[ 1月某日の彼等 ]


★☆★1月2日〜1月8日とかのあのあたりだと思って読んでいただければ★☆☆






現象と事象と理由はともかく、仲間も友人知人も皆、それどころか世間一般誰彼構わず漏れず幸せそうで、たったひとり、違和感と焦燥感と逡巡に暮れていた。
そんな状況のなか、
もういなくなったと思っていた、
もう会えないと理解していた、
自らの童貞を捧げた相手が突如さらりと、涼しい顔をして目の前に現れたとしたら。


心が揺らいでいるときにふたりだけで、
以前訪れたときとほとんど変わっていない彼の部屋を夜、そこそこ遅い時間に再訪する。
灯りを付けても、やはりあまり生活感の感じられないその部屋は、
普段とは逆に現実的に蓮の目には映り、
勧められた二人掛けのソファーに腰をおろすと、少しだけ、安心した。
その表情を読み取られていたらしい。
明智は立ったままコートを脱ぎながら、


「僕に会えてそんなに嬉しい? 君、こんなにメンタル弱かったっけ?」


そこらのおんなより余程きれいで端麗なそのカオで、
しかも気の強いところを隠そうともしなくなった、遠慮のない物言いで訊いてくる。
ひとつめの疑問符は言わずともがな。
ふたつめの疑問符に、蓮は控えめに頷こうとして、少しだけ躊躇し、結局。
「お前なんて大嫌いだ」
弱いところを露呈させるのが嫌で、思っていることと正反対の言葉を吐き出す。
問いに対しても返答になっていないことは自覚のうえ、
顔もみたくない、と眼鏡越し、視線を下げると。
「まあ当然だよね。 僕は君を殺そうとしたし、君も僕を罠に嵌めたんだから」
明智も口にする台詞とは裏腹に、やたら楽しそうに言ってきたかと思いきや、正面から強引に抱き締められた。
「なのに此処にいるのは僕たちふたりで、君の大切な仲間たちはそれぞれ自分の幸福の中にいる。 ね、どんな気分? 言葉にできるなら、ちょっと興味あるな」
「・・・・・・最低だ。 気分じゃなくてお前が」
立ったままの彼の胸に額をつけて唸った嘘言は、頭の上からのかすかな笑い声に包まれた。
「ふうん。 そんな月並みな返事しかできなくなってるなんて、今までの 『ジョーカー』 は虚勢だったってこと? 滑稽だね」
そういうところ。 行動と言の葉と口調、全てがちぐはぐで、なのに彼の片手が触れているうなじのあたりがぞくぞくする。
「なんとでも言えば、いい」
「別になにも言わないさ。 僕に何か言って欲しいのなら別だけど」
頭上から落ちてくる声。
もう片方の手が添えられた背中に走る、甘く、重い衝動。
すでに知っている彼の薄い胸。 気が付けば自分の両腕も彼を捕らえていた。 明智が抱き締めてくるより、その倍も強い力で拘束していた。
「はは。 なんだかいろいろ飽和状態だね、蓮。 いいよ、好きにすれば」
頭を撫でられる。 顔を上げれば、以前とは違う、明智の人の悪い笑み。
そんなカオ。 今までで一番好きかもしれない。
「大嫌いだ」
蓮は喉から絞り出す。 痛切なる虚言。 だけど今更甘い言葉なんて吐けるはずがない。
実際、命をかけたほど謀っていたのだから、今になって睦言など口にできる訳がない。
「2回も言わなくてもわかってる。 ・・・・・・。 他に何か言いたいことは?」
互いに不実な如何様を重ねていただけだったけれど、
決して離したくなかった。
決して、別れたくなんてなかったのだ。
だから、


