ほととぎす(前半)









【鳴かぬなら、】




―――――― 一、殺してしまえ不如帰。
―――――― 二、鳴くまで待とう不如帰。
―――――― 三、鳴かせてみせよう不如帰。








「・・・・で、アンタはどれです?」




一本吸い終わるまで待て、と最初に言われたのだが待ちきれず、
自分より、僅かに高い位置にくゆる紫煙の行方を宙に追い眺めながら、沖田は口を開き問いかけた。
その相手はすでに改めて説明するまでもない、土方で。




「最初のは却下だな。 殺っちまったら元も子もねーし」




「確かに。 じゃあ、二・・・・ですかィ?」




「・・・・。 もう充分待ってるよーな気もするが」




先程からすぱすぱと軽く浅く煙草をふかしているだけの土方の返答は、
一見はっきり煮え切らないよう見せかけつつ、些か迂遠な表現の消去法。




「じゃあ、」




じゃあ?




言いかけて言葉一度切り、今度は深く煙草を吸った土方の顔を真正面から窺い見ようとして、部屋の暗さに失敗する。
まだ夜には早い時刻とはいえとっくに陽は落ち、部屋の中はつい先刻>仄暗いを通り越し、ただ暗い。
俗に言う 『かわたれどき』、――――彼は誰どき。
夜でもなくましてや昼間でもなくかと言って夕刻でもなく、暗くて誰であるか定かに判別できない刻。
それが邪魔をして土方の表情と考えは窺い取れなかったが、所詮ここまで来たら行きつく先など最初から決まっているし、
こんな時間は今の自分と土方の企み策略計略奸策策謀野望非望、一計つまり―――― ambition、正におあつらえ向きだと沖田は思う。
だから十数秒、その間にもどんどん暗さが色を濃くしていく暗い中、黙ってじっと待っていたら、
煙草を灰皿に押し付け揉み消す気配と音がして直後。




「イイだろう。 その案に乗ってやる」




必定必然、来るとわかっていた肯定の一言だったが、
それはそれ、やはり自然にナイス、と会心の呟きに口許が緩む。
危惧しない部分も無いには無いわけではなかったが、流石にそこまで堅物、
そこまでのバカでもそれほど話が通じなくもなかったらしい。
「そう来ると思ってましたぜ。 さすが俺の上司でさァ。 ・・・・俺ァ認めてねーけど」
「・・・・聞こえてんぞ総悟」
「当然。 聞こえるよう言ったんだィ」
「可愛くねェなホントにテメーは・・・・!」
「まあまあまあ」




軽口有象無象はともかく兎にも角にも(・・・・) 自分と土方、珍しくどちらが譲ることなく意見が一致した。




「ってことで、善は急げの今夜で」
「ああ。 ・・・・。 ってコレ善か?」
「そういうコトにしときゃイイでしょーが」
「まァ、な」




部屋の中は暗い。 もう真っ暗だ。
ここまで来ると、何だか明かりを付けずにいるのはもうただの馬鹿でしかないような気がして、
毎日過ごす知り尽くした屯所内、個室部屋の入口片隅、飾り気もない照明のスイッチに手を伸ばしたところで。
「ん」
どうやら土方も自分と同じ、全く同様に考えていたらしい。 指が触れた。
「土方さん」
「何だ」
意味もなく名前を呼びながら、土方の指の上からパチンとスイッチを押す。
一、二度小さく点滅したあと、途端にパッと頭上の照明が付き明るくなる部屋の中、
「俺、アンタのことも決して嫌いじゃねーですぜ」
まるで告白のような、
「キライだったら少なくともこんな提案なんかしねーし。 ただ、他にもっと欲しいモンがあるってだけでさァ」
・・・・宣言のような。
「だから土方さんもそのつもりでいてくれると俺としちゃ随分と助かるんですがね」
どうですかィ?、と今度こそ眼前、目付きのよろしくない男の顔をすぐ真正面から覗き込むと。




