キレイ、だけど・・・・?





「アンタの酒に誘引剤、どばっと盛っときました」









それはまだ、自分の髪がやたらと長かった当時にまで遡れるほどには、そこそこ昔の話で。
同様、現在に輪をかけて沖田も子供の頃のこと、
否、子供というより『幼い』とストレートに表現した方が良い程度に今より更に二人ともが年若い頃の出来事でもあり。




























それはそれは、本来ならなんでもないどうとでもない普通の平日の、夜。








「俺が人生棒に振るんです。 だからアンタも人生、棒に振れィ」




「な、」




何言ってんだ総悟、と続きの科白は喉の手前でせり止まった。
深夜の個室の寝室、
他の奴等の屯する母屋からは所謂 『離れ』 に位置する此処をあえて今晩、土方が選択した理由は。




「何、ハトが豆鉄砲くらったみてーなカオしてるんです。 ま、とりあえずアンタの酒に一服盛っときました」
「、」
何をだオイ、と続けるべき台詞も、喉の奥でせり止まる。
わかっている。
自分でも現状、状態、状況、否が応にも全てわかってしまっている。
それは今のシチュエーション、今自分とここにいるのは妙に真剣な(しかし口調のみ普段と変わらずふてぶてしい) 沖田総悟の二人だけ、
周囲は物音一つしないほどの静けさと深い夜、

十畳間のがらんとした部屋に敷かれた煎餅布団、
そして極め付けはその布団の上に半身だけ起こした自分に挑みかけるよう、乗り上がって至近距離で顔を覗き込んで来る沖田、
・・・・・・判断材料がこれだけ揃っていて分からないはずもなく。
身体の変調は、呑み終える時点のあたりで気付いていた。
そのときは安易に近藤がどこからか調達してきた安酒に悪酔いしたのかと、大して気にも留めていなかったのだが。
身体の乾きはここに来て本物で、
当の沖田本人が目の前に居るプラス、乗られているため嫌でも伝わってしまう体温。
「総、」
「まどろっこしいのはもう面倒くさいやィ。 アンタがそーゆーイミで俺のこと好きなのも、そーゆー願望持ってんのもこちとら全部お見通しです。 だから」
わざわざ俺からリアクション起こしてやってるんですぜ感謝しろィこの甲斐性無し、と地味に罵られつつ、
だから、と沖田は繰り返す。




「・・・・だから我慢しなくていーですぜ、 土方さん」




瞬間、瞬時のことは覚えていない。
上記の台詞、最後まで言わせたかどうかも定かじゃない。
「ン・・・・!」
意識したときには、乱暴に口づけていた。
身体全体の疼きと乾きとを消そうとばかり、もしくは隠そうとしていた心情をぶつけんばかり、勢いに任せて沖田の口唇を奪う。
互いに慣れないキス、時々危うく歯までぶつけそうになりながらも長く、息切れしそうなほど激しく。
顔を寄せるため、片腕で引き寄せていた沖田の肩が小さく動いたのを切っ掛けとして、最後に強く吸い上げてからようやく解放すると、
そのまま自然な動作でぽふ、と土方の肩口に沖田が前髪から額からもたれかかってきた。 表情は見えない。
しばらく(とは言ってもせいぜい三十秒程度だろうか) そのままでいた。
薬によるものだろう、沸き上がる情欲と疼きに僅かに翻弄されながらも、さすがに唐突過ぎたか、
と性急な行為を反省、いや、後悔しかけたところで。
「もっと、近くに来ますかィ・・・・?」
つぶやきのような独り言のような、どちらにも取れるほど小さな囁き。
けれどそれは周囲の静か過ぎるほどの静けさも手伝って、確実に土方の耳に届く。
こんなにぴったりくっ付いているのに、これ以上どうやって。
阿呆にも程がある疑問は、更に小さい呟きにも似た誘いの言葉によって霧消した。




