[ 練習してみた ]






某パレス攻略途中真っ最中、
祐介、 否、フォックスの耳に否が応にも飛び込んできてしまったのは半歩後に居た、
ジョーカーの呟きというか、独り言。


「・・・・・・・・モナと本気で×××したい。 どうすればいい」


「!!」


3メートルほど前を歩くパンサーとクイーンは何やら女子会話に夢中な様子、
そしてチラリと振り向けば後方3メートルのあたりでスカルと当猫(???) であるモナも歩を進めながらも普段通りのやり取りを交わしながらであるため、
律儀にもついつい反応してしまった自分以外、幸いにも他のメンバーもとい当の本人(本猫?) には聞こえなかったようだ。
ならば自分もそんな台詞など最初から無視の一途を決め込めばよかったはずなのに、
根底からの糞真面目さが裏目に出てしまったフォックスは、つい。


「何?」
×××、の部分は空耳もしくは自分の聞き間違いだろう今何と言った???、
俺に語りかけたのならばもう一度きちんと言ってくれ、と促したところ、


「 モ ル ガ ナ と 、 本 気 で S E X が し た い 」


小声ながらも、ご丁寧にジョーカーは一文字ごと区切ってきっぱりはっきり言い切った。


「お前・・・・」
フォックスとしても、流石に二度目は一言一句しっかり受け止めざるを得ない。
確かにこの男は普段から通常から日常からいつもいつも口を開けば 『モルガナ』 『モルガナ命』 『モルガナのために怪盗団やってる』 『正直モルガナがいれば更正なんでどうでもいい』 『モナLOVE』 『ラブミーアイラブユー』 などと繰り返し言っていたのだが、
それはごくごくノーマルに 【猫が好き】 という範囲内だと勝手に思っていた。 が、
まさかそこまで、まさかそっちの方向にベクトルが向き始めていただなんて、当然だが想像だにしなかった。
「無理、だろう」
考えるまでもなくいくらなんでもそれは無茶で無謀だ、と返事をする。
やんわりと脳裏に描いてみた身体のサイズの比較だって、ジョーカーとモナでは無理がありすぎる。
するとジョーカーは 「やっぱりそう思うか」 と軽く肩をすくめ、宙を仰ぐ仕種を見せた。
そして、小さく笑う。
「現実世界だと、背中と喉はすんなり撫でさせてくれるようになった」
「随分と懐いたな」
「ああ。 進化した」
「進化・・・・」
「だけど、そんなスキンシップだけじゃ到底足りない。 あんな可愛いツリ目の耳つき小悪魔が毎晩毎晩同じベッドにいるっていうのに」
「・・・・・・・・猫、だよな?」
フォックス的には、お前の目にはモナが、あの猫? が一体どう見えているんだ、と疑問符の嵐。
しかし構わず、ジョーカーは淡々と。
「次のステップは肉球をプニプニしまくりたい。 叶うならふぐりをずっと転がし倒して一日を終えたい」
もうすぐ動物愛護週間だろう、それをきっかけに一歩踏み出すことが可能かどうか・・・・、などとブツブツ言い始めた。
「・・・・・・・・虐待だそれは」
たまらず口をついて出てしまったフォックスの呆れ返りっぷりも知らず、
怪盗団リーダーのこの男は。
「現実世界で無理なら、やっぱり場所は異世界・・・・、と、なれば総合的に危険性も少ないメメントスの方がいいか」
「おい、何のことだ」
「現実世界だと衣装替えも楽しめないし」
「・・・・・・・・・・・・」
ああ、これは駄目だ。
そう判断した途端、フォックスは早々に見切りをつける。
「まあ、本人・・・・、いや、本猫? の言うことを信じるなら、早くニンゲンに戻れるといいな。 獣姦よりはまだ、同性の方がいろいろ都合が良いだろう」
希望を持たせた上でこざっぱりとまとめ、一旦この話を打ち切ろうとしてみたのだけれど。
「何を言ってるんだ? 猫だから良いんじゃないか。 異世界のぽったりモフモフも、現実でのリアルにゃんこでも 『猫!!』 だから至高なんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
駄目だこれは。 こいつの標的(・・・・) になってしまっているモナには気の毒だが、とてもとても自分の手に負える感情と欲情ではない。
黙りこくるフォックスの横、
ジョーカーは独り言を続ける。


「いっそメメントスで車になってもらって、排気の、マフラーを使うしか」


「!!!?」


そんなところに突っ込んだら逆にお前の方が大変なことになるぞ落ち着け、とたまらず反射的にツッコミを入れざるを得なくなったその途端。 瞬間。


「おい聞いてくれよジョーカー!! スカルのアホが!! ワガハイに!!」


突然の声と同時に後ろからピョーーン!、とすっ飛んで一足飛びで彼の肩の上に乗ったが早いか捲くし立ててくるモナ、
それをこの上なく嬉しそうに抱き止め(受け止め? 乗せ止め?)、ちゃっかりしっかり片手を添えギュッ、としばらくは離さないつもりまんまんのジョーカー、
モナはモナで捲くし立てながらも後頭部をジョーカーに撫でてもらって、何だかまんざらでも無さそうだ。


「ところでモナ、今度二人だけでメメントスに行かないか。 皆には秘密で」
「ヒミツ? ヒミツといったら特訓だな!? よしわかった!! ワガハイは構わないぞ」
「・・・・よし!」


一見ほのぼのとしたそんなやり取りを交わす一人と一匹を複雑な思いで間近に眺めつつ、
そんな企みを抱かれているとは知る由もないモナの穢れないOKを貰い、
マスクの下でうっすら悪い笑みを浮かべたジョーカーの、
彼のターゲットが自分ではなくて本当に助かった、としみじみフォックスは、思った。























その数日後、探索中のメメントスにて軽いエンストを頻繁にモルガナ・カーが起こすという日があり、
「モナ、具合でも悪いんじゃ・・・・」 と皆が心配する中、
当のモルガナは頑なに 「なんでもない!」 の一点張り、
加えていつもであれば一番にモナを気遣って溺愛しまくるはずのジョーカーは一言も発さず(・・・・)、
といった事例が起きたのだが、フォックスは何も聞かずそして言わず、気付いていないことにした。




だから真偽は、実際のところ不明だ。










まだクリアしてないのに(・・・・)、あんまりにもモルガナが可愛くて書いてみた。
しかしジョーカーと鳴上悠が書き分けできてなくて自分で呆れました。 ←自分で言っちゃった