「・・・・・・・・・・・・会えてよかった」


この先、どうなるかなんてわからない。 どうでもいい。 
明智の最初の疑問符に蓮は遅まきながら答えつつ。
「好きにさせてもらう」
もう、遠慮なんてしなかった。




















真っ暗な寝室、覚えていた距離感のみに頼って明智の身体ごと、ベッドに倒れ込むように転がる。
どちらが上でも下でもかまわない。 圧し掛かり、乗り掛かられを何度か繰り返し、
指を絡めてもっと近くに。 身体が重なって許す限界まで。
キスをしながら互いに衣服を乱していく。 蓮は眼鏡を外すことも忘れていて、激しいキスの邪魔になるそれを明智が奪い取るよう、はずしてくれた。 可哀想にその眼鏡は、容赦なく明智の手によって乱暴に床に放り捨てられることになったが。
暗闇にまだ目が慣れない。 以前も思ったが現実世界でもサードアイが使えればいいのに、と改めて考えながら蓮は、朧気な記憶をたどってベッドサイドのランプに手を伸ばす。
やわらかな暖色の明かりがついて、心持ち、部屋の中の温度まで上昇したような気がしたが、上昇したのは気温ではなく、自分の体温の方だとすぐ気が付いた。
眼前の身体と、自分に組み敷かれながらもじっと視線を逸らさず見上げてくる強気の眼差し。
その眼差しが、ふっと刹那、緩んで。
「余裕、本当に無いね。 もう息があがってるけど」
揶揄めいて言われてしまったけれど、仕方がない。 自覚はある。
曖昧に頷いて、貪りつくように明智の胸元に口唇を寄せた。
肌を愉しむ余裕も本当にない。 以前の自分なら、きれいなその胸を眺めたり、ゆっくりと触れたりもしていただろうけれど、今は脇目もふらず、乳首に舌先を伸ばす。 ちろりと舐めると、その胸が少しだけ跳ねた。
「っ・・・・」
明智の喉が動く。
始めての頃は、胸ではほとんど反応してくれなかったことを思い出す。 それが今は多少なりとも感じてくれているようで、嬉しくなった。
しかしまだ声は抑えているその様をみて、蓮の方が気が急いてしまう。
「ン・・・・っ・・・」
何度も舐め上げた乳首をきゅっと吸い上げる。 と、鼻にかかった甘い吐息が聞けた。
本性はさておき(・・・・)、ベッドの中の明智は当初から最初からとてもその気で正直で、蓮を誘ってくる。
そもそも蓮とのSex自体、大歓迎といった様子らしく、快楽に溺れるのも決して嫌ではないらしい。
艶めいた声を聴かせることに抵抗もなさそうで、だから、蓮も尚のことそそられて煽られてしまう。
ちゅくちゅくと乳首に吸い付きながら、片手を下肢に持っていく。
先を急ぐそんな愛撫に、明智は少々、呆れた口調で。
「そんなに焦らなくても、逃げやしないよ」
「・・・・焦ってるんじゃない。 急いてるだけだ」
「それって同じ・・・・うわっ!」
問答する暇さえ惜しくて、蓮は明智の両脚を大きく左右に広げる。
そこはまだ緩く熱を孕む程度、けれど、久方ぶりに目の当たりにした彼の中心部にごくりと息を飲む。
両膝に手をかけ、脚を開かせているのは自分の方なのに、かあっと頭に血がのぼった。
行動は一旦止まり、視線をそこから離せないまま、ただただそこそこ長いこと、凝視してしまっていると。
「ちょっと、何、どういうプレイ・・・・?」
思いきり嫌そうに咎められてしまった。 「あ、」 と慌てて唾を飲み込む。 あと数秒遅れたら、容赦なく蹴り飛ばされそうな予兆を察し、膝から太腿に手の位置を変え、即座に顔を落とした。
「ッッ!!」
迷わず口内へ招き入れる。
先端、茎、と順番に舐め回しながら口唇で扱いていくと、下肢が小さく震えるのがわかった。
「ぅん・・・・っ・・・」
濡れた性感に、本能的に明智の腰が揺らめく。 その動きを封じてしまいたくて膝上から膝裏に手を移し、しっかり固定して、裏筋もきちんと刺激していく。
「あ、あッ・・・・!」
僅かに背中がしなる。