「・・・・俺ん中に」
























余裕のない手付きで土方は沖田の前、胸元も下肢も肌蹴させていく。
盛られた薬は明らかに単なる切っ掛けに過ぎなかった。
露わになった沖田の細い胸元を弄る行為は間違いなく自分の意思で行っている。
「ん・・・・」
成長途中、幼い胸を手全体を使って愛撫され、くすぐったいのかぴくんと僅かに沖田は震え、次に両方の薄い突起をいじられて小さく身を捩った。
「嫌な訳じゃ、ねェよな?」
「・・・・・・・・」
きろっと睨まれてから気付く。 我ながら馬鹿な質問をしてしまった。 嫌ならこんなことになっているはずがない。
なのに思わず訊ねてしまったのは、その震えかたを含めた仕種があまりに初々しく(当然?)、あまりにあどけなかったからで。
「・・・・悪ィ」
謝ると同時、素早く頭をずらして胸の可愛い突起に吸い付いた。
「っ・・・あっ・・・!」
ちゅく、と濡れた唇で右の乳首を捕らえられ、思わず沖田は甘い声を上げてしまう。
土方は銜えたそれを離さないまま、もう片方にも指先を添えころころと転がして愛撫する。
口唇で挟み、ぷくりと尖った小さなそれを丹念に舐め味わっていると、
長い後ろ髪をぐいと引っ張られた。
「どうした」
何か訴えたいことでもあるのかと、可愛い肉粒を口中に含んだまま問い掛ける。
途端、歯が掠めたらしい。
「んっ・・・!」
沖田は一際大きく上半身をねじって反応を見せ、もう片方のそれも硬く紅くはっきり尖らせ、白い素肌に鮮やかに色付かせていく。
目に見えてわかるその変化に、嫌でもそそられて、途中からは夢中になって吸い上げた。
「ぅ・・・・っ、、も・・・・っ・・・」
痺れるくらいに長く吸われ弄られ続け、いろいろな意味で辛くなってきたのか、もう一度沖田に髪を引っ張られたところで、次の段階に進んだ。
名残惜しげに胸元から口唇を離し、そのまま身体ごと頭を下に持っていく。
最初に衣服を乱していたため、すでに露わになっている細く白い肢体。
そして中心部は、幼いながらも先程からの愛撫にきっちり反応を見せ始めている。
一度目にしたその姿態に、視線を奪われて離せない。
どんなふうに此処を、どうやって愛してやれば悦ぶのかは同性であるからわかってはいるつもりなのだが、
眼前の沖田自身はあまりにまだ幼すぎて。
「土・・・・、」
名前を呼びかけ、途中で自分をまじまじと見つめられていることに気付いて慌てて沖田が着物の裾で身体を隠そうとするが、
少しだけ土方の取った行動の方が早かった。
「ん、っ・・・・!」
するりと一度、軽く撫でる。
緩く全体を擡げていた沖田自身がふるっと震え、宥めるようにもう一度撫で上げてから手の中に収めると細い腰が戦慄いた。
土方も息の荒くなっていく自分を意識しつつ、ゆっくりと手を動かし上下に扱いていけば、
「・・・・っ、あ・・・・っ、あ・・・・」
紡がれる快楽に、沖田は素直に艶声を上げた。
「・・・・総悟」
普段は(可愛いながらも(そういう感情を抱きながらも)) クソガキだと思っていた。(そんなところも可愛くて可愛くて仕方がないのだけれど)
とにかくまだ子供で、だからこそこういう対象としては拙いと自覚していたから何も手を出せなかった出さなかった日々であり、
・・・・至るところつまりは業を煮やした沖田に一服盛られて押し切られる、今のような破目に陥ったのだけれども。
それだけガキだガキだと思っていた沖田が自分の与える性感によって乱れ、素直に反応するのが新鮮で、
随分成長したじゃねーか総悟、と見当違いな方向で感無量、になった。
しかしそれはそれだけ(本人に気付かせながらも手を出してやれなかった) 自分のヘタレ具合を再確認させられるだけのことに収束してしまうのだけれども。
「・・・・イイか?」
「・・・っ、わ、からな・・・・っ・・」
小さくかぶりを振りながらも、途切れ途切れの声が逆だと示している。 ここにきてもあまり素直ではない仕種に感心するやら呆れるやら。
一方、沖田からしてみれば、誘ったのも踏み込んだのも自らであるにも関わらず、想像の域を超える性感にすでに翻弄されていた。
直接的に触れられるのは当然だけれどこれが初めてで、どうして良いのかわからないながら、快感に流されまいと懸命に唇を噛み締める。
