[ Wait! ]


※すでにデキてる設定&何故だかわからんが鮫は三十路バージョンで、
しかし山本氏は中坊設定で今のところ互いの身辺も割合と平和です。
 ・・・・・・といったご都合主義極まりない前提でお読みください。
だからなんで彼が一人日本にいるのよ??? とかなんで時間軸がこんなにも違うのよ???
とかいうアレコレはオールスルーの方向で宜しくお願いします






―――――― 思い出すと、第一印象はサイアクだった。









―――――― 二度目にまみえた時は、途中で邪魔が入った。









―――――― 三度目の時は、四の五の言ってられないくらいの斬り合いをした。 (マジでやっちまったと思った)












なのに今、同じ場所に居る。






























「スクアーロってさ」
「・・・・あ゛?」




「・・・・・・・・」






思っていたよりも、慣れればこの男は結構面倒見が良い。









取り立てて何事もなく終わりそうだった休日の、このままでは何事もないまま夜を迎えて終わってしまいそうだった夕刻、
「なんだか肩の調子と刀の握りの具合が悪い気がするから診てくれ/見てくれよ」 と嘘八百を並べて無理前提だとわかりつつも無謀にも彼を自室に呼び出してみれば、
案の定 「あ゛ぁ!?」 と携帯の向こう側で面倒そうな声をあげられたものの、
結果からしてみれば数十分後 「オレぁ日本刀の柄なんかサッパリわからねぇぞぉ」 とか何とか言いながらもひょっこり現れ窓の外から侵入、
(山本としては玄関から普通に入って上がってくればいいと思っているのだが)
その後適当に 「握りは締め直したらなんとかなった」 とかなんとか軽く誤魔化して流してその話題と呼びつけた理由付けのひとつを終わらせると、
拾い上げた雑誌のページを物珍しそうにパラパラと繰っているスクアーロをまじまじ凝視しながら座り込んだ座布団の上、山本は言いかけたその言葉を飲み込んだ。
「・・・・・・、」
「何だぁ」
言いかけて、途中でやめた山本に対し彼はページを繰る手を止め、
その長髪を微かに揺らし同じ色の眼で、訝しそうな視線を向けてくる。
「・・・・・・、」
「あぁ?」
そんな不審気なカオをした年上のヴァリアーに対し、でもまさか面と向かって 『あんたって面倒見バツグンだよなあ』 なんて言えなくて、
ええと、そのな、と口籠もった後、咄嗟に山本から出てきた言葉が。




「・・・・オレのコト、大好きだよな」
「あ゛ァ゛!!?」




途端、言われた三十路の銀髪ロン毛イタリアン(・・・・) は雑誌を放り出し、その眉を吊り上げた。
「フザけたことぬかすんじゃねぇぇ!!!!」
今にも唾が飛んで来そうな剣幕でがなり立ててくる。
が、山本としては、言い訳に選んだにしてもあながち間違っているとは思わない。
何故って、
もうとっくに(?) そんな仲(どんな仲だと聞かれればはっきり 『エッチしたよなオレ達』 と旨を張れる既成事実はあるわけで) ではあるし、
パッと見、一概にはなかなか見て取れないことではあるのだけれども、実は何気に、実は実は実際のところ、
この男はイタリアンのくせ意外にも、そういったストレートな物言いを相手からされることに慣れていないのだ。 特に惚れた腫れただのの話題においては。
「だって本当のことだろ? 呼んだらこうやってすぐ来てくれるしさ」
だから意識して、冷やかす口調で言ってやる。
「・・・・てめェ・・・・!」
「図星だろ?」
「このクソガキがぁ・・・・!」
「まあ三十過ぎからしてみたら、確かにガキだよな、オレ」
山本当人からしてみれば、笑いながらの自分の物言いにスクアーロがますます勢いと声を荒げ、
勢いついでに片膝を立て、ずいっと詰め寄ってくるまでは予測も予想も出来ていたのだけれど。





