オアツイのがお好き





真選組副長・土方某、
「〜♪」
仕事柄性格上そして生まれ持った目付きの悪さ(・・・・) ゆえ、
普段はそうそう鼻歌などというシロモノからはとてもとても程遠い人物、であるはずなのだが。


本日、土方はとてもとても機嫌が良い。


「〜〜〜♪」
そして機嫌の良さから来る鼻歌だけでなく、無意識のうちに相好までもが微妙に崩れてしまっているのには、無論のこと列記とした理由があって。
「♪♪♪」
仮にも鬼の副長、との二つ名を持つ者としてそれはどうか、との声も無きにしも非ず、しかしこればかりはどうしようもない。


きっかけは数時間前、可愛い可愛い(しかし腹黒い) 沖田総悟が発した言葉、




風呂釜が壊れちまいました』




事の発端はそれから生ずる。




















「風呂釜が壊れちまいました。 どうしよう」
「あァ?」
休憩中、ぱたぱたと小走りでどこからか戻って来た途端に前触れも無く発された沖田のつぶやきに、
畳の上で片肘を付く形で寝転がっていた土方は片眉をあげた。
そんな土方の眼前に、沖田は膝を折りちょこんとしゃがみ込む格好で続きを言ってくる。
「いや、ウチの風呂釜が急に今朝おかしくなっちまって・・・・。 風呂が焚けなくなっちまったんです」
「そりゃ災難だな」
「でしょう。 で、仕方ねェから修理屋にさっき電話したんですが、どうも他の日程が立て込んでるみてーで、ウチに来られるのが明々後日だって言われちまいました」
「明々後日・・・・」
今日、明日、明後日、そして明々後日、と指折り数えてみる。
今はもう春、冬場ほど寒くはないとはいえさすがに明々後日まで風呂無しというのはいくらなんでもキツイ。 と言うかそれ以前にキタナイ。
「なら、」
仕方ねーな面倒見てやるか、と土方が口を開きかけたコンマ一秒前、沖田の方がほんの僅かだけそれより早く。
「というわけで土方さん」
「・・・・あ?」
「風呂が直るまで、今日から土方さんとこに居候しやすからヨロシク」
ごくごく当然とばかりさっぱり一息で言い切って、ほらちゃんと用意も万全でさぁ、といつから置いてあったのか、
休憩室の片隅の風呂敷に包まれた荷物一式・・・・ 『お泊りセット』 を指差して。
「ちなみに出勤も明日の非番もタイミングバッチリ、今週はずっと揃ってシフトが一緒なんでそこんとこもヨロシク頼みまさぁ土方さん」
「・・・・・・・・」
「なんですかィその無言状態は。 可愛い可愛い俺が泊まりに行くってのに嬉しくないんですかィ?」
「・・・・んなワケねーだろーが」
訝る沖田に即答で返す。
ここにこうして寝転がりつつさっきまでぼんやりと考えていたのは明日の休み、
どういったさりげない口実で目の前の総悟を誘おうか延々と考えていたところで、
「・・・・・・・・」
これは。
「? じゃあそういうことで厄介になってあげますぜ。 くれぐれも丁重に取り扱って下さいよ勿論メシは毎回高級店屋物デザート付きで」
「なんだそりゃあァァ!!? んな贅沢が出来るかボケ、自炊だ自炊」
「ちぇー。 あまりの吝嗇っぷりにほとほと涙がちょちょ切れまさぁ」
悪態を吐かれながらも、ぷぅと頬を膨らませる沖田をカワイイと思ってしまうあたり自分でもわかる。 重症だ。
「てめーと違って俺には浪費癖はねェんだよ」
「そーゆーのをせせこましいって言うんですぜそーゆーのを。 いっそ土方トシでなく土方ケチって改名してやりましょうかこの際」
「この野郎・・・・」
あんまりな言われように低く唸ってみせるけれど、どうしたってそれは形だけの見せかけである。
修理屋が来るまでに、本日を含めて丸四日。
本日から少なくとも(勤務時間も含まれるが) 100時間足らずはいつでもどこでもいっしょ、に居られるわけで帰るところも同じで出勤だって同伴で。
この状態は世間で言うアレだアレ、
所謂 『同棲生活』 みたいなものであって、それには相応のお楽しみ・・・・お愉しみも付随してくるものであって、
いたるところつまり、

