銀さんおめでとうヅラ銀文







10月10日。




いつものように鼻息も荒く万事屋をロン毛の某指名手配犯が訪れ、
勝手に上がり込んで来ようとしたからいつものようにあしらい、門前で追い返そうとするも、
これまたいつものように奴の持ってきた甘物、手土産の誘惑に勝てず渋々いつもの和室に通すことになった。
そして一度奥に通す破目に、家屋内に上げてしまう破目に陥ってしまえばこれまたこれまたいつもの如く猪突猛進で 「ぎぎぎ銀時ィィィ!!」 と腰を摺り寄せ(キショイ!)、
カオを近づけフンフンと匂いを嗅いで来やがる奴に(冗談抜きでキモチワルイ) 我慢の緒が切れた自分が、
「離れろこのクソヅラがァァァ!!」
力ずくで引き剥がす殴り飛ばす蹴り離すのも毎度毎度のセオリー通り。
奴が万事屋の玄関戸を叩いた時からいつもの会話いつものやり取りいつもの顛末。
纏わり付いてくる桂をやっとのことで無理矢理引き剥がし和室にて向かい合い、
普通に話ができるまで、通常会話を交わせるようになるまでに最初から十数分が経っていた。




結局何が言いたいのかと言えば至るところつまり、いつもの如く万事屋に桂が押しかけてきているということ、
加えて本日は当の本人もほとんど忘れていた銀時の誕生日だったということである。
















