※前回あらすじ




・ガイルクで結婚しました。

・ガイ様の根底は「変態」です ←言わずとも誰もがわかってる

・細かいあたりはあんまり深く考えないでください





























 ルークが家出しました。








ルークが、家出をした。








原因理由は話せば長くなる。
そこを端的に、大幅に端折って簡易的に説明するとすれば―――――――。











元々ここ数日、ルークは腹が下り気味で調子が悪かったのだ。
何故かと問われれば原因はひとつ、
×××の際、×××で××××で×××・・・・、なガイが中出ししまくりの上(・・・・)、
それもほぼ毎日であるから。
当然、ルークの方も拒むときは拒み、断固拒否! したいときはしているにも関わらず、
嫌だと散々言っているのに、それでもしつこくがぶりよってくる。
そんなガイにさすがにブチ切れ、今日も押し迫ってきた彼を思いきり蹴っ飛ばし、
家を出たままその勢いで宮殿に駆け込んだ、というのがその顛末だ。












いつものジェイドの執務室。
助けを求めて、というよりはとりあえず避難を求めてルークが飛び込めばそこにはオヤクソク、
部屋の主であるジェイドはもとより、
公務を公的(?) にサボり中な皇帝陛下までちゃっかり揃っていた。





「・・・・・って、ワケなんだけど」


ルークが話し終えると、


「そんな状態なら、コンニャクでも大量に与えておきなさい」


「カップラーメンて手もあるぞ」


真顔で所謂、『代替品を与えておけ』 と揃って返答。
本気なのかそれともただ単にからかわれているのか分からない二人の助言に、ルークがどう反応していいのか迷ったところ。


「それにしても、相ッ変わらずカワイイなあお前。 どうだ? 俺とジェイドの養子にならねー?」


年齢的にもピッタリだろ、俺が19、ジェイドが18のときのガキってことで、
と全く場違い、あからさまに思いっきり関係のない発言をしてくる皇帝陛下。
一方ジェイドはジェイドで、


「私と陛下の産物にしては、少しばかりアホの子すぎる気もしないではないですが、まあ外見的にはそこそこ悪くはないですね」


うんうん頷きながら尻馬に乗ってくる。
その発言は、当のルークとしたら誉められているのか馬鹿にされているのかちょっとイマイチ分からない。
それでも貶されたわけではないことくらいはわかったから、


「え、・・・そ、そうか?」


曖昧に頷いておけば。
何やらノックの音。 一番扉に近かったジェイドが用件を伝えに来た伝令と一言二言交わし、
小さく頷いたあと、こちらに向き合った。
やたらと面白そうな(!) その表情から、言わずともわかる。 早速ガイがルークを追ってきたらしい。


「別室に待たせてありますので、とりあえずここは私が行きましょう」


とどこまでも楽しげに彼は一人、
当のルークと仕えるべき主を残し、すたすたと執務室を出て行ってしまった。
困るのは残された二人だ。 一瞬顔を見合わせ、


僅かに躊躇しつつ、後を追った。















二人が着くと、すでに別室の扉は閉められていた。(内容からいって当然といえば当然か)
鍵はかかってはいない様子だが、さすがに踏み込む勇気は特にルークにとってみれば無い。
それでも少々心配で、そろってこっそり扉に耳を押し当て、盗み聞きというかなり情けない手段に出たルークとピオニーの向こう、
ドア越しに途切れ途切れに聞こえてくるジェイドとガイの会話。












『ルークはここにいるんだろ? 連れて帰るから会わせてくれ』


『仕方がないでしょう、当人が嫌だと言っている以上は。 陛下のポケットマネーでコンニャクとカップラーメンとを買ってあげますから、しばらくそれでガマンしていなさい』












「なんで俺のポケットマネー・・・・」
聞いていたピオニーが不服そうにぼそっと呟いた。 ・・・・まあ確かに。












『いいですか、ラーメンはお湯を入れてもきちんと冷ましてからですよ。 無論コンニャクもですが』


一体どういうことだろう、と擦れていない(疎いともいう) ルークは不可解に思ったが、
扉の向こう、物知りガイ様はそうではなかったらしい。












『なっ・・・・そんなもの、使うわけがないだろう!』


『不服ですか? では南極二・・・・』












ますますもってルークでは理解不能な単語が飛び出た。
頭の上にクエスチョンマークを浮かばせつつ、すぐ上にあるピオニーの顔を見れば彼は笑いを堪えるのに精一杯で。
わからないのはどうやらに自分だけらしい。
しかし、あえて聞く勇気も度胸もそして何よりそんな暇もなく、
とにかく今は壁の向こうの会話を聞き取ろうと一層耳をドアに押し当てれば。
きっぱりはっきり、やたら明瞭に発言された、ガイの一声。












『そんなものとルークの×××を一緒になんかしないでくれ、旦那。 ルークの方が十倍も×××で××××で、時々×××××になったりもして、とてもとても比べ物にはならない』


『・・・・・・・・・・』












「・・・・随分と香ばしい変態になっちまったなあ・・・・ガイラルディア・・・・」


しみじみ思い知り、思わずつぶやいてしまったピオニー。
と、


「〜〜〜〜〜〜ッ!!!!」


「ま、待てって! 今お前が出て行ったらマズイだろうが!」


自分のいない(と思っている) ところでのガイの発言に、
顔を真っ赤にして今にもドアを破って飛び込みそうになったルークを、彼は必死で抑え込む。
一方、向こう側でも会話は続行中だ。












