[ 2月2日、マヨナカ ]


★☆★丸喜先生が帰ったあと、絶対やってたと思うんですよ★☆★














あと一度だけ好きだと言ってくれたら、迷わず最後の一歩を踏み出せると思う。












彼の剣幕に押されるまま丸喜の提案を最後まで拒絶し、最終的にあくまで意は曲げず明日を迎えることになったその後、
いつから気付いていたのか、それともついさっき理解したのか、モルガナは 『・・・・・・フタバとゴシュジンのところで寝てくる』、と言って姿を消してしまった。 何も告げずにいてくれたのがありがたかった。
それと同時にほとんど脊髄反射のようにルブランを飛び出し、いくつか角を曲がったところで目的の背中を見つけて、有無を言わさず腕を掴み引きずるようにしてまた店に戻った。
ルブランまでの路、最初だけ驚いた様子を見せたけれど表向き抵抗は無く、黙って屋根裏部屋まで連れられてきて、明智ははじめて一言。
「最後に発散したいっていうのなら構わないけど・・・・迷うなよ?」
自らコートから袖を抜き、
「そういえばこの部屋には何回か来たけど、ここでするのは実質、初めてかな」
と呟きながら、ベッドに腰をおとす。
一方で、強引に連れてきたくせ、立ち尽くして動かない蓮を見上げ、笑みの中に半分ほど意地の悪さを含んで。
「そんな顔してどうした? 僕のことなら気にしなくていい。 君のその感情は今だけの一過性のものだから。 来年の今頃は、僕のことなんて忘れてお仲間たちと普通に笑い合ってるはずだ」
とは言え最低限明日に響かない程度で頼むよジョーカー、とあえてそちらの名前で呼ばれた意味を考えようとしてやめた。
そんな時間はもう無かったから。

















古い木製のベッドが二人分の体重を受け、ギシ、と軋む。
揃って相当の細身だという自覚はあるけれど、どうか真っ最中に壊れませんようにと頭の隅で願いながらキスをするため顔を近づけていくと、明智が自分をじっと見てくるのに気が付いた。
「・・・・何だ?」
何か顔についてる? と訊いてみる。 と、直接その問いには答えてくれず、
「よく考えてみたら、君、全然僕の好みのタイプじゃなかったな」
何を言うかと思えばそんな台詞で、
「、」
まさかの暴露にぴしっと固まる蓮に彼は苦笑して。
「でもまあ、今更言ってもね。 この際どうでもいいし」
・・・・・・・・なんだか最後の最後になって、とんでもないことを言われたような気がする。
が、
「本当にどうでもいいよ、時間もないだろ、早く」
自己完結のあと、開き直って急かされた。
仕方なし、キスを諦めて、ギシギシと鳴るベッドに絡み合いながら沈んでいく。
真冬真っ只中の部屋の空気は相応に冷たかったが、あまり寒さは感じなかった。 互いの身体が作り上げる体温の方がまさったからか。
そして蓮は今になって気が付く。 あまり平熱が高そうではない彼の見た目に反して、いつだって素肌は暖かかった。 触れた背中が自分の手より冷たかったことなど一度もなかった。
体温はいつも明智の方が高かったのかもしれない。 それは今日も、今も変わらなかった。
「・・・・ン・・・」
薄い胸元から、体温を分けて貰えるよう丁寧に手のひらで撫で、指先で淡い突起を摘まむ。
明智がびく、と小さく反応した。
いつからか感じてくれるようになったその箇所。
「・・・・・・此処」
「ん、・・・・っ・・・?・・・・」
意味のあまり含まれない呟きに訝しがられたが構わず、摘まみ上げた突起を何度も弄ると、
明智が髪を揺らす。
しつこい愛撫を諫めようと持ち上げた明智の手を先に掴んで制し、蓮は真っすぐ胸元に口唇を寄せた。
「ッ!」
尖りはじめた肉粒をちゅっと吸い上げると、吐息が聞けた。
甘みを持つそれをもっと聞きたくて、蓮は更に愛撫を重ねていく。
