[ 最終的にはカウント5 ]



※主人公の名前は公式(?) の 【鳴上 悠】 でやらせていただきました。
真エンド前提でのとことんイチャ。 って思っていただければ幸いです。






「なっ・・・・何回ヤるつもりだよお前!!?」
「三回目」


「ちッ、違うだろーが! 次だと四回目! 四回目だっつの!!」
「?  そうだったか?」


「そうだよ・・・・もう勘弁してくれ! 俺のこと殺す気か・・・・!!?」
「死なないだろこの程度で」


「死ぬ! つーか干乾びる!」
「死なない。 人間、そう簡単に干乾びもしないし」
「〜〜〜〜!!」
「頑張れるよな花村」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
「俺も頑張るから」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
「頑張ろう花村」



















気がつけば騒がしく楽しく(時折命の危険さえ伴いながらも)、
あれよあれよとあっという間に過ぎ去ってしまった、この一年、3月。 いわゆる年度末。
この卯月もそろそろ中盤に差し掛かり、三寒四温を実感しつつある中、
夜はまだまだ寒いから離れたくないし密着していたいし、
という鳴上の我儘を最初はそれなりに快く聞き入れた陽介だったのだが、
さすがに四度目になると洒落になんねーよ、と必死で押し留めているにも関わらず、
当の鳴上は前述会話の通り、続けて四度目、四回目を迫ってくる。
場所はいつもの通りほとんど邪魔の入らない堂島宅、二階、鳴上の部屋。
現時点での体勢はといえば、乱れた布団の上、鳴上がマウントポジション的位置、
そして自分は組み敷かれてその真下。
とりあえず何とか、何とかギリギリのところで防いでいるものの、
なんといっても既に三回ほどイチャイチャ(・・・・) し終えた後、
立場からいっても役割からいっても、陽介と鳴上とでは残存体力が全然違う。
(とはいえ、鳴上に体力が残っているという事実にもそれなりに驚愕すべきなのだが、その点に関して陽介としては今更もうツッコミを入れる気にもならない)
「鳴上! ちょ、待てって・・・・!」
ぐぐぐぐ、と迫ってくる見慣れた端整なカオと身体に、ここで一発ハイブースタを上乗せしたガルダインの一つや二つ、炸裂させてやれればたぶん形勢逆転できるとは思うのだけれど、
しかしそんなこと実行できるはずも無いし、
惚れた弱みと惚れられた弱みとがこれまたダブルのブースタで上乗せされて、
更に言うならば確かコイツ疾風無効のペルソナ付けてたはずだよなそう言えば、
と、なると俺がコイツに勝てる見込みって普通に完璧に完全にゼロじゃね? と気付いて陽介は愕然とする。
・・・・・・・・とは言っても流石に連続して四度目四回目にそうやすやすと突入させてやることも当たり前だが出来ず、
「休憩! ちょっと小休止させてくれよ、 少しでいいから、」
引き下がる気が無いならせめて休ませてくれ、と一歩引いた提案をすると、
「まあ、構わないけど」
案の定、鳴上は素直に鷹揚に頷き、陽介を抑え込もうとする腕から力を抜いた。
陽介はそれにほっと胸を撫で下ろす。
あのまま押し通されて第四ラウンド目に突入されてしまったら、それこそ本当に自分の身が持たない。
なんというか、コイツは、この鳴上はやっぱり普通じゃないのだ。 いろんな意味で。
「本当は、今夜こそ連続で何回続けられるか試して確かめたかったんだけどな」
「・・・・・・・・・・・・」
そんな鳴上がわりと真顔でそう呟くのが聞こえてしまったが、取り得の素早さでささっと彼の下から陽介は抜け出し、代わりに放置されていた掛け布団の下にあえて胸元まで潜り込む。
これならワンクッションあるからそうすぐには簡単に襲われないだろ、と儚い期待を掛け布団一枚にかけつつ、手を伸ばせばすぐ届く床の上に置きっぱなしになっていたペットボトルのミネラルウォーターで喉の渇きを潤し、
鳴上が急いて襲って来ないであろうことをまだ心のどこかで願いながら彼の様子を確認してから、
やっと陽介はそこで一息ついた。
昼間、ジュネスで購入して渡した手土産の中の一つだったその水は、
ストーブの効いたそう広くはない部屋の中、中途半端にぬるくなっていたけれど、
汗と体液とを奪われて、相応に渇いていた身体と喉は自分で思っていたよりも水分を欲していたらしい。 気がつけば全部飲み干してしまい、
「あ。 お前の分、なくなっちまった」
言いながらそこでようやく鳴上の方にごろりと身体ごと振り向くと、彼は別段気にも留めない様子で。
「構わない。 そんなに喉も渇いてないし」
「マジかよ・・・・」
お前だってたくさん出したよな出したはず出しただろ俺ん中に、と実感を込めつつも陽介が呆れ果てると同時、
「じゃあ続き」
すっと横から腕が伸びてきて、
「早すぎんだろまだ3分も休んでねえっつの!!」
呆れた直後、即座に焦ってしまう破目に陥った。
「ホント・・・・油断も何もあったもんじゃないよな・・・・」
「好きなんだから仕方ないだろ」
鳴上はさらりと口にする。
が、それはそれコレはコレ。
「て言ったって、時間だってまだ10時くらいだろ? 明日は休みだし、そんなに焦ることじゃ・・・・」
無い、と思うのだ陽介としては。
なのに、なんでそんな性急なんだお前、とふと思ったこれまた直後、
「・・・・・ああ、」
そっか、そうだな、と自ら気が付いた。
逆に今までどうして気が付かなかったのか、それともあえて考えないようにしていたのか、
自分では定かではなかったけれど。 元々イヤというほど承知していたことだったのだけれど。
「時間、もうあんまり無いもんな」
陽介にしては珍しい、抑揚のあまりない口調で紡いだその言葉に、
鳴上もこれまた珍しく、少しだけ困った笑みのような表情を浮かべた。
「・・・・・・・・。 あと、十日くらいしかないのか」
僅かな沈黙と逡巡のあと、独り言にも似た陽介の台詞に、続くように鳴上は。
「稲羽市に居るうち、お前のこと全部覚えておきたくて」
「・・・・・・・・・・・・・」
なんだか、
なんだか急に、つい今さっきまでの、非現実的にも程がありそうな布団の中だったり上だったり、
時々床に一部はみ出てみたりして(・・・・) 繰り広げられていたSexとはまるで正反対の、
あくまでこれから現実で進行していく事象を突き付けられてしまい、
咄嗟にどう返答すれば良いのかわからなくなった。
だからただ、薄暗い部屋の中、黙って鳴上の顔を凝視することしか出来ずにいたら、
「まあ、海外に行く訳でもないから、会おうと思えば大体いつだって会えるし」
アフターフォロー、のつもりなのか、
鳴上は穏やかにそう言ってきたけれど。