「ッ!!?」




まさか、まさかこんな他愛無いやり取りで、(いくら短気でやたら手が早いとはいえ、)
いきなり鉄拳・・・・・否、蹴りが来るとは思わなかった。




完全に意表を突かれ、避ける間も余裕もなく。




「い・・・ッて・・・・!!」




蹴りは見事に上胸部にクリティカルヒット、衝撃と痛みに一瞬、息が詰まる。




「な・・・・んだよッ!」
蹴られた反動で、壁に肩口をぶつけ、たまらずげほげほ咳き込みながら暴挙に文句を言いかける山本に対し、
加害者であるスクアーロ当人は、フンと鼻先で見下して。
「くだらねーコト四の五の言ってるからだこの馬鹿が」
それに少し軽く蹴っただけだろーがぁ、この程度で大袈裟に騒ぐんじゃねーよ、と事もなく言ってくるけれど、
戦闘態勢モード、所謂そんな状態のときであるならばともかく、今ここは山本家で自分の部屋で、
自分的にも雨の守護者モードではなく単なる一個人としての山本武でいたのであって、だから思いっきり油断していた。 というか半端なく気を抜いていた。
そこに不意をつかれた攻撃(?) を受け、ましてやその相手が加減というものを昔から知らないスクアーロときたら。
「やっべ・・・肩・・・・」
直接蹴られた上胸部分に直に響いてくる痛みに加え、壁に激突した左肩が強く痛む。
嘘から出た真と表現するには少しばかり大袈裟だが、肩口と、そして強く激突した壁が凹んでいないか破損していないか、僅かばかり眉を顰めたら。
「いちいち大袈裟なんだぁ、てめーは」
加害者であるスクアーロは飄々と心配の欠片も微塵もなくて、
先にこの事態の種を撒くきっかけを作ってしまったのは自分だとわかっていても、さすがに山本としても理不尽だと思ってしまう。
「・・・・・もっと優しくしてくれって・・・・」
つい、本音が出た。
「こういう愛情表現もキライじゃないけどな」
あんたに [殴ってもらえる/蹴り飛ばしてもらえる] 距離でいられることはスッゲー嬉しいし、と続く本音の第二弾。
基本、SでもMでもないニュートラルでいるつもりなんだけどさ、
あんた相手だけだともしかしたら俺って超マゾかも困ったな、とあまり困ってない顔で笑ってみると、スクアーロはあからさまに大きな溜息をついた。
そんな嘆息にさえ、山本は嬉しそうに見蕩れてしまう。






一方、盛大についた自分の溜息までもに嬉しそうにしてくる年下の日本人のガキを相手に、スクアーロは二の句が告げなくなる。
こういうのを日本の慣用句で暖簾に腕押し、糠にクギって云うんだよなぁぁぁところで糠って何だぁぁぁ??? 暖簾は確かコイツんとこの店にかかってたアレだよなぁアレ、などと全くどうでもいいようなことを頭の半分で考えつつ、
いまだ左肩を右手で抑え続けている山本を上から見おろし、
「マジ、イカれたかぁ?」
うぉぉぃ本当にそこまでヤワだったなら見限んぞ、と厳しく釘を刺しながらも。
「見せてみろ一応」
長い髪を揺らして膝を付き、腰を屈めて左肩を抑える右手を外させてみたところ、その後、間髪入れず、何を考えたのか山本は自分でバサバサとシャツを脱ぎ始めた。
「???」
別に脱がなくとも服の上から触ってみりゃわかるコトだろーがぁ、と呆気に取られるスクアーロを意に介せず、
すっかり上半身裸になった山本は、「ほら脱いだからよく診てくれよ」 とずいっと迫ってくる。
「はぁ?」
何やってんだガキ、と不思議に思った途端、
更にずずいっと詰め寄られ、真正面に楽しげなカオ。
「山本?」
スクアーロは、どうにも山本の意図と思惑がわからない。
元々、(表面上はどうあれ) 腹の中では何を考えているのか最初からよくわからない男であることもあって、
思わず素で、思いっきりアタマとカオとにクエスチョンマークを浮かべまくりでその黒い瞳を見つめ返してしまったところで。




「な゛・・・・ッ・・・!」
完全完璧に、スクアーロの意表を突いてきた山本の次の行動。
限界まで距離が縮まった次の瞬間、素早く体勢を崩され、腰を付いたと同時に前傾姿勢、完全に身体の上に乗り上がられて身動きを取るのが難しくなる。
「何、考えてやがるッ・・・!」
「だから肩、診てくれって」
飄々ととぼけているけれど、その楽しそう嬉しそう、そしてその気まんまんのその表情からはどうしたってSEX目的以外の意図は窺えない。
テメぇぇぇ、と低く唸ってやれば、
「好きなんだ」
今更も今更、あまりに今更で、もう何度目何十度目何百度目だそりゃあ、というほどの回数になっているはず(十年後からしてみればもしかしたら何千回、になっているかもしれない) の告白を受けた。
「だから何だぁぁ!!?」
往生際悪く叫んでみても、夢中になっている山本に対しては一ミリたりとも抑制にはならなくて。
「好きなんだよ、こうやって近くに居るだけで眩暈がしそうでぶっ倒れそうなくらいヤバイ。 だから何とかしてくれ」
「〜〜〜〜〜〜〜!! 肩はどうしたぁ!!」
「大丈夫。 そんなヤワじゃねーし」
ウソついてゴメン、と苦笑されて謝られたけれど、最初からはじめからそんなことくらいわかりきっている。
抱かせてやるのは簡単だ。
互いに初めてでも何でもないし、今日はまた別だがその気になったときは問題なく躊躇いなくやらせてやっている日々でもあるし。
だがしかし、スクアーロとしてもこのまま子供の勢いとワガママとに押され、本日も簡単に流されてしまって良いのかどうか、躊躇せざるをえない。
「・・・・・・わかってんだ自分でも。 自分でもさ、変になるほどココロの中はグチャグチャで、混沌としてて」
「そうだよなぁ。 やたら欲しがりやがるクセに、踏み込まれるのは拒絶しやがるよなぁぁ」
「―――――― やべ、バレてた?」
言ってやれば、悪気もなくあっさり認めて山本は笑う。
黒い髪と黒い瞳。 それと同じ、日本にしか無いツヤ消しの黒。 光沢の無い鈍い黒色。
どれだけ取り繕ってみても多分それがこのガキの中身。
だから構ってやった。
だから懐かせてやった。
結果そうして、スクアーロ自体、どうすれば良いのかわからなくなった。 だからそのままにした。 ある意味放り投げたと捉えてもいい。 それは未来、コイツが二十代になっても変わらない。
でも確固としてわかっていることもあって、
「けどな、お前のことが死ぬほど好きなことだけは、絶対なんだ」
「・・・・チッ」
軽く舌打ちをして、捻りも何もない古臭すぎる台詞に年上の男はあっさり諦める。




