花見銀





「あーやっぱ俺の記憶は正しかった。 確かてめーんトコに桜の木が何本かあった気がしてよー」
「それは都合が良かった」




それはそれは見事な満月と、
それはそれは満開に咲き誇った桜と、
適当に旨く適度に高価な酒と、




―――――― それはそれは愛おしくてたまらない坂田銀時という来訪者。




前触れもなくふらりとやってきて上がり込み、「花見させろコラ酒飲ませろコラ和菓子も食わせろこのヅラァ」 とどっかり畳の上に居座り始めること十数分。




「? 都合?」
僅かに首を捻る銀時に、
「ちょうど見頃になったものでな。 こちらから誘おうと思っていた矢先だった」

桂は 「まるで以心伝心のようだ」 などという安っぽい言葉は決して口に出さず、開け放った窓の外、
月明かりの下の薄桜色を横目で眺めながら、
空になった銀時の猪口に手酌で酒を注いでやった。
それからがさごそと戸棚をあさり、こんな時のための甘物備蓄として常時取り置いてある栗最中を一箱提供する。
「だからこんな高けー酒の用意があったのかよ」
注がれた酒をぐい、と銀時が一気に飲み干すのを見届け、もう一度同じ動作で注いでやりつつ、
「桜の花見は江戸の風流だからな。 たまには旨い酒を味わいながら静かに桜見物をするのも良かろう」
自分の器も九分目までなみなみと満たし、同じように一気に呷って視線を向ければ。
銀時は 「確かにそれも悪くねーか俺としちゃタダ酒だしな」 と小さく笑って頷き、僅かに身を乗り出して窓の外を仰ぎ見た。
「オマケに満月も出てるしな。 完璧な花見月ってやつか」
「ああ」
銀時を倣い、見上げた庭の桜の木の上に燦然と浮かぶ満月の光は穏やかで柔らかで明るいけれどそれでいてどこか冷たくて、
「・・・・・・・・・・」
そんな月光に照らされる桜を堪能するフリをしつつ、銀時を盗み見る。
「・・・・何だよ?」
「、いや」
「変なヤツ」
「・・・・」
盗み見たつもりだったが、呆気なく察知されてしまった。
が、


―――――いい雰囲気だ。


酔いも手伝っているのだろうか、それとも与えた栗最中が効力を発揮したのだろうか、どちらにしても普段と比べて格段に漂う雰囲気がいい。
思わずごくりと唾を飲み込みたくなくなってしまったが、まだ早いか。
前回は必死で決死の求婚をしたにも関わらず(※『エロテロ』参照)、無碍にもあえなく一蹴されてしまったけれど、
突然やってきたこのチャンス、今回こそは今度こそは今夜こそは雰囲気と酒に乗せて上手く運びたいのである、桂としては。
先日からこっち、まったく銀時との逢瀬を持てなくて延々と禁欲させられていた試練の日々を発散させたいのだ、
思いきり愛し合いたいのだいっそのこと夜が明けるまで、いやいや出来ることなら許されるのなら一週間でも十日間でも一ヶ月でも。
「・・・・・・・・」
実際は今にも飛びつきたい押さえ込みたいがぶり寄りたい衝動を抑えつつ、何気なし逸る気持ちを僅かにでもそらさんがため、
小さく咳払いをして。
「なあ銀時、今夜は妙に月が大きく見えるのは気のせいか?」
先程からぼんやり思っていた疑問を口に出してみた。
そうなのだ。
満月だから、などという以前に今夜出ている月は不思議なことにやたらとでかい。
いくら自分もほろ酔い加減だからといって、そんな錯覚を起こすまでは流石に酔っ払ってはいないし。
というかそこまで酔っ払うわけには行かないのだ。
酔っ払ってしまってはリアクションも何も起こせなくなってしまうし、何より銀時を酔い潰せない。
酔い潰せなくなってしまったら今度はいつこんな僥倖が訪れるかもわからない。
ぶっちゃけるとこんなチャンスを決して断じて無駄にはしたくない。
今回のこれを逃したら、次はいつ触れられるかも定かではないというのに。
「・・・・・・・・」
そんな桂の心情知らず、訊ねられた銀時はごくごく簡単に、あっさり返事をしてきた。
「ああそりゃアレだろ、月がやたらでかく見える時はどっかで悪だくみが進行してんだよ」
「・・・・何、?」
あっさりと返された意味深な言葉に、思わず動きが止まる。
「な、」
まさかまさかこの下心なんてとっくにお見通しだったのかお前は、と背中を冷たい汗が流れたところで。
「・・・・って、むかーし高杉のヤローが言ってたぜ?」
「・・・・高、」
思ってもみなかった人物の名前が思ってもみなかった方向で出てきた。
「・・・・高杉」
そのことがあまりに意外で、ついつい名前を繰り返してしまったら。
銀時に、更に意外そうな顔をされてしまった。
なんだよそんな深く考えるコトじゃねーだろーが。 嘘っパチだろ嘘っパチ。 結局は空気と水蒸気の屈折率がどうたらこうたらってヤツだろ確か」
「・・・・・・・・」
「前に坂本のヤツからそんなコト聞いたよーな覚えがあってよ。 細かいこたぁ忘れたけど結局は屈折率の錯覚でそう見えるだけらしーぞ」
またまた互いの旧知の名前が出てきた。
「そう、なのか」
「正しいかどーかは知らねーけどな。 坂本の言うコトだから」
「・・・・・・・・」
連続して名前を聞かされ懐かしいと思う反面、その口から他人の名前が出ることに僅かな嫉妬も感じてしまい、
「・・・・坂本」
胸の内、メラッと嫉妬の炎が燻り始めたところで。
「ま、てめーがまたテロとかテロとかテロとか企んでるワケじゃねーなら、坂本の方が正しいんだろーよ」
「な、」
身も蓋も無い銀時の物言いに、何を言うテロと言うなテロなどと、と反論しようとしたのだが。