「・・・・で?」
畳の上、やる気も欠片も見せずどさりと胡坐をかき、銀時は闖入者(訪問者でも往訪者でもない) の桂を見た。
眼前に立ったままのロン毛にチラっと上目遣い、言外にスワレと一応促してやる。
するとアイコンタクト 『お座り』 コマンドが効いたのだろう、即座に桂も腰を降ろし座り込み、先を促すと。
「何が欲しい、銀時?」
待ってましたとばかり、ずいっと身を乗り出し唐突に訊いてきた。
前置きも何もなく、いきなりにも程がある。
「は?」
たぶん銀時は思いきりワケのわからない顔をしたらしい。
そんな表情から見て取った様子の桂は一瞬驚いたようだが、すぐにコホンと軽く咳払いを一つして。
「今日は祝うべきお前の誕生日ではないか」
だから誕生日プレゼントに何が欲しいのかと訊いている、と先刻と同じ問いを再度。
一方、銀時の方は自分でさえすっかり失念していた程度、「あーそういやそうだったよなー」 程度の認識しかないこの日、
そもそも昔から自分の誕生日というものに桂ほどに重きを置いていないため、
どうにもこうにも実感がないというか沸かないというか、 ・・・・やる気がなく。
「金」
とりあえず今一番必要としているものを、言ってみた。
途端。
「・・・・。 いや、そのアレだアレ、もっと真面目に答えてはもらえんだろうか」
ほんの少し戸惑ったあと、真顔で真面目に桂は受け入れない。
どうやら冗談だと思われた様子である。 が。
冗談でもなんでもない。 特に今月は切実で家賃を払ったらもうほとんど手元に残らない。 下手をしたら電気・水道代さえ危ういというのに。
「・・・・。 俺ァ充分マジメに答えたつもりだけどよ」 
今月の少ない収入と多大な支出を考えただけで頭が痛くなる。
食費を切り詰めるにも限界があるし、そもそももうどこにも切り捨てる余地も何もなく。
「銀時?」
はああああ、と連続してタメイキをついていたら怪訝に思ったのか、桂が顔を覗き込んでくる。
顔だけ見れば、姿かたちだけならばそこそこ相応に見られるはずであるのに中身は思いきりのアレ(・・・・) なあたり、
天は二物を与えずというのはどうやら本当のことらしい。
そんなことを僅かに思いながら、現ナマがダメだっつーなら、と銀時は即興で言い換えて。
「なら商品券」
多少額面は下がるものの、金券ショップに持っていけば即現金になる。
我ながらいい考えだと思ったのだが、これまた桂には不評だったようである。
それともまた冗談だと思われでもしたか。
「そ・・・・そういうモノではなくてだな、もっとこう、もっと他のそれっぽいモノで何か」
「はァ?」
何だそれ。 『もっと他のそれっぽいモノ』 て何だ。 主語が一つもない。 形容するものもない。
桂は他の何かを示唆したいらしいが、それにしても判りづらすぎる。
とは言えなんとなくのニュアンス、微妙なあたりはこの今の空気と先刻の会話の端々で多少のところはわからないでもなく。
つまり 『金』 から離れれば、 ・・・・何とか。
「そんじゃ米俵」
言いながら思った。 これはいい。 これなら少なくとも今月の餓死は免れる。 米さえあればどうとでもなる。
どれだけ大食いの神楽でも流石に米俵一表は食べ尽くさないだろうし。
なのに。
「ぎ・・・・銀時・・・・」
眼前の桂は、がっくり肩を落とす。
「それではあまりにも、アレ・・・・ではないのか」
と、語尾には先ほどの銀時のついたタメイキの倍もある大きなタメイキ。
最後のそれが、何だか妙に銀時の癇に引っかかった。 無性に癇に障った。
「ああああ!! ヅラァ!! さっきからテメーはアレだのソレだのあーだこーだ訳わかんねーっつーの!!」
欲しいモノを言えっつったから正直に答えりゃアレだソレだ、
だったら最初っからヒトに聞いてくるんじゃねェェェ、とプチ切れてやったところ、
「す、すまん、わかった。 わかったぞ銀時、米俵だな。 コメダワラ。 コシヒカリでいいか? コシヒカリの米俵。 その米俵一表でいいな?」
「米俵コメダワラ連呼するんじゃねーよ! なんか悲しくなってくるだろーがこっちがァァァ!」
百歩どころか千歩ほど譲って頷く桂。
大抵コイツはいつもそうだ。 ヘンなところでやたら押しが強いくせに、こういうところでは大概ヤツが先に譲って謝る。
そうされては銀時としてもこれ以上の憤懣をぶつけるわけにもいかず、
(ったく・・・)
舌打ちを最後に矛先を収めざるを得ない。
こんな図を端から見ていると力関係はどう見ても銀時が上、に一見感じてしまうのだが、
桂が下手に出るのにも奴なりの自分に対しての処世術というか計算というか、そういう因も多大に含まれているらしい実情も無きにしも非ずで。
(・・・・・・・・・・・・)
まあそんなこと、今はどうでもいい。
少し怒鳴ったら急に喉が渇いた。
食い物には乏しいけれど、まだ水道は止められてはいないし今のところガスも使える。 確か茶葉もあったはずだ。
すっくと立ち上がり、そんな自分の動きを目で追っているヅラに、一応。
「・・・・。 俺が飲みてーから茶、淹れてくる。 テメーは」
どーすんだ、と無言で聞くと。
「お前が淹れてくれるのなら俺はドブの水でも喜んで飲むぞ? いや、お前のなら下水も・・・・」
至極嬉しげなカオをでそんなふうに馬鹿げた返答をバカ桂はしてきて、
「あー、頼むから黙れ。 黙れなきゃ去ね」
最後まで聞かず、銀時はどこまでも冷たく言い放って台所に向かう。




バカだ。
全く持ってヤツはバカ以外の何物でもない。 バカヅラアホヅラ変態ヅラ小太郎だ。
こんなヤツが攘夷派一派のヘッドだなんて頭領だなんて何かの間違いじゃないのか最初から。
それともヤツがオカシイ(いろんな意味で) のは自分の前でだけなのか。
自分以外の人間にはそこそこ普通の対応でマトモを取り繕っていたりするのか。
「・・・・・・・・」
考えてもそのあたりは当然さっぱりわからず、
考えるだけムダでただ労力を使うだけだったから、そのあたりで思考をきっぱり止めた。