―――――― 、今更だ。














「・・・・っ・・」
懸命に、いろいろ奪おうとしているかのような舌が口腔をかき回す。
巧くはない。 が、かと言ってそこまで下手でもない山本のキスはいつもその都度長いものになって、
一度捕らえられた舌はなかなか放されることがなかった。 ちなみにそんなキスの仕方を1から教え込んだのはスクアーロなのだけれど。
「っ・・・・は、・・・ッ・・・」
唇を合わせ、絡め取られた舌を何度も何度も吸わせてやっているうちに、彼の息が少しずつ荒くなっていくのがわかる。
「なに一人でやたら興奮してやがんだぁ」
息継ぎを繰り返すたび、みるみるうち情欲を滲ませていく子供の様子に半分呆れ、半分満足して、
自らバサリと上着を脱ぎ落とし、ニヤリと口許を上げた。
そして遅まきながら、そういや時間はあんまりねェぞぉ、と一応声をかける。
「え、なんで?」
突然のタイムリミット宣告に目を丸くする山本に、
「そうそうヒマじゃねーんだぁ、こっちも」
言外で 『仕事が立て込んでんだ察知しやがれ』、と表わしてみれば、
「・・・・また、暗殺か?」
軽く眉を顰めてくる。
「仕事って言え」
「今日のあんたは血のニオイがしねーと思ってたけど、そっか、これからそれが控えてたんだな」
あからさまに自嘲気味、目に見えて肩を落とされても大した痛痒は感じない。 むしろ鼻で笑ってやりたいくらいだ。 だからそうしてやった。
「―――― フン。 なぁにぬかしてやがる。 自分のニオイにも気づいてねーのか」
「?」
「それとももうマヒしちまってんのかぁ? てめーからもオレと全く同じニオイがするぜぇ」
乾いた鉄サビと、湿った蛋白質の赤黒い血の匂い。 ところどころは自らの、そして大部分は他人の。
すると山本は更に消沈するかと思いきや、
「・・・・それなら、いーや」
僅かばかり考えた後、にぱっと笑って、そして。
「血も含めて、総じて体液のニオイとかわりかしスキなんだ、オレ」
う゛ぉぉいそれってどーなんだぁ情操に問題アリじゃねーのかてめーは、と思いつつもそれ以上の余計な詮索も問いかけもせず、スクアーロは聞き流し、
キスと同じく自分が最初から教え込んだSEX、山本の御奉仕に没頭することにした。


