「なァ?」


「・・・・ッ、」
真正面からふっと見返され、加えてその際の銀時の口許に小さく浮かんだ笑みに、思わず息が詰まる。
「ぎ、・・・・銀時、」
「あ?」




駄目だ。




先程の僅かな嫉妬と、
(銀時本人はきっと無意識なのであろうけれどきっと酒のせいなのであろうけれど) 目の前の、誘ってたまらない口許。
「か・・・・」
「はぁ?」
そしてこの、夜に二人きりという垂涎モノのシチュエーション。




「可愛いぞ銀時・・・・!」
「うぉあッ!!?」




あともう少しは持つと思われていた理性は、脆くも儚くも怒濤の欲望にかき消されて。




畳の上、がぶり寄って勢いに任せ、そのまま強引に襖を開け隣の寝室へ連れていく。 無理矢理布団の上になだれ込む。




「ちょッ、ちょっと待て、待てコラァァァ!」
「待たん」
制止されようが暴れられようが、一度荒くなった鼻息は収まらない。
「花見してたんじゃねーのかよテメーはァァァァ!!?」
「俺はお前しか見ていないが?」
「ッ・・・・!! 毎回毎回だからテメーは気持ち悪ィってんだよ!! もう泥酔してんのかコラァ!?」
「酒よりお前に酔いたい」
「〜〜〜〜〜! 俺の食いかけの最中は! テメーのせいで落っことしちまっただろうが! ついでに俺の酒はどうすんだよコラァァァァ!!?」
「・・・・。 花など見ていても腹は膨れん。 酒は後でまた飲めばいい。 最中は・・・・潔く諦めろ」
そうだその通りだ、花より月より酒より何より優先すべきは銀時だ。
よくよく考えてみたら、目の前に銀時が居るというのに、のんびり花見などしていられるわけがない。
「ってテメーさっき花見は江戸の風流だとか何だとかぬかしたばっかじゃねーか、何言ってやがるこのヅラ・・・・!」
「そんなモノで俺は満たせん」
「何ソレ! 何それェェェェ!!」
じたばたギャアギャア抵抗されるけれど、身体を使って抑え込み、いつものパターン。
とは言え、 ・・・・万が一にも本気で銀時に抵抗されてしまった場合、良くて相討ちというところであるあたりが哀しいが。

ばさばさと自分の帯を解き、合わせて銀時の着物も剥ぎはじめた。
「たッ・・・・高杉の言う通りじゃねェか・・・・!」
「何がだ?」
唐突にそう喚き出した銀時をひょい、と覗き込んだら。
「テメー、思いっきり悪だくみしてやがったじゃねーか何でこうも周到に布団が敷いてありやがるんだ一体・・・・!!」
ものの見事に的を得られてしまっているが、ここはシラを切り通した。
「いや、悪だくみなどしていないぞ?」
が、
企んでた証拠だろうがよォこれがこの現状が! と引き続き喚かれてしまって。




