オブセッション





「だからよォー、多串くんはもうちっと大らかになれっつーの」
「充分バカだと思いやすけど」


手元にはプリンパフェ、


「いや、バカはバカでそっち置いといて。 なんであんな目付き悪いの。 なんであんな物騒なの。 パッと見はどーしたって警官なんかにゃ見えねーって」
「そいつぁ俺も同感です」


目の前にはイチゴパフェを頬張る白髪天然パーマの男、


「だったら止めてくれよオイ。 止めてやれや多少なりとも矯正してやれってお前が」
「バカにつける薬はねェってことぐらい、旦那ならとっくに知ってるでしょーに」


そんな坂田銀時に、やたらプリンが小せェなこりゃあがっかりだ、とぼやきながらもクリームごと器の中をかきまわす沖田総悟、


「・・・・・・・・」
「どうしたんですかィ? 早いとこ食わねーとアイスが溶けちまいますぜ」
「なんかちょっと哀れに思えてきたんだけど多串くんが・・・・」
「え、なんでです?」


二人が向かい合い居座るのは甘味処の端の席。












沖田総悟と坂田銀時、この珍しい組み合わせが成立したのは、たった二十分前のことだ。


本日、沖田は前述の銀時曰くの 『多串くん』 イコール土方と、ここからすぐ近くで待ち合わせていたのだが、
計算違いで指定の時間までまだ若干余裕があいてしまい、そして小腹が減ったこともあり、たまたま目に付いたこの店に立ち寄ったところ、
週末ゆえかそれとも単に運が悪いのか、妙に混雑していてほぼ満席状態待ち状態。
それでもまあ暇だから構わねェ、と席が空くのをぼんやり待っていたところ、ちょうど二人がけの席が空き、
ウェイトレスの女の子に「あちらへどうぞ」と案内された数十秒後、
ほぼ有無を言わせぬ早さと勢いで「相席になります」と向かいに連れて来られたのがそう、目の前に座っている銀時だったのだ。
偶然の生んだ珍しい邂逅に多少驚きながらも、あえて断る理由もないし、
銀時の方も自分との同席に異論はなかったらしい。
「一人でいんの? 珍しー」
「旦那こそ。 今日はお守りはしなくていいんですかィ」
適当な軽口を叩き合ったあと、
互いに食べたいものを選んでオーダーして、今に至る。


そしてまあ、こういう場合の会話の内容となると、大抵がほとんどが大体が互いの共通の知人・友人の話題に流れるもので。
どちらからともなく、(たぶん最初に振ったのは銀時だったと沖田は記憶している)
いつの間にか会話のタネになっていた(されていた) のが多串くんイコール、此処に居ない土方だったのである。


「なんつーの、お前さんとしてはアイツのドコがイイわけ?」
半分に割られたイチゴを突付きながら、銀時がまるで女子高生のような質問を投げかけてくる。
負けじと自分もプリンの欠片をすくい上げつつ、
別にそんなことで嘘をついても仕方ないし誤魔化すイミもないから、
ここは素直に正直に。
「カオとカラダ」
あっさり言ってのけ、ぱくんとプリンを口に運んで銀時の様子を伺い見ると、
「・・・・最近の十代ってヤツぁ・・・・」
呆れたような、それでいて感心したような表情をされてしまった。
「あ、でも旦那」
「なんだよ」
更にもう一口、今度は生クリームをぺろりと舐めながら、とりあえず一応補足する。
「バカはバカでもあれでいて、慣れるとけっこう扱い易いんですぜ。 ちっとヤニくせェしマヨネーズバカだし怖がりだけど。 って最後のは旦那も一緒でしたかね」
「・・・・一緒にすんなって」
「同じでしょう」
「・・・・・・・・」
う、と口籠もる銀時に、
「じゃあ旦那の方はどうなんですかィ?」
「あ?」
「例のテロリストとはどうなってるんです?」
今度はこちらから似たような質問を投げかけてみた。
「・・・・・・。 あー、まァ、な」
沖田としては、銀時が慌てて否定すると思っていたのに。
予測とは正反対に頷かれ、少し驚いた。
驚きつつも、やはり興味と好奇心と探究心に負けてしまい、質問を続行させる。
「旦那こそ、これまたやたら面倒な相手をコレにしてると思うんですけどね?」
ヤツは誰もが恐れ入る犯罪者で全国指名手配犯ですぜ、と重ねて言ってやると、
「まー捕まらなきゃいーだろ」
あいつも相応にアレだしな、と答えになっているのかなっていないのか、物凄く曖昧に誤魔化されてしまった。
しかしそれでも、気になるものは気になるわけで。
「で、どんな人間性なんです? 桂ってのは」
別に旦那から聞き出したからって今すぐに捕まえようとか追いかけようとか思ってませんから教えてくださいよ、
こいつぁただ単なる好奇心からですから、と突っ込んで重ねて訊けば。
「・・・・・・・・」
銀時は口に運ぶスプーンを一瞬、止めて、
思いきり微妙なカオ、をした。
「旦那・・・・?」
思わず聞き返してしまったところ、アイツの人間性、ねェ・・・・。と何やら深く考え込んだらしい様子のあと。
少し間を置いて、