ごくごく一般的な日本人の一般的な家屋、その中のコイツの狭い部屋。
確かにそこに自分が居るのを確かめるような、いろいろな箇所にいろいろなキスを落としてくる山本の愛撫を受けながら、ぼんやりとスクアーロは天井を仰ぎ見る。
寝具も使わず、ただ床の上で展開されていく情事というのも時には構わない。
身体はきっちり反応している。 それは生きている証拠で。
くっきり浮き出た鎖骨に吸い付かれ、すっ・・・・、と首筋を通って耳朶に唇が這わされれば、
「ッ・・・・、」
きちんと刺激に対して応え、噛み殺せない吐息が漏れた。 そして山本が耳朶から再び首筋に唇を移動させ、ほんのり跡が残る程度に軽く肌を吸い上げ啄ばんでくるだけで、
情欲に赤く染まった目じりが色っぽさを増していく。
「やべーって・・・・、マジで」
そんなスクアーロの姿に、無意識のうちに山本武、そう呟いていた。
何度抱かせてもらっても、慣れない。
醒めるということがない。 いつだってみっともないほど興奮してしまう。 いつだって余裕なんか見せられない。 これが歳の差というものなのか、それとも絶対的な経験値の差なのか。
よくわからない。 だから夢中になるしかない。 目の前のカラダに。
「ヤバイ、よなあ」
呟きながら唐突に、胸の飾りを摘まみ上げられ、スクアーロの身体が僅かに跳ねた。
「・・・・ッ、何がだ、ぁ?」
「ん・・・・いろいろ」
あんたもオレもさ、と山本は曖昧に答えておいて、眼を細める。
そうして、極めて敏感だとついこの前知った、彼の左側、心臓のある方の飾りを指の先で捏ね回していく。
一方でスクアーロは、自分の胸を懸命に弄り倒そうとしているガキに嘆息し、目を閉じた。
視界が閉じた分、触れられている胸元の神経が一層鋭敏になる。
そうやってしばらくは、夢中になった山本から与えられる胸への愛撫を味わっていたスクアーロだったのだが。
「う、あッ!」
唐突に反対側の飾りにちゅっと吸い付かれ、たまらず腰が大きく震えた。
併せてさらりと流れる銀の長髪。
そーゆートコもキレイすぎるよなあ、と感嘆しつつ山本は満足気に見つめ、続けて舌先でぺろりと何度も舐め上げた。
「・・・・っ・・・ッ!」
山本の舌先が、ぷくりと尖った飾りを突付いて戯れるたび、しなやかな背中が少しずつ仰け反っていく。
スクアーロにそんな気があるのかどうかはわからないのだけれど、その体勢だけはせがむように胸元を差し出す形になってきていて、
その艶姿は、図らずともまるで更に急かされているかに見えて。
「く・・・・・」
唇を噛み締めはじめたスクアーロの、銀髪が少しずつ揺れ動く。
ちゃんと感じてくれてんだ、と嬉しい山本は、それを再確認してみたくてずっと唇から放さないでいた飾りを甘噛みしてみると、グイと軽く後頭部を小突かれた。
もちろんそれは痛くもなんともなくて、それ以上山本は気にすることをせず、そのまま胸への丹念な愛撫を続行させた。
「山、・・・・ッ」
スクアーロは、今日に限ってやたらしつこい胸への愛撫刺激に身を捩らせ始める。
SEXのハウツーを教えたのは確かに自分だ。(しかしそれもあまりにもしつこくアタック、しつこくしつこく告白されて請われたからで)
そこのところは確かに間違いない、間違っちゃいないのだけれど、時折あまりに偏執的な一片を垣間見せることのある山本は今回それを思いきり発揮、
加えて幸か不幸か愛撫もなかなか巧みで、
「ッく・・・・ぅ・・・・ッ・・・」
吸い付いた先端のみをきつく吸い上げてきたかと思うと、即座に舌先でそろりと舐め上げられ、
ただでさえも過敏な部位へ与えられる刺激から生まれる熱と欲は、そのまま下肢に沈み込んで腰の奥と中心へ熱く重く蓄積していく。
「・・・っ、や・・・めやが・・・・」
溜まった熱に、制止の声も途切れ途切れになる。
だがしかし、何だかやたら夢中になってしまった山本は無視を決め込むつもりなのか、
それを行動で表わすよう、
口付けて弄んでいたのとは反対の、左側の飾りをずっと転がしていた指を無造作に肌の上を滑らせ、
脇腹を通って辿り着いた下半身を手のひらで撫で、そっと擦り上げた。
「ッあ・・・・!!」
すでに反応を見せ、硬くなっていたスクアーロ自身を数回、往復して撫でさすり、
「ホント、三十過ぎには見えねーよな・・・・」
ダブルスコア以上年上の相手に惚れ惚れしてしまう。
ただでさえも好きで好きで仕方なくてたまらないのに、そんな相手が自分の愛撫で息を弾ませてくれていたりしたら。
「色気とか、すげーし」
感嘆混じりに呟かれても、当のスクアーロとしてみたらそれこそ 『何ぬかしてやがんだぁんなコトどーだってイイだろーがぁぁぁ』 と怒鳴りつけてやりたいレベルで。
軽く自らを握り込んだ山本の手のひらが上下するだけで、スクアーロ自身はひくひく脈打ちながら確実に質量を増していく。
「・・・・、・・・ぅ、ッ・・・!」
絶え間のない快楽がじわじわとせり上がって腰を震わせ、堪えきれない先端からは先走りの潤いが姿を現し始めた。
「あ」
「ぅあ!」
途端、察知した山本にその先端に溜まった蜜液を指先で拭い取られるようにして触れられ、
それをきっかけにしたかの如く、尚も勢いをつけて滴り落ちる透明な蜜は、そこに添えられた山本の指と手を濡らして卑猥な音を立て始める。
細身の柳腰。 しかし均整が取れていて瑞々しい身体に絡むしなやかな髪、快楽のためか心持ち寄せられた眉。
彼を構成する全ての部分が艶めいてなまめかしくて、でもそんな表現方法を伝えてもたぶん彼に怒られるだけで、結局。
「エロ過ぎ、ってことで」
余計怒られそうな単語しか出て来ず、だから怒られる前にしつこくしつこくしつこくしつこく、またもやまたもや胸の飾りに吸い付いた。
「〜〜〜〜〜ッッ!!」
あまりに粘着質な胸への執着に、スクアーロの身体が跳ね上がる。
同時に山本は、手の内の濡れ落ちるスクアーロ自身を包み込みつつ刺激しながら、
限界まで赤みと硬さを増した飾りを、尖らせた舌先で嬲りあげた。
小さい突起を、ころころ転がしながら押し潰すたび、ひくひく敏感に手の中の肉棒が反応する。
その律儀な反応が、ふと山本の興味心と探究心を煽って。
「・・・・ここ、だけでイケたりしちまう?」
「あ゛ぁ!!?」
荒い息の中、ギリッと睨み付けられてしまったけれど思いついたら即実行。 だって次がいつ来るかわからない。 いつ会えるかも定かじゃない。
また会えたとしても、こんなふうに触れさせてもらえるかどうかは彼次第で、つまり山本の立場とすれば、『抱かせて貰っている』 のだ。
「・・・っん、なワケ、あるかぁ・・・・っ・・・・」
胸元でしゃべられる息遣いさえ、敏感に高まっている身体は感覚として受け取ってしまってスクアーロは否定するのだけれど、
山本は「でもやってみなきゃわかんねーだろ」 と、今度は腕を伸ばしてスクアーロの背に片腕を回し捕まえて、これ以上ないほどに時間をかけ、突起を攻め続けた。
「イッてくれたら、嬉しーんだけどな」
「ぅ――ッ・・・・!!」
嬉しそうだがどこか煽ってくるような物言いと、直後にきゅうっと強く吸い上げられる。
過敏な両方の突起は、じくじく蓄積する甘い痺れと痛みにも似た快感を与えられていくのに、実際に熱を湛えて膨れ上がっている下腹には、
包み込むだけ、もしくは摩り上げるだけの感覚しか山本は送って来ず、
そろそろ限界近くなってきた腰が、もどかしい疼きに揺らめき出した。
「く・・・・!」
握り込んでいる手の内の熱が、俄かに高まり出したのを感じて山本は宥めるよう、かすかに上下させる。
と、
「はッ・・・・っ・・・あ・・・・」
望んでいた中心への愛撫に、思わず漏れてしまったのだろう甘い声。 こんなの、滅多に聞けるものじゃない。
そんなスクアーロをチラリと上目遣いで確認して、尚も山本は口中の蕩けるような尖った粒を舌先で舐め回す。
「・・・・ッ・・・!」
抱き寄せて固定した身体が戦慄くのが楽しくて、普段では通常では絶対に聞くことのできない、甘く濡れた声を出させようとココロを決めて、更にその部位を追い詰めて。
「・・・・ッ・・・・くっ・・・・・!」
スクアーロはきつく唇を噛み締める。
決定的な刺激の足りない、胸への悪戯にも似た愛撫であるのにも関わらず、
それでも長時間攻め続けられているために身体は確実に追い上げられ、追い詰められていくのを感じた。
自分の口から零れるせわしない吐息の熱さにも、限界近いことが現れていて。
合わせて山本の手の内に収められている自身まで、胸への刺激に連動し、ビクビク断続的に痙攣し始めた。
気づけば先端から零れ続けている蜜液はもう山本の手を滴り落ちるほど。
「てめ・・・ッ、・・・・や、め・・・・・ッ・・・」
あともう少しで、このままでは本当にあと僅かで、
信じられないことに胸への愛撫刺激、それだけで絶頂を迎えてしまいそうで、
しかしまさかそんなことだけは認めたくないスクアーロは、力ずくでも山本を引き剥がそうとその手を何とか眼前の肩にかけ、ぐ・・・・、と必死で力を込めたのだが。
ここまで来てそりゃねーだろ、と山本の愛撫はそんなことで中断されるはずもなく、
あんたにしちゃ往生際が悪いぜ、と言わんばかり。