「・・・・目論んでいただけだ」




ついつい出てしまった本音本心、ぼそっと呟いたら。




「どっちも同じじゃねーかァァァァ・・・・!!」




銀時はそう叫んだけれど、
「企み」と「目論み」は国語的観念からすると残念ながら少々違うのだ。




【企む】→ 『たくら・む』 くわだてる。 よくないこと(悪事を)を計画する
【目論む】→ 『もくろ・む』 物事をしようとして考えをめぐらす




別に悪事なんて計画していたわけじゃない。
悪事などではなくてワルイコトなんかではなくて、少しでも引っ付いていたいがため考えを巡らせていただけで、




どちらにしろ行うことは全く持って同じなのだけれども、








――――― 物は言いよう、だ。
























「ン・・・・んッ・・・・!」
騒ぐ唇を無理矢理自分の唇で塞ぎ、吸うのに夢中になりながらも銀時の衣類を次々と取り去っていく。
思いきり味わったあと、最後に軽くもう一度吸ってから唇を解放してやると、
放した途端に当然にして睨みつけてきた。
「そう睨んでくれるな」
「・・・る、せッ・・・!」
苦笑混じりで宥めるように言ったところ、吐き捨てるような口調と共に更に更に睨まれてしまったけれど、
そんな目も身体を重ねれば時間の経過につれ、次第に蕩けて熱を帯びてくることも桂は知っている。
そして普段は茫漠としつつも傲然とした(それは自分に対してだけか?) 銀時が、
行為の最中に大きく膝を持ち上げられた途端に身じろぐ姿などは本当に本当に可愛くてたまらないもので、
一分でも一秒でも早くそんな姿を見たくなってしまう。


「・・・・・」
逸る情欲に、自然と息が荒くなる。
普段ならもう少し言葉遊びにも似た応酬をかわすところだが、今日は貪るかのように真っ直ぐ銀時の胸元に口付けた。
僅かに摂取した酒の影響だろうか、いつもは先行して行う首筋や肩口などへの愛撫を送る余裕が今はない。
口付けたまま、ほんのり色付いた胸の飾りに舌を伸ばすと、
背中に回した腕で抱き込んだ身体が小さく跳ねた。
「ッ、ぅ・・・・!」
銀時が口許に手をやり、込み上げる声を抑える。
これは昔からの彼のクセのようなもので、実際のところはそれほどこういった行為自体も嫌いではないらしいし、
事が進めばどうしたって抑えきれない声をあげ、乱れてくれもするのだが、
しかしまだ理性の大半が残ってしまっている最初ばかりは、素直に喘ぐことに多大な抵抗があるようで。
けれど桂としては、そんな状態だからこそ逆に声をあげさせたい。
「声を出せ」
「ざ、けんな・・・・ッ・・・・」
ここまで来ても銀時が大人しく言うことを聞いてくれないのは、当初からわかっていたことだ。
ああやはりな、と桂は苦笑して、そのまま胸の飾りを舌と唇とできゅっと吸い上げた。
「ぁ・・・・ッ!」
途端に身じろぐ身体に満足しつつ、口中の小さな粒をころころ転がしながら空いている方の手を下肢に伸ばそうとすると、
「・・・っ、おい・・・・!」
傍目にも先を急ぎ余裕の欠片もない愛撫に、どうやら銀時も気づいたらしい。
身を起こし、性急に進められていく行為を制止して来ようとする。
だが、こうなってしまった以上、止められたって止まらないのが通常というもので。
「悪いな、・・・・余裕がない」
了承されることなど100%ない、とわかっていながらも、先に謝っておいて、
「・・・・っテメーは・・・・ッ! うぁッ!?」
貰えない承諾は最初から問うことなどせず、桂は銀時の膝を掴み、脚を大きく広げた。
無論のこと、唐突すぎる展開に焦ったのは銀時の方だ。
もう昔から何度も何度も行っている行為であるはずなのに、この瞬間は毎回必ず焦った表情をして、どこか初々しい。
そんな姿がまた、桂のウィークポイントを直撃して、どうしても口許が緩んでしまうことをだから今も止められなくて。
「、・・・・何度も言うが本当に可愛いぞ銀時」
思わず呟いてしまった心情に、
「こっ・・・のクソエロヅラァ・・・・!! 黙れェェェェェ!!!!」 
たまらずじたばたギャアギャア暴れ出す銀時をかろうじて押さえ、先程から目の離せない中心部を、改めてじっと見やる。
それは未だキスと胸への愛撫だけしか送っていないというのに、
すでに微かに熱を湛えていて、何とも魅惑的で。
「相変わらず敏感・・・・だな」
「テメェ・・・・っ余裕ねェとか言ってやがりながら・・・・!」
四の五のうるせーんだよッ、と喚かれてしまいながらも、視線は外せない。
その羞恥もあってか、次第に淡く色付いてくる銀時自身を延々と注視していたのだが、
いい加減にしておかなければ今にもそのまま蹴り飛ばされそうな気配と予感を感じ、
そのまま素早く下肢に顔と唇とを落とした。
「・・・・ッ・・っ!」
反応しているとはいっても、まだ全体的に柔らかさを残す銀時自身をすっぽりと口中に招き入れる。
含んだ先端と、舌先で辿っていく裏筋を丁寧に扱いてやると、抱え込んだ腰が戦慄いた。
「ぅ・・・・あ、あッ・・・・」
生暖かな快楽に、ぞくぞくと腰が揺らめくけれど、桂はそれを許さずにしっかり押さえ付け固定する。
そして銀時の悦がる箇所、弱い弱い括れの箇所を丹念に舌先で刺激してやった。
「ぁ! あ・・・・ぅ、・・・・ッあ・・・・!」
ちろちろと動く舌に、銀時が背中を浮かせて喘ぐ。
桂はその声と、自らの口中で次第に質量と熱を増して膨れ上がっていくもので、
銀時が確実に自分の愛撫で感じていることを知り、それを愉しんだ。
「・・・っ、は・・・・っっ・・・」
息継ぎのため一旦濡れた口から銀時自身を解放して離すと、
甘い口での愛撫ですっかり形づくられたそこは、すでに大きく勃ち上がり僅かに震えていて、
そんな様に思わず喉を鳴らしそうになりながら見蕩れてしまっていたら。