なのに。
「ッ、ぁっ!」
土方に敏感な括れの箇所をなぞられ、間を置かず先端を揉み込まれ、
たまらず咄嗟にそれを止めようと身を起こし、彼の手を留めようとするが。
「暴れんなよ」
諭すよう告げ、手を動かし続けるという行動をもってやんわりと却下。 するとみるみるうちに沖田の息を荒く上擦り、肌は上気の度合いを増していく。
ぬるりとぬるつく指を一度離してみると、手首まで体液が滴って濡れていた。
何のてらいもなく、ほとんど無意識に手首のそれをぺろりと舌先で舐め取る。
他人の体液、それも先走りの蜜の味などを味わうのは土方としても無論初めてであったのだが、不思議なことにほとんど抵抗感などなかった。
そんな自分に内心驚きを覚えつつ、もう一度沖田自身に指を添える。
とっくに芯を持って天を向いているそこに、先端から溢れる蜜をなするようにして擦り上げる。
特に裏側は人差し指の腹を使い、丹念に弄くった。
「ぅあ、あ、やッ・・・・!」
感じる場所を感じるように触れられ、とめどなく透明な体液が零れ落ち滴っていく。
寄せた顔で表情を伺い見れば、沖田は下半身だけでなく、全身をかたかた震わせながらも快感に耐えていて、
それでも堪えきれず喘ぐ媚態に、思わず半分ほど理性が飛んだ。
「・・・は、っ・・・ぁ、・・・・・・な、ッ!?」
一心に愛撫を受けていた自身から手指が突然外されたかと思った途端、前触れもなく急に両手を使われ、
ぐいっと太腿、 ・・・・両脚を左右に広げられ抑え付けられ、慌てて土方に目をやった沖田が目の当たりにしたものは。
「なに、する・・・・ッ!」
気ですかいアンタ、と続けるつもりの台詞は、
土方が自分の息づく中心部に顔、口許を近づけ今にも含み入れそうな状況によって、言葉にならなくなってしまった。
何する気も何も、一目瞭然で。
「やッ・・・・やめッ・・・!!」
「あ?」
バカ土方は、何故止められたのかわからない、といったカオをしている。 どうしてわからないのか。
何もかもが初めてな身体は、少し手で弄られただけでもこんな状態に陥ってしまっているのに、
加えて口でなんてされてしまうものなら、どんな状況になってしまうか、それこそわからない。
「ヤだっ・・・・、それはヤダって・・・!」
「もう遅ぇよ」
沖田の心情を知るよしもない土方は衝動の赴くまま、必死で逃げようとする腰を無情にも強く掴んで据え付け、
逃げ場を失くさせてから迷わず、しとどに濡れた沖田自身の中腹に舌先を這わせた。
「っひ・・・・ッ!」
瞬間、ビクッと沖田は背筋を反らせて大きく悶えた。 構わず土方は舌先を離さないまま、つうっと上方に移動。
先端まで持っていき、くぱっと開いて蜜を溢れさせ続ける穴孔を尖らせた舌先で抉ってから、全体を口腔内に咥え込んだ。
そうして大きく口腔粘膜で扱き上げてやりながら、舌は裏側をずっと攻めてやる。
「・・・っや、や―――ッ! ふぁ、ぁ・・・・っ」
あまりの刺激に、一気に声を抑える余力もなくなったらしい。
沖田の甘い声が空気を甘くして響く。
その嬌声に残っていた半分の理性も崩れ、土方は後先考えず愛撫の度合いを強めた。
「んッ! んぁ、ぁっ!!」
ぴちゃ、と先端を一度舐めてから口唇を使い時間をかけ、ちゅ・・・・・と細く吸い上げてやると、
「や・・・・っ・・・あ、ぁ・・・っ・・・」
息も絶え絶え、沖田の喘ぎに涙が混ざり始めてくる。
「も・・・・っ・・・! ヤ、だ・・・・っ・・・」
抑えつけられた脚と腰ががくがく上下に動く。
幼い沖田の身体にこの口淫はさすがに早過ぎたのか、絶頂は呆気ないほど早くやってきた。
それを感じ取った土方は、離せと訴えきつく髪を引っ張ってくる沖田の懇願など頭から無視し、そのまま絶頂を促した。
このまま達けとばかり、可愛い二つの珠を手のひらでやわやわと揉みほぐす。
「っ土・・・・方さっ・・・・!」
絶頂が近づけば当然離すだろうと思っていた土方の、更なる行動に沖田は目を見開くが、
舌で括れの部分と先端を重点的に愛され、たまらず身を強張らせ、捩った。 途端。
・・・・ッ、ぁ、あーーっ!」
遮るもののない射精感に耐え切れず、
沖田は咥えられたまま、土方の口中に白蜜を吐き出した。