「・・・・今更だろうが」
そんな呟きとヤニくさい唇と降ってきたキスで、「俺もだ」 と同様の返事を貰った。




そうだ。




別に、抜け駆けして独り占めしようなんて最初から思っちゃいない。




自分と土方、(無論実際他にも諸々大勢いるが、そっちの方は知ったこっちゃない)
二人とも同じものが欲しくて好きで仕方なくて、でも当の彼はどうしたって一つしか一人しかいなくて二人分はなくて。
それが人間でなくてもしもビスケットだったなら、一枚を仲良く真ん中から半分に割って半分こ
(・・・・の前に素直に奪い合いになるのは間違いないが)
出来なくもなかったのだけれど、
でも現状、二人揃ってどうしても欲しいものはとてもとても割って半分こできるようなシロモノなどではなくて、
だから。




スキなものをスキなヒトを好きなもの同士(同志?)、手を組むことにした。
とてつもなく短絡的、
とてつもない禁忌を侵してしまっているんじゃないかと僅かに気が咎めたけれど、
よくよく考えてみたら倫理さえ邪魔をしないのであればその方がよっぽど手っ取り早かったし、
どちらにしろ相手が相手であるからゆえ、最初の時点で倫理など放り棄ててしまっているようなものでもあって、




まあ結局辿り着いたところと言えばいたるところつまり。




土方と、




もうひとり。




沖田としてはどちらも好き、なのだ。 ただその意味と度合いが少し違うだけで。
土方よりもほんの少しだけもう少しだけ、もうひとりのことが好きなだけだ。 それだけのことだ。 無論土方だって自分と同じだ。
だから結局何が言いたい何がやりたいどうしたいのか、というならば端的に明確に明白に、