小さなそれを舌先で転がし、舐めて時々吸う。 その間、明智は珍しくも声を抑え気味で。
「我慢しなくていいのに」
最後なんだ、と続けようとして蓮は口を噤む。 そんなこと、彼の方が余程よくわかっているはずだ。
「っ・・・・くどいよ・・・・」
愛撫にダメ出しをされてしまったが、聞こえなかったフリをして、口唇を離して今度は逆側。
もう片方にも舌を絡めて舐め回してみる。 くどいと言われようと、蓮は最初からこの胸が好きだった。
薄くて、なのに均整が取れていて、きれいで。
自分の唾液で濡れ、つるつると滑るそれを執拗に追う。 すると明智の息がますます上がりはじめ、
なのにそれを我慢しようとしているらしく、ふと見れば口許に手をやっている。
そういえば初めてのときは全く胸で感じてはくれなくて、とても残念だったことを思い出す。
それから少しずつ、身体と回数を重ねてここまで来た。
感じるようになっているのは間違いない。 むしろ、過敏なほど。 けれど最後まで強情な姿をみせるところは彼らしいな、と蓮は思う。
だから尚更、今ぐらいは思いのまま乱れて欲しくて。
「く・・・・っ・・・う・・・」
口唇で吸い、前歯で軽く齧る。 これを繰り返すと、明智は刺激から逃れようと身体を捩らせた。
が、蓮の下では大して動きようもない。
「っあ・・・・!」
本当にしつこく攻められて、身体だけでなく首も振りはじめる。 きめの細かい肌も汗ばんでくる。
「我慢するな」
「・・・・ん、ッ・・・・」
囁く。 けれどあまり聞き入れてもらえなかった。 代わりにビクン、と跳ねた身体に満足して、
軽く折られた膝の裏を撫でると、身体がわずかに震えた。 膝裏も弱かったのか。 今更知った。
一度上半身を起こし、先程は諦めたキスがやっぱりしたくて口唇を重ね、舌を伸ばすと思いのほかすぐ招き入れてくれた。
「・・・・ふ」
舌先が舌先に触れた。 今にも蕩けそうだ。 絡め合い、吸い上げる。 飲み込みきれない唾液が顎を伝い、流れる。
それすら蓮は勿体なくて、指先で拭い、舐め取ってはまたキスに戻って夢中で貪りながら、片手を下肢に持っていく。 やや硬さを持ち始めた性器を軽く握ると、細い腰が大きく震えた。
それをきっかけに口唇を離し、愛撫のため身体を移動させた。 またもベッドがギシリと軋む。
「少し、濡れてる」
「・・・・・・誰、が、そう・・・した・・・?」
事実を告げると、案外冷静に訊き返されてしまった。 その瞳はいつも通り、赤茶でまだ理性を保っている色をしていて。
何だか途端に、無性に全部、引きはがしてやりたくなった。
ぐちゃぐちゃに、それこそ滅茶苦茶にしてやりたくなった。
が、当たり前だが乱暴になんて出来るわけがない。
手荒くなんて扱えるはずがない。 なのにこの衝動はホンモノで、蓮は混乱する。
そして混乱したまま、なりふり構わず。
「―――― 蓮?」
突然黙りこくって動きを止めた蓮に明智が眉を顰める。 構わない。 決めた。 だって最後だ。
「何でもない」
ぼそりと呟いて、すぐに顔を落とし、ぱくりと彼の性器を口腔に収めた。
そのまま力強く、搾り取るように口内の粘膜で扱いていく。 と、すぐ近くのシーツを明智が握るのが衣擦れの音でわかった。 蓮のこの愛撫自体を決して止めようとしないところが嬉しい。
けれど今日は、たとえ止められても仕方のないところまで追い上げたい。
今まではなんとなく彼に主導権を握られていたSexだったけれど、せめて今夜は。
最後くらいは余裕も何もかも剥ぎ取って、思いきり。
「っ・・・・く・・・・っ」
全体的に口内で愛してやると、髪が擦れる音がした。 蓮には見えなかったが、おそらくかぶりを振って、同時に口唇を噛み締めて快楽を享受しているのだろう。
以前ならそれでもよかったけれど、今は、抑えられない声を聴きたい。 受け止めきれなくなるだけの快感を与えてみたい。 そんな状態の姿を脳裏に描いて、蓮の下肢も脈打つ。