「み、てんじゃねェ・・・・ッ!!」




どこにそんな余力が残っていたのか、咄嗟に身体を起こした銀時から、怒声と共にゴン!と頭を殴られた。




「な・・・・!」
突然の暴挙に 「何をする、」 と目を見開くと、
「ニヤけ面でジロジロ見てんじゃねーよこの変態野郎が・・・・!」
どうやら、じっと見つめてしまったのが銀時にはいけなかったらしく、今にも怒髪天を突きそうな勢いだ。
それでも、それでも可愛いものは可愛いし、愛してやりたいものは愛したくて可愛がってやりたくて仕方ない。
「悪かった」
口先だけで言いながら、
「・・・ッ、ぅあ・・・・・っっ!」
指を添え、裏側をつ・・・・と撫で辿り、先端部を揉み込んでやれば、途端に銀時の腰が跳ね上がった。
そうして先端から指を伝い滴る透明な蜜。
桂が手のひらと指を使うたび、湿って濡れた音がそこから聞こえてくる。
「悦いか・・・?」
「・・・・っ・・・」
問いかけると、銀時は口許に手を当てたまま小さく喉を仰け反らせて反応した。
いつもながら、こんな時でも素直な返答が返ってくることはない。
しかしそれでも、確実に浅く早くなっていく息遣いと、しっとり濡れ火照ってくる肌とが雄弁に感じていることを伝えてきて、
桂は再び先端を唇でぱくりと咥え、強めに吸い上げた。
「ひ、うッ・・・・!」
途端に喉を鳴らす喘ぎが鼓膜を打ち、それに桂は小さく笑いながら、
敏感極まりない場所への快感に戦慄き鋭く反応した銀時の身体を宥めるように労わるように、
今度は銀時自身全体を、やわらかく丁寧に余すところなく舐めていく。
まだ銀時に直接伝えたことは流石にないが、桂はこうして銀時自身を舐めてやるのが好きだ。
彼が確かに感じてくれているのが一番はっきりわかる箇所であって、
また彼が一番悦んでくれる部位でもあって。
・・・・と言いつつも、あまりしつこく愛撫しすぎてしまうと、いつもいつも制止が入ってしまう場所でもあるから、
たぶん銀時としては逆に感じすぎてつらいという感覚なのだろう。
口での奉仕は止めず、ちらりと目を上げて眺める。
桂の口が動くたび、背中と喉を仰け反らせ、快感に耐え切れずに吐息混じりの声を漏らす姿に、
俄然よりもっともっと気持ち悦くしてやろう、
なりふり構わず悦がらせてやろう、とこちらも愉しくてやる気が出て仕方がない。
「銀時、」
愛しくてたまらない名前を呼んで、止まらない蜜の溢れてくる先端を軽く吸い上げては唇の裏の粘膜部分を使い、
擦るように何度も何度も刺激してやった。 その度に腰がビクビク震える。
「・・・ぁッ、・・・・っあ!・・・ぅ・・・・ッ」
柔らかなクセのある猫っ毛が振り乱れる。
桂の髪を指に絡めて先程から掴んで離さない手は、全く力が入らないようで小さく小刻みに震えている。
それは感じてくれている証拠だ。
欲と蜜のたっぷり詰まった双珠を大きく揉まれ、グイグイと髪を掴んでくる手に力が入って。
「こ・・・っ、の、・・・ぅあ、あ・・・・ッッ!」
何かを告げて来たいようだが快感に邪魔されて言葉にならないらしい。
がくがくと震え出す両脚。
その中心部の昂ぶって濡れ落ちる自身を激しく上下に扱かれて、銀時は全身を二度、三度と戦慄かせ腰を浮かせた。
快楽の流させる汗が、上気した身体を幾筋も伝って落ちる。
「達く、か?」
「・・・っあッ、う、ぁ・・・・!!」
問いかけた桂の声に、銀時は小さくかぶりを振った。
言葉に否定をしているのか、それとも快感刺激に耐えられないのか。
勝手に後者だと想定して、銀時を絶頂に導くため桂は一層強く激しく舌と唇を使った。
髪を握ってくる指に力が入った。 きっと無意識なのだろう。
「・・・・ッ・・・・ぁ、・・・・あ、ッ・・・・、離、・・・せッ・・・・!」
上ずる喘ぎと、
限界を告げてくる声。
いくら銀時の頼みでも、ここで離せと言われて離す馬鹿など何処を捜したっているものか。
「嫌だ」
一言で却下したあと、
口内で締め付けながら、ひくひく小さく震えて嘆願する絶頂寸前の銀時自身を強く強くたっぷりと吸い上げた。


