avaricious・2









「跨がれ」




「・・・・・・・・はいィ?」




指示された言葉に沖田は目を丸くした。
一方で土方は寝具にぴったりと背を付け寝転がって自分の上に沖田を乗せる態勢、
通常ならいわゆるマウントポジションを取らせる形、つまるところ沖田が土方の上に覆い被さる体勢。
「今、なんて言ったんです?」
聞き返しながら、自分の下にある顔を見る。
別段聞き返さずとも一応きちんと聞こえてはいた。 確かに聞こえてはいたけれど、自分の耳を自分で疑ったため念のためもう一度。
すると土方は表情一つ変えず、先刻と同じ響き同じイントネーションで。
「このまま跨がれって」
「・・・・ドコに」
「顔んトコロっつったろーが」
「このカッコで、ですかィ・・・・?」
何だか疑問符ばかり提示してしまっているような気がしなくもないけれど、だって自分も土方も何一つ着衣していない状態なのだ。
そんな一糸纏わぬ真っ裸姿で、それも顔上に 『跨がれ』 だなんて。




「・・・・そりゃあちょっとアダルトビデオの見過ぎですぜ」
どんなプレイだこの変態、とあからさまに顔に出してやったのだが、
「見てねーよ」
んなヒマあると思うか、と一言で返されてしまった。 だから負けずにこちらも、
「なら尚更余計タチが悪ィや。 エロ土方」
きっぱり言い返してやったのだけれど。
「テメーがいつもいつもマンネリは嫌だとか横着はやめろだとか垂れやがるから、一応考えてやってるんだろーが」
こんな時の土方はとてもとても口が減らない。 それとも開き直ってでもいるのか。
だからといってよりによってこんな、と半分感心、半ば呆れながらも、「まあ別に、」 と沖田は前向きに思考を切り替える。
土方相手に羞恥や道徳などはとっくの昔にどこかへ消えてしまったし、深く考える必要も今となっては皆無、
どちらにしろ互いに隅々まで知り尽くした互いの身体、よくよく今更躊躇するほどのことでもなく。
それに所詮、結局行う顛末はどうしたっていつもと同じで(・・・・)、
体勢という趣向をほんの少し変えただけの小さな戯れだ。 変わるにしたって、せいぜい自分と土方の位置と視界の高さくらいのもの。
従って、 ・・・・だから。
「悦くしねーと、そのまま首、ネックレッグロックで絞めて窒息に持っていくんで」
決してウンと頷かないながらも、婉曲して肯定の意。
すると土方に小さく苦笑された。
「素足で首絞めされてあの世行きなんざ、カッコつかねーな」
道理。 けれどそもそもの発案は土方であるからして、それに。
「違いまさァ。 素足じゃなくて素股、んでもってイクのはあの世じゃなくて、昇天ていうんですぜ?」
微妙な間違い(? ・・・・でもないか) を笑いながらさらりと訂正してやって、
ただでさえも爛れた会話を、より爛れたエロ土方の発案行為に発展実践、持ち込んでやることにした。