―――――――――― とどのつまり。



































「・・・・え? エ?? ゑ???」
―――――― と言うワケで、大人しく堪忍してくだせェ近藤さん」




布団の上、仰向けの状態で横たわったままただ上を眺める近藤は、何が何やらわからないらしい。
間の抜けきったカオでただただ自分を見上げてくるだけだ。
それも当たり前である。 ちょうど近藤のその腹の上、体重をかけどさりと跨って乗った沖田は、「当然だィ」 と笑ってみせた。
その笑みに、近藤はますますワケがわからないといった顔をする。 それも当然だ。
「そ、総悟? ・・・・うおッ!!? そっちにトシもいたのか、黒くてちっともわからな」
「黙れゴリラ」
最後まで言わせず、近藤の言の語尾をかき消す形で言いきる土方に、
そのゴリラに心底心酔陶酔恋慕してるのは何処の誰でィ、と沖田は重ねてまた笑う。
寝込みを踏襲することは難なく成功した。 否、むしろ強襲と言うべきか。
示し合わせた時間、草木も眠る真夜中丑三つ時少し手前、土方と揃って掛けた寝込みどきの襲来は呆気ないほど簡単に済んだ。
どたばた踏み込んだ直後、一応の準備(?) だの用意(?) だの、
どっちが先だの 「そりゃあ俺に決まってらィこのバカ土方」 「何言ってやがる順番からいったら当然副長の俺だろうがこのクソガキが」
だの 「じゃあジャンケンで」 だのエトセトラ(・・・・)、相応にがさがさごそごそやってしまった時間は決して短いとは言えなかったのだが、
僥倖にも当の部屋の主の近藤はどれだけ熟睡していたのか、どれだけ鈍いのか疎いのかさっぱり目を覚まさず、
何一つ苦労せず奪い取れたマウントポジション、嬉しくてまたまた沖田は満面の笑みを局長に向けた。
「大丈夫です、おとなしくしててくれりゃあこの世の極楽浄土に連れて行ってあげまさァ♪」
にっこり。
「そ、総悟・・・・?」
「何ですかィ?」
にこにこにっこり。
「そ・・・・!」
いくら疎い近藤でも、天使の笑みに覆われた沖田の、悪魔の企みに気づくのにそう時間はかからなかったらしい。
「ちょ・・・・! ま、ちょちょちょ、チョット待っ・・・・!!」
「待たねェです」
悟るや否や、さあっと顔色を変えて慌て出すけれど、まだ本格的なところまでは行っていない。
先手を打って、ギャアギャア騒ぎ出される前にまたも沖田はにっこり、・・・否、ニヤリ。
「俺みてェな若者はアンタみたいに悠長に待って構えてられねーんです。 だからもう無理矢理奪っちまうコトにしましたぜ。 基本的にせっかちなんで江戸っ子は」
「な・・・・、ト、トシィィィィ!!」
沖田が本気であることを瞬時に理解してしまった近藤は、必死で土方に助けを求めようとする。
が、
「悪ィな、アンタに比べたら俺もまだ若い」
「・・・・!!」
一言の下に一蹴、さあっと暗い部屋の中ながらも近藤が音を立てて青ざめるのがわかってしまい、なんだか少しだけ気の毒に思ってしまったような気もしたけれど、
すぐに本当に気の毒目の毒だったのはずっとずっとコッチの方だったんでィ、と思い直し開き直る。
どちらにしろここまで来たら、もう後には退けないし。
「俺も土方さんも、もう限界なんで」
「ってコトで」
「総・・・・、ト・・・・!」
身も世も無い二人の連唱に、どっかり乗ったままの沖田の下であわあわアワワ、うろたえまくられてしまったが、
正直、近藤に言った通り、本当に本当にもういい加減限界だったのだ。
ずっとずっと前からそれこそそれこそもう覚えてないほどモノゴコロついた頃から、ずっとずっとずっとずっと土方と二人揃って揃い踏みして事あるごと事あるごと、
『好きでさァ好きでさァ近藤さん近藤さん近藤さん』 と輪唱の如く呪文のごとく言い続けて来たのに告げ続けてきたというのに、
冗談だと受け取られていたのかそれとも 『好き=Like』 の意味で解釈されていたのか、
それともそれとも(近藤の性質から言ってこの確率は極端に低いが)、あえて気づかないフリをされてきたのか、
当の近藤はさっぱり相手にしてくれずただ豪胆に豪快にガハハと笑って受け流され、 ・・・・そして今に至る。
だから土方と手を組んだ。
だから、本気だ。
「暴れてもいいですぜ。 俺一人じゃ手を焼いたかもしれませんけど、土方さんも居るコトだし二対一だから。 ついでに副長の権限でもって今夜は人払いも完璧なんで」
淡々と告げながら、自分の首のスカーフを解く。
その点、先刻まで寝ていた近藤はただ一枚の着流しで、面倒がなくて良い。
「じゃあさっきのジャンケンの通り、最初は俺からってことで」
近藤の方に向けていた顔と視線とを上げ、脇に佇んでいる土方に一応告げると、
土方は同じように上着を脱ぎ、スカーフを緩めつつ。
「悪いな。 諦めてくれ」
近藤に向けてトドメ、の一言。
「ト・・・・」
それが切っ掛けになったのか、
「ギャアアア助けてェェェェお妙さアアアんーーーー!!!!」
堰を切ったよう、途端に彼は騒ぎ出した。
襲われて一般人、民間人、しかも相手は十も年下のそれも女性に助けを求める警察官(しかもしかも局長ともあろう者が) ってどうなんだと苦笑しながら、