それでもヤツをそれほど拒まない自分、
昔からの腐れ縁とはいえ三回〜五回に一度程度の割合で触れさせてやっている自分のその意味に気付き、
思わず憮然とした苦笑が小さく浮かんだところで、湯を沸かしていたピーピーヤカンがその名の通り、ピィッと甲高い音を立てて鳴った。
















果てしなく大雑把、色さえ付きゃいーやとぞんざいに淹れた湯呑み茶碗を持って和室に戻ると、
意外というかごく当然というか、桂はきちんとおとなしく座って待っていた。
そして置いてやった緑茶をずずずと啜りながら穏やかに。
「本当はな、今日という日が来る前に攘夷が成功していたら、誕生祝いとしてお前に江戸の町をくれてやるつもりだったのだが」
涼しいカオをしてやんわり物凄いことを言う。
「この町をこう、お前がスキなときにスキなところでスキなだけタダで甘物が食える町にして、そうだな、町名も改名して銀時シティとでも名付けるか」
「・・・・・・それって単なる独裁者ってヤツじゃねーのか」
「そうとも言う」
ケロリ。 あっさり頷きやがった。
「いらねェ!! 第一にしてんなこっ恥ずかしい名前の町なんざ絶対いらねェェェ!!」
万が一、一億分の一でももしも実現してしまったなら間違いなく末代までの恥だ。 この上ない悲劇だ。
「そうか?」
なのに真顔で聞き返すヅラ、やはりこいつはおかしい。 根本的なところからおかしい。
「個人が町丸ごと貰ってどーすんだオイ。 不況だの年金問題だの就労問題だの社会保険問題だの、
世間一般のメンドー事まるまる全部俺がそっくり背負い込みますってか? 冗談じゃねーそんなん絶対にゴメンだ」
自分で言いながら自分の現状と照らし合わせて何だか虚しくなってきた。 突き詰めて考えてしまうと頭痛まで起こしてしまいそうだ。
だから、さっさとこんなバカな話はやめて切り上げようとしたら。
「そうか」
ポツリと桂は頷いた。
「・・・・そーだよ」
頷き返すと、また呟く。
「面倒は嫌か」
「ゴメンだ」
「・・・・そうか」
言い切った銀時に桂は少しだけ困ったような、それでいて小さく笑ったような。




「なあ銀時」
こんなとき、大抵先に口を開くのは桂である。
だから銀時は奴が何か言い出すのをただ待っていればいい。 こんなふうに。
「何だよ」
「お前を見るたび、無理矢理押し倒したくてたまらなくなる」
「・・・・去勢しやがれ」
「そうしたらお前も困るだろうに」
「〜〜〜〜〜〜!!!!」




妙に余裕綽々の桂の言い草に、脊髄反射。 頭より何より体が先に動いて、思いきり殴ってやった。 なんだその笑みは。 ヅラのくせに。
「お・・・・思いきり顎に・・・・」
それでもしぶとく自分に手を伸ばしてくる桂の襟首を引っ掴んで床に倒れて雪崩れ込む。
自分にだってこんな日もたまにはある。