瞬間、口の中の自身と共に銀時が全身をビクンと大きく悶えさせる。




「!・・・・ッ、――――あ、ァ・・・・ッッ・・・!!」




喉の奥から掠れた声を上げ、銀時は桂の口中に甘く苦い熱を吐き出した。




放たれた口腔内のそれを一口に嚥下して、最後の残滓までを飲み干そうと全体を扱いてやると、
「は・・・・っ、・・・や、め・・・・っ」
銀時は心持ち眉を寄せて弛緩した身体を捩らせて抵抗した。
絶頂を迎えたばかりの身体は敏感になりすぎて、
過剰な反応さえ桂に見せてしまう。
どれだけ優しく触れられても感じすぎてしまう身体がつらくて、何とかこのしつこいロン毛の変態(・・・・) を力の限り押し退けようとするけれど、
達したばかりの先端をまたも湿って柔らかな口内の粘膜に含み入れられ、ゾクリと腰に響いた。
「ッあ、う・・・・っ・・・!」
たまらず漏れる、聞いている桂の方が腰に来そうなほど甘いそれは、
普段の銀時からは考えも出来ない、切なく掠れた嬌声。
ちゅ、とまるで幼児のように吸い付きながら、次の段階へと桂は最奥に指先を進ませ添えた。
察知した銀時の、僅かに緊張する身体を慰めるように数回その周囲を撫で、それからゆっくりと指を埋め込んでいく。
僅かに固さをも見せてはいたが、前から滴った蜜と愛撫とで蕩けたそこは、
思っていたほどの抵抗もなく、桂の指をつぷりと飲み込んだ。
「大丈夫か・・・・?」
桂としては他意のない、確認のための問いかけだったのだが。
「・・・・ッぁ! 馬ッ鹿・・・野、郎ッ・・・・喋んな・・・・っ・・・・」
自身に近すぎる位置で言葉を発したためか、熱い吐息と振動とを感じ取ってしまった銀時がたまらずに首を振る。
そんな様子を見て取るに、一応は痛くもなんともないらしい。
小さく安心して、埋めた指を微かに動かしてみる。
内壁の絡みつく熱さに、思わず桂の欲も膨れ上がる。
早く早くこの熱と柔らかさを自分も堪能したい。
早く早く全身で銀時を感じたくて、欲をぶつけ合いたくて。
けれどまだ尚早だ。
埋めた指を、そろそろと移動させていく。
昔から何度も何度も身体を重ねて、経験で知った銀時の内側の弱い弱い場所。
探り当てたその部位を軽く指で突きあげると、銀時の身体がびくッと跳ねた。 わかりやすい。
「此処だな」
「・・・・ッ・・・・!」
確かめるように何度も触っていると、銀時にぎりっと睨みつけられた。
が、こんな状態では普段の暴言も文句も出ないのか、熱に浮かされた瞳で睨まれてもただそれは可愛らしいだけで。
続けて今度は少々強めに、ポイントを転がすように愛撫してやると、
銀時は唇を噛んで桂の与える快楽刺激に耐えた。
「う・・・ぁッ・・・・あッ、・・・・っ・・・・」
腰はかたかた上下に動き出し、すでに全く力が入らないほど砕けてしまっている。
一旦離した自身にも、もう一度触れてみれば乱れたシーツに爪を立てる指に力が込められた。
更にもう一本、埋める指を増やす。
「く・・・・っ・・・・!」
僅かに声を漏らした銀時だったが、それは痛みや圧迫感のためなどではなく、増やされた指による刺激のためらしい。
蕩けるように熱い内部を、そろえた指で繰り返し掻き回してやってから、
続いて桂は指をそこから引き抜いて、代わりに舌をゆっくりと挿入させた。