「・・・・・る」
ぱさりとさらさらの茶髪を乱して布団に沈み込んだ沖田の唇が微かに動いて、鼓膜に届いた。
「何だ・・・?」
口中の蜜を嚥下しながら、聞き取れず土方は聞き返す。
と。
「絶対、いつかアンタぶった斬る・・・・」
かわいい報復の誓い。 暴走しすぎたか。 それでも止められなかった。
盛られたクスリのせいもあるのだろうが、今となってはもうどうでもいい。 どちらにしろもうここまで来てしまったら、止まるわけにはいかなかった。
「出来るならやりゃいい」
「・・・・・・ふん」
揃って照れ隠しのよう、いつもの通りの応酬をかわしつつ、迷わず土方は次の段階へ進む。
慎重に探り込ませた指で、奥まった箇所を掻き分けて最奥の入口に一度触れると、
反射的に沖田はヒクンとそこを窄ませた。
こんな狭そうなところに果たして入るのだろうか、と疑問にも似た戸惑いが頭を掠めるが、とりあえず片手の人差し指の先のみ、埋めてみる。
多少の肉の抵抗はあるものの、そこまで全く入らないというわけではない。
そう思い、第一関節までゆっくり進めたところで、
「っ・・・い・・・ッ・・」
沖田から呻き声があがった。
「痛ぇ、か・・・・?」
当然だろう。
震えながら沖田は首を縦に振る。
痛みと圧迫感に苛まれるその表情は、不謹慎だけれども土方をとてもとても誘ってくるもので。
痛いと言われても、今更後になど退けるわけがない。
「力、抜け」
無理だとわかっていても、そう言うしかなかった。
言ってできることなら、最初から沖田だってそうしている。 そもそも身体から力を抜くにしたって限度もあるし、限界まで抜いたからといって内側が広くなるということも有り得なく。
「ぅ・・・・っ・・・」
ほんの少し指を進めただけで、痛みが貫くらしい。 確かにこのあたりはぐいぐいと締め付けてきて、きつい。
どうにかして緩めてやろうと思い、少しでも気を紛らわせてやるため、先程達したばかりの沖田自身をやんわり撫でてやる。
と、沖田の腰を痛みを覆い隠すようなぞくりとした快感が走り抜けた。
「く、ふ・・・・っ・・・」
過敏なそこは、二度、三度と撫でられているだけで強い快感を伝えてくる。
甘い快楽に沖田が酔っている隙に、土方は内側の指を細心の注意を払いつつ、軽く動かしてみた。
「っは・・・・!」
きつい肉を擦られる感触と、前に与えられる快感の双方に沖田は小さく身体を戦慄かせる。
見たところ、痛みと快感はそこそこ相殺されているようで、そこまで辛いといった様子ではない。
にしても慎重に沖田の様子を伺いながら、丁寧に内壁をさすっていく。
耳情報のみに拠するものだったが、このあたりにある男だけの性感帯のことは知っていた。(いつか酔っ払った近藤たちとのくだらない下ネタ談義であがっていた)
さする動きが、探る動きに変わっていくことにうっすらと沖田はその眉根を寄せていたのだが、
土方の指先が中のその一点を掠めて動いた途端。
「あ、んあッ!!」
本人でさえ既知しない箇所から生じた鋭く甘い性感が全身を走り抜け、思わず腰が跳ね上がる。
「そこ、だな」
「・・・・・え、」
沖田本人、何が起きたのかほとんどわかっていない様子で視線が落ち着かない。
大きな瞳に去来する一握りの不安は、身体に起きた出来事に対する動揺をしっかり表してしまっていた。
「心配いらねェ。 おとなしくしてろ」
告げながらもう一度確認するため、同じ場所を再び押してみると、
「、っ・・・・っ」
細い腰を仰け反らせて反応する。 同時、もう片手の中の自身もヒクついた。
快楽神経のかたまりのようなそこを、土方は集中して攻めていく。
何度も何度も繰り返し突付き、擦り上げれば沖田の呼吸は荒く乱れて一度達した前も力を取り戻し、勃ち上がって赤く充血を始める。
