you work





沖田が熱を出した。




思えば数日前から 「なんかダルイ」 やら 「頭がボーッとする」 やら 「背筋がゾクゾクする」 やら、
そんなようなことをポツリポツリと訴えるように呟いていたのだけれども。
「かったるそうにしてるのはいつものことだろうが」 だの 「ボーっとしてんのも日常茶飯事だ」 だの、土方としてはあまり本気にしないまま数日が過ぎ、
ついに今朝、赤い顔をしていたのでまさかと思い熱を測らせてみたところ、
見事に三十八度もあり、慌てて寝かせて休ませて、それから半日ほど経った今。
土方個人の執務室に突然ふらりとやってきた沖田の一言に、




「・・・・・・・・・・・しましょーぜ、土方さん」




「・・・・何?」




向かっていた文机、ペンを走らせていた書類から後方を振り向くと同時、土方は思わず自分の耳を疑った。




「エッチしましょーぜ、土方さん」




「な」




もう一度重ねて同じ言葉を繰り返す沖田のまだほんのり赤い顔と、退屈しのぎにつけていたテレビ画面とを反射的に見比べる。
(そんなことありえないが) 一瞬、テレビの音声と沖田の科白とを取り違えたかと思ったのだ。
しかしテレビ画面は昼下がり、午後一番の天気予報の画面でお天気アナが明日も明後日も秋晴れが続くでしょう、
などと解説しているばかりで、どう頑張っても取り違えられる内容ではなくて。




「な、・・・・何言ってんだ総悟テメー、」
銜えた煙草を危うくポトリと落としそうになりながら、間抜けにも思いきり唖然としつつその顔を土方が眺めやると。
「だから、ヤりたいから今からしましょーぜって言ってるんです。 もう耳まで遠くなりやがったんですかィ」
沖田は赤い顔のまま真面目くさって真顔で言い捨てたあと、
後ろ手にパタンと扉を閉めてついでにしっかりカチャリと鍵まで施錠すると、ずいっと畳に膝をつく形で土方との距離を詰めてきた。
焦って煙草を揉み消す。
「し・・・・、仕事中だろうが」
こんな時、妙に常識的な言葉が出て来てしまうのは大抵大概、土方の方である。
本日は珍しくも内勤でありそれほど忙しくもないとはいえ、少なくとも自分も沖田も一応警察官で公僕で、
さすがに勤務時間中にそれも屯所内で、というのは拙くはなかろうか。 しかも今は昼間なのだし。




と、そんなことを思慮している間にも遠慮のない沖田はずいずいと土方に接近しその身体に乗り上げ、
「そ、総悟」
「黙ってろィ」
気づけば胡坐をかいていた座布団から引き摺り降ろされてしまい、
「な・・・・」
強引に取られてしまったマウントポジション、仰向けになった自分の上に沖田が乗っている。
唖然とする土方の上、たまには息抜きも必要ですぜと勝手に前置き、それから。
「別に俺らがイチャついてるからって世間の犯罪が極端に増減するワケでもねェですし」
言ってすぐ、ぐんと体重をかけてくる。
「それにあんまり働きすぎて万一この世から犯罪と事件がなくなっちまったら、俺ら全員用無しでクビ、路頭に迷っちまいまさァ」
「・・・・ッ」
思わず小さく息が乱れたのは、土方の不覚・・・・というか、喋りながらこちらを覗き込んできた沖田のカオがあまりにもカワイイからで、
加えて沖田の方からこんなふうに堂々と乗り気で誘ってくることは滅多になく、どちらかといえば珍しい。
そして何より、どんなことより、
ここ十数日は正に日程が合わず休日も合わずタイミングも合わず、ほとんど接近の手立てがなかったのが現実でもあって、
この場が(いくら副長専用部屋とはいえ)屯所内、それも思いきりの勤務時間中、
というのでなければ諸手を挙げて飛び付きたいオイシイ現状では、ある。
「・・・・・・・・」
だが。




なのに、
なのに、




「だけどテメー、熱があるんじゃねーのか」
表向きは何故に、何故にこうどこまでも常識的なことばかり口にしてしまうのか、自分でもよくわからない。
とは言いながらも真上の沖田を決してどかそうとはしないあたり、自分のココロの底(・・・・・・) は見えている。
「んー・・・・。 たぶん大丈夫です」
「たぶん、じゃねーよ。 額さわらせてみろ」
確かめるため僅かに上体を起こし、伸ばした手で額に触れてみればやはり熱い。 寝かせたときとほとんど変わっていない。
ホントに大丈夫か、と無言で視線で確認すると、
熱のせいで微かに潤む沖田の大きな瞳が頷くように2、3度まばたきを繰り返して、
乗ったまま前傾姿勢、そのまま土方の首筋に顔を埋めてきた。
「・・・・ヤりたい時がヤる時でさァ土方さん」
そんな吐息混じりの言葉と同時、熱を孕んだ唇で首筋にちゅ、と軽いキスを落とされた。
土方の首筋に、ふわりぱさりと掠るさらさらの茶髪。
やわらかな唇と、重みは感じるけれど決して重くない、むしろ心地よく感じる体重と。
「総悟」
「たくさん汗かいちまえば、熱も早く下がるだろーし。 それに、」
肯定の響きを含めて名前を呼ぶのと、沖田が続きを口にするのとがほぼ同時。
「、」
「『それに、』 ・・・・何だよ?」
途端に一瞬目が合い、土方は可愛い沖田に続きを促す。
すると沖田は面白そうに小さく笑って、「万事屋の旦那がね」 と某白髪頭の例の男の名前を突然、持ち出してきた。
「? あいつがどうした」
どうしてここであの男の名前が出てくるのかわからず、首を傾げた土方に。
「この前、また偶然にも万事屋の旦那と甘味処でバッタリ会っちまって、そん時にちょこっと仕入れた情報なんですが」
「??? 何をだ」