「お妙さんより俺の方がカワイイでさァ」




ぽろりと本音を一言、
心の底から呟いて囁いてそのまま近藤の上に上体を倒れ込ませ、もつれ合う形でキスをする。
「ん!! ん゛ーーーー!!?」
途端に目を見開きもがかれてしまったが、離す気はない。 存分に味わう。
「、・・・やめん、か・・・!」
息継ぎの合間、そんなふうに言ってきて唇から逃れ、
身体をずらそうと動いてくるのを沖田は自分のより広いその肩を少々強引に布団に縫い付け、遮った。
「今更なに処女みてェな反応してるんですかィ? ホントにやめさせたいなら、俺を跳ね飛ばしてでも抵抗すりゃいーでしょーが」
「、」
無論、近藤がそんなふうに出来ないことくらい沖田も土方もわかっている。
少なくとも自分も土方も、近藤の中で他の有象無象とは違う 『それなり』 の位置と地位を築けていることは承知しているし、
だからこそのこの暴挙とも言える強硬手段に出られた。 出てみた。
現状を打破するには、時には強引な手法だって外法だって必要なのだ。
「あー、やっぱりイイ身体してらァ。 ねェ土方さん」
着流しの前を肌蹴させ、露わになった胸元に手のひらを置く。 温かい。 そういえば無駄にいつもいつも体温の高い人だった。
「でもこう見ると全然ゴリラなんかじゃないですぜ。 よっぽどカワイイです」
置いた手のひら、指で片側の乳首をぎゅっと強く抓ると近藤は言葉を切って息を詰まらせた。
普段どれだけ鈍感でも、やはり人間である限りは性感帯の一つとして敏感な部位らしい。
抓むだけでは物足りなくなって、もう片方に激しく喰い付き舌を絡ませ、徐々に固くなっていく肉粒を夢中になって追う。
「う、・・・総・・・・ッ!」
押し殺し噛み殺したような声。
抑えられても別にいい。 取り立てて声が聴きたいわけじゃない。 どうせ聴いたってそれほど色っぽくも何ともないだろうし。
口腔全体で嬲り、押し潰すように転がしてもすぐに硬く形を現わすそれを執拗に舐めていたら、
近藤がぐいっと髪を引っ張ってきた。
「いい加減にせんか・・・・!」
「聞く耳持たねえです」
「や、いやホントマズイから! マズイ! マズイって総悟・・・・!!」
「五月蝿ェ。 おーいこの五月蝿ェヒト、何とかしろィ土方」
軽口調、冗談めかして協力を求めたところ、
仕方ねーな、とばかり土方は煙草を揉み消して一歩踏み出し腰を落として膝を付き、至近距離まで近づいて。
「・・・少し落ち着けよ近藤さん」
「どうやって! んな状態でどーやって落ち着けってのォォォ!! ・・・むがッ!?」
言ったが早いか、全く持って近藤の言うことなど無視、
やかましいその口を黙らせるため、音を立てて唇を塞ぎ、そのまま深く口付けた。
土方のキスに近藤が混乱している間に沖田はまだ手付かずの下肢に手をかける。
土方とチラリとアイコンタクト、下肢が暴かれていくことに意識を向けさせないよう、唇を攻める激しさを増してもらった。
「〜〜〜ん!!? ん゛ーーー!!」
腰紐を緩めて解き、一気に着流しを下着ごと剥ぎ取る。
ほぼ同時、土方も自らの息継ぎのために唇を一旦離す。
コクン、と小さく喉が鳴った。
沖田と土方、どちらの喉が音を立てたのかはよくわからない。 もしかしたら近藤の喉がゴクリと鳴ったのかもしれなくて。
が、鳴ったのは確かで、確かに鳴った喉の音が切っ掛けとなった。
「ッ!! うおッ!!、オイ、オイちょっ・・・・!!」
たまらなくなったのは、たぶん二人同時だった。 揃って咳き込んで並び、示し合わせたかの如く近藤の足を左右に割り開く。
当然、焦った近藤はじたばたもがいて制止しようとしたけれど、所詮二対一。
力ずくで両膝を押さえ込むことでそれを封じた。
「トシ! ちょっと待て頼む! 頼むから離せトシィィィ!!」
「離したら逃げるだろうが。 往生際悪いぞ」
「ギャアア助けてェェェお通ちゃァァァァんーーーー!!!!」
またまた一般人・それも芸能人の娘に助けを求める近藤だったが、騒ぐだけ無駄というものだ。
両足を抑え付ける役目を土方に任せ、沖田は自由になった両の手でまだあまり硬さを見せていないそれを包み込んだ。
「ッ!!」
軽く握り込み、そのままゆっくりと上下させると腰がビクッと動いた。
手の中のそれは一度往復させるたびに膨らみを見せてくる。
「感じますかィ?」
返事はない。
くいくいと括れの部分を揉み込みつつ、顔を上げてみるとまたもや土方に口を塞がれていて。
あああ酸欠にならなけりゃいーけど、と苦笑してしまう。
そして手のひら全体を使って、少し強めに扱き上げる。
「〜〜〜〜!!」
最初と比べて激しくなった愛撫に、たまらず近藤が腕を伸ばしてくるけれど。
いつの間にか上体は土方に完全に抑え付けられてしまっている形になっていて、悲しいかな沖田のところまで手が届いてこない。
「ホント往生際悪すぎですぜィ。 自分でするよかキモチイイでしょーに」
激しくさすったあと、今度は優しく擦る。
直接的な刺激にそこはすでにそそり立ち、沖田としても手で撫でているだけでは足りなくなってきた。
「ん、」
おもむろに軽く息をつき、濡れ始めた先端に唇を落とす。
ぺろりと小さく舐めると、それは途端にドクンと大きく脈動し、舌を動かすと自分の唾液かそれとも別のものか、
大量の濡れた水音が口許から響いた。
眼前のそれはすでに充血してきている。
濃い色に色付いて染まっていく近藤のそれがとてつもなく卑猥で、沖田は自分の息継ぎも疎かに、
懸命に奉仕(?) を送り続けていく。
「ン! ンーーーー!!」
土方によって塞がれた口。 そこから怯んだような声が漏れてきた。
自ら口腔に含む近藤自身はもう膨れて限界のようだ。 張り詰めパンパンで、絶頂が近い。
きっと濃厚な蜜、それを早く味わってみたくて沖田は焦らすことなく、後ろの柔らかい双珠に手を伸ばし、押し上げるように揉む。
今にも弾けそうに膨張した肉棒は、双珠を揉むたびに動かされるたびに小刻みに戦慄き、
我慢しきれず僅かに滲み出た白色が、僅かに沖田の味蕾を刺激して。 余計興奮する。
耳に聴こえる近藤の上擦った呼吸。
ほとんどは土方の唇によってかき消されてしまっているが、漏れてくる鼻息はしっかり鼓膜に届く。
我慢してねェで出してくださいよ、とばかりに最後の仕上げ、搾り出すように熱い肉棒の茎を扱きながら、先端をきゅうっと吸い上げる。
と、ビクッと一際大きく下半身が戦慄いた直後、
熱い白液が勢いよく沖田の口の中に吐き出され、広がった。