「・・・・イイ?」
「んっ・・・・」
生理的に動いてしまう腰を抑え付け、自らの唾液を大量に絡めながら肉棒を扱く。
ちゅ、ちゅ、と時折吸い上げ、濡れた音を立てて何度も粘膜で摩擦を与えていくと、性器はみるみるうちに質量と熱量とを増してきた。
「ッ・・・・、ン、ん・・・・っ・・・!」
「悦いって、聞きたい」
願うように告げたその言葉の、かかる息にすらそこは反応をみせる。 ピクンと小さく震えたそれを口唇で揉むように愛撫し、続けて裏筋をつうっと根元から先端に向かって一気に舐め上げた。
「ッッ・・・・・・!!」
上がりそうな声を堪える様を蓮は察知する。
いつもSexのとき、わりと明智は素直に悦いと口にはしてくれるけれど、何だかいつもそれに操られているような気がしていた。
その言葉に嘘はなくて、確かに感じていてくれてはいたのだろうけれど、ニュアンスはなんとなく、煽るためというか、蓮に対しての計算されたご褒美の艶声というか。
だから殊更、今回くらいはとことん追い詰めてみたくて。
そのためには、一度達してもらいたかった。 今までの経験から、一度絶頂に達した後はどこもかしこも鋭敏になるとはわかっていたから、矢継ぎ早に性感を与えていけばいいと思ったのだ。
そう決めて蓮は、普段よりずっと性急な愛撫へと施しを切り替える。
突然変わった、強引に絶頂へ連れて行かれるような激しい愛撫に、明智が喉を引きつらせる。
「・・・・っ・・・、ど、うした・・・・?」
片腕で上体を起こし、訊ねてくるがその呼吸は上擦り、迫力はない。
蓮は答えず、根元を片手で扱きながら、茎の部分や括れたところを舌で念入りに刺激した。
「――――ッ!!」
細い腰が否が応にも浮き上がる。
「く・・・・っ、ぅっ・・・・ッッ・・・」
太腿ががくがく震え出す。 すぐそこまで来ている絶頂に、身体が強張った。
明智はせわしない息のもと、普段と違った様子の蓮の様子を確かめようとするけれど。
「もうイきそう?」
掠れた声で逆に訊かれ、返事をしてやる代わりに、握ったこぶしで蓮の後頭部をゴツッと殴る。
もちろん本気ではなかったので、蓮としては痛くも何ともなかったが。
「蓮・・・・っ」
「殴りたいなら、もっと殴ればいい」
「馬ッ・・・・鹿・・・・、うぁッ!」
可愛げのない蓮の返答に、明智が今度は思いきり殴り倒してやろうと思った瞬間、口腔の奥深くまで性器を含まれ、じゅぷじゅぷと全体を激しく吸われて身体の震えが止まらない。
結局もう一度殴ることも、罵倒することも出来ないまま、
「あ・・・・ッ、あ・・・・!!」
きゅうっと強く吸われた瞬間、身体が仰け反ってビクッと大きく震え、続けて蓮の口中の肉棒が精を吐き出した。


それを全て飲み下し、蓮が顔を上げて明智を伺い見ると、後頭部を枕に預けてくったりシーツに沈んでいた。 息は荒い。 どうやら暴力は振られない方向で済みそうだった。
蓮のその視線に気が付いたのか、彼は目蓋をあげる。
「・・・・・・くどいんだよ・・・・君のやり方」
叱られてしまった。 が、腹を決めたからにはもう怖くはない。
「おんな相手の時には気をつけなよ・・・・・・って、 ・・・・!?ッ、待、て・・・・ッ・・・」
気だるそうに助言してもらったが、そんな言葉は不要この上ない蓮は無言で達したばかりの性器を再び口に銜え込んだ。
性急すぎるそれに、明智は驚いて身を起こす。
まだ息すら整っていない。 達した直後で過敏すぎるそこに今、また触れられてはたまったものじゃない。
「ンっ・・・・!!」
ぴちゃ、と音を立てて舌で再び愛される性感に、背筋が戦慄く。 正直な身体は蓮の舌が性器を這い回るたび、先端からまた体液を滲ませた。
蓮は、その滲み出る白の混ざった体液を舌の上で味わい、嬉しそうに少しずつ飲み込んでいく。
そんな仕草に、思わず明智が目を瞠ると。
