※ 土沖、桂銀前提の沖銀沖(?)です。
「浮気ネタなんて許せないわ!」 って、土沖もしくは桂銀に一途な方は引き返すことをオススメします・・・・。



「大丈夫なんでもバッチコイ!」 ってな方はこのままスクロールしてください〜。
























ほしふるばんの、かがみのまえで




「・・・・?」




どうやらそれまで眠っていたらしい。
沖田が目を覚ますと、そこはホテルの一室内だった。




高いようでいて低い天井と、
一見豪奢なようでよくよく見れば安っぽい照明器具と、
間取りは広いようでいて、その実確かに狭い室内と。




「???」




今更だが今になって気がつく。 自分が居る場所はやたら横幅が広く、そしてスプリングの効いているベッドの上。
「、な・・・」
とりあえず現状を知りたくて、
重い、というのではなくどちらかといえばほわほわ浮いているような頭と、妙にだるい身体を折り曲げ、
仰向けに寝ていた状態から完全に覚醒するように半身を起こし、ベッド上から部屋一面をぐるりと見渡すと。




「・・・・、なんでィ、」




見回した途端、目を瞠ると同時にそれ以上の言葉が口から出てこなくなってしまった理由はただ一つ、




―――――― どう贔屓目に見ても、今この自分の居るこの部屋が、ラブホテル、それも洋室の一室だったからだ。




おまけに首を右に回して90度の位置に見える摺りガラスのドアの向こう、
備え付けのバスルームからは湯船なのかシャワーなのか、時折はねる飛沫に響く水音に混じり聞き覚えのある鼻歌と、
ガラスドアにぼんやり浮かぶ心当たりがなくもない(実際摺りガラスなのでよく見えないが) ・・・・とあるシルエット。
加えて改めて自分のいるベッドの上に目をやれば、
見覚えのありまくる黒地に赤い縁取りの上着や、白地に青い染めの入った着流し等が丸々一式、
正に 『ついさっき脱いだばかりですよ』 とばかり無造作に脱ぎ捨ててあって、
「だ、」
古今東西、常時この衣類、この服を着用している人物といったら、沖田が知っている限りは一人しかいない。
「・・・・・・、」
沖田にしては珍しく、慌てて無理矢理記憶を辿って思い返してみる。
確か、
確か、
今日・・・・というか昨夜(今、ふと視界に入った時計の針が指す時刻は日付が変わって夜中の二時半である)、仕事が終わったのが九時頃だった。
そのまま一人で歩いて帰る途中、ふらりと馴染みの居酒屋に立ち寄った覚えがあるのが九時半頃、
そして一人がぶがぶ呑み煽りつつ、店主のオヤジに 「全部土方のツケにしといてくれィ」、とちゃっかり奴に支払いを隠れて押し付けておいてタダ酒、
(ちなみに勤務中にはバカ土方と大喧嘩をした。
理由と原因は、沖田がわざわざ夜食用に取っておいたお好み焼きを奴が勝手に土方スペシャルにしやがったせいだ。 一人で帰ったのはこのためだ)

