[ 100分の、 ]








※VS鳳仙もしくはVS次郎長の直後あたり、の時間軸の話と思っていただければ幸いです


















世間は狭いようで広くて、
広いようで狭くて。
ただなんとなし、
夜中のコンビニ帰りふらふら側道を歩いていて前触れもなく知り合いとひょっこり出くわす確率なんて、
おそらく100分の1、もしくはそれ以下だっておかしくないはずなのに。


なのに。




「・・・・ン?」


「あ。 旦那」




未成年には、何があっても手は出さないと決めていた。(法とか条令とかいろいろヤバイから)
官憲にも、関わらない方向でいくのが人生の指針だった。(だって面倒くさいじゃん)
タチの悪い相手には、絶対引っかからず基本素通りするのが信条だった。(・・・・・・)


なのに。


なのに何処でナニをどう間違えたのか、
どう道を踏み誤ったのか迷い込んだのか、そしてこんなときに限って確率は100分の100、
下手をすれば100分の130くらいの倍率ドン、更に倍(少し違う?) のレートをもって決まって脇道にそれていく。
「奇遇じゃん。 今ヒマ?」
「遅番明けなんで、明日の昼までヒマっちゃヒマです」
「んー、じゃあちょっとお兄さんに付き合ってくれよ。 支払いはコッチが持つからさあ」
「・・・・・・。 珍しー。 ま、そういうコトなら俺はちっとも構いませんぜ」


なのに。
誘った相手は 『何があっても手は出さないと決めていた未成年』 で、
そんな彼の職種は 『思いっきりの官憲・真選組』 であったりして、
そして何より、何より一番 『タチが悪い』 のは ―――――――。


「いい場所知ってますから。 ちっと遠いけどあのホテルなら今、期間限定で休憩も一泊も一律同料金サービスでやってまさァ」


こちらの、銀時の思惑というか胸裏というか、いたるところつまりアレコレそういう(・・・・) 真意を即座に見抜く・読み取る敏さというか、はしっこさというか突き詰めて言えばエロガキっぷりというか。


「しかもコテージで完全無人になってるんで、そっち方面もわりかし安全って名目で題目なんで。 どうです?」
「え、マジでそんなイイトコあんの? だったら決まりだろハイ銀さんはそこでいいですよー。 沖田くんセレクトなら文句は言いませんよー」


そんな会話を交わしながら、先導し前を歩き始めた沖田が、ふと振り返ってこっちを見た。
「旦那」
突然ついっと半歩ほど寄って来られ、
「先払いの前受け金で、」
キスだけ先に貰っときます、と公道の面前、いくら夜中でほとんど人の姿も見えないとはいえ、
公衆の場で決して短くはない、それなりのキス。
不意打ちということもあり、主導権は全て沖田に渡した内容のキスの後、口唇が離れた直後、
「あの・・・・さ、沖田くん?」
何を告げようとしたのかたぶん自分でもわからないまま、とりあえず疑問符付きで名前を呼んでみた銀時に、沖田総悟は。
「しけ込んだ後はどうせ旦那に全部持ってかれちまうんだから、これっくらい先に寄越しといてくれてもバチは当たらねェはずです、たぶん」
さらりと流れた前髪で表情はよくわからなかったが、口許だけは確かに小さく笑った。































「・・・・・・どーして欲しーよ?」
歩道でのキスの何倍もの時間と、手間とをかけた口付けのあと、
滴る唾液をぺろりと舐め上げてから問い掛けると、
腕の中の沖田はただ息を荒げ、髪がやっと一筋ほど入るか入らないか、それほどの至近距離から銀時を無言で見上げてきた。
「答えねーなら、俺のスキなようにしちまうけど?」
告げた途端、侍にしてはまだ細い腕と、成長途中の身体が絡み付いてくる。
あーホント、今が一番カワイイ時なんじゃねーの沖田くん、
出来ることならずっと今くらいのカラダでサイズでいてくれよ、
などと馬鹿馬鹿しい軽口を寸でのところで止めておき、代わりに銀時が 「出来る?」 と訊いた体勢、及び態勢は。