「・・・・・・・・」

「うわぁ・・・・」
「なんだよ」
思いふけっていたところ、唐突に呆れたような声でこちらを眺めてくる沖田に、意識を戻して視線をやる。
「思いっきりニヤけた面ぁしてますぜィ。 このエロジジィが」
「ほっとけ」
どうやら多少なりとも心情が表面に出たらしく見事に思いきり看破されてしまったが、今更取り繕うのも訂正するのも面倒だ。
壁掛け時計を見るに本日の勤務終了まであと数時間、
面倒な事件も仕事も厄介ごとも今のところ勃発する様子も持ち込まれる気配も何もない。




―――――― だから本日、土方はとてつもなく機嫌が良い。
























「えぇ? んな気が早ェのにも程ってモンが・・・・」
「いいだろーが別に」
自炊、と言ったが面倒だったので夕食は帰りがけに立ち寄ったファミレスで(それなりに安く) 済ませた。


「だってまだ風呂にも何にも入ってませんぜ? 何そんながっついてるんでさァ年寄りのクセに」
「年寄りじゃねェェェ! 前々から何度も言うが俺はまだ二十代だァァァ!!」
沖田を連れて帰宅した自室、通常帰って寝るだけの自宅では来客用の部屋など最初から無い。


「つーか何ですかィこの部屋。 散らかしっぱなしの上に入った途端万年床だなんて横着にも程がありすぎだ」
「うるせェ。 今朝は寝坊して布団片付けてるヒマがなかったんだよ」
そして来客用の布団、などという気の利いたものだって無論のことあるわけが無い。
だから突然降って湧いたこの僥倖、どちらにしたって同じ布団で寝るしかないわけであるのだが。


「あるイミ合理的って言えば合理的ですがね」
「・・・・。 まぁそう思っとけ」
小さく溜息を吐きながらも、沖田がそう頷いてくれたのは幸いだ。
とは言えそれはそれこれはこれ、どれほど理屈がつこうが言い訳しようが、
沖田がお泊りセットを降ろした直後、・・・・時間的に言えば部屋に入って一分も経たないうちに、
『ぐい、どさりばたり。がさごそ』 と朝から敷きっぱなしの布団の上に傾れ込ませてしまった理由になりはしない。
しかしそのあたりは知れた仲というかこんな仲というか、


