イン・2





悪戯めいた表情を浮かべながらの沖田に布団の中に引っ張り込まれ、そのまま羽織っただけだった着流しを剥ぎ取られる。
土方としても求められては、沖田の欲しがるまま甘えるままに与えてやるしかない程とことん甘い。
一度目の情事後からずっと布団内でごろごろしていた沖田の若い身体を再び抱き込み、脚を絡ませ、最後に口唇を重ねて舌も絡め、
互いの身体の間、隙間もないほど密着しながら貪るキスは深く長く。
「ん・・・・っ・・」
沖田曰くの 「ラブホ」、とは名前のみ。 安い和室ばかり並んだ連れ込み宿。
立地条件の悪さか、晴れても日が差さないような暗く淫靡なこの部屋に、キスの合間の息継ぎの甘い音が響く。
「・・・・ふ、」
満足するまで舌と唾液とを味わって、それからどちらからともなく絡めた舌を離し、口唇を解放した。
そうして狭い布団の中、圧倒的に明かりの足りない中で自分の身体の下、至近距離の真上から見やった顔はやはり、
・・・・・・・・やはり、姉に似ていて。
「・・・・、そういや昨日の日報出してねェだろ。 帰ったら一番に出せ」
はからずとも起こしてしまった錯覚を打ち消すため、そして気取られないため、あえてどうでもいいことを口をすれば。
「今アンタが何考えてやがったか、一発でバレてますんで」
沖田は見事に看破していたようだ。 
じろりと上目づかいで睨まれてしまった。 一瞬、土方は僅かに息をつめる。
だがそれ以上の追求をしてくる気はないようで、代わりに前髪を掻き分けようと額のところに持ってきていた片手を取られ、
その人差し指と中指、二本をまとめてがぶりと噛まれた。
「ッ!」
意趣返しか、一噛みできっちり歯型が刻まれるほどの強さではあったけれど、それほど痛みを感じたわけじゃない。
なのに思わず目を見開いて驚いてしまったのは、口にしたその指を次に舐められたからで。
男にしては長めの睫毛を沖田は伏せ、咥えた土方の指を口腔に含んで唾液を絡ませながら、ちゅ、ちゅとしゃぶってねぶる。
「な・・・・」
呆気に取られていたら、沖田はにまっと笑った。
「ホントは別んトコしゃぶられてェでしょーが、そーしてやるほど寛大じゃねーんで。 奉仕はそっちの仕事でィ」
疲れるしめんどいし、マグロで俺ぁいいです。 と可愛く毒づく十八歳。
拗ねられなかったことに土方は内心でほっと息をつく。
そうして取られた手を返す手で逆に手首を握り込む形を取り、
「いつだって可愛がってやってるだろうが」
ほんの少し戻った余裕を滲ませつつの科白に、自然な動作で露わな細い首に唇を寄せ、吸い付いた。
「ふん、そんなの全然ちっとも足りねーやィ」
物言い自体はかわいくないけれど、とてもとても可愛い言葉と
触れ心地のいい素肌。
さらさらの薄茶色の髪がかかる耳の下はなめらかで柔らかく、そんなところは子供の頃から少しも変わっていない。
さすがに目立つ場所にくっきりと跡は残せないため、軽く吸うくらいの愛撫でとどめておき、
同時に手のひらで薄い胸元をまさぐっていく。
先程までの情事で元々敏感になっていた身体は一撫でで熱を取り戻し、胸の二つの突起を淡く充血させ形を作った。
それをくいっと軽く摘まみ上げれば、
「んっ・・・!」
過敏に反応して、自分の口唇のある首筋がざわっと粟立つ。
ただでさえも感度の良いところを見せ付けられ、しかしそんな姿態にはとっくに慣れきっているはずなのに、喉が鳴る。
俄然土方の息も上がり、素早く移動させた唇でもう片側の突起を愛撫。 何度も何度も吸い上げ、舌先で弄り上げる。
「っは、ぁ・・・・っ・・・」
普段は生意気の生態系の頂点にいるかの如くの沖田だが、
やはりこの状況、ここまで来ると素直に快楽を貪りたいらしい。 甘い声をあげ、胸元にある土方の頭を両腕でかき抱いてきた。
「ん、ん! ・・・・ッ・・・」
かき抱かれ、胸に顔を押し付けられるがままに絶えず吸い上げ、転がしてやりながら、
そろそろと擡げてきた下肢、そこにするりと片手を滑らせ、硬くなりかけの沖田自身を軽く握る。