脈絡はない。 誘いに乗ってやったわけでもない。 ただなんだか急に 『そんな気分』 になった。 それだけだ。

























前触れもなく引き倒され、流石に瞬間は驚いた桂だったのだが、銀時から求められたと気付くのに一秒と時間はかからなかった。
布団も敷かず直に畳の上、そのまま絡み合いながら口付けて貪り、
やがてどちらからともなく舌と口唇とを離していくのだが、桂はやはりキスが終わってしまうのが名残惜しい。
これから先に更なる深い行為が待っていようとも、いつもそう思う。
なんとか口付けたままいられないか、無理難題であるにも関わらず試行錯誤していたら、
いつまで吸い付いてやがるこのバカ、と痺れを切らした銀時がさっさと離していってしまった。 残念だ。
それでも、
「お前の口は心地が良いな」
至近距離から話しかける。
「はあ?」
真面目に言ったつもりだったのだが、不審げに怪訝そうに銀時は眉を上げた。
「いや、身体も同じくらい心地良いのだが。 というか最高なのだが。 最良。 というか至高。 至上」
伝えたくて重ねた表現が、少しくどかったらしい。
「・・・・! いちいちウルセーよ!」
軽く怒られてしまった。 けれど桂は気にせず、唇の位置を動かしてぺろりと銀時の耳朶を舐め上げる。
「ッ・・・」
と、ぴくっと僅かに反応を見せた。
「感度も極上で・・・流石だな銀時」
「黙れヅラ・・・・!」
反駁してこようとしたカワイイ口をもう一度キスで塞ぎ、
その間に性急に早急に銀時の、そして自分の衣服を取り去っていく。 こんな時、自分の着物はとても都合が良い。
そうしてほとんど脱がし終えたところで、くるくるクセっ毛やわらか猫っ毛のかかる襟足部分、首筋に顔を埋める。
頚動脈のあたりをそろりと舐め上げ、それからところどころ部分的に丁寧に、跡を残したくて強めに吸い上げた。
途端、
「バカヅラ・・・・ッ、跡、つけんじゃねッ・・・・!」
また怒られた。
それはそうだ。 桂と違って髪で隠しようがない銀時としては、そんな目立つ箇所に跡を幾つも幾つも残されてはたまったものじゃない。
歳相応の新八はともかく、神楽の情操教育に悪すぎてしまう。
けれどバカヅラアホ桂はお構いなし、
「俺は付けたい」
言って一際強く吸い付き、大きく紅い跡をくっきり残してきた。
「こ・・・・っの・・・・」
ワガママ野郎を憎たらしく思うものの、一度そういう気になってしまった身体は首筋へのキスと、素肌の胸元を弄る手に従順に反応する。
「ッ!」
胸を撫で回していた手のひらと、指。
その両方が形を見せ始めていた胸の突起に引っかかり、銀時が大きく反応を見せる。
ぷくりと丸みを帯びる両方の小さな肉粒。
桂から向かって左の粒は指先を使いカリカリと引っ掻き転がす愛撫、
そして同じく向かって右側、銀時からは左でちょうど心臓に近い位置にあるもう片方には舌を寄せ、唇ごと吸い付いて味わい刺激した。
「・・・ッ・・・・く・・・!」
かすかに心音が聞き取れる中、ちゅ、ちゅ、と赤ん坊のように断続的に強く弱く吸い上げていくうちに、
密着させた身体のもっと下、下腹部のあたりで銀時自身が熱を持ち始めるのがわかる。
あまり胸に吸い付いているとまた 「しつこい」 と怒られてしまうため、それを切っ掛けに桂は胸元から意識を切り替え、