「・・・・な・・・・っ・・・」
達して放ったと同時、土方の唇が離れていったらしい。
荒い息を吐きながら、信じられないといった様子で近藤は呆然としている。
小娘でもあるまいし(・・・・) イイ歳して何もそんな放心しなくても、と沖田が思っていると、
「総悟」
「ん・・・・」
ごそり、と移動してきた土方に名前を呼ばれ、濡れていた唇にちゅ、と軽く触れられたかと思ったら素早く口付けられて舌が入ってきた。
まだ嚥下せず、沖田の口中に残っていた白液を二人で分かち合い、味わってくぐもったキスの音と共に半分ずつ飲み干す。
「ふ、・・・・」
ひとしきり貪り合って探り合ってから口唇を離すと、
呆然と茫漠とそれを見ていた(あまりのことに視線を外すことが出来なかった?) 近藤が、
あわあわと指をさし、「お、お前ら・・・・」 なんて言ってきた。
「何です?」
しれっと聞き返してやる。
「別にんな気にするコトでもねェですぜ? 副長とその部下が仲良しって、いいコトでしょーに」
更に更に唖然呆然とする近藤に対し、ねェ土方さん? とにやにや笑ってそう言い切る沖田の横、
土方は、ぼそりと。
「まーな。 ってことで次は俺の番だな」
と呟くや否や、好いようにされてしまったショックもあって弛緩しきっていた近藤の両脚を抱え上げ、再び左右に押し開く。
仰天したのは、勿論近藤だ。
「ト、トシ? な、何を・・・・」
「何、って決まってんだろーが。 総悟にだけ咥えさせとくワケにもいかねーだろ」
なァ総悟? と話を振られてにっこり。 「そりゃそうでさァ」 沖田は天使の笑みで笑ってやる。
「俺と土方さん、両方におんなじコトさせてもらわねーと不公平ってモンでしょう?」