少々強めに歯を使って、かりっ、と真っ赤に熟れきっていた飾りを齧られて。


一際強く与えられた最後の刺激に、充分すぎるほど高まりきっていた身体は耐え切れない。
胸を伝った電流のような快感が自身に直結し、スクアーロはたまらず大きく腰を震わせた。


「ッ!! ―――っ・・・・ッ・・・!!」


吐き出されていく白い蜜。
それは勢いよく山本の手に叩き付けられ、収まりきらなかった分はスクアーロ本人の下腹部にも僅かに飛び散って、滴った。











「――――っは、・・・ッ・・・!」
吐精直後、身体を駆け抜け巡っている余韻にスクアーロの胸元がヒクリと震える。
そこに息づく飾りは散々弄られ弄ばれたゆえ、真っ赤に色付き熟れきって唾液に濡れ、
達した後も、甘い余韻に未だ痺れていて。
「マジ、イっちまえたのか・・・・」
まさかとは思ってたけど、の前提でありながら、今更も今更な山本の驚嘆・感嘆混じりの言葉に。
「山本ぉ・・・・」
スクアーロがぼんやりと見上げてきた・・・・・、と思った瞬間。




「ばッ・・・・!」
「ば?」




その髪を振り乱して、




こめかみに青スジもくっきり浮き立たせて、




「馬ッッッッ鹿・・・・カス野郎がぁぁぁ・・・・ッッ!!」




スクアーロ、怒る。 とにかく怒り狂う。




「なんで普通にやらねぇぇぇ!!!?」
「そう・・・・言われてもな・・・」
いきり立つスクアーロとは対照的に、ただなんとなく、と山本はぽりぽり人差し指で頭をかいて。
なんでと聞かれたところで、そりゃ面白そうだったから、だなんて本当のことは言えない。 絶対言えるワケがない。
正直に言ってしまったら最後、たぶん怒り狂われて怒鳴り散らされて、ヘソを曲げて(こんな途中で!) 帰られてしまうかもしれず、また色々面倒なことになってしまいそうだし。
「悪い悪い、つい・・・・な」
「つい、で済むかぁ゛ぁ゛!!」
「そう言うなって」
「・・・・・ッ・・・・」