「・・・ッ・・、・・・」
ベッドのヘッド部分に両手を、そして仰向けに寝転がった銀時の顔の両脇、片側に一つずつ片膝を付いたまま、ギリギリまで腰を落とす。
そうすると銀時は枕に後頭部を埋めたまま、楽々と沖田のそこを愛撫できる形になるわけで。
「眺め、なかなか悪くねーぜ」
ニヤリと笑ってやると、不敵さをさすがに羞恥が上回ったのか、
「どういう・・・・嗜好、ですかィ・・・・っ・・」
責めるような口調で糾されたがすらっと答えてやる。
「え、だって毎回毎回同じじゃつまんねーじゃん? マンネリは嫌なワケよ銀サンは」
だから頑張れよ、と告げてやって、そっと沖田自身に舌を這わせた。
「ん・・・・ッ、・・・・っ」
過敏なそこに柔らかな舌で触れられて、沖田がビクッと震える。
構わず銀時は片手を伸ばし根元の部分をしっかり支え、先端から徐々に舌を絡ませていく。
「・・・っは、あ、あっ・・・・っ・・・」
淫らな刺激を受け、沖田自身がゆっくりと勃ち上がっていく。
その過程で見え始めた裏筋、敏感なところを愉しんで、意地悪く舌先でなぞってやれば。
「・・・・っ・・・!」
「おっと、逃げんなよ」
おもわず逃れようとした細腰を、すかさず片腕を使って押さえ、愛撫を続ける。
「ぅ・・・・あ、あッ、あ・・・・っ・・・っ」
裏筋や先端、弱い箇所を何度も何度もしつこいほど撫で上げられ、
沖田の太腿が小さく震え出す。
と同時、その先端からも先走りの透明な蜜が零れ始め、指先で先端を擦り上げた。
「んあ! あっ、っ・・・・!」
甘い声と、指先に絡みつく蜜液。
真っ赤に色付いた先端が、愛撫のたびぴくぴく反応するのを愉しみながら、
銀時は沖田の後ろも解そうと手を伸ばした。
つい今しがた、蜜を絡ませた指先を素早く潜らせ、数回入り口を撫で上げてやってから、
出来る限りゆっくりと、中に侵入させていくと、
「く・・・・!」
唇を噛み、悩ましげに眉根を寄せてそこから届く感覚に沖田は耐える。
そのカオが、どうにも銀時の嗜虐心をそそって。
大丈夫だろカラダ柔らかそうだし、実際柔らけーし、と勝手に決めて勝手に解釈。
まだ中ほどまでしか進んでいなかった指を、少々乱暴にズッ、と一挙に奥まで埋め込んだ。
「んぅッ・・・・!!」
やはり少々性急すぎたか、堪えるような声と一緒、沖田はビクッと大きく仰け反った。
「ワリ、痛くねェ?」
「・・・・っは、ぁ、ぁッ・・・!」
銀時の口許と自らの中心部が近すぎて、銀時が発した言葉ですら、
息遣いですら伝わる刺激となって届いてしまい、返答することができない。
が、銀時は銀時で慣れたもの、その様子を窺って、
あーこれなら大丈夫だろ、大丈夫だ、大丈夫なはずだよな沖田くん、と略解。
したが早いか、僅かに顔を起こし沖田自身は先端を指で、その後ろの双珠は口付けて、
口唇と舌とで吸い転がして愛撫を送る。
「く、ぅぁ・・・・ッ! あ、あッッ!」
突然激しくなった愛撫に、こらえきれず声が漏れる。
自分の舌と指とで、期待を裏切らずカワイイ嬌態を見せる沖田に満足し、
銀時はそこそこ弄り続けて潤いを持たせた内部で、
既知のその部分目掛けてくっと指先を押し上げた。
「ぅあッ!?」
慣れきらない、瑞々しい身体と腰が弾けた快感に跳ね上がる。
押し上げたまま、片側の双珠をぱくりと口中に含み転がし、指先を使って内部を更に突き上げると、
みるみるうちに沖田自身の先端から溢れ出る蜜に白いものが混じり出した。
それに伴い、細い身体ががくがく震えて限界を迎える。
沖田からすれば銀時の眼前に、自力で跨っていることすらもう限界で、
かと言って膝と腰から力を抜いてしまって本当に顔面にぺたり?
(ぺたり?で果たして済むのか???) と下半身ごと落ちてしまうことも出来なくて、
「旦・・・・っ那・・・・ッ、も・・・・っ・・・出る・・・・っ・・・!」
そのまま素直に絶頂を訴えたら。
「いーぜ。 またココで沢山作れば」
軽く双珠を揉み込まれ、
余裕綽々の笑み混じり、言われた直後。
奥を一際強く指の腹で抉られて。
「ん、 ――――ッッッ・・・・!!」
わずか一瞬の間を置き、遮るものなく沖田は精を弾けさせた。