「・・・・変態・・・・?」


そんな一言が返ってきた。



「へぇ・・・・。 旦那は変態好みだったんですかい。 そりゃあ今初めて知りましたぜ」
問題はそこじゃない、とわかっていながらもついつい驚いてしまったら。
「いや違う! 断じて違うから!!」
自分でそう言ったくせをして、何故だか銀時にしては妙に力強く妙に懸命な否定の意。
「確かにヤツぁ変態だが俺は違うから! 決して変態好みなんつー厄介な性癖持ってねーから!」
「けど付き合ってるんでしょーが」
「腐れ縁」
「それだけですかい?」
「・・・・・・。 如いて言うならカオだけはイイと思ってやることにしてる。 中身は変態だけど」
「ってコトは、カオさえ良きゃあ旦那は中身が変態でも構わない、と」
「・・・・・・・・」
それじゃあそういうことで納得して以後そういう目で見ますけどそれでいいんですね、と畳み掛けるように言ってやったあと、
「・・・・ってなわけねーな。 仮にも旦那ともあろうモンが外見だけで脚広げてやる道理なんざありゃしないでしょーし」
とりあえず即座にアフターフォロー、
「ま、そりゃあ俺も同じですがね」
にんまり笑いながら、忘れず付け足し。
すると銀時は一瞬呆気に取られたあと、はああああ、という大きなタメイキを盛大につき、
そうしてタメイキを吐ききったと同時、同情混じり、そしてどことなく共感にも似た口調で。
「多串くんも大変だな・・・・。 お前相手じゃ随分と手ェ焼いてんだろ」
言われてしまった当人の沖田としても、それが図星、なのかはたまた銀時の全くの見当違いなのか、それは流石にわからない。
「・・・・さあ?」
だから笑って済ますポーカーフェイスであっさりやり過ごすことにして、
「バカと変態、どっちがどれだけタチが悪ィと思いやす?」
あっさり新たな問題提起。
またも悩むかと思われた銀時は、今度は沖田に輪をかけあっさりと。
「そいつぁどっちもどっちだろ」

―――――― どうやら深く考えることを放棄したらしい。

確かにそりゃそうだ、と沖田も頷くことにして、
ひょんなことから始まった恋バナ(?)彼氏自慢(???)、にこのあたりで幕をおろす。
そうして、ふと時計に目をやり、気づいてみればもう時刻は十七時二十分。
「あ」
「何?」
土方との約束の時間である十七時をかなりオーバーしてしまっている。
「旦那と話してるうちに、土方さんとの時間のすっかり忘れてました」
「あー、そりゃあ大変なんじゃねーの。 多串くん待ちぼうけで」
早いとこ行ってやれよ、あんまりいじめると余計目付きに影響してくるから、
などと軽口を叩く銀時に、
「構わねーです。 土方さんとの待ち合わせは二十分待たせるってのが俺の美学ですから」
悠々と言い放ち、とりあえずプリンパフェを最後まで味わってから自分の伝票を手に立ち上がりざま、
じゃあ俺は先に失礼しますぜ、と言っておいて、最後にずっと気になっていたこと。
「そういや旦那もその 『変態』 と待ち合わせ・・・・じゃなかったんですかい? いいんですかィ悠長にこんなところにいて」
すると銀時は、残り少ないイチゴパフェを惜しみつつ惜しみつつ平らげつつ、
「あー、いいのいいの構わねェ。 俺も必ず三十分以上遅れて行くことにしてる。 それでも毎回毎回絶対待ってっから」
流石、というしかない返答。
思わず吹き出してしまいそうになり、
この旦那がお相手じゃあ、桂もよっぽど苦労してそうだ、としみじみ感じて笑いがこみあげてくる。
「じゃあ今度こそお先に。 それでもって変態にも宜しく言っといておくんなせェ」
「おー。 多串くんにももう歳なんだからあんま無理すんなって伝えといて」
「バカだから伝えても理解してくれるかどうかわからんですぜ」
「・・・・訂正。 お互い苦労するなって言っとけ」
「了解しやしたー」


こんな無駄口を叩いている間にも、容赦なしに時間は進んでいっている。
このあと、すぐに店を出た沖田だったのだけれど。
やはりと言うか当然というか、待ち合わせ場所に着いたのは約束の時間から三十分後のこと、
普段にも増して待ちぼうけをくわされた土方の目付きはと言えば、苛々が募ってより一層悪くなっていたのだが、
適当に誤魔化して言い訳をして煙に巻き、久々の揃って非番、揃って休日を楽しむことにした。