快楽が身体を覆っていくと共に、自然と土方の指を締め付ける内壁の力が緩まってきたのを感じ、
今ならどうにかなるか、と思い切って一本指を増やしてみた。
「っ・・・・ん、ん・・・」
むずがるような声が沖田から漏れたけれど、人差し指より更に長い中指でその一点を擦った途端、沖田自身がとろりと蜜を零した。
零れた透明な蜜は茎を伝って大量に滴り落ち、土方の指のある後ろまで辿り着く。
「ぁ・・・・っ、う、ぁ・・・・っっ・・・」
擦るたび突くたび、面白いくらいにとぷとぷと先端から先走りの蜜が溢れだす。
あまりに素直な身体の反応は、土方としてもわかりやすくていい。
「悦さそう・・・だな」
「、っ・・・・ひッ・・・あッ!!」
探り当てたそこに安堵しつつ、体液でぬめる指先と指の腹でポイントを擦り上げると、僅かだが沖田の腰が揺らぎ始める。
そしてそれは徐々に大きくなり、連動して中の指も更に増え、最終的に三本の指が中を自在にほぐし回る頃には、
内側から刺激されて自然、沖田に二度目の絶頂が迫っていた。
―――ッ!」
長い指で届く限りの悦点を抉られ、反射的にビクン! と身体が跳ねて思わず眼前の土方にしがみついてしまう。
もちろん意図した行動ではなかったのだけれど、そんな可愛い動きは土方の我慢をかき消すに充分すぎるほどのもので。
指を引き抜く手間にさえもどかしさを覚えつつ、柔らかくなったそこに猛りきった自らを宛がい、衝動に任せ一気に突き挿れた。
「い・・・・ッ! つぅ・・・・ッ・・・」
「、くッ・・・」
瞬間、互いにそれぞれ眉を顰めるほどの強い刺激。
奥まで貫いた途端、沖田自身の先端からぴゅくっと白濁が噴き出した。 同時に中の土方を粘膜は強烈に締め付け、
肉圧の感触に口をついて漏れそうになる吐息を彼は意識して噛み殺す。
「っ・・・痛・・・・」
動きは最小に留めている。 にも関わらず沖田は挿入の衝撃と余韻に、眉根を寄せたまま苦しげな浅い呼吸を何度も繰り返した。
「平気か、 ・・・・おい」
「・・・・っ・・・どう見りゃ、これで平気に、見えるんですかィ・・・・っ・・・・」
痛ぇ痛ェ裂けた裂けた絶対裂けた一体どうしてくれるんですこのクソ土方、と今にも泣きそうなカオで沖田は訴えてくる。
その様子に多少なりとも慌てながら土方がそうっと結合部に指先で触れてみれば、僅かに滲む紅い色。
量から計るに、ほんの少しだけれど傷付けてしまったらしい。
一挙に心配になり、醒めるとまで行かないまでも、腰と下肢の動きを最小限にして何とか沖田の身体が慣れて馴染んでくれるのを待った。
「総悟」
「ん・・・・・」
切っ先は確かに悦点に届いている。
それを証明するかのように、土方が動かなくても沖田の中は断続的にヒクつきをみせ、じわじわと土方を煽ってくる。
煽られて内部の土方自身がどくん、と一回り熱量・質量共に増して結局更にポイントを強く突き上げられる形になってしまい、
「っ・・・・は・・・・ッ・・・」
身体の芯を通って駆け抜ける性感に沖田はぞくっと背筋を震わせた。
鈍痛は続いている。 が、それをかき消すほどの重く甘い感覚も今になって訪れはじめていて、
そんな様子を目敏く見て取った土方が、欲情も露わに軽く揺すりをかけてきた。
「ん・・・・ッ!」
まさかの痛み、より 『甘み』。 思ってもみなかった甘い刺激を堪える方が、大変だった。
「・・・・、あ・・・っ・・・あ、あ・・・・っ・・・」
様子を窺われるように数回、ゆっくりと続けて動かされる。
今まで感じたことのない、前立腺を直に抉られる性感。 零れ落ちる声を隠すことなど出来なかった。
無論のこと快感と一緒に、痛みも併発してはいるのだけれど、内壁を蹂躙されるたびに頭の芯まで痺れる感覚に全身を支配され、肌が粟立つ。