「っ・・・・!」
途端、細い身体が跳ね上がった。
離さず手の中に包み込んできゅっ、と軽く上下に扱けば、
「・・・んぁ、あ、あ・・・っ・・・」
身体を小さく仰け反らせながら、みるみるうちに膨れて質量を増やしていくそこ。
ここに至る前段階、一度目の情事で充分に精を吐き出してはいるはずなのだが、若さの賜物か、とても瑞々しい反応だ。
「出しとくか、総悟」
「・・・ぅっ・・・」
甘いうめきと、コクンと小さく頷いて素直に快楽を滲ませる肢体に内心逸りつつ、
土方も腰を擦り、自らを沖田の中心に押し付けた。
「っは・・・・っ・・・!」
ビクッと戦慄く。
熱に熱で触れられ、たまらない疼きに沖田はむずがる吐息を無理矢理言葉にして、吐き出しながら。
「早、く・・・・っ・・・、しや、が・・・っ・・・」
濡れた先端がふるりと震え、意図せずに土方自身の茎部分をなぞり上げたのを切っ掛けとして、
素早く身体ごと下に移動した土方は勃ち上がったその箇所に、荒く咥えついた。
胸と同じよう、ためらいもなく先端部分を口内に含み入れれば、
「ん、あッ・・・・!」
沖田は直接的に与えられる性感に身を捩じらせ、素直に喘ぐ。
比べる対象が無い(・・・・) ため、真偽のほどは定かではないのだが、土方は思う。
コイツは本当に、本当に顔も身体も文句無し、掛け値なし本当に本当に可愛い。
今こうして咥え込みながら愛撫を送ってやっているような箇所でさえ、色は淡く緩く。
加えて与えられる愛撫と沸きあがる情欲によって、濡れ膨れ上がっても染まり落ちるのは濃い桃色。
その一点、下手をすればそこらの処女娘よりキレイであるかもしれないと考えてしまうあたり、もう自分もとことん末期だ。
そんなことを頭の片隅でしみじみ思考しつつ、
先端の小さな穴孔を尖らせた舌先で数度軽く抉ってから、今度は先端だけでなく全体を喉の奥まで深く収め、
何度も何度も口内の粘膜で柔らかく扱きながら舌全部を使って肉棒の中腹を舐め上げてやる。
「っはぁ・・・ッ、ぁ、っあ、あっ・・・・っ・・・!」
連続して刺激される快感にもう沖田は声を抑えず、甘く熱に浮かされたような声が空気に混じる。
その艶声に触発され、自らの欲を煽られて土方は与える愛撫刺激を一層強めた。
沖田が悦びながらも一方で感じ過ぎてしまって弱い弱い箇所である先端の括れを口唇で強く締め付けながら、
先走りの蜜で濡れ落ちる先端を小刻みに吸い続けると、
あがる嬌声に切羽詰まった響きが含まれはじめてきた。
「〜〜〜んッ・・・! ぁっ、・・・い・・・・っ・・・」
溢れ出る蜜と、混ざる唾液。
同じくらい熱い体液にびっしょりとくるまれ、張り詰めた沖田自身は限界を訴えて。
生み出される快感は下肢、その部分に集約し、重く溜まる。 それはもうどこにもやり場がない。
「はっ・・・・あ、・・・ぁッ・・・・」
くしゃくしゃになって水気を含んだシーツの上、沖田が髪を乱して悶えた。
達したくて、腰も自然に動きだす。
口腔粘膜に己れを擦り付け、絶頂へ迎えるだけの決定的な刺激を求め、懸命に昇り詰めようとしていたところで。
「こっちのが、ラクだろ」
一瞬で察知した土方の、親切めいた(しかしそのうち半分は面白半分だ) 声と同時、
つぷり。
―――― ふ、あッ!?」
突然後ろ、最奥に指を伸ばされ、止める間もなく内側を突かれてしまった。
すでに蹂躙されている中側は、まだ充分に水気を持っている。 そして蕩けそうに熱い。
狭いがやわらかい内壁が、挿れた指を包み込んでくるが構わず押し分け、土方が沖田の悦ぶ一点を指先で軽く突く。
「ッあ!」
前立腺を直にいじられ、細い背中が仰け反った。
わかりやすい反応に、もう一度今度は強くぐっと指の腹でそこを押し上げてやり、すかさず口許の先端を鋭く吸い上げれば直後、
「うぁ、ッ―――ッ・・・!!」
沖田はびくッと自身を戦慄かせ、
同じよう腰をぶるっと震わせて、土方の口内に熱を弾けさせた。