「あーあ。 どうせならザブンとひとっ風呂浴びてスッキリしたかったんですがねェ。 ま、どっちにしろこうなったら結局のところ後々風呂に入らなきゃ拙く・・・・なっちまうワケだ」
「まぁそうなる・・・・な。 そうなるか」
「だったらこれも『合理的』 ってコトで納得してあげますぜ仕方ねェ」
組み敷かれつつ苦笑して、沖田は下から土方を見上げてくる。
そんな様子は本当に本当に可愛くて思わず喉が鳴ってしまうほどで、
なのに、それなのに、
「なんだ今日はやけに聞き分けいいなオイ。 何か企んでやがるのかお前」
どうしてもこう、素直に受け取れないのは沖田の普段が普段であるせいだ。
通常が通常、決まって腹黒くてアレなせいなのだ。
「へぇ。 そーゆーコト言いやがるんだエロ土方。 だったら別に思いっきり抵抗してやったって構わねーんですぜ俺としては」
「やめろバカ。 てめーに本気で暴れられたら部屋が壊れちまうだろーが」
「ふゥん?」
「・・・・・・。 あー悪かった、今のは俺が悪かった。 だからそのまま大人しくしててくれ」
なのに何故こうも可愛いと思ってしまうのか、何故こうもベタ惚れ状態で甘い態度になってしまうのか、
そのあたりはもう自分でもどうしようもない。 あるイミ重体だ。 ・・・・わかってはいるのだが。
「・・・・ン、」
密着させた上半身、いとおしむように唇で首筋を辿ってやりながら僅かに触れる髪と、瑞々しい肌の感触を愉しんでいると、
小さく身じろいだ沖田が小さく名を呼んできた。
「土方さん、」
「何だ?」
呼びかけに、一旦唇を離して顔を覗き込む。
「・・・・この前」
「?」
覗き込んだ薄茶の瞳がほんの少し揺らぐ。
「・・・・な、なんだ総悟?」
駄目だ。
可愛い。
普段はどうあれ、とにかく可愛い。
んなカオで一体何言い出すつもりだ、と促したところで。
「この前、屯所で土方さんのコーヒーに唐辛子混ぜたの俺でさァ」
「・・・・あ?」
想像外の、あまりに色気も何もない告白・・・・(と言うより懺悔か暴露か?) に思わず動きが止まってしまった。
「んでもって次の日に土方さんのマグカップ割っちまったのも俺です」
ついつい手が滑っちまって、とぺろりと舌を出す。
「・・・・な、」
「カップに 『バカ』 ってマジックで落書きしようとしたら滑っちまって。 ・・・・とりあえず自分から素直に白状したんで、ここは見逃してほしいんですけどねィ」
「く・・・・。 てめェ・・・・」
あの唐辛子入りのコーヒーにどれだけ苦しめられたかわかってんのかコラァ、
挙句俺の知らねェうちに割られてゴミ箱に放り込まれてたカップもテメーの仕業かァァァァ、
つーか落書きで 『バカ』 って何だ 『バカ』 ってテメーは!! と叫んでやりたい気持ちをぐっと堪える。
どれだけイタズラされようが苦しめられようが副長の座を虎視眈々と狙われていようが、
可愛いものは可愛い。 わかっている。 末期である。
そういえば先日も沖田には、「松平のとっつァんからの差し入れです」 と称した、
砂糖の代わりに塩を入れて作られたプリンを騙され食べさせられ大変な目に遭った(・・・・) という出来事もあったのだけれど、
その程度の悪行、こんなときのそんな可愛らしさから比べれば大したことではない・・・・はずだ、多分。
むしろそんな程度の悪戯の一つや二つ、
鼻先で笑って許してやるのがオトナというもので、それくらいの度量がなくて何が副長か。
「・・・・まァ許してやるか仕方ねェ」
頷いて、二度とすんなよ、と言ってやると、沖田はさすが土方さんだそう言ってくれると思ってましたぜィと再び笑って。
「じゃあ続けましょーや、中断させちまって悪かったです」
「・・・・おう」
なんだか時とタイミングを見計らった沖田に上手く丸め込まれたような気がするが、
まあいい。