勢いよく吐き出されたそれは、銀時の顔に、そして銀髪に降り注ぐ。
口元にかかり、飛び散ったそれを自ら指で掬って舐め取りながら、
銀時は荒い吐息をつく沖田に訊ねた。
「どーよ? 自分で動けるか?」
「・・・・ん。 動けまさァ」
性感に、浮かされて半ば涙目のまま、沖田は少し移動、後ろに下がる。
のろのろ動いて漸く、
銀時の口許から自らが離れる胸と腹との境目くらいのところにまで来たところで。
その目が捉えたものは、自分の放った白蜜にまみれる銀時。
しかもそんな状態で、楽しげに口許はニヤニヤ笑っているものだから、
「・・・・エロすぎですぜ、旦那ァ」
あえて作った、思い切り呆れた口調に呆れた表情で、言ってやったら。
「そりゃお互い様だろ」
速攻で切り返され、おまけに。
「ここまで来たんだからさァ、沖田くんから挿れてみせてくれよ」
「・・・・・は?」
俺が? 自分で?
と思わず身振り手振りで聞き返せば、
「そうそう平気平気。 挿れきったらちゃんと動いてやるからさあ」
あっけらかんと頷かれ、今度は本当に呆れかけたのたが。
ここまで来てしまったら拒絶するのも四の五の言うのも、ごねてみせるのも今更もう無意味以外の何でもないし、そもそも時間の無駄でもあって。
ふー、とタメイキだけは盛大に吐いておきつつ、沖田は覚悟を決める。
「・・・・・まあ、頑張ってみやしょう」
大した問題じゃない。
とりあえず騎上位にはあまり慣れてはいないのだけれど、
銀時自身は普段ちゃんと入っているものなんだから、身体にそこそこ馴染んではいるものなのだから。