「あー、そういや万事屋の旦那が土方さんによろしくって言ってましたぜ〜?」
「はァ? なんだいきなり」
互いに一緒に過ごす、数少ない休日の法則は大抵単純だ。
待ち合わせをしたあと何処かで食事をして、懐具合に余裕があるならそのあと街をふらりと出歩いて。
余裕がなければないで、大概そのあとはどちらかの部屋に行く。
本日もいつもの如く転がり込んだ部屋、それはたまたま近かったこともあり今回は沖田の部屋で、
向かいがてら買い込んだ日本酒を一瓶、適当な酒の肴と一緒に畳の上で味わいながら交わす会話は、じゃれあっているのと大して変わらない。
「・・・・なんだ、もう歳なんだから無理すんなとかバカとかバカとかバカとか言ってたよーな・・・・」
「誰が歳だァ!? 俺ァまだ二十代だ!! そんでもってバカってのは何だァァァァ!!!?」
「知りやせんよ旦那が言ってたのを俺はただそのまま伝えただけだから」
「あんの野郎・・・・」
バカバカと連呼していたのは自分のくせに、それまで銀時になすり付け土方の反応を面白がってしまうあたり、もうどうしようもない。
でもバカだから次に銀時と会う頃には全部忘れてるだろう、とこれまた無責任に勝手に思い、放っておく。
「けどもうジジィってのは間違いねーですから旦那の言う通り無理しない方がいいですぜ土方さん」
ぷはー、と日本酒を喉に流し込みつつ、横目で言ってやる。
「誰がジジィだ誰がァ!!」
「土方さんしかいないでしょうが」
「んなこたァねェ! 俺がジジィならあの野郎だって充分ジジィだろーが! 下手したらアイツの方が年上だろーがよォ!?」
「さあそのあたりは・・・・」
謎である。
なんというか、土方ならまだしも銀時の方は年齢不詳という文字が立って歩いて生活しているような人物なのである。
それを言ったら例の変態テロリストもさっぱりわからないと言えばわからないのだけれども。
そんなことを漠然と思い浮かべつつ、値段の割にそれほどまずくはないこの清酒を、手酌でもう一杯呑もうとしたのだが。
「あ。 ・・・・もう空かィ」
手にした酒瓶の中にはほんのお情けほどしか残っておらず、これじゃあ興醒めだ、と息を吐きたくなった。
どうせならもう一本買ってくるんだったと今更言っても仕方がないし、これから改めて買いに外に出るのも面倒くさい。
呑み足りねェけどとりあえず今夜はこれで呑み納めか、と猪口の半分にも満たない量、最後まで瓶から注ぎ一口で喉に流し込み終えたところで、
「?」
そういえば先程から黙りこくってただ自分を眺めている土方の視線に、ふと気がついた。
いつの間に態勢を変えたのか、畳の上に転がり涅槃のポーズと言えば良いのだろうか、片手で頬杖を付き体を起こしているそんな状態。
「どうしたんです、そんなに俺が可愛らしいんで見蕩れちまってるんですかィ」
こう言ったのは、いつも通り普段通りの只の軽口。 ・・・・であったにも関わらず。
返ってきた言葉は、
「あーーー。 ・・・・不本意ながらも否定できねー」
沖田の想定外のもので、思わず真正面から見返してしまうと、自然に視線と視線が交差した。
「前から思ってたんだが、お前って色素薄くねーか。 髪とか目とか」
言いながら、ちょっとこっち来いよとばかりに手招きをする土方に、
「ああそりゃあ、俺の心の清さが体現されてるんでさぁ」
またも軽口を叩きつつも素直に少しだけ土方寄りに移動、距離を詰めてやる。
が、まだ最低限の距離は保ってキープして近づかず、腕を伸ばされてもあと数センチ足りないところまで。
「馬鹿も休み休み言えコラ。 心が体現されたとしたらてめーなんざ真っ黒だろーが」
「土方さんの髪みてーに、ですかィ?」
言って 『きしし』 と小さく笑ってやると、
「黙れ未成年。 あんまり生意気ばっか言いやがると未成年の飲酒で捕まえるぞオイ」
誰もが大手を振ってスルーしていたそんな他愛も無いどうでもいいようなことを持ち出してきた。
とはいえどうせそれも戯れだ。
だから戯れを武器にして、さりげなく。


「・・・・ふぅん。 じゃあ未成年への淫行罪で土方さんもお縄になっちまうかもしれねェから今夜はやめときますか」


「・・・・・・・・」
「残念だなー。 久し振りだったのになー」
横目流し目、そして棒読み。
全部全部、全てが互いにじゃれあって戯れて楽しむための演技と準備と手筈であることくらい、お互いとっくに承知の上のそんなやり取り。
けれど愉しくて面白くて、沖田が更に口にしようとすると。
土方は何やら指折り数え始め、数え終わった途端にきっぱり。
「・・・・・・。 やっぱ取り消す。 歳なんざどうでもいいってコトにしとくからお前もそうしとけ」
「うわあ・・・・」
「なんだよ」
「いや、あまりの変わり身の早さに」
驚いたフリをしてやると、
「それはアレだ、臨機応変」
さも当たり前、とばかりに呟き、土方はそれまで畳の上に付いていた片腕をこちらに向かって伸ばして持ち上げ、
「・・・・、」
しかしあと数センチ、自分まで届かないことを察知したらしい。
「来いって」
偉そうに命令形での手招きに、
「えー、そんなちゃらんぽらんでいいんですかィー? 初志貫徹したらどうなんです?」
それでもまだ、最後の最後までもったいぶってやると。
うるせェ四の五の言ってんじゃねーよ、とばかり、『ずいっ』 と向こうが、土方の方が身体ごと距離を詰めてきて、


「総悟」
力任せで引き寄せられ、有無を言わせないキスに捕らえられる。


「・・・・ン、」
僅かに感じる煙草の味は土方の味、と覚えてしまったキスは思いのほか長く深く、
だけどそんなキスは決して決して嫌いじゃない。


時間をかけ、互いを味わい終えてどちらからともなく唇が離れていくと、
「・・・・ここでいいか?」
隠し切れない情欲を滲ませた声で、土方が耳元で囁いてきた。
「畳の上だと背中痛ェから嫌です」
本当のところはどこだって構わないのだけれど、
でも沖田が沖田である所以、とてもとても素直に頷いてやる性格などではなくて。
「じゃあ布団敷くか」
重ねて訊ねてくる声。
「布団敷いたら布団が汚れちまって面倒だからもっと嫌だ」
「オイ・・・・」