銀時のしなやかな脇腹から腰骨のあたりを撫で手のひらを滑らせ、反応しかけの銀時自身にするりと指を絡ませた。
――――っ!!」
間髪入れず、びくっと大きく仰け反る身体。
その身体より手足より幾分か高い熱を湛える銀時自身に、先端から零れつつある透明な蜜を塗り込めながら手全体を使い、優しく上下に扱いていく。
けれど銀時が愛しくて愛しくてたまらない桂は手だけでは物足りなくて、もっともっと快楽を与えてやりたくて、
一擦りごとに熱と硬さを増していく中心部への愛撫を送りながら、そっと耳元で。
「舐めても良いか?」
「・・な・・・・ッ・・・・! ぅあ・・・・!」
疑問系にはなってはいるが、ストレートな物言い。
やめろやめろそこまですんじゃねェ、と思いきり遠慮したいのだが手と指によって紡ぎ出される快感に煽られ、
断固拒否とたくとも銀時の口をついて出る声はきちんとした言葉にはならない。
その口の代わりではあるまいが、桂によって何度も何度も扱き上げられた銀時自身はすでに先走りの蜜で濡れ落ち、
絶えずの手の動きに合わせ、淫靡な水音がちゅくちゅくと。
「っは・・・・ッ、・・・このまま、で・・・・構わね・・・ッ・・・・」
このままの愛撫で充分だと荒い息の元、伝えたつもりの銀時の意、は。
「お前が構わなくとも俺は構いたい」
一言のもとに葬られ、桂はしとどに濡れた銀時自身の先端をぱくりと銜えた。
「!! ッく・・・・は・・・ッ・・・!!」
粘膜を粘膜で包み込まれる淫猥な刺激に、大きく震えたのは銀時だけでなく下の双珠も同時。
口で先端を銜えた途端、とぷっと溢れた大量の蜜が桂の唇を濡らしたのだがそれは透明で瑞々しい。
普段ちっとも素直になってくれない銀時とは対極に、どこまでも正直な身体の反応が嬉しくて、銜えた先端部分をしっかり愛してやった。
「ぅ・・・あッ! あ、・・・・っ・・・・、・・・なッ・・・!? す、んな・・・・っ」
するなと言われても括れの部分まで銜え込み、舌で穴孔をくいくい舐め回す。
舐めた先からじわじわ蜜の浮いてくるそこはとてもとても甘くて楽しくて、執拗に弄った。 勿論その間も根元を手で愛撫し続けることも忘れない。
「・・・、あッ・・・・あ・・・ッ・・・!」
敏感な部分をピンポイントで弄られ、早くも銀時は追い詰められてくる。
荒い呼吸と、せわしなく上下する胸、そして徐々に力の込められてくる太腿とで桂は銀時の限界を察知し、
彼が告げてくる前に先手を取って絶頂を促してやるため、銀時自身全体を口腔内に招き入れた。
そのまま口唇で締め付けながら舌を使って強く強く裏側を擦り、辿ってやる。
――――っく・・ッ・・・!!?」
全体をすっぽり生温かく覆われ、ぞくぞく腰が戦慄く銀時は、自らから片時も舌を離そうとしない桂を何とかしようと、その長髪をグイグイ引っ張るのだが、
一度吸い付いたら離れないその様は見上げたものだ。 ちゅうちゅうとちっとも離れない。
そして桂は頃合を見計らい、色付いて敏感な先端の穴孔に尖らせた舌先をぐりぐり捩じ込む。
絶頂の寸前まで高まっていた銀時は、それが限界だった。
「ッ!! んぁ・・・・ッッ・・・・!!」
堰き止めるものは何もなく、銀時自身は白蜜を弾けさせ、
桂は吐精の瞬間も一度たりともそれから唇を離さず、銀時の放った白蜜を一滴も残さず零さず飲み込み飲み干した。