えーと旦那いつの間に、と意外に思ってしまうくらい、
もう完全に勃ち上がっている銀時自身をそっと掴むと、
それは想像していた以上に熱さと硬さを増していた。
僅かに戸惑いながら、落とした腰、触れた最奥の入り口に押し付ける。
が。
「・・・・ッ・・、」
ここから先、なかなか思い切りがつかなくて。
意に反して反射的に腰を引いてしまうと。
「とりあえず、俺もけっこうツライからさァ、・・・・早くな」
あながちウソでもない表情で、急かされた。
とはいえ。
「だったら、いつもみたくやりゃ・・・・!」
「ハイハイそれ言うの無し。 若いうちはいろんなコトにチャレンジするもんなんだって」
普段の口論なら勝てないまでも決して負けやしない、
そこそこいい勝負が出来るはずではあるのだけれど、今はこんな状態でこんな状況で。
しかもこのまま言い争ったって当たり前だがコトは何一つ進んでいかないわけで、
ツライのだって、勿論銀時だけではなく。
「〜〜〜〜っ・・・・」
触れたり、離れたりを幾度か繰り返していくうち、
身体の底からじわじわ這い上がってくる甘苦しい疼きに耐えられなくなり、
沖田は意を決し、自らしっかり腰を落として銀時の肉棒を受け入れ始めた。
「く・・・・ぅ・・・・ッ・・・」
濡れた音を立てつつ、ゆっくりと銀時自身が沖田の中に埋まって行く。
「うわ・・・・キツ・・・・」
中に入った途端、きつく締め付けてくる内壁に銀時も思わず感嘆の声が漏れる。
「は・・・っ、ぁ・・・・、あ・・・・」
ゆっくりと腰を落とし終え、何とか全てを収め終えた沖田は大きく息をつく。
自らの体重と体勢とで、普段より奥まで銀時のものが届き、
何もしないでいるこの状態でも身体の芯を突き上げられているかの感覚で、
もうこれ以上どうしたらいいのかわからないでいたら。
「イイ? じゃ、動くぜ?」
「な・・・・ッ!? 待・・・・っ・・・!」
「ヤダね」
待てねーよ、と沖田の制止も聞かず、銀時はそのまま細腰を掴んでぐいっと突き上げた。
「ひッ・・・・!」
いきなり最奥まで届いた衝撃に、沖田の喉が悲鳴のように小さく鳴る。
反射的に身体を浮かそうとするのだが、
「ダメだって。 逃げんなよ」
「あぅ・・・・ッ・・・!」
後ろばかりでなく、先程達したばかりの沖田自身をきゅっと握られる。
前と後ろ、弱いところを同時に攻められて、びくびくと全身が戦慄き出した。
構わず銀時は、
「イイとこ、突いてやるって」
言って、激しく律動をはじめた。
「うぁ! あっ、あ・・・・・ッッ・・・・!」
奥まで届く、背筋を通って脳髄にまで響いてくる快感から逃れようにも、
前ではしっかりと沖田自身を握られてしまって動けない。
そうして沖田の快楽の逃げ道を塞いでおいて、銀時は片手で握り込んだ沖田自身をくちゅくちゅ扱きながら、もう片側で腰を支え、激しく突き上げる。
「ぁっ、あ・・・・ぁ、うぁ、あ・・・・っ・・・・!」
がくがく身体を震わせながら、さらさらの髪を振り乱して悶える沖田。
それを見て銀時も、思わず吐息混じりで漏らす。
「ッ、・・・・スゲー・・・・ヤベーかも・・・・」
ただでさえ(姿形だけは) そこらの女なんて比較の対象にならないくらい、カワイイのに。
それがこんな肢体で姿態、しかも今は内部の蠢きだけではなく、
体液と汗とでしっとり濡れて悶える、そんな姿が銀時から丸見えで。
「ヤバイ・・・・よな・・・・マジで、さァ」
ひとりごち、沖田が最も感じるその一点を意識して先端でぐりぐり突き上げた。
「ひぁッ! あ、やめッ・・・・、あ―――ッ!!」
追い詰められた声がもっと聞きたくて、
「ココ? ココがイイ?」
「あ! あ、あ、やめ・・・・ッッ!」
しっかりとわかる前立腺のところを繰り返し擦り上げると、
その直接的過ぎる快感が過ぎるのか、大きなその瞳から涙が零れ落ちてきた。
「も・・・・っ・・・、無理・・・・っ・・・」
二度目の絶頂を途切れ途切れに紡がれて、
「ン・・・・。 じゃ、体勢変えっか」
実はワリとこの体勢ツラくてよ、と苦笑いしたあと、銀時は上半身を起き上がらせた。
自然、互いと向き合って座ったまま、繋がっている形になる。
「・・・・は・・・っ・・」
安堵の吐息か、それともただの呼吸か、小さく沖田が息をついた瞬間。
そこを見計らい、両手でその腰を掴んで、ズッ!と大きく打ち付けた。
「んあッ!!」
何か縋るものが欲しくて、沖田は咄嗟に銀時の首に両腕を回してしがみつく。
「そのまま・・・・な」
たぶん普段なら、通常時の彼なら絶対に出すことのない、
きっと他の誰もが聞いたことのないような、甘く優しい銀時の声。
「しっかりしがみ付いとけよ」
踏襲して、沖田の髪を二、三度撫でた後、がくがく揺さぶり上げる。
「・・・・あッ、あ、・・・くぅ・・・・ッ・・・・」
両腕で縋った銀時の肩口に顔を埋めるようにして、沖田は感覚に耐える。
揺すられるたび、突き上げられるたびに勃ち上がっている沖田自身が銀時の腹部に当たり、それさえも擦り上げられて。
下半身だけでなく、上半身までも、腕までも指の先までもがかたかたと震えている。
本当に限界が近いのを見て取り、わかっていながらも銀時は問いかけた。
「・・・・イク?」
「あ! ぁ・・・あ、ぁぁ・・・・ッ・・・・っ」
あまりに強い快楽に、言葉は喘ぎにしかならなくて、沖田は答えられない。
見兼ねて銀時が身体の間に手を挿し入れ、とろとろに濡れて震える沖田自身の先端を指先で擦ってやったその瞬間。
「ひッ・・・・・! あ、ぅぁ・・・・ッッ!!」
ビクンと沖田の白蜜が再び弾け、互いの腹部を濡らす。
「・・・・う、ぁッ・・・」
吐精に連なって、銀時を押し包む内壁もビクビク痙攣を起こし収縮し、
容赦なく締め付けられた銀時も、そのまま沖田の中で絶頂に達した。
「・・・・ン、・・・・んっ・・・」
そのとき、僅かに身じろいだ銀時に、一瞬違和感を覚えた沖田だったのだが。
注がれてくる精の熱さに結局何も言えず、
おとなしく、達した余韻に浸ることにした。




