「・・・・こんなんで、」
どうです? と視線で問いかけながら、沖田は仰向けに寝転がっている土方の顔の左右両脇、シーツの上にそれぞれ膝をつき、
開脚した状態で腰を落としてきた。
自然、土方はそのままの体勢で沖田の中心部に触れ愛撫できるようになり、
改めて眼前の肢体、姿態をまじまじと眺めてから満足気に告げる。
「たまにはこういうのも乙ってモンだ」
「スケベジジィ」
「ならテメーはエロガキだな」
ぼそりと吐かれた暴言に同等の文句で返しておいて、すかさず目の前の沖田自身に唇を寄せる。
「っ・・・・」
晒したそこを口で触れられ、沖田はぴくりと反応した。
土方は片手を沖田自身の根元に添え、舌を先端に絡ませて愛撫を施していく。
「んッ・・・・、あ・・・」
口淫を受けるそこは、甘い喘ぎと共に時間をかけずともみるみるうちに勃ち上がり、
手を添えずとも土方の下方から見えるようになった敏感な裏側、裏筋を遊ぶように舌先で突付いてみた。
「っんんッ!」
「逃げんなコラ」
反射的に浮いた細い腰を、しっかり繋ぎ止めておくため空いた手で抑えて愛撫を続行する。
「・・っん・・・ぁ、あ、ぁっ・・・・」
裏側から先端を何度も何度もしつこく丁寧に舌で辿られ、唇でなぞられて、腰より更に細い脚が小さく震え出す。
同時に色付いた先端から先走りの透き通った蜜が滲んで零れ始めると土方は指の腹で、
ぬめって疼く先端部を擦り回してやった。
「ッ! っは、ぁっ・・・・あ・・・・っ・・・・!」
感じる沖田が素直に反応を見せるのを心行くまで愉しみつつ、前だけでなく後ろにも刺激を与えようと手と指を伸ばす。
双丘を掻き分けて潜り込ませた指先が辿り着いた最奥の入口を柔らかく二度、三度とほぐすように触れてから、
出来る限りの注意を払ってゆっくり丁寧に人差し指を第一関節まで内側に侵入させた。
「く・・・・」
最初はどうしてもダイレクトに異物感を感じ取ってしまう沖田はどうにもならないのだろう、
眉を寄せ、自らの後ろから届く感覚と、前から齎される快楽に唇を噛んで耐えている。
そんな顔に、やっぱり今回も煽られて。
「総悟」
名前を呼んで、人差し指の残り全部を奥までつぷっと埋め込んだ。
「ん・・・・ッッ!」
途端にビクッと仰け反る身体。
「痛いか?」
「〜〜〜〜〜ッッ」
自身の至近距離で土方の発する言葉と声が空気を震わせ、沖田にはそれさえも刺激になって届いてしまうらしい。
問いには髪を乱して小さくかぶりを振って答え、
その仕種と表情から、痛くはねーんだなと土方は真っ当に解釈しておいて、埋めた指で中を探る。
一方、眼前の沖田自身には先端を口で、僅か後方の双珠を手のひらで包んで愛撫。
「ぁ、あっ・・・・、あ・・・・!」
普段のナマイキ腹黒沖田総悟十八歳からはとてもとても聞けない甘い声と艶。
自分だけに見せるそんな姿が可愛くて、埋め込んだ指をある一点目掛けてくっと直角に曲げた。
「ひぁッ!!」
突然に押され、突かれた沖田の弱い弱い内側の前立腺。
痺れるような快楽がズン、とその部位を通って腰から背筋を伝い、指先まで届く強い強い快感。
それはなかなか消えることはなくて、甘く重く身体に蓄積する。
かたかた震える腰と、土方の顔の両横で小さく戦慄く膝頭は、今にも支える力を失ってがくりと腰を落としてしまいそうだ。
なのにわかっているのかいないのか、更に土方は片方の双珠を指先でくいくいと揉み上げながら、
内側で指先に触れる他とは触れた感触の違うポイントを絶えず押し上げ、高みに持って行こうとしている様子。
「ぅあ・・・・ッ・・・や・・・・!」
じりじり追い詰められていく沖田が、力の入らない手を土方の頭に持っていく。
短い黒髪に指を絡め引き剥がそうと意味のない行為をするけれど、
結果、可愛いそんな姿は意味がないどころか更に土方を喜ばせるだけで。
いつの間にか透明にうっすらと白色が混ざり始めた蜜を掬い取るように舌を絡ませ、先端をぬるぬる擦ってやると、
一気に高まらされた身体全体が、大きく震え始めやってきた限界を訴える。
「も・・・・っ・・・・出、るッ・・・・っ・・・!」
「出せ」
鷹揚に言って手の中の双珠を激しく揉み込んでやれば、
――――う、ぁ・・・・っ、あぁ・・・・ッッ!!」
たちまちビクン! と大きく戦慄き仰け反り、弾ける沖田の白蜜。




飲み干してやるため口で銜え込もうと思って、しかし寸でのところで失敗し、損ねてしまったそれは、
当然のように大半が土方の顔と髪、そして少量が胸元に撒き散らされ、ぱたぱたと白濁が降り注ぐ。
「・・・・妙な気分だな」
前髪に滴るそれを無造作に払ってシーツに落とし呟きながら、
僅かに上体を起こし、はあはあ荒い吐息をついている沖田を見た。
「そのまま少し下がれるか、総悟」
「・・・・ん」
快楽の余韻にうっすら紅く染まった目許のまま、力の入らない身体ながらも沖田は素直に移動する。
途中、腹のあたりまでもぞもぞ移動してふと向けた視界の先には、白蜜まみれの土方が。
「・・・・ソウゼツ・・・・」
聞こえない程度、口の中だけで呟く。
なんでアンタ思いっきり掛けられてんのに喜んでるんですかィ、と、
口許が僅かに笑っている土方に思わずツッコミを入れてやりたくなったけれど、いちいち言葉を発するのも面倒くさい。
だから黙っていたら。
「ついでに自分で挿れてみろ」
更なる要望。
「・・・・・・・・アンタって奴ァ・・・・・・・・」
「ここまで来たんだ、別に構わねーだろ?」
「・・・・・・・・まあ、イイですけどねィ」
溜息をつきながら、あと少し、身体の位置を変える。
と、
「なんだオイ、妙に素直にいうこと聞くんだな今日は」
言い出した本人が意外そうに聞いてきた。
「乗りかかった船ってやつでさァ」
・・・・一年に一度くらいは、いうこと聞いてやってもいい。