―――――― だから出してもらうのも2回、ついでに言うなら突っ込ませてもらうのも俺と土方さん合わせて2回ですぜ悪しからず。




そうあっけらかん、しかしきっぱり言ってやると。




「ギャアアアアアたたたた助けて! 助けてェェお願いしますチャイナさァァァァんーーーーーー!!!!!!」




血の気がズザザザとドン引きしていく音に加え、またもまたもまたも数えるに今回三度目、
今度は万事屋のチャイナ娘にまで絶叫にて助けを求められる始末。
「どれだけ呼んだってあのチャイナが来るハズねェでしょうが。 でもあんまり煩ェと、山崎あたりにはバレちまうかもしれませんぜ?」
そしたら困るでしょう色々と、とさりげなく脅し。 堂々と局長を脅迫してみる。
「トシィィィィ!!」
「・・・・・・・・・・」
土方は見て見ぬフリ、聞いていない聞こえていないフリを決め込むことに決めたようだ。
それを良いことに、沖田は言い紡ぐ。
「ま、近藤さんさえ黙っててくれりゃあ巧いこと話は進むんでさァ。 んでもってそろってイチャイチャ大団円」
「バレたら! もしバレちゃったらどうすんのォォォ!! 俺の立場は!! いくら何でもマズイでしょォォォォ!!?」
こんな話が上の方の耳に入ったらクビ! 即リストラ! 三人揃って路頭に迷っちゃうけどそれでもイイのォォォ!!? と喚く近藤。
言われて沖田はああ確かに、とチラリと納得しそうになる。
警察の局長と副長と隊長、揃って淫行に耽って免職なんて目も当てられない。
だが、意味もなく確たる証拠もないけれど、バレませんぜと一言。
「そう心配しなくったって大丈夫でさァ」
「な・・・なんで?」
妙に自信満々に言い切って。 ゴホンと軽く咳払い。 そして。
いつかどこかのアンタの言葉を借りるなら、と前置いて。




「今日は勿論、今度  『も』 、その次もその次もその次もずっとずっとずっと、うまくやりますぜィ」




「〜〜〜〜〜〜〜!!!!」




「ねェ土方さん?」




問いかけのかたちを持って振ってやれば、
土方はいつもの仕種通り立ち位置通り、目線は斜め横または上、一歩退いた感をありありに醸し出しつつも。
「・・・・まァ、いざとなったら俺と総悟でなんとか揉み消しゃイイだろ」
幸か不幸か、そのあたりの手腕には(沖田のおかげで) 長けている。




「ギャアアアアアアアアアたたたたたたたた助けて! 助けてェェェェェェお願いだから九兵衛ちゃァァァァァァァんーーーーーー!!!!!!」




一体どこまで往生際が悪いのか(・・・・当然か?)、四度目に近藤が助けを求めた絶叫相手もこれまた女子で、
ふううと呆れつつ土方は当の九兵衛を思い浮かべつつ。




「アンタが呼んでもたぶんあの娘(?) なら喜んでコッチに協力するだろ」




お妙狙いのゴリラ排除のためなら、一も二もなく手を貸してくれるだろーよ、と勝手に言い切って、




「・・・・誰も来ねーから。 マジで」




安心させるために口にした科白は、
「・・・・エ、・・・・マジ・・・・?」
おそらく絶望的な響きを伴って近藤の耳に届いた様子。
青褪めるを通り越し、半ば白くなりかけはじめた局長をこちら側に引き戻すため、ずっと抱え込んでいたその両脚の間、
その箇所に喰らいついた。








三つ巴、夜はこれから。

















【後半、 続・・・・き、ますゲフバフ。】