口内の白蜜を嚥下し、口唇を舌で舐め取りながら土方が身を起こす。
そうして見やれば、沖田は達した余韻にくったりと全身で脱力中、
「・・・・・・・・は・・・」
両肩と胸元をせわしなく動かして荒い呼吸を繰り返し、甘い余韻に浸っていた。
「総悟」
名前を呼び、顔を寄せ再び口付ける。
行為と行為の繋ぎのようなこのキスにももう二人、揃ってとっくの昔に慣れたもので、
「・・・・さっきの不意打ちは、ちょっとばかし卑怯ですぜ」
「奉仕しろって言いやがっただろ」
きろりと可愛く睨まれたが軽くいなして流す。 マンネリ防止だ。
すると沖田も、
「・・・・・・・・。 まあ、いーや」
追求したって仕方ない意味もないと初めからわかってはいたらしい。
「続き、しましょーぜ」
ごそごそと自ら移動、土方に背と腰とを向けて膝をつき、バックの体勢を取ってきた。
互いに向き合う態勢より、更に深く身体を繋げるこの体位に土方としても異論があるはずもなく。
すでに猛って熱い自身を最奥にすっと宛がい、
「・・・・っ・・」
触れた感触に沖田が軽く息を飲む気配を身体で感じながら先端部分を含ませ、埋める。
欲しがって疼き、濡れた粘膜がうねって土方をもっともっと奥へと誘う様は、女のそれより余程悦い。
「これなら、慣らさなくても構わねーな」
ぐち、と湿った音を立てて深いところまで貫けば、
先程指で押された箇所、前立腺を先端が掠めたのか、
「・・・・んッ、く・・・・っ・・・」
ビクンと過敏に下肢が反応し、達したばかりの沖田自身がふるっと頭を持ち上げはじめる。
すかさず腰をいない方の手を回し、軽く握り込んで動かしてやれば、息を吹き返す勢いは止まらない。
「やっ・・・・!、あ、っ・・・・っ、あ・・・!」
絶頂直後で快感を余計に拾ってしまう、神経の塊のようになっているそこを後ろと同時に刺激され、身体が一挙に快楽に染まっていく。
土方自身の先端からも滲み出る体液で内側をぬるぬると擦られ、
いきり立った腰の動きは内部を穿ち激しく掻き回されて、繋がったところから下肢が溶けてしまいそうなほど気持ちいい。
「・・・あっ、あ・・・っ、っあ、ぅ・・・・んっ・・・」
とめどなく漏れる喘ぎに連動して揺れる腰。
土方が動くたび、摩擦によって生ずる熱と快感が性感を高め、内部が収縮する。
蠢く内壁粘膜。
それは土方の高みも激しく促してくるけれど、
まだ、足りない。 もう少し、強く。
握り込んだ沖田自身の色付き、膨れた先端をくりっと円を描くように擦り回すと、
「ふあぁっ、あ、あ・・・ッ!!」
そこから一瞬だけ、ほんの僅かだけぴゅくっと弾け飛んだ白い蜜。
直後即座にきゅうきゅうっと沖田は身体の奥の土方をきつく搾り取る。
「く・・・」
貪欲な歓迎に、一気に高みに向かう身体。 もちろん二人同時。
「っ・・・! も・・・・っ、あぁっ、あ・・・!」
達く、と髪を振り乱して強くかぶりを振る沖田の腰を、止めとばかり土方はぐっと力づくで引き寄せ、細腰が壊れてしまいそうなほど激しく貪った。
手の内の沖田自身も、絶えず前立腺を突かれ続け、ぱんぱんに膨れ上がって今にも弾けそうだ。
どうせなら一緒にな、と背中に囁き落とし、沖田自身に絡み付かせた指で根元から先端までを全体的に扱き上げ、
奥の奥に埋め込んだ切っ先で抉って突き上げれば、
「ッあ―――っ・・・、あッ、あ・・・・っっ・・・」
沖田は土方自身をとろけそうな熱さと絶妙の狭さを持って締め付ける。
「・・・・ぅ、んっ・・・っ・・・」
「、ッ・・・・」
互いにもたらし合う快楽で訪れる吐蜜。
手の内に勢いよく吐き出された白蜜に続き、追って土方も中に最後の一滴まで残さず、精を放った。




