その体勢になり、気付けばいつからか完全に勃ち上がりきっていた土方自身に触れる。
いつもいつも受け入れているはずのものなのに、実際に指で触れてみると思っていたより熱かった。
よくこんなのが入るなー、なんて沖田はまるで他人事のように考えながら、
土方によってほぐされた自らの最奥にその切っ先を押し当てた。
「・・・・ッ」
向こうから貫かれるのとは違い、思わず接触させた途端に僅かだが腰を引いてしまう。
「早くしろって」
・・・・黙ってろィ・・・っ・・・」
ニヤニヤ笑ってまだ余裕綽々を隠そうともしない土方を睨み付けるけれど、
一度後ろに感じた熱は、達した直後でもまた身体の中の甘い疼きをつれてくる。
すうっと息を吸い込み、決意して沖田は自ら土方自身を飲み込み始めた。
「ん・・・く・・・・っ」
ゆっくりと、でも確実に土方自身が沖田の中に収められていく。
「く・・・」
狭い内部。 飲み込んだと一緒にきつく絡んでくる秘肉に土方の口からも掠れた息があがる。
「・・・っ・・・は・・・・ッ・・・」
腰を落としきり、やっと根元までを埋められた沖田が細く長く息をつく。
無論、こういった騎乗位が初めてというわけではないけれど、かといってそうそう試しているわけでもなくて。
自分が全体重をかけて乗ってしまっているため、必然的に奥まで感じてしまっている土方自身に、
全く動いてもいないし動かれてもいないのに、身体が戦慄く。
「ん、」
まだ慣れない、もっかい息を、と思ったところで。
「動くぞ、総悟」
「な・・・・ッ!」
制止も何もする前に、先手を打って腰を土方に掴まれたと思った直後、ぐいッと突き上げられてしまった。
「ひぁ・・・・ッッ!!」
乱暴に奥の奥まで届いた切っ先に、一瞬視界が霞む。
逃げようと、ほぼ無意識に腰を浮かせかけたのだが、
「今更抜く気かよ」
「ぅあ・・・・っ・・・」
伸びてきた腕に、達したばかりながらも新たに芯を持ち上を向きかけている沖田自身をきゅっと握られ、
前にも愛撫刺激を受けて瞬時に退く力が抜けた。
「そのまま銜え込んでろよ・・・・?」
言って土方は、荒く下から何度も何度も突き上げる。
「んぁっ、あっ、あ・・・ぅ・・・・っっ・・・・!」
奥底まで穿たれる、激しく甘い刺激を何とかしてそらそうにも、前の自身を握られてしまっているため、どうにもならない。
土方は捕らえたその手で沖田自身を根元から先端まで余すところなく扱き上げながら、
一方で下肢を断続的に使い続ける。
「や・・・・ッ・・・あ、あぁ・・・・ッ・・・・」
身体全体を汗で濡らし、沖田は髪を乱して悶える。
甘い喘ぎを抑えられない唇の端から、これも抑えきれず飲み込めなかった唾液が細い筋を描いてつうっと顎に滴った。
「・・・エロいな、お前」
思わず漏らしてしまった土方だったが、沖田に聞こえていたかどうか。
確信がないままに、重ねた身体で覚えた沖田が最も悦く感じる箇所を内部で探り、
些か意地悪く、先端で擦り上げてやる。
「ッ!!? ん―――っ・・・・!! や、め・・・・っ・・・!」
「やめねーって」
悦くしろっつったのはそっちだろ、と揚げ足取りで囁いて。
「やっ、やっ・・・・・!、あ・・・・っ・・・」
しつこく擦り続けてやると、泣きたいわけではないのだろうに、生理的な涙が零れて落ちてくる。
「・・・・っ、また・・・・っ・・・」
直接的な快楽刺激は、間もなく二度目の高みを連れてくる。
「少し動くぜ」
「・・・・ッ・・・」
拙い訴えにも、それとなく機知した土方が器用にも上半身のみを起こし、
それから片腕を使って沖田の背中をぐっと引き寄せて、互いに向かって座る形に持っていく。
きちんと向かい合ったところで、おもむろにズッ、と一際大きく腰を使った。
「んんッ・・・・!!」
抉られて、たまらずしがみつくものが欲しくなった沖田は土方の首に腕を回す。
切羽詰まったとはいえ、可愛いカワイイ沖田の行動にますます満足して土方は本格的に腰を揺すり出した。
「・・・・あ、あ・・・・ッ・・・・!」
接近した土方の肩に鼻先を押し付けるように、沖田は快感刺激を受け止め、耐える。
揺らされる都度、膨れて勃ち上がった自らが土方の腹部を掠めて当たる感覚にも翻弄された。
「総悟、」
「ん・・・・っ・・・・」
名前を呼んだ途端に、ぎゅうっと強く強くしがみついてきた沖田の背中が小刻みに震えている。 限界が近いのか。
「達くか・・・・?」
問いかけながらも実際、自分の高みもすぐそこまで来ている。
「、んぁ・・・・っ、土・・・・ッ・・・・!」
言葉を紡ぎたかったらしいけれど、快楽に声は言葉にはならない。
それでも僅かに縦に動いた細い顎に、
土方は手を互いの身体の間に滑り込ませ、濡れて蜜の滴る沖田自身の先端をきちゅっと指先で捏ねた。
「ひ・・・・っ・・あ! く・・・は・・・・ッッ・・・・!!」
阻むものもあるわけがなく、瞬時に弾けた精が二人の下肢を濡らす。
「ッは・・・・っ・・・、ぁ・・・・」
大きく肩を震わせながら最後の一滴まで吐き出していく沖田自身に、内側の内壁もつられて蠢く。
絶妙な強さと収縮する動きに誘われ、息を詰め土方も中で絶頂を迎え、熱を放った。
「・・・・ふ・・・」
身の内の熱さに、沖田が小さな反応を見せる。
元々引っ付いてはいたが、よりもっとぐいっと引き寄せようとして聞こえた掠れた呟き。
「・・どっちが・・・・エロだってんだィ。 ・・・・エロジジィ土方・・・」
先程の言葉は、どうやらしっかり聞こえていたらしい。



























