[ NOBITA的な。 ]






なんでテロリストの隠れ家に 『ドラ×もん』 コミックスが全巻揃ってんだオイ、とか、
なんでほぼ丸一日かけてそれを俺ァ読破しちまったんだ、とか、
しかもアレだよアレ、読んでた場所は乱れたまんまでシーツも代えてねー布団の上だし風呂にも入ってねーしあーあこりゃヤベーよな色々、とか。


ドラえ×ん、全45巻をのべつまくなしに読み尽くし読み漁り堪能しまくった直後、
程好い読み疲れ心地具合に浸りながら、そんなことを銀時は今更ぼんやりと思った。


しぱしぱする目をこすりながら掛け時計を眺めやれば、
短針は九時を回っていて、
一瞬それが朝の九時なんだか夜の九時なんだか咄嗟には判断がきかず、
半瞬置いて窓の外が暗いことを確認し、そうしてやっと 「あー21時の方か」 と納得する。


「・・・・二日間・・・・」


ついついボソッと呟きつつ、沸き上がる生欠伸と微妙な自嘲と後悔とこれまた微々たる満足感。
それらが綯い交ぜになっているのは云うまでもなし、
この丸二日、四十八時間のほぼ全てを正に言い訳もなにもきかないほど、
思いっきり寝乱れた生活、間違いなくほとんどの時間を惰眠と甘物摂取と爛れた情事、
プラス先述のドラえも×読破に費やしてだらだらだらだらだらだらだらだら過ごしまくっていたからで。
もちろんそれには提供される場所やら用意されていなければならない甘物やら、
×ラえもん全巻の持ち主イコール情事の相手となる人物が不可欠でもあって、
しかしそれにも云うまでもなく該当する(該当されてしまう)
ロン毛の変態がいたりしてしまって(・・・・・・)、この二日間、
自分でも一体何をしていたかというと指を一つ折り、二つ折りしてみてもどう頑張ったって、




・SEX
・惰眠
・甘いもの(食事含む)摂取
・ドラ読破




しか出てこない。 
テレビだって見ていない。 さっきも思ったとおり、風呂にさえ入っていない。 外出だってしていない。
二日間、正にどれだけ詳細に数え上げてみても、どれだけ綿密に思い返してみても、
片手の指一本で足りる程度のことしか本当に行っておらず、
仕方がないから枕元にあった数冊をもう一度手に取り、
ヒマだからもっかい読み返してみっか、と堂々巡りダラダラ生活の続きを満喫し続けようとしたとき。


再びごろりと寝転がった目線上、
小さく軋んだ音を立てて障子が開き、入ってきた人物とちょうど目が合った。
これで三度目、またもまたもまたもや 『云うまでもなく』、
入ってきたのはロン毛で変態で変質的、同音異義語で表現しても大して大差なしの偏執的ともいえるヅラ、つまり桂小太郎であって、戻ってくるなり開口一番なにを言うかと思えば。


「このままその未来の猫型ロボットのように、お前がこの部屋に永遠に居候し続けてくれれば俺としては幸せこの上ないのだが。 その点どう思う銀時」


「あ? 日付が変わったら帰る。 さすがに三日間も家空けとくワケにいかねーし仕事もあるし」


いつもと同じく、桂の戯言には直接には答えてやらず、
予定と事実とを的確に突き付け、突き付けられた当の桂が 「うう。 名残惜しい淋しいぞ俺は」
とか何とか気持ち悪く呟くのをさらっと聞き流しておいて、


「やっぱりさァ、ドラ×もんは名作だよ。 俺が今更改めて言及するコトじゃねーけどさあ」


最近の漫画なんざ足許にも及ばねーよ人生に必要な教訓が全部詰め込まれながらも絶妙な条理不条理が入り混じってっからな、でもソレとコレとは別にやっぱジャンプは愛してっけど。
と、あからさまに話題変更、


「しかもキレた 『の×太』 のテンパり具合には全面的に降伏するよ俺は。ジャイ×ンに借りた漫画本だったかラジコンだったかをスネ夫に壊されたときの、『ス×夫を殺して僕も死ぬ!!』 って台詞には心底感服するね銀サンは。 なかなか出て来ねーよフツー」


などと明白にグダグダ路線で返してやったところ、




「なんだそんな台詞で良いなら、いくらでも吐けるぞ銀時」




有り得ないことに桂はクソ真面目に受け取りやがったのか、真面目くさって真顔でそう応えてきた。




「もしも万が一、お前を手放す破目に陥るくらいなら、俺はお前を殺して俺も死ぬ」




ああ勿論冗談でも誇張でもなんでもないぞ、
純度120%、本音本心からのコトバだ決しての×太には負けんだから安心してくれと穏やかに告げられた。
が。


「・・・・1%も安心できる要素がねェだろ」


言葉の内容にも、
そんな台詞を恥ずかしげもなくをけろりと言ってのけるその心境にも、
そしてそんなふうに宣言された自分の身にも。
だから 「バカだろ。 知ってたけどやっぱヅラてめーはバカだな」
とこの話題を無駄口レベルにまで落とし込み、無難に流して終わらせようとしてみたのだけれど。
桂の話、というか言いたいことはまだまだ続くようで、