素直にいいと言わない沖田に土方は僅かに呆れ、そして。
「そうは言っても三週間ぶりなんだ、我慢できねェ」
「ん・・・・!」
放っておけばずっと可愛くないことばかり紡ぎだす沖田の唇をまたも再び塞ぎ、
間を置かず胸元の合わせから素早く手を滑り込ませた。
そのまま着物を降ろし、手際よく肩を暴いて首筋、気脈の走るラインを指先でなぞってくる。
「っ・・・・ふ・・・」
唇が解放されたと思ったら、続けて柔らかな耳朶を数回甘く噛まれ、
それから前触れもなく耳の中に舌を差し入れられて嫌でも背筋が戦慄いた。
「ぅ・・・・」
ぞくぞくする感覚に、かぶりを振って逃れようとしても、しっかりと抱えられてしまってほとんど動けない。
こうなってしまったら、
畳が固いのは何とか堪えるとして観念してやるか、と決めかけたところで。

「・・・やっぱ布団敷いとけ。 汚れちまったらクリーニングに・・・・出せねェな流石に。 ・・・仕方ねー、新しいの買ってやる」
土方のその声だけで、危うく腰が砕けそうになる。
なんのかんのと言いつつ、自分を思いきり甘やかす甘く低い声。
そんなところが何より嫌いじゃなくて嫌いなんかじゃなくて実はスキでスキで、


・・・・・・こんなこと、一生かかっても本人には絶対言わないし絶対知られてはならないことなのだけれど。


でももしかしたらとっくの昔にとうに知られてしまっているのかもしれなくて、
それならそれでどちらにしろ結局はなんでも良くて、


「・・・・総悟」


呼んでくる声に、今度は素直にコクンと頷いた。












「ん・・・・っ・・・」
大きく甘やかされて敷いた布団の上、
首筋に口付けて愛撫を送ってくる土方の手のひらが、露わにされた沖田の胸の上をまさぐっていく。
何度も繰り返し触れられているうちに、尖る様相を見せてきた胸の飾りを指先が掠り、沖田は僅かに喉を仰け反らせた。
「っ・・・・!」
掠ると同時、みるみるうちに硬く尖った小さな飾りを、弄ぶようにいじられる。
指の腹でしばらくころころと転がされたと思ったら、最後にきゅっと人差し指と親指とで摘まみ上げられた。
「ぁう・・・っ・・・」
敏感にぴくん、と震える細くしなやかな身体に、土方はその目に愉しげな笑みを浮かべた。
「どこもかしこも色素薄いなお前」
「う、るさ・・・っ・・・ぁぁ・・・っ・・・」
最中にまじまじと見られて言われると、何故だか僅かに頭に血がのぼってしまい吐いた悪態も、
くいくいと連続して胸を弄られるたび、喉の奥で消えて代わりに甘い吐息に変わってしまう。
片方の飾りを摘まみ上げ、くりくりと指先で刺激を送りつつ、
土方はもう片方に、おもむろに舌を寄せた。
「んぁ・・・・!」
濡れた舌に、思わず沖田の身体が仰け反って反り返り、反動で胸を更に土方の方に差し出す体勢になる。
それを幸いとして土方は、舌を寄せた飾りをそのまま口中に含み入れ、舌と唇とで吸い上げる愛撫を施した。
色の薄い、肌理細やかな肌をほんのりと染めながら、自分の愛撫に素直に反応する沖田に土方の身体にもぞくりと熱が走る。
「く、ふ・・・・っ・・・」
甘い声を零す可愛らしい唇をぺろりと舌で味わい、
着物の上から沖田の下肢、その中心部をやわらかく撫で上げた。
「! んッ・・・・!」
たまらず沖田が吐息を漏らす。
布越しでも、そこは胸への愛撫で充分に熱を溜めていて、すでに形を持ち始めていることが繰り返し触れ続ける土方の手に伝わった。
「随分と元気だなオイ」
「・・・っ、の・・・・!」
意地悪く囁かれ、沖田は自分の中心部をまさぐってくる土方の手を振り払おうと思わず手を伸ばす。
だがしかし、布越しとはいえ今度は緩く弱く揉みしだかれて、より一層熱を帯びると共に、
布越しだからこその切ないもどかしさも熱を伴って同時にやってきて。
更に強い愛撫刺激を求め、自分でも意識しないうちに腰が揺らめいてしまう。
それに逸早く気づいた土方は、意地悪さを消した視線で沖田を見つめ、器用に片手を使って両膝を立たせ、
そして脈打つ沖田自身を一際強く揉み上げた。
「っ、土方さ・・・・っ・・・、」
たまらず甘く濡れた声で、可愛い総悟が自分の名前を呼んでくる。
「ああ」
わかってる、と返事代わりに頬にキスを落としておいて、
それから身体に纏わりついていた着物を手早く全て剥ぎ取ってやった。
ふるり、と僅かに震えて晒された沖田自身。
先端に透明な蜜をにじませるそれを、土方はやんわりと手の中に包み込む。
「・・・・っは、」
直接的に触れられ、温かな手から伝わる体温を感じ取って、その先端から蜜がとくんと伝い落ち、沖田はその感触に息を詰めた。
「ぅ・・・・!」
・・・・こんなふうに同衾し身体を開いて重ねて触れられて、
土方に全てを持って行かれるのには、未だにどこかに羞恥が残るのだけれど。
なのに、今のように体温を感じてしまうとそんな羞恥はいつの間にかどこかへ行ってしまって消えてしまい、
実際与えられる快楽に気がつけば蕩けきってしまう。
そう、今もこれから土方が施してくれるであろう愛撫を経験が招いて思い起こさせ、
土方の手の中で濡れた欲が大きく脈を打った。
「わかってる」
待ちきれねェよな、と小さく笑い土方が熱いそれを上下に扱き始める。
「っあ・・・・ッ・・・・ぁ・・・」
快楽に背中が仰け反り、抑えようとしても声が出てしまう。
硬さを増した沖田自身は、扱き上げられるたびに更に張り詰めていき、
次第に滴り落ちる先走りの蜜で濡れた粘着質な水音を立てるようになった。
「・・・・っ、ん、ぅあ、・・・・あっ!」
土方の手が一往復するごとに息が荒くなる。
「ひ・・・・ぁッ・・・・!!」
と、
不意にもう片方の手を使って、じくじくと蜜の湧き出る敏感な先端を撫で上げられ、堪えきれず全身を震わせた。
「や・・・・ッ、やめ、んぁぁ・・・・っ・・・・!」
面白そうに先端を繰り返して刺激され、断続的に震える沖田自身は絶え間なくとろとろと蜜を零し続ける。
たまらない快楽刺激は、まるで甘い折檻のようで。
「っ土、方さ・・・・っ・・や、め・・・・っ・・・」
「・・・・。 普段もそれくらい素直でいればいいんだがな」
嘆願してくる濡れた声に土方は苦笑を浮かべつつ、それでも言うことをきいてやり、先端への意地悪はそこでやめてやる。
代わりに両脚を片手で抱え上げ、
眼前に露わにさせた最奥の周囲を、沖田の零した蜜で濡れた指先で触れた。
「ッ・・・・!」
そしてタイミングを見計らい、人差し指の第一関節までをそっと内側に含ませる。
そのまま浅い部分のみで抽挿を重ね、ふいにくぷりと奥まで深く埋め込んだ途端、沖田の身体がびくッと大きく跳ね上がった。
と一緒、張り詰めた沖田自身もビクンと主張して。
埋めた指を内側で動かしながら、土方が沖田に問いかける。
「痛いか・・・・?」
「んぁ、あっ・・・・っっ・・・・」
感じているのは痛みではなく快感らしい、と沖田のあげる声で感じ取って、
そのまま既知している最も敏感な内部の一点を、ぐいっと指先で押し上げてやる。
――――ッッ!!
その強い快楽刺激に沖田は声さえあげられず、喉を晒して仰け反った。
無意識に腰を退いてしまうのを引き戻し、
「逃げるなって」
「っ・・・・ぁうッ、・・・・っ、や・・・・ッッ!」
押し上げた一点、明らかに感触の違う部分を押し上げ転がし続けると、
次第に沖田の身体から汗が滲み出始め、埋めた指もきゅうきゅう内壁に締め付けられてきた。
一度目の限界が近いらしい。
溢れ出る蜜にも、僅かに白い色が混ざりはじめる。
「あ・・・・ぁ・・・・っ!」
「ん。 一回出しとけ」
絶頂間近の、この上ないほど膨れ上がった沖田自身を全体的に擦ってやり、同時に内壁を掻きまわすよう、
一際奥まで突き上げたその瞬間。
「――ッう、・・・く・・・・ふっ・・・・!!」
包み込む土方の手の中、音もなく弾けた欲は沖田の下腹部共々土方の手を濡らし、滴ってシーツに落ちた。