「・・・・・・怒っていいから」
と蓮は言って、
「え・・・・? っあ・・・・ッ!?」
明智がその言葉の意味を瞬時に読み取れないでいるうちに。
再び全体を生温かい口腔に包まれ、扱かれる。 敏感この上ないそこは、またすぐに力を取り戻して上を向き、軽く刺激されるだけでたまらない性感が下肢を痺れさせた。 悦すぎる。
「っ・・・・はっ・・・、やめ・・・・っ・・・・」
回数を重ねるごとに蓮の愛撫は巧みになっていて、それ自体は明智としても歓迎するところだったのだが、それは手綱を握れる範囲内のことであってのこと。
自ら(と、蓮) を快楽の中でも、そこそこ制して誘導できた上で愉しむならともかく、
限界を超えた性感というものはなるべく避けたい。 だから今までのSexにおいても本当に我を忘れるといった痴態は晒してはいないはずなのだが、何だか今回は、今夜は嫌な予感がする。
制御できない、そんな様子が蓮から漂っていて、小さく喉が鳴る。
「っ!?」
肉棒に舌を絡めながらの蓮が、ふいに後ろにも手のひらを伸ばしてきた。
二つの珠を、掌中でやんわりと握られ揉み込まれて、背筋を何かが駆け上がる。
「ぁ・・・・、っあ・・・・ッ」
どうしたって漏れ出てしまう、掠れる甘い声。
声くらい、どれだけ聞かせてやっても構わなかったが、そうそう好き勝手にさせるのも癪で、明智はとりあえず蓮を離そうと両手で頭を掴み、力を込める。
けれど結局大して腕は上がらないうえ、手も小さく震えて言うことをきかなかった。
自分が思うより、身体全体が快楽で支配されてしまっていた。
そんな様子に気が付いたのか、蓮は小さく笑う。
「・・・・悦くするから」
「うぁ・・・・っ」
尖らせた舌先で、先端の孔を突付くように刺激され、続けてぐいっと抉られて透明な体液がとろりと大量に溢れ出た。 それも全て逃したくない蓮に、音を立てて啜り上げられ、愉楽に腰が戦慄く。
蓮を殴ることも、押しのけることも断念した明智を上目遣いで見やって、当の本人は互いの体液で濡れた指先を後ろに潜り込ませた。
「・・・・く・・・」
「そのままで」
諭すようそう告げた蓮の指先が、明智の中へ埋められていく。
指一本だが、まだ締め付けられて内部は狭い。
けれど最初の頃とは違って、軽く前後させても問題はないようだ。
「・・・・あ、・・・・っ」
後ろをほぐしていきながら、性器への愛撫もしっかりと加えていく。 親指の腹で括れの部分を何度も擦り上げると、瑞々しい透明な液体がまたじわりと浮かんできた。 再び舐め取り、啜る。 それを何度も繰り返した。
唾液も含めてたっぷりと粘液に包まれたそこを愛しながら、指は内部を拡げていく。
と。
奥まったその一点に指先が届いた。
他の部分とは少しだけ違う感触のそこを、見つけた、と蓮はくいっと押し上げる。
「うあ、あ・・・・っっ!!」
堪えきれない嬌声があがった。 もっと聞きたい。
「お前が教えてくれたところだ」
「こ・・・・・・の、薄馬鹿・・・・ッ・・・・」
「なんとでも言え」
「やめ・・・・っ・・・!」
やはり、今夜の蓮は言うことをきかない。 明智がはっきりそのことがわかった時にはすでに遅かった。
「あ、あ・・・・ッ、・・・・や・・・・め・・・・っ」
中の、悦い箇所を指先で何度も突付かれ、強く弱く擦られて今にも腰が砕けそうだ。 口で愛されている性器からも絶えずじわじわと先走りの液体が溢れ出てくるのが自分でもわかる。
あざといほどの蓮の愛撫。 嫌でも感じてしまうその二箇所を集中して攻めてくる容赦のなさに、
下肢が何度も不規則に震え出した。
「・・・・っく・・・、・・・ぅ・・・・っ・・・」
一度達して、どこもかしこも敏感になっている状態で更に執拗に弄られ、二度目の射精感を覚え始める。
明智が重く腰に纏わりついてくるそれを懸命に堪えている一方で、蓮は夢中になって肉棒と後ろへの愛撫を止めようとしない。