―――っ・・・!? なッ・・・・!!?」


思ってもみなかった桂の行動に、銀時は目を見開く。
指だけでも充分過ぎるほど充分な愛撫であったのに、
とっくに内壁は解されているというのに、この後に及んで舌までも挿れてくるなんて。
「や、めろッ・・・・こっの・・・・! あ、あぁッ・・・・!!」
この変態ィィィ、どこまで好き勝手やりゃあ気が済みやがるんだ変態ヅラァァァ、と怒鳴ってやりたいのだが、
自分の内部で柔らかく淫猥な舌が動くたび、そこからぞくぞくと痺れるほどの快楽が沸いてくる。
熱い舌が、敏感な内壁を強く擦りながら奥まで入り込んできて、
有り得ないほどの羞恥に怒鳴りつけてやる余裕もなく、奥の悦点をそろりと舐められた。
「ッ・・・・っ・・・・」
外側を刺激されるのとは少し違い、桂の舌が動き回るたびにズン、と重い快感と中途半端な吐精感が腰から下を支配して、
再び勃ち上がった自身は白が混じり始めた蜜をしとどに流し始めた。
駄目だ。 何も考えられなくなるほどキモチ悦い。 腰が融けてしまいそうな快楽に襲われて、
無意識のうちに腰が動いてしまう。
「う・・・ァっ・・・・ぁ・・・ぁ・・・・!」
それだけでも漏れるような快感に翻弄されていたのに、尖らせた舌先で最も過敏すぎる箇所をぐいぐいと押され、
思わず達してしまうほどの刺激に悶えされられた。
そうして、しばらく内部で動き回ったあと、満足したのかそっと抜かれていく舌。
直後、
「・・・・銀時」
欲情のためか、僅かに端が掠れるその呼び声に、性感によって霞みのかかった意識を僅かに向けると、
もう完全に力の入らない両膝に手を置かれた。
そして眼前には、悔しいことに腹が立つことに決して決してそれほどキライではない、バカアホ変態テロリストの顔。
「挿れる、ぞ」
そんな声と共にやわらかく蕩けさせられたその場所に、ぐっと硬く熱いものが宛がわれる。
「ッ・・・・」
狭い入口、そこをぐっと掻き分け押し分けて侵入してくる感覚に、銀時は思わず息を詰めた。
桂も内側の感触に、熱い吐息をつく。
「・・・・ふ、」
「く・・・・ッ、・・・・っ・・・!」
押し込まれてくる圧迫感。 痛みはほとんど感じない。
瞬間、桂自身の先端が僅かに弱い箇所を掠め、
「あ・・・・、ぁッ・・・・!」
腰が震えた。


――拙い。 今にも達してしまいそうだ。


「〜〜〜〜ッ・・・・」
まだ、ただ挿れられただけの段階であるはずなのに、高みを予感して銀時は焦る。
しつこいほどの桂の愛撫によって、限界近くまで追い詰められてしまっている自身は、銀時本人の意思とは別物のように関係なく、
あともう少しで弾けてしまいそうなほどに膨れ上がっていて。
「・・・っ、待て・・・・ッ、ヅラ・・・・っ・・・」
懸命に桂の肩に手を回し、抑えた。
「何、・・・・? 痛い・・・・のか?」
眉を寄せた桂に、心配気に訊かれるけれど。
「違・・・・ッ・・・・」
そうじゃねェ、と首を横に振る。 だが何と伝えればいいのかよくわからない。