一方で次第に慣れてきたことを身体で感じ取った土方は、本格的に律動を開始した。
「ぁ、ぅ・・・・っ!」
これ以上傷付けないよう、注意しながらも奥まで何度も突き、それから今度は浅いところを丹念に抉っていく。
「・・・・く、ぅ・・・・っ・・・」
途中、半端に引き抜かれる感覚に沖田が悶えてかぶりを振ったけれど、止めることなど到底無理だ。
「まだ痛ぇか・・・・?」
「あ! あッ・・・・・!」
訊かれると同時、ぐいっと強く強く先端でポイントを押されてたまらず前の沖田自身が力を取り戻し、天を向き始めたところをしっかり土方は見逃さない。
すかさず手で揉みしだかれて、
「んん・・・・ッ・・・っ、や、ぅぁ、あッ!」
容赦なく刺激されながら、内側ではしっかり前立腺を攻められて腰がどうにかなってしまいそうなほど、感じる。
いつの間にか、出血はなくなっていた。
前から滴る蜜の方で粘つく結合部から響く濡れた音さえ気にしていられない。
「・・・・ん、あ、ぁ・・・・っ!!」
熱く濡れた土方自身が最奥、そこだけ感触の違うところを的確にぐちっと突き上げ、沖田の細腰が反射的に後ろへ逃れて下がるのを無理矢理押し留めて再び、刺激する。
途端に肉壁は痛いほど締まって土方自身を包み込み、互いに誘う快楽に土方も口許を歪めた。
「ッ・・・急に、締め付けるんじゃねェ」
「ん、なの・・・・っ・・・・」
俺だって知らない、とぶつけようとした続きは、
「ひゃッ!? あ、あッ!!」
人差し指と親指とでぱんぱんに張った先端部をぐりぐり揉まれ、強すぎる痛みにも似た刺激に邪魔されて言葉にならなくなる。
たまらず懸命に伸ばした手で、土方の手を引き剥がそうとするのだけれど。
「ぅあ、や・・・・離・・・・っ・・・」
「離さねーよ」
「ーーーーっっ!!」
揉まれながら、時折きゅッと強く握られ、かと思えば即座に緩められたり。
次から次へと襲い来る快感に、沖田の全身は赤く染まって息もこの上なく荒い。
元々性感自体に慣れていない身体はどこまでも限界近くて、それはまだ一度も欲を放っていない土方も同じだった。
「・・・・・っ・・・」
荒い呼吸に耐え、律動を重ねていく。
押し寄せる悦楽を享受しながら、絶妙に収縮し蠕動する沖田の内側を味わっていけば、
いつの間にか同調するかのよう、沖田の腰も揺らめき出した。
鈍痛はもう、感じていない。
それに気付き、揺さぶる腰の動きと沖田自身を捕らえている手の早める。
「あ! あッ! くぅ・・・・っ・・・ッッ!!」
あからさまに激しくなった土方の動きに、耐えきれず沖田は眼前の身体に縋る。
そうでもしなければおかしくなってしまいそうなほどの熱に、眩暈さえ起こしそうで。
「、・・・はっ、・・・ぁっ、ぁ、あ・・・・っ・・・っ・・・」
声帯が壊れてしまっているかのような、か細く切羽詰まった艶声。
小さく震える太腿に、かたかた上下に揺れて止まらない下肢。 もう限界だ。
もちろん土方も同じく、荒い呼吸を隠さず乱暴に沖田を貪って絶頂を目指す。
「も・・・・っ・・・・!」
涙なのか汗なのか、それとも両方なのか判らない雫を頬に伝らせながら、沖田が髪を乱して首を横に振る。
土方もまた、目許を紅く染めながら高みを迎え、膨れて反り返った沖田自身を搾り取り、扱き上げた。
「んッ、・・・・ッ―――ッあ・・・!!」
手の内で大きく脈打ったそれが、甘い蜜を解き放った直後、
内壁がきゅう・・・・ッとこの上ないほど甘く切なく土方を締め上げ、彼にも訪れる絶頂。
「・・・・・くッ・・・!」
低く呻いて、そのまま沖田の中に精を吐き出した。
外に出してやる余裕は、流石に何処にもなかった。


