怒鳴りつけても山本は大して悪びれた様子もない。
それでもまあ、




・・・・・・・簡単に認めてやりたくはないけれど、
回数を重ねるごとに確かに山本の愛撫は巧みさを増してきていて、それは自分の身体が一番よくわかっていて、
つまり。




オレは怒ってるんだぜぇぇぇ悪いのはてめーなんだからなあ゛あ゛あ゛、と、表向きはどこまでも眉間の縦ジワを保ちながら寄せながら、
しかし真っ直ぐ正面から、思いきり強く山本を見据えてやる。




「う゛ぉぉい」
「・・・・?」
「これから少しの間、オレに触るの禁止だぁ」
「へ?」
「・・・・教えてねーやり方まで、勝手に暴走した罰だぁ。 しばらく一人で見てやがれ」




まだ息は治まりきっていないものの、不敵な笑みを浮かべそう告げるスクアーロ。
「何・・・・?」
突然言われても現状を機知できない山本が、さっぱりわからず首を傾げたら。
「おあずけ、って言ってんだ」
そのまま10センチでも動きやがったら殺すぞカスガキ、と釘を刺されて直後、はらりと銀髪が波打って揺れたと同時。
膝を付き前傾姿勢になったスクアーロの腕が動き、その手の先は腰を通過して彼自らの最奥に滑り込んで行く。
「ッ・・・・」
思わず息をのむ山本に、彼は自らの後ろを、自分で解しはじめて。
長い指先。
まだ何の受け入れの準備も出来ていないことはスクアーロ自らもよくわかっている。 だからその部位を指の腹で何度も何度も行き来し刺激を与えたあと、
つい先刻、自分が放った白蜜を腹からそこから掬い取り、程よく潤った潤滑を助けとして、まず人差し指を一本、ゆっくり進入させた。
決して細くはない指に、そこは固く窄まって進攻を妨げてくるが、自分の身体だ。
宥めるかのよう、もう片方の手で前の中心部を繰り返し刺激していけば、ぞくりと背筋が震え上がる。
「は・・・・っ・・・」
軽い自慰により、わずかに緩められた最奥に向け、スクアーロは深く自らの指を埋め進めた。
「ス・・・・スクアーロ・・・・、」
その行為と姿に、山本がごくりと喉を鳴らすが、無視をする。
正直、自分で触れることはほぼ皆無なのだが、思っていたより簡単だった。
固かった入り口とは違い、奥まった内部は蕩けるように柔らかい。 そして痛みもほとんど無い。
スクアーロは指に絡み付いてくる自分の内壁の熱を感じながら、埋め込んだ指を休む間もなく蠢かせ、慣らし始めた。
「ぅ・・・・ッ・・・・」
深く柔らかな場所を指が蹂躙していくたび、たまらない吐息が口から零れる。
その間にも、たまらず視線が外せなくなってしまって自分を凝視、あわよくば今にも手を伸ばしてきそうな山本に 「まだ御預けだぁ」 と一喝、
お触り禁止、とまだまだ制止しておくことも忘れない。
そして、程々に内壁をやわらかく解したあと、すうっと一度息を吐いてから、その部位、そのポイントに指を定めた。
「ぅく・・・・ッ・・・!」
的確に突き上げた指。 堪えきれず声が漏れる。
内部の中でも、快感と刺激とを全て感じ取ってしまう神経ばかりが集まったそこ、弱い箇所を自ら突付き、指の腹で撫で上げるたび、
直接自分で与える快感に、首を振って悶えざるを得ない。
「・・・・ッあ、ぅ、あ・・・・ッ・・・!」
快楽に身体が戦慄いて、震える。
山本を目の前にしての見せ付ける自慰行為に、後ろは加速をつけ、みるみるうち解されていく。
内壁が締め付けてくる力を僅かに失い、スクアーロは埋める指をもう一本増やして続けた。
そして三本目、最奥は、くぷりとそれも飲み込んで、
三本の指に絡み付いて柔らかく蠕動する。
「っ・・・はッ・・・・」
零れる吐息。
瞬間、行為を続けながらも意識して継続していた山本への牽制が一瞬、途切れた。
それは本当に一瞬、それだけのことだったのに。