「・・・・・・けど、会おうと思わなかったら会えないわけだろ」


「花村?」


「こうやって、今日みたいにメールだったり通話だったり、そのあと30分後には一緒にいるってこととかはもう出来なくなっちまうんだよな」


「・・・・・・それは、」


互いの口調が、真剣な響きを帯びたものになる。


わかっている。 自分は今物凄く、コイツを困らせている。
わかっている。
嫌と言うほど。
わかってる。 けれど。
わかっては、いる。 今ここで自分たちがどうこうしても、どうにもならないことくらい。
こんなの、大した別れなんかじゃない。
自分たちには未来も時間もこれからそれこそ嫌と言うほどあって、
もう少し大人になればいくらでも。 時間も距離も短縮できるようになることくらい。
わかっている。
だから。


「あーーーー・・・・・悪ぃ、こんなふうに、駄々こねるつもりなかったんだけどな・・・・」


謝りながら、思わず頭を抱えたくなる陽介に、
どこか安心したよう、


「そうだな」


なんて相槌を打ちながら鳴上は再び笑いかけてきたけれど、
実際のところ、陽介からしてみれば、その 『そうだな』 かどこに掛かるのかが解らない。
何が 『そうだな』 なのか、どうしてその 『そうだな』 に続きが無いのかとか、
でも結局、いずれあまり会えなくなることを本人にきっぱり肯定されたことに間違いはなくて、
ここまで来て不要な慰めの言葉や台詞を口にしない鳴上のことを、
ただ正直で、けどよでもよ少しだけズルイぞお前、と陽介は思った。








「・・・・・。 休憩終わり! いーぜ、もう」
「、」
振り切って、自分の方から再開OKを告げて誘う一言。
このまま四の五の考えたって、どうせ暗く沈む一方で。
だったら、
残された時間は少ないのだから、どうせ少ない時間を過ごすのなら、暗く沈むより甘く引っ付いていた方が余程良いに決まっている。
誤魔化しだと、
ただの逃避だと誹る奴がどこかに居るならいくら誹られたって構わない。
「もう、暗いこと考えるのやめようぜ。 笑って見送りたいもんな。 お前のこと」
無理矢理笑みを作って陽介から四度目開始、のキスを仕掛けた。