「朝まで休ませねェぞ。 覚悟しとけ総悟」
「そんな気張って無理しない方がいいと思いますけどねィ・・・・」


今はそんな過ぎ去った小さなイタズラ事をなんだかんだと追求するより、余程続きの方を優先したい。






















「巧く・・・・なりやがったな、総悟・・・・」
「・・・っ、ん・・・・ッ・・・・」
低く掠れ気味の土方の声に、僅かにかぶりを振りながらも沖田が自ら腰を揺らす。
その度に中心部を貫いている土方のものが内側を熱く甘く擦り上げ、沖田の噛み締められた唇から切なげな声が漏れた。
「あ・・・・ッあ、・・・・っっ・・・・!」
「もっと動けって」
形の良い眉を寄せて、言われるまま沖田は土方の身体の上でしなやかな身体をくねらせる。
貫かれ、それだけでも甘く痺れる下半身を懸命に動かして、
己れの中を埋め尽くしている土方自身で更に更に悦いところを擦ろうと、
自分でもわかるほどにきゅうきゅう蠢く内壁で締め付けつつ、激しく腰を上下させるのだが。
「・・・・く・・・・っ・・・」
やはり、自分ひとりで動くには限界があって。
何度も何度も位置を変えようと、土方自身の当たる箇所の角度を変えようとしてみても、
なかなか上手く行かず、じれったい。
「・・・・っく、ぅ・・・・」
身体はもっともっと大きな快楽刺激を求めているというのに、
どうしてもそこまで到達しない。 これ以上ひとりでは到達出来ない。
土方だって、そんなことはわかっているはずなのに。
中途半端な快楽に、く、と喉が鳴る。
この野郎エロ土方、さっさと動けィ、と思いきり言ってやりたいのだが、そうなると自分からおねだりするかたちになってしまうため、
そう言ってやることも意地が邪魔をして、沖田としてもできなかった。
「っあ・・・・っ、あ・・・・!」
切なく喘ぐ沖田の下で、その細い腰に手を添え身体を支えてやりながら土方は、そんな様を眺めやる。
土方の腹部に手のひらをつきながら、快楽を求めて懸命に動く肢体。
それはあまりに艶めいていて、眺めながら土方自身の熱も増す。
汗と体液に濡れた肌と、
刺激により僅かでも仰け反るたび動くたびにさらさら揺れる髪。
そんな姿が可愛くて可愛くて、無意識に口許に笑みが浮かんだ。
同時、添えていた手で思いきり強く腰を引き下ろし、合わせて自分からも激しく腰を突き上げてやる。
「ひ・・・・あッ・・・・!!?」
と、凶暴な切っ先がそれまで届かなかった奥まで貫き通す感覚と衝撃に、たまらず沖田は声をあげてしまう。
そのままの状態で大きく腰を揺さぶると、
「んッ・・・・ぁっ、土、方・・・・さ・・・ッ・・・・」
小さく身体を震わせ、苦しげな吐息をついて悩ましく土方を呼んできて。
「・・・・限界か?」
呼ばれた土方が口許の笑みは消さず、しかし穏やかに問いかけて訊ねてやれば、
沖田は僅かに悔しそうな表情を浮かべながらも、細い顎で小さく頷いてきた。
そんな他愛もない頷く仕種さえ、本当に本当に土方の全てをそそった。
「仕方ねーな」
そそられて改めて小さく笑ったあと、
より一層強く沖田の腰を揺らし上げ、合わせて自らも律動を開始させる。
「・・・・ッ、あ、っあ・・・・!」
確実にお互いを追い上げ追い詰めていく動きと角度で、土方自身が沖田の内側を容赦なく攻め上げていく。
激しく絶頂に向かう身体。
堪えることも耐えることも出来ず、快感に大きくかぶりを振った沖田の目じりにじわりと涙が浮かんだ次の瞬間。
「、―――っ・・・・! ・・・・ッ、 ・・・!!」
身体の奥の奥に土方の放った熱を感じながら、
沖田自身も昂ぶった白濁を激しく迸らせて、高みに達した。