こんな甘くて上等なもの、畳に吸わせてしまうなどと勿体無さ過ぎることなんて出来るわけがない。








「っ・・・・、は・・・・。 あーーー・・・・」
一旦欲を放った銀時が、ぐったり身体を投げ出した。
桂は口内に残った蜜の残滓を自らの唾液と共に飲み込み、乱れて落ちてきた後ろ髪をぱらりと掃いながら顔を覗き込む。
「大丈夫か、銀時・・・?」
「・・・あー・・」
気だるげに面倒くさげに銀時の首が縦に振られ、それから。
「・・・・布団」
「何?」
とろんとした目と、顎が桂の斜め後方を指し示した。
「そこんとこの棚に置いてあんだろ、敷け」
「、ああ」
そうだな今からは一応敷いておいた方が無難だな、と言われるまま持って来て、指図通りに。
それから、自らが中に入る準備に取り掛かった。
ゆっくりとうつ伏せにさせ、こちらに向けて腰を上げさせる。
眼前の最奥に、自分でも知らないうちにごくりと喉が鳴っていた。 銀時にはいつだって興奮する。 いや、銀時だけだ。 自分がこんなになるのは。
「触れる、ぞ」
最初から返事がないことはわかっていつつも、いつもいつも告げてしまうのは銀時に対してというより自分に対してなのかもしれず、
・・・・そんなことを思いながら自らの唾液で濡らした人差し指を、まず丁寧にくぷりと差し入れた。
「・・・・ッ」
熱い。
明確に外側より熱いのだが、まだ硬いその入口を柔らかくほぐそうと、入れた指にそっと舌を寄せ潤いを助ける。
「ふ・・・・!」
最奥入口で濡れてやわらかに動き回る舌の感触を直接感じて、銀時は手元の布団をきつく握り込んだ。
こんな馬鹿丁寧な慣らすための愛撫は、桂のクセだ。
少し前までは止めろんなトコ舐めんじゃねェ、とその都度その都度言っていたのだが、
どれだけ言ってもどれだけ蹴飛ばしてやっても懲りずに舐めてくるからもう言わなくなった。 諦めの境地というやつである。
それを良いことに桂は舌に唾液を乗せ送り込むと同時、指をもう少し奥まで埋め、銀時の悦点を探していく。
「く、・・・・うぁ・・・ッ・・・・ッ・・・」
銀時は内壁の隅々を擦られ探られていく感覚にどうしても堪えきれない声と吐息を抑えようとする。
が、入口のあたりをずっと彷徨っていた舌がそっと抜かれ、代わりにもう一本、今度は人差し指より長い中指が増やされ、
突然。
「い・・・・ッ!!」
中指の腹で押し上げられた前立腺。
目を見開いて反応してしまうほど、激しい快感がそこから脳天まで一気に貫く。
そのまま同じく指の腹を使われ、内壁自体とは違う前立腺の触り心地を確かめられるかの如く、何度も何度も触られた。
「自分でわかるか銀時、 ・・・此処だろう?」
「ひッ、あ・・・・!! ・・・っう・・・・!」
軽く擦られるだけでも今にも漏れそうな快感に苛まれ、たまらない。
びくびく震える身体に両膝はがくがく揺れ、全身から流れ出る汗が肌を伝って落ちる。
熱い。
下肢から布団に落ちた雫は汗なのか、それとも体液なのかわからないくらいに熱い。
「離・・・・ッ・・・・、ぅあ、指・・・抜けっ・・・・ッ・・・」
「嫌だ」
銀時から息も絶え絶えに命令されたが、桂は一言で否と返したが早いか、更に前立腺を擦り上げていく。
加えてもう片方の手を前に回し、再度完全に息を吹き返し勃ち上がって戦慄く銀時自身にも指を添えた。
「ッ・・・っ・・・・!!」
添えた指でつうっと根元から先端、また根元へと一往復、それからもう一度先端まで指先を持っていき、
白と透明の混じった体液のぬめりと穴孔の感触、そして銀時の喘ぎを少々意地悪く楽しんで。
と、内側と外側の両方から愛撫を受ける銀時の腰がぶるっと震えた。
その拍子に、意図していなかった角度と力加減で内側の指が思いのほか強く激しく悦い一点をピンポイントで突いてしまい、
瞬時に高みに持っていかれる身体。
「ッ! ひ、・・・・ァっ・・・!!」
強制的に弾けた二度目の白蜜を滴らせながら、銀時は身体を支えていた腕ごとどさりとうつ伏せに前傾姿勢のまま、崩れ落ちる。
これに、多少なりとも焦ったのは当然にして桂で。
「・・・・す、すまん。 すまん銀時、加減を間違えた」