「やっぱりなんか、どっか罪悪感感じてるカオしてますぜ」


風呂にも入った。 後始末もした。 あとはさっさと身支度をして屯所を出るだけだ。
「してねェよ」
「そうですかィ?」
短く否定すると、ひょいっと顔を覗き込まれる。 が、最初からそんなものなど感じてもいないし、そんな顔もしていない。
当人が言っているのだから本当だ。
煙草に火をつけつつ、
「・・・・ま、強いて言うなら職場でヤっちまったあたりには感じてるかもしれねーがな」
「ああ、そりゃあ大罪だ。 地獄行き決定」
ケロリと返す沖田はどこまでも飄々としていて、先程の色艶はどこへやら。 まあどちらにしろ通常でも相応にカワイイから良いのだが。
「誰が地獄行きだ」
「土方さんの場合は存在してやがるだけで最初っから地獄行きですがね」
「オイ・・・・」
端から見たらそれこそクダラナイ会話だ、と自分でも思う。 自覚はある。
「テメーこそ今日だけで三つも大罪犯してるじゃねーか。 遅刻・サボり・居眠りだコラ。 給料から引くぞ」
けれどこれが面白い。 楽しい。 落ち着く。 日常だ。
「フン。 七つじゃねーだけイイじゃねーですか」
七つの大罪。 確か 『傲慢・嫉妬・憤怒・怠惰・強欲・暴食・色欲』 だったか。
確かに揃えば立派な大罪だなこいつは、と紫煙を吐き出したところで。
「ま、人間の欲なんかせいぜい三つありゃ充分ですけどねィ」
「あ?」
まさか食欲・性欲・睡眠欲か? などとあまりにベタな予測をしたら。




「独占欲・支配欲・征服欲でさァ」




「・・・・そうだな」




予測は大きく外れたが、土方はすんなり頷いた。
自分と沖田の間には確かにそれだけあれば充分だ。








しかし深く考えてみたところ、
独占はしてはいるが支配も征服もなんとなし、沖田からされているような気もしなくはないが、

それは不問としておいた方が良さそうである。












タダレタ二人、クサレタ関係をやってみたかったのでござります・・・・。
その割にはあっさり目だったかなとちょいと反省。
そしてこの後に及んでも土方の口調がイマイチわかっておりません。 あああ難しい。