「・・・・朝まで休ませないはずじゃなかったんですかィ?」
一休憩。
とりあえず素っ裸じゃアレだ、と着流しを羽織り、枕の傍らにて胡坐をかき煙草に火をつけたばかりの土方に、
こちらは毛布を頭からかぶった状態で沖田がぼそりと呟いた。
「あー。 別にそうしても俺としては構わねーんだが」
ふー・・・・っ、と長く煙草を吹かしつつ、土方は答える。
「お前の方がつらいだろうと思ってな」
「・・・・・・・・へぇ」
「何だよ」
ぱちくり、と意外そうにまばたきをする沖田に、身体ごと向く。
「土方さんがそんな気遣いするヒトとは知りませんでしたぜ」
「あァ? いつだって優しーだろーが俺は」
「そうですかィー?」
あんまりそんなふうには見えませんぜ目付きが悪すぎやがるから、と憎まれ口を叩かれる。
が、
そんな悪言にはとっくの昔に慣れた。
むしろ頭だけ毛布の外に出し、自分を見上げてくるそんな上目遣いの方がとてもとても可愛くて、
まだ付けたばかりだった煙草を引き寄せた灰皿で性急にもみ消しながら、
汗ばんでいるにも関わらずさらりと流れる髪の中に片手を潜り込ませ、自分では上体を折り曲げて顔と顔を近づけ、ゆっくり唇を重ね合わせていく。
唐突なキス、けれど大した抵抗もせず、沖田はそれを柔らかく受け入れる。
最初こそ穏やかに始まったその口付けは、そのまま時間が経つにつれ深く激しく変化した。
「ん・・・・ふ・・・・」
煙草の匂いと共に、口腔に侵入してきた舌が緩く沖田の舌に絡みつく。
貪るように互いに吸い合ったあと、
「ふ、・・っ・・・」
「まだ足りねェ」
息継ぎのために一瞬解放された唇は、土方によって更に求められる。
ゆっくりと充分すぎるほどの時間をかけ、満足するまで味わい楽しんで、
それからやっと土方は沖田の唇を解放してやる。
「全然足りねェ」
「え?」
続けて無造作に着流しを肩から滑り落とし、がさごそと沖田の居る布団の中に入り込んだ。
ぐい、と抱き込まれた拍子に、腹部に押し付けられたものの感触で沖田もまた、その意味を感じ取る。
「・・・・ちっとも休憩になってやしませんぜ、これじゃあ」
半ば呆れたように言われてしまっても、すでに集まってしまった血はどうしようもない。
「まぁ気にするな。 いーじゃねェか俺もまだ若い証拠だろうが」
「・・・・エロジジィなだけだ」
「なんだとコラ」
言ってられるのも今のうちだけだ、と言い捨て土方は、
先程達して濡れている沖田自身をまた起こそうと、熱源に素早く指を絡ませる。
「ふぁ・・・・っ」
達したばかりのその箇所は、直接に与えられた刺激に素直に反応した。
「・・・・っ・・・・!」
既に一度欲を解放しているにも関わらず、
沖田自身は甘く丁寧に触れられ扱かれて、次第に芯を持ち熱を伴い、先端からとろとろと透明な蜜を溢れさせていく。
溢れ、零れ落ちてくる蜜を指と沖田自身に絡めて濡れた水音を立てながら土方に煽られて、
たまらず身体と同じく素直に沖田は声を上げた。
「っは・・・・っ、ん、・・・・っあ・・・・っ・・・」
気持ち悦い。
密着した身体の体温と、捕らえられた中心部で淫らに動く指。
それが悦くて悦すぎて、自然と腰を浮かせて強請ってしまう。
「ひ、じ・・・・っ・・・」
絡む熱い吐息にかき消されてしまった自分を呼ぶ声に誘われるよう、土方がきゅっと全体を手の内に握り込むと、
「んッ・・・・!」
手のひらの中で沖田の欲がビクン、と小さく戦慄いた。
やんわりとそれに包み込む愛撫を送ってやりながら、今度は快楽に仰け反った胸に、唇を滑らせる。
「や・・・・!」
すでに尖った胸の飾りに舌を這わせると、握り込んだ沖田自身の先端から大量の蜜が溢れ出て、土方の手を濡らす。
胸への愛撫がつらいようで、沖田は身を捩って逃れようとするけれど、
まだ胸を愛し足りない土方は捕らえた突起を唇と舌とで丹念に舐め上げ、味わった。
「ぅ・・・・あッ、も・・・・」