蓮は自らの口の中で確実に硬さと質量を増していくものを感じて、それを愉しんだ。
明智が自分の施しに反応しているのがありありと実感できて嬉しい。
だから手での刺激より、口を使っての愛撫の方が好きだったし、味わうことも出来るがゆえ、都合がよかった。
「・・・・、ふ・・・っ・・・」
深い息継ぎも兼ね、一旦口を離す。 と、甘い口淫で育ったそれはすっかり勃ち上がり、蓮の吐息にぴくりと反応する。
またじっくり眺めていたかったが、そんなことをしていたら今度こそすぐに怒られそうで、時間をあけず再び口を付ける。
根元から裏側を辿り、括れたところを舌と添えた指で揉んでやる。
音もなく先端から溢れ、滴り始める透明な体液。 それは蓮が口許と指先を動かすたびに増え、湿った水音が響き出した。
「・・・・・・悦い?」
「・・・・、ん・・・・」
訊ねてみると、吐息のような声で返された。
さすがにまだはっきりと言ってはくれないけれど、伏せられた目蓋やしっとり汗ばんできている肌、浅く早いものになってきている呼吸などが快楽を表していて、心が浮き立つ。
先端を口唇で包み込み、きゅうっとゆっくり強め長めに吸い上げる。
「ひ・・・・ッ・・・!」
明智の喉が仰け反る。 敏感な部分への強い愛撫に戦慄いた肉棒をなだめるよう、続けて弱く緩く、吸い上げを繰り返した。
明智は今まで一度も、言葉にしたことはないけれど、おそらく口でのご奉仕を気に入ってくれているのだろう、と蓮は頭の中で思う。
止められたことは無いし、確か以前思いのほか巧いと褒められたこともあったし。
けれど蓮としてはもう一段階、先に進んでみたかった。
以前とはお互いの立ち位置も何もかも変わっていて、互いに隠し立てすることはもう無くて、今なら、仲間にも誰にも遠慮することなく没頭できる身体を持った相手がここにいる。 だから、手加減も、手心も加えず、思いきり夢中になりたくて。
口腔に溢れる唾液と、彼の蜜を何度も浅く飲み込む。 その刺激にさえ背中を震わせ、掠れた声をあげる様が淫靡で同時に可愛くて(面と向かってそんな表現をしたらたぶん殺されるから、口には出さない)、
より悦くしてやりたくなり、どうせならもっと甘い声を出させてみたくて、一層愛撫に力が入る。
弱いところ。 先端の孔をちゅくちゅくと舌先で削るよう刺激してみた。
「・・・あ、あッ、・・・・ッ・・・!!」
細い腰が跳ねる。 小さくかぶりを振って乱れたのか、シーツにやわらかな髪が擦れる音が聞こえた。
気付けば蓮の頭に置かれていた彼の手にはまったく力が入っていない。 感じてくれている証拠だ。
口の中、大切に丁寧に包んで扱くたび、粘ついた音が耳を打つ。
飲み込みきれない、糸をひく唾液と体液とが混じったものが筋を描いてシーツに滴り落ちた。
「、ッ・・・い・・・・!」
太腿が震えだす。 
張り詰めた中心部を連続して上下に扱かれ、明智の腰が浮いた。 同時、汗が上気した胸元を伝う。
「イく?」
「、ぅ・・・・・ッ・・・・」
蓮の問いかけに明智は小さく首を横に振った。 否定したいのか、それとも快感を堪えるためなのかは分からなかったが。
それでも、自然と浮かび上がってくる細腰をしっかり腕で固定し、高みへ追い上げるため、蓮は構わず舌を激しく使った。 蓮の頭に添えられていた手に力が入る。 強く髪を掴まれて引っ張られたが大して痛くもない。 むしろ、うなじからゾクリと悦楽が走った。
「・・・・も、う・・・・っ・・・・ッッ・・・」
間隔が短くなる呼吸と、上擦って途切れ途切れの限界を告げる声。
蓮はぴくぴく小刻みに戦慄く、いっぱいに張った絶頂間近の肉棒を口内できつく締め上げつつ、思いきり吸い上げた。 途端、全身が一際大きく跳ねる。
「―――― うぁ・・・・ッ!!」
短く声を上げ、明智は蓮の口の中に白いものを吐き出した。
懐かしい味のするそれをごくりと嚥下した蓮。