徐々にほぐされ、甘い疼きまで持ち始めた内壁がひくひく蠢き出し、見て取ったのか指も二本目と三本目が同時に増やされても、大した抵抗も見せず受け入れた。
しかし一気に増えた圧迫感に、
「、・・・・ッ、もう・・・・っ・・・!」
がくがく腰が震えた。 今にもまた達しそうだったその時、
埋めたばかりの指ごと蓮が引き抜き、腰ごと持ち上げられ、そのまま一挙に体勢を変えられた。
力任せにうつ伏せにされ、明智は文句をあげる暇も、息をつく間もなく枕に顔を埋める形になってしまう。
そうして背後から腰を抱えあげられ、まるで動物のような。
更に、硬く膨れ上がった肉棒の根元をきつく戒められ、明智は驚くと一緒、戒めのきつさからくる痛みに片目を歪めた。
「な、に、する・・・・ッ・・・・」
「・・・・悦くするから・・・・少しだけ」
我慢しろ、と後ろから情欲にまみれた声が降ってきて、
「ッ!! あ、うぁ、ああ・・・・・・ッッ!!」
突如、蓮自身が勢いよく押し入ってきた。
柔肉を割って侵入してくる強い刺激に、通常なら達してしまっているところだったのだけれど、きつく戒められていたそこは寸でのところで欲を吐き出すことは出来ず、ただ身の内に性感を暴れさせるだけで。
「こ・・・、殺すぞ・・・・っ、い・・・きなり何す・・・る・・・・っ・・・・!」
「悪・・・・かった」
できることなら今度こそ本気でこの薄ら馬鹿を殴ってやりたかったが、うつ伏せの、こんな体勢では何も出来やしない。
相応に蓮の息も荒くなっていたが、明智の方は半ば涙目で、正直、息をしてさえ性を感じ取ってしまうほど。 背後から鼓膜に届く蓮の吐息は低くて欲情しきっていて、それがゾクゾク腰にきて肌が粟立った。
そんな状態をわかっているのかわかっていないのか、構わず蓮は明智のそこを戒めたまま慎重に腰を使い出す。
「・・・・っく、・・・あッ・・・、あっ・・・」
先端が奥を突くたび、明智の口から声が零れ落ちる。
蓮は一度ぐるりと内部を掻き回して、それから探るような動きに変えた。
「っ・・・・ふ、うぁ・・・・っ、・・・・っ」
あからさまにポイントを探している動きに気が付き、明智が枕に爪を立てた瞬間、見つけられた箇所をぐいっと強く突き上げられて。
「あうッ!!」
刹那、意識が飛びそうになった。 それほど強烈な性感。
強すぎて、訳がわからなくなりそうなほどの快感が身体の中で渦巻き、精を放てないため閉じ込められる。
それが快楽なのか、責め苦なのか判断がつかない。
蓮は蓮で、自ら探し当てた前立腺へ先端を何度も擦り付けながら、
「・・・・此処、だろう? そんなに、イイ・・・・?」
「うぁッ、あっ、・・・・殺、す・・・・ッ、絶、対殺す・・・・ッ・・・・あ、あぁッ・・・・!!」
相当穏やかでない罵倒混じりの声さえ嬉しく聴きつつ、
ぬるぬると先端を使い、時折ぐいっと押し付けるように突く。
内側からの強すぎる性感からたまらず逃れようとする腰を強引に引き寄せ、更にぐりぐりとポイントを抉った。
「ひッ、――――――ッ!!」
蓮の手の中、性器が限界を訴えてビクビクと大きく脈打つ。
明智の弱いところを穿つたび、内壁はうねって蓮自身を締め付けてきた。
その強さと熱さに、蓮も耐えるしかない。
「や、め・・・・っ・・・・」
「・・・・・・もっと?」
「ああぁ・・・・ッ・・・・!」
意地悪くぐいぐい腰を押し付けると、明智が激しく身悶えた。 後背位ゆえ、残念なことにその表情は見られなかったが、あまりの乱れる様にゴクリと蓮の喉が鳴る。
もしかしたらこの後、本当に手を下されてしまうかもしれないが(・・・・) もういい、今夜は思いきり玩弄させてもらおうと思った。
細い腰を眺めおろしながら、根元を強く戒めたままで、もう片側の手を使い熱い肉棒を上下に扱く。
「、ッ・・・・!」
途端、明智の内部が更に収縮し、蓮も息を零した。