胸と自身を同時に刺激され、沖田の身体が急速に駆け上がる。
汗でしっとり濡れ始めた全身に、土方も気づいたようで。
「総悟」
煙草の匂いのする吐息。
そんな吐息混じりで、低く情欲を伴った声で近くから名前を呼ばれて、ぞくぞくと背中を何かが伝った。
「お前も足りないだろ、まだ」
「んあぁ・・・・ッ・・・・!!」
くちゅ、と指先で先端を擦られ、強すぎる刺激に必死で頭を振って耐える。
足りないのは本当だ。
触られただけでも達することは出来る。
けれど欲しいものはまた別で。
「は・・・・っ、う、ぁ・・・・」
「・・・・ッ」
ふるふると緩くかぶりを振り続ける沖田に、土方もストレートに煽られて、
先刻まで自分を受け入れていた箇所に、それまで弄っていた指先を外して潜り込ませた。
「っ!」
前触れもなく最奥に触れられ、反射的に沖田の身体は反応してしまう。
「まだ蕩けてるから、このままでいいだろ」
触れた感触でまだ内側が柔らかく綻んでいることを感じ取り、
沖田の返事は待たないまま構わずまとめて二本、指を内側に埋め込んだ。
「う・・・・あ・・・・っ!」
土方の予想通り、先程までの行為で熱く蕩けたままの内壁は難なく指を根元まで受け入れ、飲み込む。
間を置かず更に更に解してやって愛撫刺激を送ってやるため、
奥まで挿し込んだその指を、激しく引き抜いて出し入れを繰り返して。
「・・・っあ、ん、ぁ・・・・ぁ・・・・ッ・・・・!」
けれど沖田としてみれば、過ぎる愛撫は責め苦に近い。
土方の指は引き抜かれる瞬間、内側の弱い箇所を巧みに突いて擦り上げていき、
しかしそれは一瞬で、到達できるほどの強い刺激にはなってくれない。
かたかたと腰が震えだす。
「い・・・・っ、も、う・・・・!」
「ん、」
懇願にも似た声に、沖田の意を汲み取った土方の顔に嬉しげな色が浮かぶ。
沖田に比べれば、まだ若干の余裕がそうさせるのか、
「何だ、・・・・どうした?」
あえて意地悪く聞いてやる。
そんな土方に、沖田は唇を噛み締めて必死で睨みつけてやるけれど、
「ん? 総悟?」
「んぁ・・・・ッ!」
埋められた指を奥で軽く引っ掻くように曲げられただけで身体が跳ね上がり、どうすることもできなくなってしまう。
「は・・・っ、ぁ、・・・・っ・・・・ぅ・・・・ッ・・・・」
噛み殺そうとしても、殺し切れないほど熱く荒い声と吐息。
しかしそれでも自分から求めることは沖田の性格上性質上どうしたってしたくなくて、
「・・・・ったく仕方ねェか」
どうしても強請ってこない沖田の方に、逆に先に土方の方が折れた。
形だけはタメイキで折れてやる格好をしつつ、
実際のところはいい加減、土方も我慢の限界であったのが実情なところで。
「力抜いてろ、そのまま」
埋めていた指を引き抜き、その手で沖田の膝の裏を掴み、片脚を自分の肩の上に担ぎ上げる。
大きく両脚を開かせると、この上ないほど蕩けた最奥に、
再び猛った熱を乱暴なほど激しく一気に突き入れた。
―――ッッ!」
待ち焦がれていた箇所を強く強く穿たれ、沖田は声も出せずに身体を仰け反らせて悶える。
一方、侵入した土方も、きゅうきゅうと自身をきつく強く締め付けてくる内側に、息を詰めて耐えて。
「・・・っ・・・う・・・・」
「総悟」
「・・・・、っ」
耐えつつ、触れるだけのキスを沖田の額や目蓋、頬に落とす。
そうして触れるだけのキスをしばらく繰り返し、互いの身体が僅かながら慣れる頃を見計らい、
「動くぞ」
囁きで告げ、土方は腰を使い突き上げ始めた。
「ッ、あ・・・・、あ、あッ・・・・!」
激しく土方が動くたび、繋がった箇所が濡れた音を立てる。
粘った水音に煽られるのか、その都度互いの身体の間にある沖田自身が脈打ち膨れ上がって、
「ん・・・・ン・・・・っ!」
腕を回した土方の首に縋るようにして、そのまま限界を迎え解放させようとしたその瞬間。