情けなさ最大限で慌てて後ろから顔を覗き込もうとすると、恨めしそうな目が力なく睨み付けてきた。
「っ・・・のバカヤローが・・・・」
「すまん」
もう一度謝りながら腕を伸ばし、銀時の体勢を変える。
ここに来て何の抵抗もせず、桂に体勢と態勢を委ねてくるということは、銀時の準備も出来ているということだ。
大して苦もなく仰向けにさせた身体、そして太腿の両側に手を入れ持ち上げ、両脚を開かせた。
「挿れるぞ」
繋がる瞬間は、たぶん銀時より自分の方が動悸が激しいのではないかというほどで。
だがこの心境を何と表現すれば良いのか桂はわからない。
銀時相手に (するには無論しているのだが) 今また興奮している、と言うのとは少し違う。
かと言って感奮しているのとも全然違うし、気負っている・・・・わけでも多分、ない。
いつもいつもよくよくわからないまま、ただ心臓の動悸だけがこの瞬間、やたら大きく聞こえてくる。 とりあえず今の今まで失敗したことが救いか。
「銀時」
先端を宛がい、すうっと息を吸い、ゆっくり吐きながらゆっくり腰を進め侵入させた。
「う・・・・」
散々ほぐされた最奥は、柔らかく蕩けながらも狭く絶妙の締め付けをもって桂を迎え入れる。
「・・・っ・・銀時・・・・」
「ァ・・・・!」
丁寧ながら、確実に押し入ってくる質量の異物感と熱、内側を擦られる感覚に銀時が唇を噛んで堪える。
そんな表情も桂に快楽を連れてきて、
「いつ入っても・・・お前の中は処女のようだな」
「バ・・・カ言ってんじゃね・・・・ッ・・・!」
思わず正直に呟いたら、こんな時でも即怒られた。
そうだ。 銀時の言う通り馬鹿なことだ。 女より悦い。 比べる対象など何処にもない。 誰でもない。 銀時がいい。
自分がこれほど執着するのは銀時だけだ。 それだけでいい。
そんなことを今更考えながら、奥までぐいっと腰を使う。
「っあ!」
最奥に届いたのか、びくッと反応する銀時に桂は笑いかけた。
「去勢しなくて良かっただろう?」
「〜〜〜〜ッ・・・・切り落としやがれ・・・・ッ・・・・!」
こんな時でさえ暴言を吐くところも愛しい。
しばらくこのまま問答を続けてみたいような気もしないではなかったが、残念ながらそうそう自分の我慢も持たず、
「・・・それなら、このままお前が喰いちぎってくれればいい」
相応に至る箇所に問題有り、な捨て科白を呟き、何か言いたげに喘いだ銀時の口唇をキスで覆った。
「ん! ん・・・・ッ、・・・!」
深く口付けたまま、腰をぐっと突き上げる。
穿たれる激しさに銀時が首を振り、桂の口唇から逃れようとするけれどしつこく食い下がって離さない。
けれども互いに呼吸がせわしないこんな状態でずっと口を塞いでいれば、どちらもすぐに空気が足りなくなってしまう。
だから息継ぎなし、その限界の一歩手前まで口唇を貪り尽くしてやっと解放し、
離れてしまった口唇の分もばかりに激しく下肢は責め立てた。
桂自身の打ち付けに、濡れた内壁からは粘着質な水音が響く。
「、ぅあッ、あ、あ・・・・ッ・・・ッ・・・・!」
うねって絡み付き、蠢き締め付けてくる粘膜壁の齎す快楽に、桂の息も格段に上がってくる。
「・・・・っ・・・!」
このまま全部銀時に搾り取ってほしくて、夢中で突き上げを繰り返した。
中でも弱く、一番彼が悦ぶところを狙って集中的に抉っていく。
「・・・んぅッ・・・・っ! っ――――ッッ!!」
ぴたりと密着した桂と互いの腹部の間で擦られ、濡れて勃っているのは三度目の硬くなった銀時自身。
ぐいっと些か乱暴に捕らえ、先端部分を親指と人差し指で摘まんで擦りつつ、くいくい揉み扱く。
「や・・・・めやが・・・・ッ・・・・!」
激しく穿たれた上、入念に綿密な愛撫刺激を受けた銀時の絶頂が押し迫るにつれ、内壁も桂自身を痛いほどきつく包み、
収縮する粘膜が吐精を誘った。
「銀・・・・ッ・・・」
強く蠕動し締め付ける肉壁に促され、一拍の間を置いて桂は欲を注ぎ込む。
大量の熱液が身の内で溢れ、体温に体温がかかった瞬間、銀時の身体もかたかた痙攣して。
「ッ・・・・! ぅ、ア・・・・っ・・!!」
同じく一拍間を置き、大きく身体を仰け反らせた直後、達した。