もう少しで夜が明けようとする中、そこは深い海の底のように静かで、
違うといえばここは空気があるということくらいか。
それでも、先程までまどろんでいた彼が目を覚ましているということは気配と、それと今までに重ねた経験からわかってはいたから。


「・・・・また、命賭けたバカ騒ぎに巻き込まれてたんですかい」


毛布の中、突然問いかけられてもそれほど驚きはしなかった。


「エ? 何?」


一旦は聞こえなかったフリをする。 けれど。
そんなこととっくに見破られている。


「旦那が俺を抱きに来るのは、決まってそんな騒ぎの後なんですぜ。 気付いてました?」


「何? 今日はたまたま道でバッタリ出会っただけだろ」


聞こえないフリはもう出来ない。 そもそも同じベッドの中に居るのだ。 最初から無理だ。
それでも、すっとぼける方向で貫こうとしたら。


「たまたまバッタリはあっても、たまたまその後こーやってSexするよーなコトはありゃしやせん」


一刀両断。 ものの見事に断ち切られた。


「でもってナマイキ言わせてもらえりゃ、」
「何だよ」
それまで背中を向けていた沖田が、ごろりと身体ごと向きを変えてきた。
部屋の中はまだ暗いはずなのに、至近距離、はっきり目と目が合う。
「・・・・今回は、一体何人殺りました?」
「・・・・さァな」
数えちゃいねーよ、と素直に答える。
実際本当に覚えていない。 見当もつかない。 わからない。
お前さんだってそーだろーよ、と告げてみれば彼はあっさり頷いて。
「俺ァ、もう何処の誰を殺ろうが、特に何も感じなくなっちまいました」
「・・・・・・・あァ、そう」
「強いて挙げりゃ、返り血で服と手が汚れて気持ち悪ィってくらいで」
「・・・・・・・俺もだ」


沈黙。 そして。


「・・・・・・・・・・・・この嘘吐き天パ野郎」
「・・・・・・・・・・・・お前さんもだろ」


互いに出てくるのは取り繕った嘘と虚勢と、あとほんの少しの何か。
こんなとき、むしゃぶりついて口付けの一つや二つでも交わせばきっとたぶんそれで有耶無耶にして終われたはずなのに、何故か揃ってそうする気にはなれなかった。
ただじっと見つめ合い(もしかすると睨み合いに近かったかもしれない)、
結局先に口を開いたのは沖田の方だ。