指で確かめれば、まだかすかに芯が残っている性器の、最後の一滴まで搾り取りたくて、根元を軽く扱く。
と、明智が眉を寄せてぐい、また髪を引っ張ってきた。
「し、つこい・・・・!」
達したばかりの先端は過敏極まりなくて、明智としては余韻が治まるまであまり触れずにいてほしいのに、このバカ(※と書いて雨宮蓮と読む) は真逆のことをしてくる。
どれだけ固執しているのか、当のバカ(※と書いてジョーカーとも読む) は、離すどころか再びぱくりと口に含んできた。
「っふ、あ、ぁッ!」
ぬめる口内に包まれ、腰が砕けそうになる。 思わずあげてしまった、聞いている蓮の方が我慢できなくなりそうな甘い声は、快楽のしるし。
蓮は愛おしそうにちゅ、ちゅ・・・・、と全体を優しく吸いながら、ゆっくりと最奥に指先で触れた。
「、」
後ろをさわられ、僅かに強張る下肢をなだめるよう、もう片方の手のひらで腰を撫でながら、丁寧に指を埋めていく。
それまでの行為で零れた体液で濡れ落ちていたそこは、大した抵抗もなく指を飲み込んでみせた。
「大丈夫か?」
「・・・・、僕が、大丈夫じゃない、とか、痛い、とか、言ったこと・・・・あった?」
こんな状態なのに、やたら素直じゃない返事をする明智に逆に安心して、蓮は埋めた指を軽く動かしてみた。 まだ一本しか挿れていないのに、痛いほどきつく締め付けてくる内側に思わず蓮の口から溜息が零れる。 今すぐにでも己で貫きたくなったが、まだ、早い。
指先が求めるのは、身体で知って、その身体で覚えた彼の悦点。
そこを前触れもなしにくいっと突き上げると、
「あぅッ!!」
明智の身体がびくんと跳ね上がった。
わかりやすい反応に、蓮は自然と口許を緩ませる。
「変わってないな」
「この、馬鹿ッ!!」
不意打ちだったのか、思いきり怒られてしまった。
しかし通常ならともかく、このような現状ではそれさえ嬉しいというか、そそられる。
罵倒すら心地いい、などと思いつつ蓮がしつこく悦点を指の先で転がすように何度か刺激すると、
「馬、鹿が・・・・っ・・・・、っく・・・・ぅ・・・・」
更なる文句を言いかけて、けれどそこから先は言えなくなったのか、明智は口許を手で押さえ、蓮の愛撫に耐える。
「っふ、・・・・ぅ、ッ・・・ん、ん・・・・っ」
今にも砕けてしまいそうな腰はがくがく震え、見かねた蓮が達したばかりの性器をつうっと舐め上げてみれば、シーツに立てた爪に力が入って、くしゃくしゃになった。
入口が更にやわらかくなった頃合いを見計らい、指を一本増やす。
二本の指で、内壁を丁寧に押し広げる行為を重ねながら、忘れずに指先で強く弱くポイントを擦り上げると、蓮の口中、また力を持ち始めている肉棒の先端が再び透明なものを滴らせはじめる。
「く、は・・・・ッ・・・!」
様子をみて更にもう一本、指を追加すると明智の顎が仰け反った。
どこまでもやわらかなそこは、狭いながらも三本の指を難なく受け入れて、中はとても温かい。
まとめた指で数回、音がするほど掻き回したあと、
蓮は指を引き抜き、今度はそこに舌を持っていく。
「――――ッ・・・! あ、あぁッ、うぁ・・・・ッ!!」
まず周囲をそろりと舐められ、明智の腰からずくん、と堪えようのない快楽が沸き出る。
遠慮もなしに蓮の舌が、入口を擦りながら侵入をはじめ、舌先が届く限界のところをちろりと舐められた。
沸き出た快楽は、みるみるうちに重い射精感に取って代わられ、性器はまたすっかり勃ち上がって。
脇目もふらず、無我夢中のこのバカを褒めてやりたくなってしまうほど、悦い。 蓮の舌が当たっているところから今にも融けてしまいそうな錯覚。
「あッ・・・・っ・・・、はッ・・・、ぁ、い・・・イイっ・・・・!」
蓮の舌が、内部でぐるりと動く。 その動きで自分でも、中が蕩けているのがわかった。
否が応にも、腰が揺らめく。
残念なことに、さすがに前立腺までその舌先は届かなくて、それがもどかしい。