「悪ぃ・・・・ッ、後でぶん殴ってくれていーからさ・・・・!」




『御預け』 の、限界ぶち切れた山本の切羽詰った声が鼓膜に届いた刹那、
勢いよく体勢と態勢とを崩され、片脚を抱え上げられた直後。




「な゛・・・・っ・・・!」
目を見開くスクアーロに、あんたにそんなコトされて我慢できるワケねーじゃん、と短く告げて山本は、先程まで本人の指が埋まっていた入口に舌を這わせ出す。
「―――――ッ、てめ・・・・ッッ!!」
思ってもみなかった山本の行動に、スクアーロは少なからず慌てて止めようとするのだが、
暴走状態に近い山本の様子プラス、ここんな力の入らない態勢ではどうすることも出来ず、濡れた音と感触から逃れることもできず感じてしまい、
伸ばした拍子に指に触れた彼の頭、短髪をぐっと握り締めた。
「・・・つ、ぁッ・・・・」
湿った舌先が、指で広げられた最奥にぴちゃりと侵入を始める。
「、ぅ・・・・ぁッ・・・・や、めろ・・・・ッ・・・・!」
通常でも、そして自分でも舌では触れられるはずのない場所を、唾液を送り込まされて擦り上げられるように舐め上げられ、
制止の声をあげようとしても、甘い熱の絡んだ声では何の意味も為さない。
「ん・・・・ぅ・・・・っ・・・」
下肢に熱い疼きが一挙に溜まり、スクアーロ自身も急速に硬くなりはじめた。
再度また、先端に透明なものを宿す彼自身に気づき、山本は片方の手で勃ち上がりを見せるそれを下から擦り上げる。
「ッあ・・・・!!」
直接的な快楽刺激に、スクアーロは背中を仰け反らせ、
先端からとめどなく蜜を零れ落とす。
更に山本が、スクアーロ自身を捕らえた手のひら、指先で括れを数回撫で回してくると、
零れ落ちる蜜に白いものがだんだんと混ざり始めて。
それを見て山本は、埋めた舌で内壁を最後にぐるりと全体的に掻き回したあと、名残惜しそうに最後、ちゅうっと長く吸い付いてから舌と唇とをそこから離し、
「スクアーロ」
「ッ・・・・」
快感ゆえ、荒い吐息を断続的につく彼の、今度は両脚を抱え上げた。
「ホント、あんたになら喰い千切られてもいーや」
アホみてぇな世迷い言ばっか言ってんじゃねぇ、とスクアーロは熱を孕んだ眼で答えてやり、次に蕩けて綻んだ最奥に、猛った熱が押し当てられたのを感じた直後。




「ぅ・・・―――くぁ・・・ッ・・・・!!?」
一挙にそれが身体を貫いて埋め込まれ、侵入してきた。
瞬間、先程までの愛撫と慣らす作業で高みまで追いやられていたスクアーロ自身が、勢いよく弾けていく。
連動して、内側にある自身に内壁がきつくきつく絡み付いてくるとてつもない感覚に、
今度は山本の方が眉を歪めて耐える。
「・・・・ッ、・・・・っ、はぁ・・・・っ・・・・」
びくん、びくんと断続的に身体を痙攣させて、吐精するスクアーロ。
そこが白蜜を吐き出すたび、細い腰ががくがくと動いて揺れて、
埋め込まれている山本自身を自然とぐいぐい締め付けた。
「いくら何でもあんなのズルイだろ、あんなん見せ付けられたらさ」
理性も何も吹っ飛んじまうだろ、こーやって。 と、山本に達した直後の、この上ないほど鋭敏になっている自身をまたも捕らえられ、激しく扱き上げられる。
「う、あッ・・・・!」
スクアーロは反射的に、自らを捕らえる山本のその手を離そうとするのだが、
それは失敗して唐突に、グイッと腰を捩じ込まれた。
「・・・・ッあ、ぐッ・・・・!!」
突然の動きに、たまらず声があがる。
やりたい放題の山本に対し、もう一度怒鳴り付けてやりたいスクアーロがそうしてやろうとしたのも束の間で、
「なあ、『好きだ』 って何回言ったらあんたも同じように返してくれんだ?」
熱に浮かされたかのような、ハズカシイ台詞をてらいも無く言ってくる子供は一旦腰を引き、狙いを定めて強く強く奥の奥までズ・・・・ッ、と突き上げてくる。
「ぁ・・・ぅ、あっ・・・・ッ・・・・!!」
喉の奥からせり上がる、快感を伝える声が自らの意思とは別に、次々と零れていく。
ぐっと更に奥まで突き上げられ、密着する上半身。
スクアーロの長い銀髪が、山本の肌に触れてくすぐって、
「・・・っ、」
その感覚に意識を乱されながらも、山本は動きを止めない。
限界まで近づいた上半身で、互いの身体の間で屹立するスクアーロ自身を擦られて、
身の内に感じる山本をはからずとも締め付けてしまうのが自分でも感じ取れ、自ら一層煽られる。
「ッ・・・・!!」
と、大きく片脚を肩の上に抱え上げられ、より深く抉られて、押し上げてくる角度も変わって。
「あぅッ・・・・・っ・・・・」
それが偶然にも弱いところを突き上げ、漏れるような快感に喉が仰け反った。
快楽にがくがく身体が戦慄いて、山本の動きにつられて腰が揺るぎ出す。
併せて奥の奥までを思いきり突いてきた山本に激しく腰を使われ、
色付いたスクアーロ自身の先端から、止まらない蜜がとろとろ溢れ出て滴り落ち、下肢に伝い落ちていく。
それを感じた山本が、おもむろに熟れきった自身に指を絡めてきて、
内側から外側から同時に刺激を与えられ、耐えられない感覚に身体が大きく跳ね上がる。
「ぐッッ・・・・!!」
意識が飛びそうなほどの鋭い快感に、耐えようとしてスクアーロはかぶりを振ったのだが、
山本は逆に眉を顰め、
「悪い、ヘタだった・・・・か・・・?」
違うそうじゃねぇ、というスクアーロの返答も聞く間を置かず、それでも身体は止まらないらしくぐいぐい攻め込んできて。
「っ・・・・っは、ぁ、・・・・っ・・・」
途切れ途切れの艶声。
山本の手の中、しとどに濡れそぼったスクアーロ自身が小刻みに痙攣し始める。
それを更に扱き上げられ、手が行き来する動きのたびに鼓膜を打つ濡れた淫猥な音も、もう気になんてしていられない。
内側を蹂躙される快楽に翻弄され、真っ赤に色付いて膨れ上がった自身を刺激される愛撫は、彼の要望と欲望とを神経に直接擦り込んでくるかのような錯覚まで起こしかねず、
一体どこまで許容してやればいいのか、改めてわからなくなって。
加えてここまで来てしまうと、山本の方も余裕も何もない。
相応に荒い呼吸を噛み締めながら、より激しく奥を攻め立てる。
そして絡ませた指の腹を使い、蜜の溢れ出るスクアーロ自身の先端を重点的に刺激した。
「ッあぁ・・・・っひ、あッ・・・!!」
耐え切れない身体が、いち早く限界を告げてきて、先端から白濁したものが僅かに噴きだした。
伴って齎される、達する寸前の腰はもうがくがくと止まらず、今にも砕けてしまいそうなほどで。
「ッ、」
耳のすぐ近くで熱く荒い息遣いが聞こえたと同時、
スクアーロの吐精を誘うように自身を根元からきつくきつく扱かれて、
続けて内側から奥の奥、一番快感を感じ取ってしまう箇所を乱暴なほど強く押し上げられて、
「ぅあ・・・・あ・・・・ッ、・・・・―――ッ!!」
喉の奥で掠れた声をあげ、迎える絶頂。
それに促されるよう、収縮した内壁に激しく放たれる飛沫の熱を感じたあと、