「アンタは白アリみてーにしぶてェから、そう簡単には死なねェって知ってます。 けど俺の知らねェところで、どっかで物好きなオンナ見つけて所帯の一つや二つ持っちまってるコトだって有り得ねーコトじゃねーかもしれねーし」


「いや・・・・そうそう有り得ねーだろソレ・・・・」
この現状でどーやってオンナ見つけろっていうのどーやってケッコンしろっての沖田くん、と入れる突っ込みを彼はさくっと無視をして。


「別に、旦那がシアワセになるのは構わねーんです。 旦那がラクに生きて行けるんだったらそりゃそれで嬉しいですぜ。 けど」


「・・・・ン?」


「そこに、俺を入れてくれたらもっと俺は嬉しいんですが」


「、」


真正面からの、
これは何だ。 これを一体何と言えばいいんだ。
思い返してみても、沖田とは一体全体いつからこうやって寝るようになったのかなんて今になっちゃ定かじゃないし、
身体から入った感アリアリ、いや間違いなく身体からの関係それだけの関係100%で、
そもそも惚れた腫れたの告白沙汰など最初から互いにあるわけがなかったし、
自分的には、まァこういうふうにこういうカンジになっちまったよわかるよね沖田くん? みたいな流れ、
そして沖田からは、あーじゃあ仕方ねーです皆にはナイショにしときますからそこんとこヨロシク頼みますぜ旦那、といった受け流しだったこと、ああそうだった。 その通り、それくらいは思い出せた。


「俺は少しは旦那の役に立ちますぜ。 そこそこ強ェから」
「うん知ってる」
「そんじゃ、ここで約束できますかィ」


まるで子供のようにせがまれて、
だから促がされるまま、


「・・・・・・・・じゃあ、今度な」


その通り頷いてやったら。








「そうやって真ッ正面から俺を見つめて、平気の平左で嘘をつける旦那が、やっぱ俺ァたまらなく好きです」








自嘲なのか哄笑なのか、僅かにSの欠片を唇の端に乗せた笑い方をした沖田から、
噛み付くようなキスをされて、その話はそこで終わった。
だからチェックアウトすれすれの時間まで、眠った。


























「・・・・そーいや、ちょっと気になったんですが」
「ん? 何」
「エッチの最後、旦那、なんか少し迷いませんでした?」
「〜〜〜〜〜、あ、バレてた?」
「あれ、一体何だったんですかィ」


帰り道、ずいっとズバッと訊かれて銀時は迷う。 が。
隠したってしょうがない。 黙っていたって何の得もなく。


「いや・・・・あのまま中出しすんのと、顔射にすんのどっちがイイか一瞬迷っただけ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、そうですかィ」
「ま・・・・間に合わなかったんだよ、カオまで」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうですかィ」






呆れたようタメイキをつき、少し前をすたすた歩く年下の警察官の後姿を見て、
次はもう少し本気に真摯に向き合って腹割って話してみっか仕方ねーな、と銀時は空を仰いだ。




まるで告白のようなあの時の沖田のあの言葉、
100%全て本気だと受け止めるつもりは勿論無いけれど、


まあソレはソレでちょっと楽しみじゃね?
と思わないでもなく。


そして何より、ちゃんと言葉もまだ何も返してやっていないから、
そのあたりもキチンとしねーとな色々とな、追々もしかして万一いずれ身請けするならさァ、
とそこまで考えて、慌てて苦笑と共に頭を振った。








いくら何でも、そりゃまだ早い。








けどソコまで、悪くもない。








決して決して、悪くは、ない。












銀さんて攻めもイケるんじゃないかなーーー、とはたりと思い立ってやってみました。
なんか中身はアレ・・・・?(滝汗)て感じになっちゃったけど、
実はけっこう書いてて楽しかったです。