「お前を殺めてから、しばらくはその独り占めの達成感を満喫する。 誰に憎悪されても構わん。
むしろその連中の羨望と憤怒と恨悪とを心地好く一身に浴びながら、
俺はお前を独占できた幸福感に浸る」




あまり正常とはいえない台詞を一言のもとに言い切ったあと、




「どうだ銀時、綺麗な欲望だろう」




清々しく笑う。




一方で銀時は桂のその笑みとは対照も対照、
正に22世紀の猫型ロボット並みに一気に青褪めざるを得なくなり、


「そんなふうに考えている俺が恐ろしいか?」


続けてそう訊かれても、


「・・・・・・・・いや、恐ろしいっつーか怖いっつーか、 キモい」


これこそ純度200%、心底根底からの言葉。
当人を目の前にして、こんな科白を平然と吐ける心境がわからない。
どんなツラの皮の厚さしてんだテメーは、と銀時は銀時で思うがそれはそれで今更で、
あーそうだったそうだった、コイツは昔っからこんなヤツだった、
けど輪をかけておかしくなってねーか特にここんとこ最近は、と実感する。
しかしながら、ほんの僅かだけ、


(銀時A  ・・・・アレ、でもそれってもしかして俺のせい?)
(銀時A  ・・・・そこそこ甘やかしちまった俺にもセキニン有り?)
(銀時B  ・・・・いやいや無い無い、それはナイよ俺的に。 なんでコイツの変態変質の責任を俺が取らなきゃならねーんだオイ)
(銀時A  ・・・・けどさ実際野放しだよねヤりたい放題させちまってるよねヅラに。 今回だってタテマエは食べ物に釣られて、ってコトになってるけど当たり前のようにお泊りコースだししかも二泊だし)
(銀時B  ・・・・ ・・・・・・言うなコラ)
(銀時A  ・・・・でもって結局ラブホ代わりになってるし。 延長何回? 何回目???)
(銀時B  ・・・・言うなコラァァァ!!!!)


僅かだけ脳裏をよぎった懸念が、気づけばマインドB、銀時Bまで勝手に現れてきやがって、
慌てて天然パーマをぶんぶんと横に振りまくり、
四の五のぬかす銀時AとBを無理矢理振り切って、なんとか平常心。
コイツがこんなんなのは誰もせいでもなく、そう、元々だ。
ずっと昔から、それこそ子供の頃からこんなヤツだった。
ただ、それに少しだけ加速がかかっただけだ。 3速から4速になったくらいだ。
スライムがスライムべスになったようなもんだ。
そんな程度なら初期装備、銅のつるぎで瞬殺できる。 こんぼうでもいい。
と、
なんとか普段の自分を取り戻し、


「あー安心しろ。 そん時は逆に殺ってやっから」


でもって俺ァその後は悠々生きる、
もちろんヅラ殺害の犯人だとは絶対バレねェ捕まらねェ。 と嘯いてやれば、


「いやそれは駄目だそれだとダメだ銀時、俺を殺したあとはお前は自害してくれ。 そうでないと寂しいではないか」


真顔で、しかしどこか楽しげに桂は即座に駄目出ししてくる。
自分のことは棚に上げておいて、後を追えと言ってくるあたり、


「・・・・どこまでワガママなんだ、オイ」


半ば呆れ、半ばどうでもよくなった。
だってつまりは全部、タワゴトで絵空事でオママゴトみたいなもので、
だから。


再び沸きあがる生欠伸を噛み殺しもしないまま。


「今度はオ×Qと怪物×んとチンプ×、用意しとけや」


そしたらお泊り三日コースで居座ってやるよ、と宣言してやった。


「エスパー魔×とキテ×ツ大百科はいいのか?」


「それが入ったら五日コース」








あえて揃って意識して、全てをグダグダないつもの会話にまで落とし込み、
気づけば目の前にあったロン毛を引っ張り、
「・・・・あと一回くらい、出来んじゃね?」
珍しくも自分から襲い掛かってやって、誘いをかけてやって、変態の増長に更に加速をつけてやった。












こうやって甘やかし過ぎて、いつの日かヅラがスライム →→→ バラモスに進化したとしても、
銅のつるぎならぬ洞爺湖もあるわけだし、
まあ、・・・・・・7速くらいまでだったら、セキニンも取れなくもないはずだ。 たぶん。















病んでるヅラを表したかったんだけど、
銀さんまで同レベルになってしまいました。
キモいくらいイチャイチャしてるなとも思いました。 作文。