「な・・・・ッ・・・!?」


正にその刹那、きゅっと根元を指で抑え付けられ、解放を堰き止められていた。
「ぅ・・・・あッ、っやぁ・・・・!!」
寸前で達することが出来ず、渦巻く熱の性感にたまらず沖田が悶える。
「どうせなら同時に達くか」
「・・・っ、く・・・・、こ・・・っの・・・・」
涙の滲んだ瞳で睨まれるけれど、そんな表情さえも土方の情欲を煽るだけだ。
しっかりと根元を抑えつけたまま激しく腰を打ち付けると、
行き場のなくなった熱を持て余した内壁がうねって土方自身に絡み付き搾り上げ、
そのあまりの強さに土方も急速に絶頂に向かう。
「あ・・・・あッ、・・・・っう、あぁ・・・・ッッ!」
とっくに限界を迎えているのに解放できない甘い苦しみに、沖田の頬を生理的な涙が伝った。
「離・・・・ッ、あ・・・・ぁっ・・・・!」
尚も激しく動かれ、とめどなくぽろぽろと涙が落ちていく。
苦しい。
でも気持ち悦い。
「・・・・ッ、・・・・!・・・・」
放ちたくて達したくて、なのに無理矢理堰き止められて、次第に視界がぼやけてきたところで。


「総、悟・・・・っ」


切羽詰まった掠れ声が耳元で聞こえたと同時。


そっと自身から、熱を戒めていた指が外される。


・・・・、―――ッ、ぅ・・・・ッッ!!」
散々堰き止められ抑え付けられていた欲を吐き出そうとした瞬間、
僅かに早く身体の奥の奥に土方の放った熱を感じた直後、勢いよく弾ける沖田自身。


その熱と、土方の深い吐息を首筋に近い肩口で感じながら沖田は、
この野郎土方、今度また絶対コーヒーに唐辛子ぶち込んでやる覚えときやがれ、とぼんやり報復の決意を固めていた。






















「・・・・なんで俺がココまでやってやらなきゃならねーんだ、オイ」
「そりゃあアフターケアってやつでさぁ」



ぶおおお、とドライヤー片手にイマイチ釈然としない様子の土方と、
その前に座って風呂上がり、洗いざらしの髪を土方に持たせたドライヤーで乾かさせている沖田。



チチチ、と外では何かの鳥が鳴いている。
太陽も顔を出し相応に昇り、もうとっくの昔に朝である。
ふたり揃って昨夜はずっと眠ってはいない。 とは言えそれほど長く布団の中で引っ付いていたわけでもなくて、
結局、後始末やら風呂を沸かすやらで何だかんだで何のかんのとしている間に短い夜はさっさと明けてしまったのだ。


「アフターケアのなってない野郎は減点5だぜィ」
「・・・・・・・・」
さぞ当然、とばかりに言ってのける沖田に髪にごおおお、と熱風を当ててやりながら、
土方はまあ別に構わねーけどな、と言い直す。
この後、終わったら朝食を作ってやって二人分の洗濯物を洗濯機に放り込んで干して乾かして、ついでに布団も干して。
「・・・・・・・・」
そこまで考えるだに、何だか妙に自分だけがやたらと所帯じみているような錯覚に襲われたのは気のせいか。 気のせいだと思いたい。
振り切るように小さく頭を横に振って、
「目玉焼きと味噌汁と納豆でいいか」
とりあえずぼそっと呟いたオリジナリティも豪勢さも何もない朝食メニューに、
「・・・・その品書きで万が一にもマヨネーズ出しやがったら迷わずちゃぶ台引っくり返しますんで。 先言っときまさァ」
先手を打ってそうのたまわれてしまったが、
「黙れ何かけようが俺の勝手だろうが。 てめーは好きに醤油でもソースでもかけて食え」
目玉焼きにはマヨネーズだ。 そして納豆にもマヨは必須だ。
そんなことを思いつつもドライヤーで乾かしてやる手は引き続き休ませず、
ふわりさらりと流れる柔らかな茶髪を手のひらでかき回しながら、温風を当てていく。