内側と外側とをしつこく同時に刺激され、明智が弾みで掴んだ枕に立てた爪が白くなるほど、かぶりを振って悶える。
「蓮っ・・・・、あっ、あぁ・・・・ッ、蓮・・・・っ・・・・!」
「・・・・ん」
たぶんもう名前を呼ぶことくらいしか出来なくなっているのだろう。
それくらい切羽詰まっている性器の、ぬめる先端を指の先でくるくる撫で回し、ぱんぱんに張ったそこを揉んでやる。 と、戒められた状態にも関わらず、僅かに白蜜がぴゅっと噴き出した。
「ひッ、い・・・・ッッ・・・・!!」
明智は逆にその僅かの解放が、つらくてつらくて。 寸止めの拷問に近い。
蓮が戒めていなければ、とっくに全て吐き出している。 長々と絶頂を無理に引き延ばされ、そろそろ本当に堪えきれなってきている全身が波打ちはじめた。
「も・・・・っ・・・・」
「・・・・あと少し」
「あっ、あ・・・・ッ・・・・!?」
この、深く繋がれる体勢だから届く奥の奥。 前立腺を掠めて一番奥まで自らを埋め込み、全部埋めたまま、小刻みに腰を使われた。
ベッドの軋みも激しくなり、合わせて押し寄せる性感と、吐き出せない甘い苦しみに、歯の音も合わなくなりそうだ。
「――――・・・・駄、目だ・・・・っ・・・、もう・・・・っ・・・・」
「イキたい?」
「ッ・・・・っあ・・・・っ・・・イ、き・・・・・っ・・・・!!」
絶頂の快楽を求めて、性感がそれを言わせた。
ようやく聞けたその言葉に、蓮は。
「・・・・・・ん」
心底嬉しそうに笑って、けれどその顔は誰にも見られないまま、腰を使った。
「ん、・・・・あ、あ・・・・ッ・・・・ッ・・・」
「・・・・離したくない。 ・・・・これからも」
「あっ、う・・・・ッあ、あぁ・・・・ッ!」
囁きは、与え続けられる快感に苛まれる明智の耳に届くことはなく、背中に落ちて消えた。
蓄積された甘く鋭い熱が、身体と、思考の全てを持っていく。
「〜〜〜〜〜イ、く・・・・っ、・・・・ッ、イく・・・・ッッ・・・・!!」
縋るような声。 ただ襲い来る絶頂に全身がビクビク痙攣し、汗が滴り落ちる。
蓮は自らも荒い息を繰り返しながら、明智の根元を抑えていた指を離し、先端へ向かって全て搾り出すかのように強く扱き上げた。
「ッ!! ア、あぁ・・・・ッ・・・・!!」
明智が震えながら、白濁を迸らせる。 と同時、内壁が強くうねって収縮を繰り返し、
「う・・・・く・・・・!!」
「、っっ―――!?、く・・・・は・・・・ッ・・・・!!」
やっと得られた吐精の真っ只中、内部、前立腺を乱暴に抉られた。
息が止まりそうな快楽に、肉棒は断続的に何度も精を噴く。
「・・・・ッ・・・、出る・・・・」
「ひ、ぅ・・・・・っ・・・」
続けて何度も内側を激しく突かれたあと、中で蓮が熱を放ったのが感じ取れた。
大量の熱いものが内部で弾けるその感覚に、頭の中が真っ白になる。
激しい絶頂感に襲われ、ようやく全てを吐き出した蓮が中から引き抜かれたときには、
明智は顔すら上げる気力も体力も失い、強すぎた絶頂の余韻に息も絶え絶えだった。





















ここに来てやたら暴走してしまったアフターフォローはどうしたらいい、と自業自得ながら蓮は反省の意を示す。
とは言え、枕に顔を埋めたまま、ぐったりして動かない明智に冷えないよう毛布をかけてやることくらいしか出来なかったが。(とりあえず風邪をひかないよう、自分は服を着ておいた)
軋ませ過ぎて、もしかしたらどこかにヒビでも入ってしまっているかもしれないベッドに腰かけ、まどろんでいるのかただ黙って伏せているだけなのか傍目には判別がつかないでいながら、淡い色をした髪に意味もなく手を伸ばしてみる。 すると。
「・・・・起きてる」
微妙に不機嫌成分が混じった声が返ってきた。 「やらかしてスミマセン」 とここは素直に謝っておいて。 手に触れるやわらかな髪を何度か梳いた。 自分の髪とはまるで違う質感。 手ざわりが心地よい。