(・・・・・・・・顔面3発、腹に4発が相場ってトコかぁ)




『御預け』 を放り出した山本に与える、そんな現実的な鉄拳制裁の内訳をぼんやりと、決めた。



























「・・・・痛え・・・・」
顔面に拳骨3発と、腹に4発の下段蹴りと、オマケに脳天踵落としまでもれなく貰ってしまい、
切れた唇の端に薄く血を滲ませつつ、振られた暴力(DVと表記しても良い) に痛む節々に顔をしかめながらも、
濡れた頭をがしがしタオルで拭きながら、それでも山本はこの上なく満たされた表情で、笑う。
この分じゃ、まず間違いなく明日の朝には全身、浮き上がった青痣だらけだ。
しかし山本からしてみれば内出血の跡さえも、紅いキスの跡と大して変わらない。
彼から貰えるものなら、傷だって痛みだって何だって喜んで。
そんな状態で、事後処理という名目の、一風呂浴びたあとの一時を至福のにんまり状態で床の上、満喫していたら。





「何ニヤついてんだぁ」




げしッ、とまたも容赦なく後ろから蹴り付けられた。




「いてッ・・・・!!」




大袈裟に声をあげて、まだ水気の残る髪を揺らしてそこに立つスクアーロを山本は見上げる。
自分はまだ、ろくに服も着ていないというのすっかりに彼の支度は整っていて、ここに来たときと同じ、今にも窓から出て行ってしまいそうな。
これからまた仕事という名目の、名実伴った殺戮だと言っていた。 どんな内容かは知らないし、自分からはあえて訊ねようとも思わないが。
「また来てくれよな」
大抵ヒマしてるからさ、とへらりと笑うと、
「気が向いたらな」
珍しくもマトモに返事をしてくれた。 大概、鼻先であしらわれて終わるか、最初から返答も貰えないかのどちらかなのだ。
だから少しだけ驚くと同時、やたら嬉しくて。
「じゃー、約束やぶったら針千本ってことで」
「あ゛ぁ゛?」
そもそも約束もなにもしていないのだが、その日本語の意味が不明で、片眉をあげるスクアーロに山本はそんな微妙なニュアンスで。
けれど約束(?) を違えたからといって、針の一本だって飲ませるようなことはしたくないのが本音本心。
そんな無茶振りなんかより、確実に彼を縛っておける何かが欲しい。 力でも執着でも、ワガママでも、血と刀と剣でも、SEXでも。




「じゃーな」
「フン」




山本がひらひら手を振ると同時、しなやかな長身は髪を翻らせて窓から消えた。




「あーあ」
行っちまった、とひとりごちる。




彼がいなくなった途端、急速に冷えていく幸福感。 褪めていく高揚。 醒めてしまう現実。








本当は、「またな」 とか 「それじゃな」 とか、そんな言葉なんか使わない距離にいられればいい。








―――――――――― たぶん叶わない望みをかかえながら、山本は口許だけで叶わない願いを抱く自分を、嗤った。







とっくに消去してたはずなのですけど、発掘されたので出してみました。
懐かしいーーーーって思っていただけたら嬉しいです。