――――――――― やたら長い追憶 『お初体験』 だったような気がするが、実際のところ思いを馳せていたのは僅かな間だったらしい。




「、」
ふと目を上げると記憶の中より数年成長を遂げた、今現在の沖田が訝しげに土方を眺めていた。
と、ニヤリと笑って。
「何考えてたか、当ててみせやしょうか」
「・・・・・あ?」
返事をする暇もなかった。
「なんかエロいこと考えてたに3000点。 どーです」
「ん、んなワケねェだろうが」
慌てて否定。 慌てて煙草に火を付ける。
しかし時すでに遅し、沖田は最初から取り合わず。
「誤魔化そうったってダメですぜ。 アンタがじっとり黙ってる時は、9割方ロクなこと考えちゃいなくて、そのうち8割はほとんどエロいことで、でもって更にその中でも8割5分は大概大抵、可愛い俺が関係してたり。  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うわ、変態だァ」
「違うわァァァ!!」
勝手に一人で勝手な完結するんじゃねェこのクソガキ、と反駁しておくが、当たらずとも遠からず。
むしろ遠いどころか、正直ほとんど当たっているかもしれず(・・・・・・)。
「・・・・・・・・・・・・・」
引き続き、沖田はニヤニヤ笑っている。 見抜かれている。 ほっとけ。
惚れた弱み。
踏み込まれた弱み。
先手を取られた弱み。
何だか自分は笑えるほどに弱点だらけだ。
「・・・・仕方ねェ」
タメイキは紫煙と共に二分化され、消化される。
諦め、開き直って酒を喉に流し込んだ。 安酒、決して旨くはないがそこそこ不味くもない。
ただ酔っ払うだけにはこれで充分、まるで人生のように。
「あっそれ俺のでさァ」
「小せェこと言ってんじゃねーよ」
どちらがどちらでもいい。 結局同じことだ。
「じゃ、ここは全部土方さんの奢りってことで。 やったァ」
「なんでそうなるコラ」
さっきのホテル代(・・・・・・)も払ったのは俺じゃねーかオイ、とそこはさすがに小声。
懐事情が寂しいわけではないが、かと言ってそうそう無尽蔵にあるというわけでもなく。 第一今は給料日前だし。
「じゃあ、ここ奢ってくれたならもう一件付き合いますぜ」
そっちは俺が払います、と言われて時計を見た。 まだ閉店には早い。 夜はまだ長い。
「どこで呑んでも同じだろうが。 今から店替えするのも面倒だろ」
だから別にこのまま此処でも構わねー、その代わりワリカンにしとけ、
そう言うと。


「へぇ?」


なんだか突然、悪戯っぽい顔をされた。
「?」
その笑みの意味がわからず、ただ見返したら。


「俺が付き合うって言ったのは、ホテルの方ってイミだったんですが」


そっか、いーのか。 いーんだ。 まァそれならそれでもいーや。
と、わざとらしく繰り返す十八歳。


「・・・・・・待て。 誰もそうは言ってねェ」


それならさっさと出んぞ総悟、と伝票を摘まみ上げつつ立ち上がった土方に、沖田は半分呆れ顔で。


「アンタって人は・・・・」


軽いカワイイ溜め息を背中で聞きながら、ふと。








『俺が人生棒に振るんです。 だからアンタも人生、棒に振れィ』








あの時の沖田の一言が脳裏をよぎった。








直後、ごく当たり前に思い直してみた。








『棒に振る』 の 『棒』 と 『捧げる』 の 『捧』 はとてもよく似た字面で。








「・・・・・・どっちだって似たよーなモンだろ」












棒に振ったようなフリをして、捧げてもいい。