「ふ・・・・っ・・・」
しばらく内部を掻き回したあと、名残惜し気に舌は出ていった。
「もう、いいな・・・・?」
性感にぼやける瞳と意識とをかけられた声に向ける。 と、そこには蓮の、欲情でもうギリギリの表情。
とっくに力の入らなくなっている膝を開かされ、両腕で抱え上げられた。
そうして、先ほどまで舌のあった箇所に蓮の先端が宛がわれる。
「っ・・・・、」
どれだけ溶かされていても、やはり狭いところを押し分けるようにして侵入される感触に、自然と息が詰まった。
一方で蓮の方も、中の熱さと狭さとやわらかさに、口唇を噛む。
「く・・・・!」
「・・・っは、ぁ、・・・・ッあ、!!」
根元までぐいっと蓮が貫く。 途端に先端が、弱いところを軽く擦って、たまらず腰が震えた。
性器は熟れきっていて、触れられれば弾けそうなほど。
―――――― 持たない。 今にもまた達しそうだ。
まだ蓮が侵入してきたばかりなのに、絶頂に近い感覚を感じてしまっている。
まさかここまで、蓮が愛撫を頑張るとは想定外で、
というより、ここまで身体の相性が良かったということも想像外で、
明智としては、まあ、それはとてもとても悪くはないのだけれども、
あまりそう性急に快感に苛まれるのも困る。 
だから、
「・・・・蓮・・・・、」
あえてゆっくり名前を呼んで、手綱をとるように。
「何・・・・?」
顔を覗き込んでくる蓮の目頭も赤く染まっていて、艶めかしい。 本当はすぐに乱暴にでも動きたいのだろう。 彼の呼吸も浅く荒く、耐えるように何度も繰り返している。
これは。 蓮も相応に限界のようだ。 それもそうだ。 自分は一度達しているけれど、彼はまだ一度も。
それなら仕方ない。 そもそも一ヵ月半以上も久しぶりのSexだったのに、暴走しないのが不思議なくらいだ。
明智は一瞬だけ考え、そして考え直した。
「・・・・何でもない。 いいよ、早く」
「?」
訝しげに見つめられたが、「ほら、醒めるだろ」 と促してやると。
意を決した蓮は頷いて、即座に軽く自らを抜き差ししてきた。
通常なら、馴染ませる意味も含めたその動きさえ、今は大きな性感として受け取ってしまい、おのずと爪先に力が入る。
が、あと少し。 少しだけ、足りない。
逆に、動いたおかげで一挙に追い詰められたのは蓮の方で。
「う・・・・、く・・・・ッ!」
きゅうっと締め付けてくる内壁に、声を噛み殺して耐えようとしたのだが。
ビクッと下肢を戦慄かせ、あっという間に内部に熱を弾けさせてしまった。
「ッ・・・・あっ・・・っ・・・・!?」
熱い飛沫が内側で放たれ、奥まで当たる。
その熱に持っていかれそうになりながらも、明智はぎりぎりで絶頂を堪え、
「・・・・っはっ・・・、ぁ、は・・・・っ・・・」
「君・・・・、」
荒い息を繰り返す蓮に、呆れて溜め息をついた。
「・・・・・・・・悪かった」
我慢できなかった、と弾む息のもと、謝られる。 その蓮の表情は思いきり面目なさそうで、
極まりのわるい顔をふいっと背けつつ。
「手伝うから」
そんなふうに一言。
その最後の言葉の意味がすぐには理解できず、「?」 と首を傾げた明智に。
「あとで、風呂で一緒に手伝う。 中で、その・・・・・・大変そうだし」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やっぱり君、もう一回殺そうかな」
明智の声のトーンがあからさまに低くなった。
それに、割合と本気の殺意が混じっている(・・・・) ことを感じ取った蓮。
「!!」
先手必勝、とばかり明智の肩をベッドに強く抑え付け、まだ硬い自らで思いきり奥を突き上げた。
「うあ、あッ!」
突然の衝撃に、悲鳴のような嬌声があがる。
中出しが原因でまた殺されそうになるのは流石に御免だ、とばかり蓮は構わず、内部を激しく蹂躙し始めた。