ぶおおお。
ごおおお。
ごおおお。
ぶおおお。

元々の髪質が細いのか、大した時間もかけずに随分と乾いてきたあたりで、
「ああそうだ、土方さん」
心持ち首を傾け、あどけないとも言える表情で、ふいっと唐突に沖田が見上げてきた。
「何だ?」
思わずカチリと熱風のスイッチを切って、その顔を見返す。
「フロ」
「風呂?」
さっき入った風呂がどうした。
「なんかやたらぬるくなかったですかィ?」
「そうか?」
疑問符に疑問符で返したのは、土方としてみれば普段入る風呂温度と全く変わらなかった為である。
「別に普段と変わんねーと思うがな・・・・」
いつも通り湯の設定温度は四十度、この季節からしてみれば全くおかしくもなんともない。
そう告げると沖田はふーん、と何かどこか意味深に呟いて頷いて、


「俺ァどっちかっていうと風呂は熱めの方が好きでさぁ」


「・・・・あ?」
「生粋の江戸っ子なもんで。 風呂温度は四十三度くらいがちょうどいいです」
「・・・・・・・・」


「そこんとこは覚えておいてもらわねーと」


なんのためにんなコト、なんて野暮すぎることは言いたくない。
加えて下手に無粋な科白もなにも言うつもりはなかったから、


「、・・・・ああ」


いつか来るその日のために、だからそのまま頷いた。




その予行演習、プチ同棲生活は今日を入れてあと三日、残っている。
少なくとも三日後まで、土方の機嫌はきっとたぶんずっと良い。
















「んでもって朝メシの目玉焼きはヨード卵で。 味噌汁は京の合わせ味噌じゃねーと受け付けないんでヨロシクお願いしまさァ」
「ウチにんな贅沢品はねェよ!!」
「ちッ。 ・・・・じゃあ制服のシャツにはちゃんとパリパリに糊効かせてアイロンかけといて下さいよ。 そういやボタンも取れてたよーな」
「テメーでやれ! つーかテメー・・・・俺に家事炊事全部やらせるつもりかあと三日間」
「そりゃ勿論。 だって俺はお客様ですぜお客様。 お客様は上げ膳下げ膳で丁寧にもてなさねーと」
「誰が客だァ!!? 居候だろうが居候!!」




応酬しつつも、実際のところ本音は上げ膳下げ膳、ついでに言うならこちとら据え膳だって大歓迎だ。
だから今夜も出来ることなら可愛くおとなしく据えられろ。





「それと今日のおやつはプリンがいーです」
「ねーよそんなモン」
「じゃあ買って来い土方このヤロー」
「それがヒトに物を頼む態度かテメー・・・・!!」
「ヒトじゃあねェです。 土方さんだからそう言ってるんだィ」
「・・・・・・・・」
「ついでに言うならプリンはプリンでも焼きプリン希望でさぁ」
「・・・・・・・・」




しかしこの状態は 『同棲生活予行演習』 というよりも、
どちらかといえば 『お泊まり保育』 に近いかもしれないと土方が気づいてしまうのは、もう少し後のことである。




けれどもまァそれでもいいか、と結局そこに行き着いてしまうあたり重症で重体でもう末期も末期で、
お医者さまでも草津の湯でも直せない。
とはいえそれさえも結論からすれば、
相手が可愛いカワイイ沖田総悟であるのなら、




――――― どうでもいい。












ええと・・・・恥ずかしいことこの上ないタイトルでございますね・・・。
基本的に個人的にお風呂ネタが好きなので、土沖でもやってみよう! と思い立ったまでは良かったんですが、
浴室でのイチャは他の作文(ミスフル)で沢山やってしまい、マンネリもマンネリになってしまうと気づいたので、直接風呂シーンは出さない方向で行ってみました。
でもそれなら別にえろはいらなかった気がしないでもない(・・・・) ですけれども、いいじゃん土沖でえろがやりたかったんだよ・・・・!(言い逃げ脱兎!)

相変わらず沖田の喋り方がよくわかりません。 そして輪をかけて土方さんのもわかりません。 どうしたらいいんだ。