「・・・・っは、は・・・・・・、 ・・・ッ・・・・!?」
一旦絶頂に達し、くったりと全身をシーツに沈み込ませ、荒く喘いでいた沖田だったのだが。
落ち着く間もなく、埋め込まれたままの指で内部をまたもや擦り上げられてしまい、
余韻も何も消えないうちに新たな快感に腰を震わせられてしまう。
「な、待・・・・っ・・・・」
「黙ってろ、もう少し慣らさねーと入らねーだろ」
達したばかりで過敏さを増している今の身体は触れられるだけでも過剰に反応し、
下肢から背筋を伝ってくるぞくぞくとした疼きに、ひとたまりもない。
「んな、がっつかなくても・・・・っ・・・」
「そりゃ無理だ」
「・・・・っの、スケベジジィ・・・・っうぁ、ぁ・・・・ッ・・・!」
「なんとでも言いやがれ」
勝ち誇ったように言い捨てられ、そのまま震える沖田自身を口に招き入れられ、細い腰が戦慄いた。
土方の舌は口腔の中で根元から沖田の悦ぶ裏側を丁寧に余すところなく舐め上げ、
辿り着いた括れの箇所でしつこいとも言えるほどゆっくりと何度も這い回る。
「ッ・・・・、っっ・・・・!!」
ただでさえ一際敏感な場所なのに、一度高みまで達した直後で感じてしまう刺激は痛いほど。
土方の舌が触れているだけで身体の震えがかたかたと止まらず、
次第に時間が経つにつれて下半身から快楽に溶かされていきそうな錯覚に捕らわれ、
あまりの快楽刺激に浮かんだ涙が落ちる。
「・・・んっ・・・・っ・・・」
と、突然指が一本増やされて、狭くなった内壁の中、前立腺に僅かに触れながら刺激されていく。
土方の指を伝わり、前から流れ溢れ落ちてくる蜜もあり、それほど時間もかからない間に内部は少しずつだが潤いを見せはじめ、
指が動くたびに濡れた水音がまた響き始めた。
沖田自身を攻めていく舌先は、括れから僅かに移動し先端部分に辿り着き、
止まらず溢れ続ける透明な蜜をより求めるように小刻みに蠢いた。
「ぅあ・・・・ッ!」
そこは沖田の最も弱い場所で、そんなところを尖らせた舌先で抉るように刺激されてしまい、
びくびくと身体を戦慄かせる姿態に、土方の欲も煽られる。
「・・・・総悟」
「っふ、ぁ・・・・っ!?」
二度目の絶頂が近くなり、張り詰める沖田自身から口を離し、
今度は指を二本受け入れさせたままの最奥に口付けて。
――――ッッ・・・・っ・・・・!」
たまらず身じろぐ沖田の身体。
だが嫌がられようとなんだろうと、そのまま指の隙間から舌を無理矢理ねじ込むようにして差し入れる。
唾液を舌に乗せ、何度も何度も潤すために送り込んでやっと、
充分に内部が綻びを見せていることを確認し、舌と指を引き抜いて沖田の脚を抱え上げた。
「挿れるぞ、」
言って抱え上げた片足に軽く唇を落とし、熱く猛った自分を最奥に宛がう。
瞬間、僅かにヒクンと戦慄きを見せた入口に片目を細め、先端のみを埋め込みそのまま浅い箇所を軽く抉った。
「あ・・・・あっ、あっ・・・・!!」
後ろを刺激された反動で、ふるりと震え上がった沖田自身を手の中に包み込んでやると、
両方に与えられる快感に、沖田が握り締めたシーツがくしゃくしゃになる。
「ッ・・・・、出・・・・る・・・・っ・・・」
我慢しきれず2度目の吐精を訴える途切れ途切れの艶声と、
快楽に蕩けて眉根を寄せる切ない表情に、先端部のみ飲み込ませている土方自身が思わず質量を増した。
「ンっ・・・・!」
前触れもなく増した熱に、かぶりを振って沖田が耐える。
相まって絶頂にかなり近づいた内壁がきゅうきゅう蠢き締め付け、受け入れている土方自身の先端を強く刺激していく。
「・・・・く、」
散々待たされていた土方自身も、一旦の捌け口が欲しくて。
出すぞ、と告げてそのまま勢いよく最奥目がけ、腰を突き入れた。