明智は別段それを止めることもせず、
そして好き勝手やらかしてしまった蓮に文句をぶつけることもなく、尚且つ手を下そうとする様子もなく(・・・・)、僅かに顔をこちらに向けてきた。 そうして。
「意地の悪いこと聞くけど。 さっきみたいな様子で、明日・・・・っていうかもう今日か。 乗り切れる?」
ああ本当に意地が悪い。 性悪すぎる。 どうせ言うなら、いつもの揶揄めいた口調で嫌味混じりで言って欲しかったのに、どうしてこんな。 静かに淡々と聞いてくるんだ。
「大丈夫だ」
平静を装ってそう答える。 そうするしかない。 なのに。
「嘘が下手すぎる。 今にも泣きそうな顔してるくせに」
そう言って明智は半分ほど身体を起こした。 自然と蓮の手が髪から離れる。
「・・・・・・っ、」
途端、一気に体温が奪われていくような錯覚に陥った。
自分たちの意と我を通せば明日からは、おそらくもう二度とこの髪に触れることも、同じ時間を過ごすことも無いのだという実感と、凄まじいほどの絶望感が襲ってきて無意識に息をのむ。
一度目の、あのときの喪失感より余程大きいそれに、蓮がただ黙りこくっていると。
明智は小さく溜め息をついて、
「ちょっとこっち」
軽い手招き。 これ以上近付いたら、また身体ごと重なってしまいそうだ。 が、構わずまた体重を受けミシリと音を立てた古ベッドの上、彼の命令に従って身を乗り上げる。 と。
「ッ!!?」
先程までのぐったり感は何処へ、と見まがうほどの敏捷さと手荒さをもって延びてきた腕に後頭部、髪を乱暴につかまれて引き寄せられ、蓮は体勢を崩す。
ベッドに、というか毛布と明智の上に倒れ込んだところを首筋に口許を埋められた。
そして長く、思いきり長くきつく吸われたあと、ゆっくり静かに口唇が離れていく。
先程の意趣返しで、このまま頸動脈を喰いちぎられるのではないかとゾクゾクしたほど、痛みを伴って強く赤く長く刻み付けられたキスマーク。
自分では当然見えなかったが、首筋にくっきり鮮明に浮かんでいるであろうそれに、ほとんど無意識にそっと触れると。
「ジョーカーの襟は立ち襟だろ。 見えやしないよ」
明智はそう言い、続けて。
「最後まで君は僕の好むタイプじゃなかったけど」
また言われてしまった。 こんなとき、一体どんな表情をすればいいのか蓮はわからない。
「まあ、それほど悪くはなかったかな」
わからない自分に、彼は小さく笑った。
「大好きだよ蓮。 こうやって最後に呪いの言葉を吐いておけば、君にとってずっと消えない傷になるだろう?」
酷い言葉を紡ぐ一方で、その笑顔と口調はどこまでも穏やかで、出逢った最初の頃に浮かべていたそれと酷似、でも決定的に何かが違っていて、望めば明日以降も確実に存在するのだと錯覚してしまう。 なのに。
「一時間だけ眠らせてもらうよ。 そうしたら、帰る」
「・・・・・・ああ、おやすみ」
最後の夜でさえ身勝手にくるりと背を向け、明智は毛布をかぶって一人、眠ってしまった。




























一階にひとり降り、鏡を覗いて、首筋のキスマークを確認してみる。
これはあと何日くらい残っているものなのか、と蓮は漠然と思いかけ、意味のないことだとすぐに気づいた。
自らの顔を眺める。 酷い表情をしていた。 仮面がなければ所詮、こんなものだ。
あらためて数時間前の、丸喜との対話が頭の中で繰り返される。
明日になったら、自分たちの意を通しきってしまえばいなくなってしまうなんて、本人もずっと一言も言わなかった。 どうして。 何故。 なりふり構わず問い詰め咎めたかったけれど。
考えるまでもなく明智の性格上性質上、そうしたところで意志を曲げるわけもなく蓮は何も言えないまま終わったあのとき。