一方、桂も銀時が何を言いたいのかが瞬時には読み取れなくて。
一旦挿入を止めて、そのままの状態で様子を見る。
組み敷いた身体は、全身がしっとり汗と体液とで濡れていて、浅く喘ぐ胸元は上下を繰り返している。
何かに耐えるかのように僅かに寄せられた眉と、唇から漏れてくる甘く熱い吐息。
それを見るだに、少なくとも苦しいようには見えない。
と、いうことはもしかすると。
「・・・・・・・・」
思い当たり、そっと自身を抜き挿ししてみた。
「ッ!?」
途端、慣らすだけのそんな程度の動きと刺激にも銀時は過剰に反応し、身体を仰け反らせる。
「・・・・・・。 達けば良かろう」
「ばッ、触ん、な・・・・ッ!!」
どこまでも素直じゃない銀時に心の中で苦笑しつつ、
そそり立った銀時自身を達するよう刺激してやると、一層焦った銀時はそれを留めようと咄嗟に手を伸ばし重ねてきた。
加減する余裕もないのか、ぐ・・・、と重ねられた手に爪を立てられてしまうけれど、
大した痛みにも抵抗にもならず、構わず桂は手の内の自身を扱きあげた。
「う、あ・・・・ッ!」
銀時の下肢に力が込められる。
反動できつく締め付けられ、桂も息を詰めて耐えた。
「達け、・・・・ほら」
「あッ、・・・・あ、ぅあッ・・・・っ・・・・!!」
くちゅ、と先端を指の腹で捏ね回してやった途端、
ぶるッと腰を震わせ、銀時は堪えていた熱を弾けさせた。
弾けた白蜜が桂の手を滴り、また銀時の腹部も濡らして。
「・・・・はッ・・・・、は・・・・っ、ぁ・・・・っ・・・・っっ・・・・」
「ッ・・・・、」
絶頂の瞬間、一際強く絡み付き搾りあげてきた内側の秘肉に、自らも誘われそうになり危うかったものの、
何とか引き摺られることはなく、桂は堪えて息をつく。
だが、
ただでさえも狭くて熱くて心地良い銀時の中、こちらもそろそろ限界だ。
二度目の絶頂に達し、完璧に弛緩している銀時の肩をぐいと押し倒す。
折り重なるような態勢に持っていき布団の上に抑え付けるような形になり、そのまま前触れもなく、思いきり埋めた腰をズッ、と強く突き上げた。
「う・・・・あッ!!」
強い強い衝撃に、銀時が全身を仰け反らせた。
しかし構わず、桂は続けて内部を激しく突いていく。
「い・・・・きなり・・・・っ、なんだテメー・・・・は・・・・ッ!?」
「全部、お前のせいだろうが・・・・!」
なんだそれ。 なんだその責任転嫁。
今日もいつもいつもいつも最初に欲情したのは襲いかかって来たのはまごこうことなく変態ヅラの方で、
銀時には、自分には何の責任もあるわけじゃない。
そう怒鳴りつけてやりたかったのだが、
容赦なく内壁を擦りあげられて、そうすることは出来なかった。
桂自身の括れ部分が、内壁の襞を引っ掻いて奥の奥まで侵入してくる。
それが堪えきれない快感を呼び起こし、たまらず全身ががくがく戦慄いた。
「ッ・・・・・ぁ! あ・・ぁっ、・・・・ッ!!」
内部で激しく動かれたまま、乱暴に唇を塞がれる。
口内を隅々までどこまでも舌が動き回り吸い上げられ、弱い粘膜を舐めあげられて背筋を快楽が伝った。
「ふ・・・・ッ、ぅ・・・、 ッ!!? んッ、 っ――ッ!!
唇を塞がれたまま、下肢では一番弱い前立腺を先端でぐりぐりと擦られ、
あまりの快感に逃れようと腰を退こうとしたのだが、見越した桂にしっかりと固定されてしまい逆に引き戻され、
更に追い討ちの如く強く強く突き上げられて、銀時は口付けられたまま苦しげに首を振って悶えた。
先刻、二度目の欲を放ったばかりの自身が、与えられる大きすぎる快感にまたも芯を持っていく。
「・・・あ! っは、は・・・・ッ、ぅあ、あッ・・・・!!」
唇が解放されると同時、もう抑えることも出来なくなった甘い声が後から後から溢れて。
抑えたいのに、どうにもならない。 そんな余裕も何も、どこかへ行ってしまった。
刺激されれば出てしまうのが身体の生理で、もう出てしまうものは仕方ないどうしようもない。
今にも意識が飛んでしまいそうな頭で微かにそんなことを考える。
「・・・・っ、ッ・・・・」
内部の桂が大きさと熱を増し、連動してまたも射精感に襲われた。
桂にも余裕がないせいか、追い上げられる速度が銀時には早すぎて、
何とか刺激される箇所を、一番弱いところから遠ざけようと懸命に身を退いて捩ってみるけれど、
完全に抑えつけられてしまったこの体位と態勢では、うまくいくはずもない。
――――い、ッ・・・・!!」
引き抜かれた桂自身が、勢いをつけて更に奥の奥まで激しく打ち付けられる。
思いきりの最奥まで届いたそれは、目も眩むような快感で銀時を飲み込んだ。
内部では先走りの蜜を零す桂自身の先端で、ぬるりと奥を擦られて腰が砕ける。
「ッ・・・・! 銀、時・・・・っ・・・」
そして耳元では熱く荒い吐息と共に、名前を呼ばれて。
一気に駆け上がる身体。
変態ヅラのクセに、そんな腰に響く声で呼ぶんじゃねーよ、
それもこれもどれもあれも、全部全部テメーのせいだ。 テメーがそうやって全部全部。
「あ・・・・ッ! ぁ・・・う・・・・ッ!」
連続して最奥を突かれ、全身ががくがく震えだす。
内壁もつられて力が入り、桂自身をきつくきつく締め付けた。
「もッ・・・・、っ・・・・」
「・・・・っ・・!」
銀時だけでなく、桂も絶頂手前、堪えているらしい。
それでもこれで最後、とばかりに乱暴なほどに穿ってくる。 抉られ、強く強く打ち込まれて銀時は快感を受け止めきれず。