「馬ッ・・・・鹿・・・・っ、いきなり、動、くなッ・・・・!」
さっきから何度罵られているのかわからなくなってきた。 が、それさえ甘い睦言に聴こえて蓮は激しく腰を使う。
容赦なく、過敏な内壁を擦り上げられるのに合わせ、
蓮の括れの部分がポイントを押し上げつつ奥を貪る。 その動きが元々高まっていた身体を更に追い上げ、たまらない性感を導いて明智は肢体を震わせた。
「あっ! っぁ、・・・・あぁ、っ・・・・っっ・・・っく・・・・!」
「ん・・・・」
身体を突き上げられながら、キスで口唇を塞がれる。
うっすら開いてやると、すぐさま舌が入ってきた。 上顎を舐められて耳の後ろがゾクゾクする。 悦い。
「〜〜〜ん、ん・・・! ん、ッッ!!」
深く口付けられたまま、一番弱いところを先端でぐりぐり押し上げられた。
下肢から響く快楽と、塞がれて苦しい呼吸の中、更にしつこくそこをめがけて突かれ、
もうずっと限界だった性器が戦慄く。
「ッは、はっ・・・・、あ、ぁ、蓮、そ・・・こ・・・・ッッ・・・・!」
口唇を解放されて、堰を切ったかの如く甘い声が零れ溢れる。
このままなら後ろだけでイけそうだな、なんて快楽で飛んでしまいそうな頭の片隅で自嘲したのも一瞬で、
蓮自身の先端を最も弱いところから逸らそうと身を捩るけれど、すっかり力の入らなくなっている身体ではどうしようもない。
「ひ・・・ッ!う・・・・ッッ・・・・!」
ずるり、と限界まで引き抜かれた蓮の肉棒が、勢いをつけて奥の奥まで打ち付けられる。
奥の奥に届いたそれに、息ができない。 激しい快感。 連続して腰を器用に使われ、容赦なくぬるぬると内部を擦られて性感に目がかすむ。
「は・・・・ッ、・・・・ずっと、会い、たかった・・・・」
耳元で囁かれる。 掠れていておまけに熱に浮かされているような呂律で。
ちょっと君本当に大丈夫? と言い放ってやりたかったが、囁きと同時にかぷりと耳朶を噛まれ、身体の方が一気に昇り詰める。
「く、う・・・っ・・・あ、・・・ぁぁッ・・・!!」
身体全体が跳ね上がった。 力の入らない身体を無理矢理明智は捩じらせ、下肢は内部の蓮を強く強く締め上げた。
「もう・・・・ッ・・・」
「、ッッ・・・・」
蓮も必死に堪え、最後の突き上げとばかり、奥を乱暴に穿つ。
腰の動きに押し上げられて、極めつけに一際激しく蓮が悦点を抉った瞬間、
明智は全身を張り詰めさせ、それから絶頂に達した。
蓮も内壁がうねり、きゅうきゅうと絡み付いてくるきつさに耐えきれず、再び明智の中で精を放つ。
「・・・・あ、っ・・・、つ・・・・っ・・・」
小さく痙攣を繰り返し、身体の中でまたも弾けた蓮の体温に意識を奪われながら、明智がその熱に身じろいでいると。
ふうっと大きく息をついた蓮が、前髪をかきあげながら腰を退く。 
自らの中からぬるりと彼自身が引き抜かれ、そのすぐ後。
どさり、と蓮が上から重なり倒れてきた。 口付けてくる訳でも、抱き締めてくる訳でもなく、ただ上にいるだけだ。 単純に重い。 そしてまだ収まらない呼吸が聞こえるから生きているのだろうけれど、あまりの動かなさは意識でも失っているんじゃないかというレベルで。
「・・・・・・蓮」
まだ熱の残る火照った身体では押しのけることも面倒で、名前だけ呼んでみる。 動かない。
10秒ほど間を置いて、もう一度。
「蓮、」
と。
すー、すー、とかすかに響いてきたのはまさかの寝息。 呆れるしかない。
このままベッドから転げ落としてやろうかとも思ったけれど、それはそれで面倒くさくて。
ふう、と嘆息して目蓋を伏せ、明智はぽつりとつぶやいた。
「君は僕から全てを奪ったくせに」
途端、ピクリと蓮が反応したような気がした。 狸寝入りだったのか。 けれど確かめる気も意味もない。
彼が聞いていようといまいと、どちらでもよかったから。
