「あッ、うぁ・・・・っっ・・・・!!」


内部を貫き、擦られ穿たれた欲望に最奥を抉られて、堪えることもできず沖田は二度目の白蜜を吐き出した。


「・・・・、ッ」


直後、吐精につられて一際強く搾り取るかの如くに絡み付いてきた内壁の締め付けに、
土方も逆らわず沖田の内部に欲をぶつける。


「・・・っ、ぅ・・・・っ・・・・」
放ち終え、そして内側に土方の熱を感じ取った沖田が小さく身体を震わせた。
「総、悟」
「・・・・ん、っ・・・・」
互いに荒い息、だがそれを整える時間も勿体ないほど貪りあう口付けの後、頬に残った涙の跡を舌で辿ってやっていると、
その感覚に、僅かに身じろいで土方を見上げてきて。
「・・・・なんだよ」
「、・・・・くすぐってェです」
汗まみれであるにも関わらず、さらりと流れる薄茶色の前髪。
髪と同じ色をした、見上げてくる瞳もやっぱりやっぱり外見だけは可愛くて可愛くて、
「・・・・・・。 畜生可愛いじゃねーか」
誰が何と言おうがそれだけは認めてやる、と呟きながら、
沖田の内側で再び熱と硬さを蓄えつつある土方が再度動き始めると、中に一度放った白蜜が音を立てた。
「ッ、・・・・んっ・・・・!」
ぐちゅ、と濡れた音が連れてくる身体の底からの刺激に、たまらず沖田はちょっと待った、休憩させてくださいよと抗って、
土方の身体を押しのけようとするのだけれど、組み敷かれた態勢と力がほとんど入らない手では結局何も出来ない。
「休んでるヒマなんかあるかよ」
僅かな抵抗ごと封じるように上半身を折り曲げ、胸と胸を重ね合わせる体位を取り、
深く埋め込んだまま内部を掻きまわすように腰を使う。
「ぁ、ぁ・・・・う、ぁ、あ・・・・っ・・・・」
どこか幼げな、泣き声にも似た声をあげる沖田にまたも煽られ、内側の土方自身がどくん、と大きさと凶暴さを増した。
柔らかで熱く、それでいて弾力を失わない内壁を擦りながら、
自らの快楽をしばらく追う土方の腹部に、若さゆえか二度達したあとの沖田自身も力を取り戻し勃ち上がって当たる。
それを見て、ああ冗談抜きで歳かもしれねーな俺、と頭の片隅で苦笑して、
密着させていた身体を一度離し、自分だけ上半身を起こして沖田の片脚だけを肩の上に担ぎ上げた。
それから空いている方の腕を使い沖田の身体をその抱え上げた脚とは逆の方向に向かせ、そんな態勢でまた腰を動かしていく。
「あ、あ・・・・ッ!」
奥を突かれていた荒々しさが、ゆっくりと先端近くまで引き抜かれていく感覚に、沖田の背筋を寒気にも似た悦楽が駆け上がる。
一方、先端を残したままのところまでを全て引き抜いた土方は、抱え上げた沖田の細い脚に落とすだけのキスをして、
直後、思いきり強くぐいっと一挙に最奥までを乱暴に貫いた。
「ッうあっ!!」
凶暴なほど強く穿たれた衝撃に、沖田が悲鳴のような声をあげる。
しかし構わず土方は尚も強く内側を蹂躙し、最奥目掛けて繰り返す激しい動き。
「い・・・・っ、・・・あ、あ、ぁッ・・・・っ!!」
合わせて濡れ落ちる自身も激しく上下に動かされる。
途端に土方を包み込む内壁も敏感に反応を見せ、全体的に締め付けられた土方も息をのんだ。
「ッ、」
「ぅ、あ・・・・ぁ、あ・・・・ッ!」
揺さぶられる沖田は、掴んだシーツに半分顔を埋めるようにして懸命に快感に耐える。
奥の奥、最も悦ぶところを押し付けた先端でぐいぐい押し上げてやると、
たまらずかぶりを振って揺れた髪が乾いた音を立てた。
「・・・っ、んぅ、そこ・・・・っ、やめ・・・・っ・・・・」
「やめねェ」
悦いクセに何言ってんだよ、とばかり更に更に強く刺激する。
「や・・・・や、ぁッ、土・・・・っ!」
受け止めきらないほどの、痛いほどの性感に生理的な涙を零す沖田は、弱いところを突かれて上がる声を抑えられない。
ぐりっと内部を捏ねまわされ、
息をつく間もなく激しく腰を使われ続けて。
――ッん、ぅ、あっ、あぁ・・・・ッ・・・・!」
「・・・・総悟、・・・ッ」
耳元では随分と荒くなった土方の息遣いが鼓膜を震わせ、熱くなった身体を追い上げていく。