タダ酒ほど旨いものはない、とほどほどイイ気分になってきたところで、




「・・・・あ」




――――――――― 思い出した。




そうだ、そこでちょうど暖簾をくぐって店に入ってきた彼と、・・・・坂田銀時、とひょっこり遭遇したのだ。
遭遇して顔を合わせて、
『丁度いーや旦那、一緒にとことん呑みましょーぜ全部あのマヨネーズバカの奢りでさァ (無断だけど)』
『えッマジ? マジ? だったら遠慮しねーよグビグビ呑んじゃうよありがとうありがとう多串くん (本人いねーしどーせ無断だろーけど)』
普段通り流れ通りあっという間に意気投合、
揃って浴びるように呑んで呑んで呑みまくって酒の肴に世間話の間にも呑んで呑んで呑んで呑んで呑みまくり、
結局、もうそろそろあと30分で店がカンバンに・・・・、というところまでの記憶は何とかあるのだが。
逆を言えば、カンバンの閉店から後、
つい今さっきここで目を覚ますまでの記憶が皆無、すっぽり抜け落ちている。 さっぱりない。
ここまで銀時と連れ立って歩いてきた記憶もなければ、一緒に部屋に入った記憶も一切ない。
もちろんもちろん当然当然、銀時と×××なコトもした覚えもまったくなくて、
その実しかし、記憶も覚えも微塵もない・・・・となると、逆もまたしかり、何かがあったとしても不思議ではなく。
「あ、上着・・・・」
そして不思議ではない証拠(?)に、気が付けば自分は真撰組制服の上着を着ていない上、それだけじゃなく首元のスカーフもほどいてあって、
両方ともばさりふわりと床上に落ちていた。
無意識に 「まさか、」 と口をついて出る。
「・・・・旦那、・・・と?」
が、シャツとインナーはきっちりまだ着込んであって、ベルトも外れてはいないしそうそう事後のようにだるくはないし、
けれど決して決して何もなかった! と言い切るには場所と記憶が無いのと、何より一緒に居るらしい居たらしい相手が悪すぎて。
「・・・・・・・・」
最初から、考えたってわかるはずもないことくらい自分だってわかってはいるけれど、それでも思案思考せずにはいられない。
しかしどれだけ沈考黙考したところで結局結局コトの次第展開が解き明かせるわけもなく(記憶がないのだから当然か)、
・・・・一体どうなってやがるんでィこりゃあ、と半ば投げやり、
もう一度ごろんボフンとふかふかベッドの上、仰向けに倒れ込んだところで。




ガチャ。




型通りの音がしてバスルームの摺りガラスドアが開き、




「お、」




そこから銀時が姿を覗かせた。
瞬時に目が合う。 銀時の服がここにあるのだからわざわざ言うまでもないが、パンツ一丁である。
「やっと起きたかよ」
「あの、旦那?」
聞きたいことは沢山あるのだが、どうも相手が銀時であるがゆえ、いつものバカ土方の時と違って自分のペースに持ち込めず、
ただベッドの上、すたすたこちらに歩いてきてばさばさ服を着始める銀時を凝視していると。
「ん?」
あーひとっ風呂浴びてやっとスッキリしたぜ酒が抜けたぜ、などと呟く銀時と、またも目が合った。
「なに沖田くん?」
「あの、」
スッキリしたと言う割にはどことなく眠たげな目を向けられる。
けれど構わず、まさかとは思いますけど、と一応前置いて。
「ん?」




「もしかして俺、旦那とヤっちまいましたかィ?」




「な・・・・」




「店出たあとからさっきまでの記憶が一切合財ないんですが。 万一ヤっちまってたとしたら、沖銀だったのか銀沖だったのかそいつが知りたくて」




「な・・・・、」




不思議なことに何故だか銀時は一旦絶句して、それから 「お前さんマジ全然覚えてないの?」 と逆に訊いてきた。
覚えてないものは覚えていない。
「面目ねェことに、全然」
だから正直に首を縦に振ると、彼ははあああ、と軽い割には長いタメイキをつきつつ、
「いーかよく聞いて思い出せよ?」




ガシガシとその頭をかきながら説明してくれたところに拠ると。
改めて只今の季節は真冬が訪れたと言ってもおかしくない、12月中旬、
そうしてそんな最中、まず揃って相当相応に酔っぱらった状態で連れ立って店を出たのが閉店と一緒、
しかも土方のツケに(勝手に)したタダ酒とあって、限度を越えたそれはそれは泥酔状態だったらしい。
悪酔いこそしていなかったものの足取りが覚束ないどころではなし、
銀時が覚えている限り、一時は川の袂に座り込んで危うくそのまま眠り込みそうになってしまった局面もあったらしく、
しかしこの時期にそんなところで熟睡、泥酔状態の屋外にて一夜を明かしてしまったら、
夜明けを見る前に凍死するのはほぼ間違いないことだけは確かであるため、
沖田に比べてまだ幾許か余裕の残っていた銀時が慌てて万事屋まで連れて行こうとしたものの(位置的に真選組屯所よりそっちの方が近かったそうだ)、
その途端に中途半端に自分は意識を取り戻し、「んなトコよりもっといい場所がありまさァ」 と覚醒して宣言するなり、
銀時が異論を唱える間もなく行動を起こす暇もないまま、ずんずん彼を引っ張って一番近かったこの場所、
つまりこの連れ込みホテルに有無を言わさず突入したのだそうだ。
そして突入した挙句、部屋に入るなりベッドに倒れ込んで爆睡、
唖然とする銀時を差し置いて小一時間ほど、死んだように目を覚まさなかった・・・・と銀時の語るところにより、聞かされた。