「・・・・・・なんだか妙に落ち着きを取り戻したみたいだけど、僕は君の 『ライナスの毛布』 って訳?」


明智がバスルームに一人籠っていた間、「大してモノはないけど使いたいものがあれば勝手に使ってて構わない」 と言われたキッチンにて、蓮がコーヒーなり紅茶なりを淹れようとケトルを火にかけていると、
まだ髪に水気を残したまま戻ってきた彼、曰く。
「もしくは、ただ欲求不満が解消できて安定しただけってことも有り得るけど」
「・・・・・・・・・・前者かな」
「ふうん」
ちらりと侮蔑の視線を向けられた気がする。 毛布でも欲求不満でも、どちらにしろ情けないことに変わりは無い。
しかも我慢がきかず、2度も中で放ってしまった身としては、何の言い訳もきくはずもなくて。
こんなとき、どういう会話をすればいいのかもわからず、ただ黙って、
やっと沸騰をはじめたケトルのIHのスイッチを切った。
キッチンにはコーヒーも紅茶も両方あったけれど、意外なことにどちらもインスタントとティーパックのものしかなかった。
てっきり、こだわりの豆だの茶葉だの揃えてあるものだとばかり思っていたのに。
「僕は紅茶。 砂糖もミルクもいらない」
後ろから指図がとぶ。 わかった、と返事をしたら。
「ここに来たとき、君、僕なんて大嫌いだって言っただろ?」
「言ったけど、それが」
どうした、と振り向かないまま、訊く。 すると。 面白そうな笑い声があがった。 そうして。
「悪いけど、僕はそれでも蓮が好きだよ」
「、!?」
咄嗟に振り向いてしまった。 あやうく、手にしていたインスタントコーヒーの瓶を落とすところだった。
「へえ、嬉しい? 一瞬、そんな顔したけど」
・・・・・・・・嬉しいに決まってる。
けれど口には出さず、無言で頷いたら。




「そういう君は、僕に 『好き』 とか一度も言ったこともないのにね」




笑顔で吐き捨てられた。




ああ、やっぱり明智は性格サイアクだ、と思ってから。




最低なのは自分の方だ、と蓮は今更、思い知った。












【 2月2日、マヨナカ 】 に、続きます






なんだかやたら書きやすかったです。
すんごいイチャイチャしてるからかしらん。

全部で5つのうち、3つめが終わりました。 あと2つ!