擦られ、突き上げられ続ける内側と、
同じくらい激しく刺激される外側。
「う・・・・ぁ、ぁっ、も・・・・っ・・・・、」
両方から与えられる直接的な性感に全身が急激に昇り詰め、折り曲がった脚の爪先がぴんと反り返って下半身に力が入る。
ぎゅっと掴んだままのシーツに立てた指の爪もこの上ないほど白くなり、
内壁も激しくうねって収縮し、侵入している土方に快楽を返して。


「キ、ツ・・・・」
あまりの締め付けの悦さに、呟きつつ負けられない土方がこれで最後、とばかり激しく腰をグラインドさせると。


「ッ! ――――っ、 ・・・・あ・・・・っ!!」


一瞬の間を置き、沖田が絶頂に達する。


「・・・・く、ッ」


絶頂が連れてきた内壁の蠕動と締め付けに誘われ、土方もつられて沖田の中に、二度目の欲を解放させる。
「・・・ッ、・・・・っ・・」
内側に熱い土方の欲が吐き出されるたび、小さく喘ぐ沖田。
構わず何度も抽挿を重ね、放った欲の最後の一滴までを沖田の内側に注ぎ込んでから、
やっとそれから土方は自らを引き抜いた。
「・・・・起きてるか、」
「・・・・何とか・・・・。 でも眠ィ」
「俺もだ」
くったりと身体を投げ出しながらも素直に返事をする沖田の濡れた唇を自分の唇で塞いで、
とりあえず風呂も何も後回し、性欲を満たしたあとは、
互いにやってきた睡眠欲に逆らわず従うことにした。




















「・・・・う」
傍らから聞こえてきたがさがさという衣擦れの音に沖田が目を覚ますと、いつ先に起きたのか、土方が着替えているのが視界に入った。
目蓋はなんとか開けているが、眠い。
うっすらと窓から差し込む光は僅かに明るくて、様子からして夜は明けているようだが。
ちらりと時計を見る。
「まだ6時じゃねーですかィ・・・・」
「あ、起こしちまったか」
昨晩の名残りで気だるい身体をなんとか持ち上げつつ、布団の上に起き上がる。
そうしてよくよく見てみると、目の前の土方は真選組隊士服、つまり仕事着に袖を通していて、
「・・・・出勤?」
自分と同じく本日も非番のはずじゃ、と訝しく思ったところ。
「まあな。 連休取れなかったんだよ」
あっさりした答えが帰ってきた。
土方の、そのあっさりした返答が何故かどこか自分でもよくわからないけれど少し気に食わなくて、
送り出してやろう、なんて気にも更々ならなくて、
「・・・・・・・・」
無言でもう一度もそもそ布団に入る。 そして背を向ける。
そんな沖田に土方は何かを察したらしい。
「おい、」
立ったまま頭上から呼びかけてくるが、頭から布団をかぶって無視。
さっさと仕事行きやがれこの野郎、なんてムカムカする心情をこのまままた一眠り、眠ってどこかへ放り投げておこうと目を閉じたその時、
「総悟」
布団越し、また土方の声がして。
「・・・・・・・・」
でも返事はしてやらない。
バレバレの狸寝入りを決め込んで、次の言葉を待つ。
と、小さくタメイキをつく気配に加え、どさりと枕元に座り込まれた。
「仕方ねーだろ、拗ねるなよ」
「・・・・・・・・」
狸寝入り。
「とりあえず早番だからな、夕方、・・・・3時過ぎにはまた戻って来る」
「・・・・・・・・」
続行。
「それまで寝とけ、それで帰って来たら、」
「・・・・・・・・」
引き続き続行中。
「布団、買いに行くぞオラ」