「でよォ、仕方ねーから俺もしばらく横になってたんだけど、お前さんは全然起きねーし、酔い覚ましに風呂沸かして入ってたワケ」
「・・・・それ・・・、ホントですかィ?」
「ウソついたって意味ねーだろ」
一概にはなかなか信じられず、疑問の響きで銀時を見遣ってしまったが、
しかし彼が嘘をつく必要もメリットも実際自分相手ではあるはずもなく、嫌でも信用せざるを得ない。
それに言われて説明されてみれば、なんとなく・・・・薄ぼんやりだが、
銀時の袖を引っ掴んで建物の中に踏み込んだような夢を見ていた覚えも・・・・あるような、 ・・・・・・・・ないような。
「じゃあ、結局旦那とは何にも?」
「あるワケねーだろーが。 今の話のドコにそんな要素があったっつんだ」
半ば呆れたような表情と口調を銀時は作るけれど、その中にどこか苦笑のようなものを見取って感じ取り、
ここになってようやく沖田は、自分のペースを取り戻す。
なんでィ旦那、とこちらもそれなりの口調を作っていつもの仕様で、
「俺の寝顔、可愛くありませんでしたかねェ? これでもけっこう自信あったんですが」
傍らに立つ銀時を、そっと見上げる。
「・・・・・・。 オイオイ、俺は土方くんじゃあねェっての」
「えェ? じゃあこう、無防備だったカラダはどうなんです? こんなカワイイ俺が目の前でくーくー寝てて、旦那はちっともムラムラ来なかったんですかィ?」
「オイオーイ、ムラムラ来ちまったらお前さんも土方くんも困るだろーに」
「・・・・・・・・チッ」
「オイオイオーイ、なになに何なのその舌打ち」
お前さんも大概なヤツだぜまったく、と小さく笑われ、
続けて 「あァ確かにそこらのヤツじゃ歯が立たねーくらいカワイイけどよ、」 などと言われその手で自分の頭をくしゃっとかき回された途端、




「、」




何故なのかが自分でもわからないまま、自分の中の何かが、僅かに揺れた。




「舌打ちは舌打ち、そのままの正直な意味でさァ」
言いながら、沖田は揺れが揺らぎになるのを確信する。
「あァ?」
「ね、旦那」
手を伸ばしグイッと銀時の着流しの袂を引っ張り、顔を近づける。 別段彼は逆らわず、自然にストンと沖田の居るベッドの端に腰掛ける形になった。
そのまま沖田は心持ちシャワーの水気を残す銀時の猫っ毛、耳元に触れるか触れないかのあたりに口を寄せる。
「ちっと、冒険してみません?」
「・・・・何を」
「ちょっとばかし、浮気してみましょーぜって言ってるんです」




この場所がいけない。
このシチュエーションがいけない。
自分と彼以外は絶対に絶対に誰もいない、この閉鎖空間がいけない。
青少年の興味と好奇心ほど、強くてしたたかで予測が付かないほど手に負えないものはないというのに。
銀時だって悪い。 そんな年頃の自分の前に風呂上がり、そのまま出てきたりするから。
それとも自分は安全パイだと思われているのか、もしくは取るに足らずと嘗められているのか。




「せっかく二人してココに居るんだし。 ・・・・使わねェと勿体無いですぜ?」
沖銀でも銀沖でも俺は構わねーです、と続けて囁きながら、少しずつ体を移動させていき、互いの距離を縮めていく。
「バカ土方にも、もちろん旦那のコレの桂にも秘密でナイショの出来事、作っちまいましょーや」
「あのなァ・・・・万一バレたらどーすんの。 怖い怖い副長さんにバレちまったらヤバイだろうが」
呆気に取られたように呟く銀時と向かい合い、ベッドから落ちないよう注意してするりとその首に腕を回した。 こういうのは得意だ。
「大丈夫です、もしバレちまったとしたって俺の方が強いですから。 万一嫉妬に狂って斬られそうになったとしても、きっと俺と旦那の方が強いですぜ?」
「オイオイオイオイオーイ・・・・」
「前々から、旦那には興味があったんでさァ」
・・・・言いながら、首に回した腕にきゅっと力を込めてみる。
初めて密着した銀時からは、土方から普段嗅いでいる煙草の匂いもあれだけ浴びるように呑んだ酒の匂いもせず、
代わりに何か別の匂いがしたのだが、その匂いが何だかはよくわからなかった。
しかし触れた肌がぞくりと粟立ったのは本当で、ますます欲しくなる。
どちらでもいい、もっと触れてみたくなる。 触れてほしくなる。
「・・・・するのとされるの、どっちがイイですかィ?」
そう誘ってみながらも、頭の中では銀時に一笑に付されるか、もしくは冗談だと受け取られ本気で取り合って貰えないものだと思っていたのだが。