だって当のコイツがズルイんだから、
自分だって少しくらい、卑怯な逃げ道を辿ってみたっていいはずだ。




































「・・・・鳴上?」
「ん?」
たぶん零時は回っているだろうと推測される頃、
快楽と疲れとでぼんやりとする身体と頭を起こし、カーテンの隙間から差し込む薄明かりで陽介が見上げたその先には、いつの間にか最低限の衣類を身に着けていた鳴上が居た。
「一人だけ先に服、着るなって・・・・」
僅かに掠れた声で、ぼやくと。
「揃って裸だと、菜々子が来たら困るだろ」
これまたさらり。 簡単すぎるほど簡単に、返された。
「いや・・・・お前だけ服着てたって仕方ないだろ・・・・」
もし今この時点で菜々子ちゃんがドア開けたら、言い訳の仕様がないっつーの、と呟いたところ。


「そうなったら、『お医者さんごっこ』 って言うから」


「通用しねーーーよ!!!!」


「そうか?」


「もし万が一それで通用しちまったらそれはそれで大問題だろうが・・・・!!」


思わず魂の底から叫んでしまった叫びに疑問符で返されて、
ああそうだコイツはこういう奴だったんだ最初から始めから会った時から、と危険なイミでの豪胆っぷりを改めて心底痛感させられる。
そしてややしてから込み上げてくるのは、ただただ長いタメイキと、
ほんの僅かの苦笑。
こんな時、どんな表情をすれば良いのか一概には解らなかったから、
陽介は浮かべられた苦笑をゆっくり、ゆっくり微笑に変える努力をする。


「眼鏡。 お前、すげー似合うから」


「?」


「医者。 ・・・・ドクター、ごっこでもイケそうだよお前ならさ」


「それはどうも」


どこまでも戯れのみで構成された、薄闇の中でのチープなやり取り。


「けどそれってもう完璧AVだよな。 そこまでマニアックなの、さすがに見たことねえけど」


「じゃあ、明日はそんな感じで。 ・・・・・・・そうなると白衣が必要か。 注射器も」


「〜〜〜〜必要ねえって! どっちも」


くだらない会話の中、伸ばされる鳴上の腕。
触れてくる手。
まるで小さな子供に向かうよう、布団の中の陽介に対し膝をついてその髪に触れながら、




「・・・・・・・・二週間後にもう俺はここにはいないけど、」




数時間前の会話を鳴上は、今更。
途端に陽介は唇を軽く噛む。
せっかく自分からスルーしたはずのその件、
それをどうして今ここで蒸し返してくるのか、その意図がわからなくて、
「、」
危うく息まで止めそうになって、苦しくなって思わず深く呼吸をしたら。




「大学は、同じところ選ぼうな」




「・・・・・・・・・あ?」




「そうすれば今度は四年間、丸々一緒にいられるし過ごせるし下宿するならいっそ同棲みたいに暮らせるし」




「・・・・・・・・・は?」




遠恋っていってもせいぜい一年足らずの間だから、とひとりごちる鳴上に、
一瞬にして陽介の何かが崩れる。 揺らぐ。
一年後の 『その先』 を提示され、一度揺らいでしまったそれは、儚くも脆くも崩れ落ちるのが定めで定石で。
でもそんな他愛無い口約束で、妙に嬉しがってしまった自分を悟られたくなくて、
だから無理矢理軽く咳払いをして誤魔化してみて、それから。




「・・・・どうせならやっぱ、どっか見つけて下宿、だな。 二人で家賃六万円くらいんとこ」




セオリー通り、自分も乗ってやる。 自分から乗ってやる。
けれど言いながら何故だか耳まで熱くなって赤くなってきているのが自分でもわかって、
ああ暗くて良かったぜマジで、とヘンなところで照れてしまったけれど。




「あ、でも寝室はベッドか布団が一つ置ければいいよな。 それなら穴場探せば五万くらいで済むんじゃね?」




どうせ一緒に寝るんだもんな、そうなったら。




と早口で告げて、
でもあまりの恥ずかしさにやっぱり我慢できなくなったから、
がばあっと頭から布団をかぶって、
最後の最後、




「だからこれから一年、浮気すんなよ!」




そう布団の中でびしっと言ってやった。  そうしたら。




「その時、プロポーズするから」




頭の上からそう言われた。




今・・・・・・・思いっきり言ってんじゃねーかお前、と思ったけれど。




「・・・・ん。 わかった」




嬉しかったから、突っ込みは潜めておいて素直に返しておいた。

























この一年、あっという間だったから、
これからの一年だってきっとあっという間だ。








タイトル通り、最終的には五回やった模様。
スゴイナー。 若イナーーー。 元気ダナーーーーー。 (※棒読み)


・・・・・・・・・・・・・・・いいんですとことんハズカシイ高校生二人なんです! いいの!(ぶん投げた)