見限られるのが嫌で、彼の我を通してみせてやることが自分に出来うるたったひとつのことで、
彼の為に全てを変える決断さえ出来なかった自分と丸喜、偽善と独善との境は何処にあるんだろう。
一体どこに違いがあるっていうんだろう。
考えてもわからない。 でも。
先程の明智の言葉で、踏み切れた。
彼はそう言ったけれど、蓮にとって、それは呪いの言葉には到底なりえない。
離れず済むのなら、消えずにいてくれるのなら、なんだっていい。 どんな世界だって、いずれいつか歪みとひずみが出てこようと、誰の手のひらの上だろうと構わない。
そもそも怪盗団の本懐は獅童を倒した時点で果たした。
周りはみんな幸せそうにしている。 元々の世界より、よほど。
丸喜は良いひとで、何も間違っちゃいない。 最後の最後までこちらのことも思慮深慮してくれていた。
たとえその選択自体が間違いだったとしても、失うのはもう嫌だった。
蓮はスマホを手にする。
このまま夜が明けてしまえば、おそらく自分は明智を失うだけでなく、丸喜が今まで懸命に積み上げてきたもの、全てを奪ってしまう。
誰かから大切なものを奪い取るのも嫌になっていた。 気付かせてくれたのは誰でもない、丸喜だ。
その当人に、自分でも意外なほど自然に電話をかけられた。
一度目のコールが半分も終わらないうち、
『はい、丸喜です』
まるでかかってくることがわかっていたかのように繋がって、
蓮は何故かとてもとても安心したことを後になってからも覚えている。
そうして丸喜に全て伝えて告げ終えると、電話の向こうの恩師はいつも通りのあの口調で、申し訳なさそうに。
『悪かったね。 最終的に、利用したみたいになってしまったね』
「・・・・いや」
互いに主語は無く。 そして丸喜が謝る必要なんて皆無なのだ。 利用したのはこっちだ。 だって失うわけにはいかなかった。 消えてほしくなかった。 渡りに船、ただそれだけのこと。
ぼんやりそう思っていたら、
『何も心配しないで、君も眠ればいい。 明日になったら、また普通の一日が始まるから』
「はい」
ありがとう、と言って通話を終えようとしたら、『こちらこそ、ありがとうね』 と言われて切れた。
首筋の、刻まれた赤黒い跡を撫でながら蓮はもう一度鏡に映った自分を眺める。
隠すことはない。 もうあのスーツを纏うことは無い。 ジョーカーと呼ばれることも無い。
行く末を決定したら、急に眠気が襲ってきた。 ついでに火の気の無いルブラン一階はとても寒い。
眠ろう。 自室に戻って、古いベッドの彼の隣に潜り込もう。
そういえば自分の部屋で一緒に眠るのは初めてのことだ。 「狭い」 と怒られなければいいなと思いながら、蓮は再び階段を上った。








眠り込んでいる明智を起こさないよう、そうっと横に入り込む。
相変わらず背中は向けられたままで、仕方がないから背中越し、腕を回して抱きしめてみた。
それでも彼は目を覚まさない。 余程深く眠っているようだ。 温かい。
この感情は一過性のものだと明智は最初に口にしたけれど、
違う。 この感情は生涯を変える。 それどころか世界まで変質させてしまう。
それでもいい。
「俺のものだ」
彼のうなじに鼻先を埋め、密着しながら蓮はつぶやく。 渡さない。 悪神にもシャドウにも世界にも。
ジョーカーが私欲にまみれて最後に盗んだものが、あるべき世界の下手人の罪人で裏切り者だなんて最高に皮肉だな、と少しだけ、口許を歪めて笑った。
















【 3月 CFY 】 に、続きます






個人的には丸喜エンドが大好きであります。 優しい世界・・・・。
それにしても鳴上悠といい雨宮蓮といい、どうしてうちの主人公はこんなにキモチ悪くなるのか。
次の五つめでラストです!


・・・・・・精液でぐちゃぐちゃのベッドでよく眠れるなあこの子たち、と自分で先に突っ込んでおく!