「・・・・見上げた好奇心だな、オイ?」




思いのほか返ってきたのは意外にも、どう返答すれば良いのか決めかねているような、
それでいて感心したような、そんなタメイキ混じりの言葉で。
直接的な返答には全くなっていなかったけれど、真っ向から受け止めてくれたのは少し意外で、少し嬉しかった。
だが違う。
これは好奇心なんていう軽いものではなくて全然違って、
どちらかといえば、




「違います旦那、 ・・・・野心でさァ」




訂正の言葉を吐息に乗せ、だからしましょうぜ、ともう一度誘う。 繰り返す。
そして本音本心、正直なところも決して伝えることを忘れない。
「けど俺のナンバーワンはあのマヨネーズバカです。 認めちまうとなんか腹立ちますが」
「・・・・・・」
聞いてはいるものの銀時の返事はなく、そのまま独白のように。
「でもオンリーワンは旦那ですから」
勝手に決めちまって申し訳ねェですけど、と何か言われてしまう前に先に謝って。
「気づいてましたかィ、・・・・俺と旦那はそっくりなんでさァ」




とても似ている二人だから、きっと野心も企ても何もかも無難に上手くいく。
とてもずるい自分と、どこまでも捻くれている銀時だからこそ、たぶん興味本位で完全犯罪を目論める。




だから、




「似た者同士、誰にもナイショの、俺と旦那だけの秘密を作りましょーぜ?」




最後の一押し、ふわりとごくごく自然に首を傾け、キスを仕掛けようとした瞬間。








「いッ・・・・!!」








途端に弾かれた。
額を指先でビシッと一撃。 所謂デコピンというやつで、威力もかなり強く。
「な・・・・」
人体の急所の一つである箇所を撃たれ、反射的に額を押さえながら、
「何するんですかィ・・・・!」
涙目で抗議する。
この涙は拒否されて悲しかった悔しかった故のものではなく、単にそれなりに痛かったから自然と浮かび上がった涙だ。(無論本気の涙ではないけれど)
「あ、痛かった? お前なら避けると思ったんだけど」
「んな不意打ち、避けられるはずねェでしょーに・・・・!」
抗議に加えて憤慨してやる。
「だって土方くんに悪いじゃん」
すると、あのバカの名前をまた銀時は持ち出してきた。
「だからバレやしませんぜって」
「いや、だからね沖田くん」
「だからなんですかィ!」
往生際の悪い天然パーマ相手に、こちらも負けず言い募って再度正面から向き合うと。
「あー・・・・だから、なァ・・・・」
何だか切れ切れに、言葉言葉を一節ごとに捜しているような、そんな感じで銀時は。
「土方くんにも悪いし、・・・・それに俺ァ、」
「?」
妙に歯切れの悪い口調に、沖田は思わず小首を傾げてしまう。
「・・・・・・」
ここまできて急かすのも意味がないと思い、そのまま黙って銀時を見上げたら。




「未成年には手ェ出さねーって方針だし。 ついでにどっかの土方くんみてーに、オメーに弱み握られたくねェ。 OK?」




「・・・・なんでィそりゃあ」




どう見たってどう聞いたって詭弁だ。 そんなのあと数年もしたらあっという間に使えなくなる言い訳だ。
そうしたらどうする気なのか。
ついでに言うなら土方の弱みといえば自分で言うのもアレだが(・・・・) それは多分にして自分とオバケで、
しかしそれはどちらも公然の秘密みたいなものになってしまっていて、握るの握らないのとはまた別の域の話だと思うのだ。
そういうのをタテにして脅したことなどほとんどない。 迎合して楽しんでいる方が余程十割近い。
「・・・・・・・・」
沖田が思うにむしろ土方をタテにしているのは目の前の銀時の方で、
「・・・・・・・・」
つまり結局、
「・・・・・・・・」
そういうことか。




