「そういう訳じゃ、ないです」
「じゃあ今度。 次、一緒に行こう」
「・・・・・・・・・・・・・」
「風呂、入ってきなって。 僕がさっき入った後だからすぐ入れるし」
「はい」
「タオルとか、そこらへんの使っていいからさ」
「はい、」
「平気? 一人で、入れる?」
「大丈夫、です」
そんな会話をして、そこそこ苦労しながらも浴室で情事の後の汗と体液を流し、
温まったおかげで多少はラクになった身体で、鳴上がリビングに戻れば。
「お、ちょうどヤカンも沸騰したところ」
好きなラーメン選びなよ、と指差されたテーブル上、並んでいたのは10個近くのカップラーメンの山。
仕方なし、選んで考えるのも面倒で、一番有名銘柄を指して 「これにします」 と伝えておいて、
「・・・・夕食は、俺が作ります。 こんなものばっかりじゃ、本当に食生活が崩壊しますよ」
「そう? それはそれで嬉しいけど」
あのさ悠くん、と足立はコンロの前、ヤカンの火を止めながら。


「そんなにがっついて心配しなくても、僕はこの先もずっとキミを見続けるつもりだから。 大丈夫だって」


「、」


そんな言葉と共に真っ直ぐ、鳴上の視線を捕らえてきた。


「懐いた犬にはゴハン与えるし、基本、釣った魚にもマメに餌はやるタイプだからさ僕。 ・・・・・・あっゴメン、喩えが悪すぎたかな」


飄々と告げながら、妙に手際よく二つのカップラーメンを開け、一つずつヤカンから熱湯を注ぐ。


「共犯者なんだから、キミにもそれなりのメリットがないと。 だからあげる。 全部あげる。 欲しいんだったら何でもあげるよ?」


そしてどこから出してきたのか、手にはキッチンタイマー。 表示はすでにきっちり3分。


「けど、あげられるって言っても所詮世界とか無理だし。 見ての通り、大金とかも持ってないし。 ま、僕のために全部裏切っちゃったんだから、見返りは僕程度でイイよね」


そのデジタル表示が徐々にカウントダウンされていくのをぼんやり見つめながら、鳴上がどう答えればいいのかわからずにいると、足立はほんの僅か、自嘲気味に。


「それじゃ足りないって言うなら、キミをこんなふうにした僕を憎悪で発狂するくらい憎むようになればいいさ。 そしたら、その時はちゃんと終わらせてあげるから」


どう? こんな取り決めでいいかな? と軽く、口調はどこまでも軽く、
しかしとても肝要だと思われる質問を投げかけられて、鳴上は。


「・・・・・大丈夫です。 そこまで深刻に考えなくても、人生も未来も永遠に続くものじゃないから」


素直に告げたその返答が、足立にとっては意外なものだったらしい。


「あー・・・・。 やっぱりキミ、大好きだよ」


割合と本心から出てきた台詞に、ふたり、揃って少しだけ笑った。












すぐに、3分経った。




カップラーメンも、そう悪いものでもない。 と知った。


















今度は足主でやってみた。
うん、リバ充分いけるーーーー(※あくまでわたしの中だけですけれども:リバ苦手な方ごめんなさい)
相も変わらず何故にこんなにイチャついてるのかわかりません。
でもきっとそのうち黒いのもやりたくなると思うー