『ともかく、腹の調子が悪いときに無理強いは禁物なんです。 それとも、無理をさせて真っ最中にぶちまけられたいですか?』


『・・・・・・・・・・・・』












「さすがにそりゃイヤだよな。 俺だって断固拒否だ、キョヒ」


その点ジェイドもそういうの嫌がるタイプだからな、とピオニーにこんなところでこんな時にそんなどうでもいい情報を告げられつつ、


『・・・・・・・・・・・・』


引き続き黙っているガイをルークが怪訝に思うのと同時、












『ガイ?』


訝しげに思ったジェイドが疑問符を投げ掛けるのを、彼は待っていたかの如く。


『甘いな旦那。 どれだけ俺が昔から使用人として、ルークの身の周りの世話をしてきたと思ってるんだ。 子供の頃から着替え、風呂、食事に就寝、となれば当然下の世話だって・・・・!』


『・・・・・・・・・』










「る、ルーク?」


「・・・・う・・・」


仰天してピオニーが見れば、唇を噛みしめ、すでにルークはうっすら涙目で。


(そ、そうだったのか・・・・)


その時、陛下に芽生えたルークに対する同情心と、ちょっとしたお茶目ゴコロ。
可愛いルークを今までにないくらい至近距離、こんな間近に見てしまい、
しみじみ湧き出るイタズラゴコロ+、 ・・・・ほんの少しの。


「ルーク」


心持ち、声のトーンが下がった気がした。
十数センチの距離を不穏に縮め、


「? 陛下? ・・・・わッ!!?」


額に口唇を寄せ、触れる。 でこチュー。


「やっぱ近くで見てもルークは可愛いな。 本気で俺んトコ、来ないか」


あわあわと固まるルーク。 こういう手合いには慣れていなそうな加減だ。 これは都合がいい。
ふわ、ともう一度額に口唇を落とした。


「ちょっ、ちょっと・・・・陛ッ・・・・」


「静かにしてろって。 いいだろ、これくらい」


今度は頬にキス。
それからゆっくり、口唇にまでも狙いを定め、
二つのそれが今にも重なりそうになったその、瞬間。






ガチャ、と勢いよく突然開いたドア。






「ッ!!」


「いってぇ・・・・」






開いた反動でバランスと体勢を崩し、すっ転げて下から見上げたピオニーとルークの視線の先には。






「おやおや、随分と仲がよろしいことで」


やたらにこやかに微笑み、こちらを見下ろすジェイド。


―――――――ッッッッ!!!!」


途端、一挙にピオニーは蒼白になる。 否、蒼を通り越して土色だ。


「ルーク!! 無事かルーク・・・・!!!!」


その微笑む三十路とは対照的、泡を食ってガイはルークに飛びついてくる。 どこから察知していたのか一体どこから中の二人に聞こえていたのか、
なんだか物凄い勢いだ。


「っ、だ、大丈夫だって!」


なんとかギリギリ未遂だし、と口にするルークにほっと安堵の溜め息をつくガイの横、


「ち、違う、違うぞジェイド、これはその、アレだ、ブウサギをかわいがってキスするのと同じでな・・・・」


滑稽なほど慌て、しどろもどろ弁解に走る一国の主。


「ですが、ブウサギには突っ込みませんよねえ?」


あくまでジェイドはにこやかだ。


「だ、だから、」


「陛下、」


にこやかに、にこやかに。


「・・・・・・・・!!」


「この場でミスティック・ケージとインディグネイションを二本立てでぶちかまされるのと、寝室でおとなしく脚を開くのと、どちらを選びますか?」


にこやかに、にこやかな、にこやかで。


「ジェ・・・・!」


「あえて先に申し上げておきますが、どちらを選ばれてもどちらにしろ息も絶え絶えにして差し上げますよ。 二度と、そんな悪戯心を起こすことがないように」


うろたえまくるピオニーに、ジェイドは薄い笑み。
口調はどこまでも穏やかだが、背後に黒オーラが揺らめきまくって見えるのはルークの気のせいだけではないはずだ。
しかしルークだってガイだってこればかりは口出し出来るはずもなく。
ジェイドの独壇場は続く。


「陛下? 選びかねているのでしたら、・・・・そうですね、宮殿内で秘奥義をかますのも気が引けますね」


言いながらむんず、とピオニーの首根っこを引っ掴んで。


「それではルークにガイ、私と陛下は突然に所用急用ができてしまいましたので今日のところはこれで」


「ギャアアアジェイドに殺されるーーーーーーーー!!!!」


悲痛な叫びをあげながらも、そのままずるずる引き摺られていく皇帝陛下。
長い廊下の反対側、角を曲がって三十路の二人の姿が見えなくなるまで金縛りにあったのかのよう、残された二人は動けなかった。












「やっぱジェイド、怖ぇ・・・・」


「あの迫力は半端じゃないよな・・・・」


伊達に長く生きてない。
伊達に性格、悪いワケじゃない(!)。


「陛下、平気かな」


ちょっかい出されかけた被害者とはいえ、良い子のルークは心配する。


「ま、まあ・・・・何とか大丈夫なんじゃないか? 今までだって大丈夫だったんだし」


なんとかなるだろ、と全くもって根拠の無いガイの当て推量。


「だといいけどな・・・・」


「そうだ、な」








頷きあって二人、顔を見合わせた。
ルークはなんだかいろいろ、バカバカしくなった。








「・・・・・・・・俺、帰るよ」


「そうするか」








今日の晩メシはエビフライだから楽しみにしててくれよ、
大皿に乗り切らないほど大量に揚げてやるから思う存分食べてくれルーク、と告げるガイとの帰り道。


「・・・・俺、腹こわしてるって散々言わなかったっけ?」


と改めて言ってやりたくなったが、エビフライの誘惑、大好物の魔力には勝てず。
その代わり、









「陛下からしたら俺って・・・・ブウサギと一緒なのかな・・・・」








どうでもいい疑問を、口にした。




















【 →→→ [ナタリアとアッシュが遊びに来ました。] に続く】