「・・・・・・・・・・・・・・・・わかりました」
「お?」
わかりましたぜ、と沖田はもう一度繰り返す。
そして、
「わかりました。 旦那ってばそのアタマのくるくる甲斐もなくそれほどあのロン毛の変態テロリストに一途でやがるってコトが本気でわかりやがりました」
「・・・・今現在(06WJ1号)だとロン毛じゃねーけどな。 って、時事ネタはいい・・・・じゃなくって違うでしょォォォ!! それにくるくる甲斐って一体何ィィィ!!」
何、って聞かれてもくるくる甲斐はくるくる甲斐、そのままだ。
その天パと同じく、もう少し屈折して屈曲していると思っていたのだが。
「・・・・・・・・」
と、なんだかもう一片にどうでも良くなった。
「あーもー、なんかいろいろ面倒くさくなってきたんでもういいです」
興味はあった。
好奇心に動かされた。
出てきたのは、野心だった。
けれど巡り巡って辿り着いたところは結局結句最初と同じ場所、何もなし何かあるわけでもなし何も起こるはずのない、単なる並行線。
「・・・・・・・・」
悟ると同時、急に眠気がやってきた。 まだアルコール分が抜けきっていないのだ、きっと。
ふわわ、と沸きあがった欠伸を噛み殺しもしないまま、
「・・・・そういうわけで、仕方ねェから俺ァあのマヨネーズバカで我慢しときますぜ。 ついでにもっかい寝ることにします」
告げて二度目の欠伸をやはり堂々、ふわわわ、としかけた一瞬、
「そうそう、青少年には我慢が必要だってわかっただろ。 若いうちの我慢は買ってでもしとけってな、アレ? そりゃ苦労だったか?」
「そんなんどっちでもどーでもいいですぜィ旦那、」 と返事をしようとしたコンマ一秒前。








「だからこいつでガマンしとけ」








「ッ、・・・・!」








『喰われる、』 と思わず感じてしまったのは何故だったのか、判らない。
塞がれた唇、何が起きたのか既知した直後、すぐに塞ぎ返したつもりだったけれど、
初めての、銀時のその味を味わったつもりではあったけれど、
長く深く濃厚なキス、たっぷりと味わわれたのは、つまみ食いをされたのは自分の方だと本能が悟っていた。








「旦那、 ・・・・」
「ん?」
息継ぎを理由にして、先に唇を離したのは沖田の方だ。
「アンタって人は・・・・」
「あ? 何が?」
銀時は何もなかったかの如く、飄々としている。
「・・・・・・・・」
なんだこれは。
屈折してるとか天パとか、 ・・・・それどころの、そんな程度そんなレベルの話じゃない。 比べ物にならない。




「沖田くん?」




呼びかけてくる声も顔も何もかもいつもの如く、銀時は飄々と茫々と茫漠としていて、
「なんでもねェです」
そんなことが、そんなカオが出来てしまうこの男には、やはり敵わない。




「・・・・桂も大変でしょうぜ」
「さぁな。 別に好きでやってるみてーだからイイんじゃねーの? ヤツも」
「・・・・・・」
「アレ沖田くん寝ないの? だったら俺が寝るけど」
言いながら銀時は、ガサゴソ勝手に布団の中に入っていく。
取り残されてはたまらない。 というかベッドを一人で占拠占領されてはたまらない。
「・・・・。 俺だって寝ます、じゃあ一緒に朝まで寝てますかィ。 あ、だいじょぶでさァ、もうワガママ言ったりしねェです」
告げつつ、同じくガサゴソ
銀時の横に滑り込み、掛け布団をばさっと頭の上からかぶり込んで、
朝まで素直に、眠った。




そうして何事もなく朝は来て、互いに、帰った。








ほんの僅かだけ触れてみてわかったこと。








たぶん自分はこれからもずっと、この男には適わない。 叶わない。  ―――――― かなわない。












仲良し銀&沖がやりたかっただけなのにフタを開けてみたらこんなんでした。
でももしやるとしたら、やりやすい(←何が・・・・)のは銀沖だなー・・・・、とぼんやり思ってしまいました。
あああすみません、ケツまくって逃げときます・・・・!