「・・・・・・・・腰が痛ェ・・・・・・・・」
ぼすっ、と布団の上に突っ伏したまま、沖田が呻く。
後始末は終え、一応部屋に備え付けの浴衣を引っ掛けてはいるが、それは正に 『袖を通しただけ』 であってほとほとあまり見られた格好ではない。
そんなしどけない格好のまま、もう一度呻かれた。
「関節も痛ェ・・・・」
「・・・・そりゃ自業自得だろ」
返す土方の口調が、呆れるというよりは諭すような響きになっているのには訳がある。
「流石にこっちもバテるわ」
あの後、実は更にもう一度ヤったのだ。 しかも沖田が上に乗る態勢で。 無論、誘ってきたのも沖田だ。
それに乗って応えてしまう土方も土方だが、しかしそればかりはどうにもこうにも。
おまけに時刻はとっくのとうに山崎に伝えた帰屯予定時刻をオーバーしていて、
本来なら息せき切って戻らねばならないはずなのだが、だがしかし。
「立てるか?」
「立てねーです」
はっきりきっぱり 『無理。』 との返事で、頭を抱えざるを得なく。
「・・・・・・・・・・」
仕方ない。
放ってあった沖田の携帯に本日二度目、手を伸ばす。
この時間になっても何も連絡が入っていないということは、今日は丸一日平穏だったということだ。 だから構わないだろう。
黙ってリダイヤルすると、
『はい真選組』
またも山崎が出た。
「俺だ。 今んトコ、何も起きてねェな?」
『あっ副長! 大丈夫ですよ、今日は一日ずっと静かですから』
「・・・・ならいい。 朝には帰るって近藤さんに伝えとけ」
『わかりました。 もし何かあったらすぐ連絡入れますんで』
「そうしろ」
『それじゃあ引き続きごゆっくり。 あ、沖田隊長にはお大事にどうぞって伝えてください』
「・・・・あァ?」
『いえいえ何となく勝手に思っただけで。 じゃ、お疲れ様です』
通話は終わったが、呆気に取られ数秒耳から携帯が離せなかった。 どういうことだ最後のは。
「・・・・・・・・・・」
やはり聡い。 完璧にバレている。
山崎のくせ、地味なくせ、変なところで鋭い。
「土方さん?」
と、しばし硬直していた土方を不審に思ったのか沖田が疑問符混じりで呼んできた。
「、何でもねェ」
「とりあえず、朝まで寝てられるんですかィ?」
「ああ。 それまで寝てろ」
朝になったら立て、それで帰るぞと告げたが早いか、早速ふあああと大きな欠伸をして、「じゃあ俺寝ますんで」 と頭から沖田は布団をかぶる。
「朝になったら立って歩けよ」
布団越し、念のためそう言うと。




「いざとなったら土方さんが俺を抱っこして帰ればいいんじゃないですか」




もごもご。
布団の中から揶揄めいたそんな一言が帰ってきた。




「・・・・・・。 馬鹿。 出来るかそんなこと。 それこそ近藤さんが白目剥いて倒れちまうだろうが」




近藤を引き合いに出し、戯言には毒づいて答えてはみるものの、
朝まで引っ付いて抱き合って眠ってみるのも悪くない。
そう思い布団に入ろうとしたら、
「邪魔でうざってーし狭いんでどっか別にあっちで寝ろィ土方」
一息にあえなく冷たくぺしっと追い出されて、
「このガキ・・・・」
ワガママ小僧、我儘総悟。




ブツブツ文句をたれながらも土方は要求通り別の位置に腰を落ち着け(眠る気はもうなくした)、
音もなく煙草を燻らせた。




静かな部屋の中、聞こえてくるのはすぐに寝入ってしまった可愛い独裁者の規則正しい寝息だけ。




―――――― 望むなら抱っこくらい何時でも何処でもいくらでもしてやる。




甘い。
自分はとことん、沖田に甘い。












やってるだけで内容もないよう・・・・(←痛すぎる)。 えろもちいとも駄目ですみません。
コメント付けようが無いです。 すいません次は精進します・・・・