柔らかなポイントを擦り、奥の奥にある一番弱い箇所を桂自身が突き上げ、
銀時の内部で桂も耐え切れずに熱を放ったと同時。




「ッ―――ッ!! ・・・う・・・・あ・・・・ッ!!」




銀時は全身を張り詰めさせ、溜まった欲を弾けさせた。
























「・・・・つ、月がキレイだぞ銀時」
「〜〜〜〜〜〜」
「・・・・さ、桜もまだまだ見頃だ」
〜〜〜〜〜〜!!」
「ぎ・・・・銀、」




それはそれは見事な満月と、
それはそれは満開に咲き誇った桜と、



―――――― それはそれは憤り怒りまくっていて、手の付けようもない坂田銀時。








失敗だ失敗だ失敗だったァァァ、と叫ばれる。
やっぱテメーんとこなんざ来るんじゃなかった、
こーなっちまうコトはわかってたはずなんだチクショー、
やっぱおとなしく坂本んトコ行ってタカるか、それかどっかほっつき歩いてる高杉捕まえて奢らせるかどっちかにしときゃ良かったんだァァァ、
と布団の中で喚かれ嘆かれてしまい、
「・・・・な、」
またも出てきた昔の同僚恋敵の名前に自分の立場も何も一瞬忘れ、
「何を言う!? 奴等のところになど万が一にも行ってしまった時点で襲われそのまま喰われてお仕舞いだというのがわからんか銀時ィィィ!!?」
思わず、桂がそう叫んでしまったら。




「そりゃあ丸々テメーだろうがよォォォォ!!!!?」




「・・・・あ」




うっかり失念、 ・・・・ついうっかり全くそのとおり。
この後はいつも通り怒鳴られて怒られてついでに二・三発ボコられて、
それでも最後は結局、VS銀時専用最終兵器という名前の和菓子洋菓子盛り合わせ、甘味で糖分摂取をさせて機嫌を取って。








春だ。








花も桜も、
月も酒も。








―― 愛の嵐には敵わないという、春の夜のお話。












そろそろ桜の季節なので時事ちっくなものを出してみたつもりが、普段と何一つ変わらないものに・・・・(湿った目)。
桂銀は、土沖を更に越えてとてつもないマンネリばっかりだって自分でもイヤってほどわかってます・・・・分かってるんですが、
わかっちゃいるけど直せないんだ桂銀だけは・・・・(濁った目)。
でもけっこうラブラブにしてみたつもりなんですがそのあたりは・・・・ど、どうでしょう・・・・???
そのうち、桂銀に絡めて高杉さんとか坂本さんとかもやってみたいです。 (下図参照)

     高
     ↓
桂 × 銀 ←坂

こんな感じで(笑)。 でもきっとそれってギャグだ。