帰り際、桂が万事屋を辞していく際。
「例の米俵は何とか三日以内に届けよう」 などと悠長なことを言って出て行こうとしたので、
何がなんでも明日中に届けろ、でねーと餓死する。 と急かしてみたら。


翌日の昼前に突然どかんと届いた。
留守番の新八の話によれば、自分が少し外出していた時にどうやらエリザベスが持ってきたらしい。
大量の白米に、「これでしばらく命が繋がった」 と喜ぶ神楽と新八を横目に銀時は二人を不憫に複雑に思いながらも、
なんだこの手際の良さはよォ、と感心しつつも少なからず桂に驚く。
そして米俵にオマケとばかりに付けられていた一通の封筒、中の手紙には、
『コシヒカリは入手出来なかった。 すまん』 の一筆。
「・・・・あ?」
と、見てみれば届いた銘柄はコシヒカリではなく、あきたこまち。
「馬ッ鹿じゃねーの?」
コッチは何だって構わねーのによ、と苦笑する。 新潟産と秋田産。 食えりゃどちらでもいい。 どちらにしても美味い。
それによく見ればなんと今年の新米で、逸早く気付いた新八が 「あああありがとう桂さん!」 と重ねて喜びを深くする脇、
手紙の二枚目にこっそりクリップで留められていたもう一枚の婚姻届を銀時はその場で破って捨てた。




誕生日にかこつけた米俵の一つや二つで釣ろうなんて、甘いにも浅慮にも程がある。












そんな銀時を眺めやりながら神楽と新八が、
「銀ちゃんがさっさとヅラと引っ付きゃ、ずっと食い物には困らないアルね」
「違うよ神楽ちゃん、もうとっくの昔からくっ付いてるんだよ。 でもオトナには色々あってさ」
こんな会話を憚らず堂々と交わしていたけれどここは全く聞こえない&聞こえていないフリで遣り過ごす。




「フーン。 大変あるネ」
「そうだよ。 僕だって二人のためにその度その度タイミング計って留守にするの大変なんだ」
「逢引か! 私たちを追っ払っておいてヅラと逢引アルか!!」
「・・・仕方ないよね。 そのおかげで今回も食糧危機を乗り越えられるんだから。 神楽ちゃんだって米がなかったら困るだろ」
「困るアル」
「だからさ、少しくらいは黙認しようよ。 もし僕たちがワーワー騒いで桂さんと一緒に銀さんまで捕まっちゃったりしたら、それこそ路頭に迷うのは僕たちなんだし」
「そうネ。 じゃあ我慢するヨ。 万一まぐわいの真っ最中に出くわしたとしても見なかったフリするネ」
「うん、それがいい」
「あーあ、雇い主がホモだと周りもいろいろ大変アル」
「おまけに相手はテロリストの全国指名手配犯で、見事に三重苦だしね・・・」
「エリーも苦労してるネ、きっと」
「僕たちもだけどね」
「・・・・・・」
「・・・・・・」








どうやら、 ―――――――― どこかで自分は二人の情操教育を間違ったらしい。












丸三日遅れての銀さんお誕生日お祝い文です・・・・あああ。
タイトルはもう何にも思いつきませんでした。 なのでそのまんま。  ・・・・もう逃げよう。