「、」


狸寝入り、思わず中断。


かぶっていた布団から頭を半分だけ出して反射的に土方を見返すと、
買ってやるって昨日言っただろうが、とさぞかし当たり前の如く言われて。


「−−−−−−」


見つめ返すこと数秒、


「・・・・じゃあ遠慮なく。 ムアツ布団とシーツはシルク、んでもって掛け布団は当然高級羽毛で枕も高ェやつで」


直った機嫌と言質を盾にして、
全部まとめても大体十五万ちょっとで済みますから宜しく、なんてにんまり笑ってやる。


「何だその物欲の塊はァ!? んな高給取りじゃねーの知ってんだろうが!」


却下だ却下、全部まとめて一式三万以下に抑えたモノにしろリーズナブルに、と土方の却下が入るけれど、譲る気はない。
「大丈夫でさぁ、世の中には分割払いっていう便利な制度が」
「却下だ!」
「チッ、辛気くせェ・・・・」
「若いうちから贅沢覚える気でいるんじゃねーよ! とにかくだ、程々のモンにするぞ、・・・・ってもうこんな時間じゃねーか」
急がないと遅刻する、と慌てて上着を手にして今にも玄関に直行しそうな勢いの土方に、


「土方さん」


沖田はむくりともう一度身体を起こして手を伸ばし、その胸ぐらをぐいっと掴んで引き寄せて、


「まあ張り切って仕事行って沢山稼いでくださいよ可愛い俺のために」


言ってお出かけの際のチュー、 所謂 『行ってらっしゃいのキス』 をしてやった。




















「あ」
「あ」


昨日とほぼ同じ時間、場所さえ違えどまたも銀時と遭遇したのは、
街中、商店街真っ只中の寝具屋の前である。
奇遇にも程がある。


「何してんのこんなトコロで?」
「旦那こそ」



いつもながらに眠たそうな銀時と、つまりこういうワケでそういうワケで店の前でかくかくしかじか。
一通り説明を終え、自分の後ろ、買い込んだ布団一式を抱え込みやっと店から出てきた土方を銀時と沖田、二人揃って眺めやる。


「ほら、いーでしょう旦那。 最高級羽毛ですぜ最高級羽毛」
「二人揃って布団買いに来てんの? いーね俺の分も買ってくれよ多串くんーーー?」
ひょい、と沖田の脇から土方を覗きやる銀時に、
「んな金があるかァ!! 布団一式で十七万だぞ十七万! ・・・・ってなんでそこにいやがるんだてめーが!!?」
ワンテンポ遅れて土方は銀時の存在に気づく。
「だって俺たち仲良しですもんねェ、旦那?」
「あー、実はそうなんだよなー」
「昨日もいろんな話しやしたし。 ねェ?」
「なー」
「お前らなァ・・・・」
なんてイヤな二人組なんだオイ、と呟くが、
「あ、早く分割手続きしてきてくださいよ土方さん、買ったやつならココで俺見てますから」
この上なく沖田は嬉しそうだ。
それでもまだブツブツ言いつつも支払い手続きをするためにくるりと踵を返し、
店の中に戻る土方の背中に聞こえてくるのは、呑気な沖田と銀時との会話で。


「で、旦那は帰りですかィ」
「んー、まーな」
「旦那もねだってみりゃあどうです? 金、持ってなくはないんじゃ?」
「どーだか。 万一買わせちまったら、『買ってやったのだから好きにさせろ』 とか言って毎回毎回その上で襲われそうな気がしてよー」
「ああ、変態ですからねェ」
「いや、それ関係ないって」


一体何の話をしてやがるんだアイツ等、と思いながらも分割払いの用紙に向かう。


「でもさァ、なんで布団汚すワケ? いちいち汚してたら大変じゃねーの?」
「そりゃそうなんですがね。 言われる通りでさぁ」
「ゴム使えばいいだろーに。 基本だろ」
「あ、ゴムは嫌いで」



向かって用紙に、分割六回払いと記入する。
が。
聞こえてくる会話内容に、ぷるぷる手が震えてくるのは何故だろう。


「多串くんが?」
「いや、俺が」
「へぇ・・・・。 じゃあいつもどこでやるの」
「宿とか詰め所とか土方さんとことか。 ま、大抵は仕方がねーからゴム使いますがね。 でも昨夜は丁度切らしてて」
「若いねー、羨ましいねー」
「旦那はどうなんです?」
「俺? 俺はだな」


まだ用紙の記入は途中だ。
途中である。 が。






「ちょっとォォォォォ!! 往来で何話してんのお前等ァァァァ!!!!」






とんでもない二人のとんでもない会話を止めさせようと、たまらず土方は店の外に飛び出した。






―――――――― 江戸の街は今日も平和だ。














沖田サイドで始まって、中盤〜終盤までそうなのに、なんでえろが微妙に土方サイドだったり終わりも土方で終わるのこの話・・・・!(蒼白)
直そうと思ったけど結局修正がきかなかった・・・・土下座!
やたら長くなったのは(とか言いつつえろはどちらかというとあっさり目にしてみました)、沖田と銀さんとの会話をやってみたかったからだと思います。
実際やってみたら、すごい楽しかった! 恋バナできた!(爆笑)
でもなんか妙に生々しい話になったような気がしたのは気のせいという方向で。