「こう・・・・熱があってボーッとしてる時にするエッチもなかなか乙なモンだ、って教えて貰ったもんで。 ちょうどいいしこりゃあ一発試してみようかなーって」




「あの野郎・・・・」
しばし呆気に取られ、
「ついでに旦那には思いっきりサボってたところを見つかっちまったんですが、そん時の旦那のスクーターの駐車違反とプラマイゼロで切り抜けました。 あしからず」
「なんだその官民癒着はァ!!」
そしてそのあと思いきり土方は歯噛みする。
前々から沖田と銀時とは不思議なことに割合と気の合う仲である、ということは知らないでもなかったけれど、
よりによって総悟になんてコト教えやがるんだあのバカは、
いやいや毎回毎回お前等二人はなんでそんな会話ばっかりしてやがるんだ、
いやいやいやもしかするともしかすると自分とのことは総悟から思いっきりも思いっきり! 奴に筒抜けなんじゃねーか、とか、
・・・・・・深く考え詰めるとこちらが頭が痛くなってきそうだ。
なのに沖田は淡々と言い募る。
「別にいーじゃないですか。 土方さんだって万事屋の旦那とはなまじ知らねェ仲でもないでしょーに」
「なッ・・・・!」
「だっていつだったか、旦那とは真っ裸の濡れ濡れでくんずほぐれつだったでしょーが」 (注:七十五訓)
「だからァァ!! あの時は不可抗力だったっつってるじゃねーか・・・・!」
そうだ。
あれはアレだ、空知御大の御心で所業であって、決して決してそういうわけではないはずだ。 だってココは土沖だ。
「ふぅん?」
「あ・・・・当たり前だろうが」
意味深に眺めやられ、
別に他意があるわけでもなく、その点について後ろめたいわけでも全くもってないはずなのに、
何故にこう、自分の方が落ち着かなくならなければならないのだろう。
「・・・・・・・・・・・」
「? 土方さん・・・・?」
考えても仕方がない。
仕方がないから一気に身を起こし、態勢を逆転させて、




「ん・・・・っ・・・」
無言で口付ける。














「・・・ふ・・・・」
口付けられ、土方の舌が沖田の熱い口腔内に侵入してきた。
一見、そのキスは乱雑なようだけれど実際は思いのほか巧みで甘くて、
熱のせいでただでさえもぼんやりとしていた頭の中が、
煙草の味のする舌で舌を絡め取られ、幾度も吸い上げられていくうちに更にぼうっとしてきた。
キスだけでこんなにも気持ちいい。
目蓋を閉じてそのキスに浸っていると、
肩に土方の手がかけられ、制服の上着を無造作に滑り落とされる。
そうして今度は胸元のスカーフを手早くスルリと解かれて外されると一緒、唇が離れていく。
ゆっくりと目蓋を持ち上げて、沖田がその顔を見上げると。




「・・・・・・。 一分待て。布団敷いてやる」




すっかりその気の土方の表情がそこにあった。
そうだ。 ヤりたいときがスルときだ。




















熱を孕んだ素肌の表面は熱く火照って、土方のひんやりとした指が頬に触れるたび、ひゃっこくて心地が良い。
スカーフを解かれ落とされたあと、シャツと下肢も手早く衣類を剥ぎ取られ、熱い素肌のいろいろな箇所にキスを落とされた。
「う・・・」
全身が空気に晒されると、やはり熱のせいか表面だけは熱いのに、身体の芯は冷えていて。
「やっぱ寒ィ・・・・」
温まりたくて、指先は冷たいが身体は温かい土方に、ぎゅっとしがみついてやる。 ついでに甘える素振りも見せられる一石二鳥。
すると案の定、土方は嬉しそうに口許を緩めつつ、
「それ見やがれ。 余計熱が上がったらどうすんだコラ」
しかしそれでも説教じみたことを言ってきた。
だから負けずに。 退くフリをしてその実、言い返す。
「じゃ、やっぱやめといた方がいいかも・・・・」
沖田の露わになった肩口に土方は唇を寄せ、数回軽く口付けたあと、そのまま首筋を通って辿り着いた耳朶を食む。
そうしながら、鼓膜を震わせるほど近くで囁いた。
「・・・・ここまで来て退けるワケねェだろうが」
「ふ・・・・っ・・・」
普段に比べて頭はぼうっとしているのに、熱のせいか身体はどこまでも過剰なほど敏感になっていて、
ただそれだけの囁きにも、過敏に反応してしまう。
そんな沖田に、土方は目を細めた。
「もっともお前の方もやめられねーだろ、今更」
「っ・・・、・・・・!」
突然にきゅっと胸の飾りを指先で摘ままれた沖田の身体がピクンと跳ねる。
「・・・ぁ、っ・・・ッ・・・」
より過敏な向かって右側のそれを続けて触れられ、たまらず目をつぶって堪えようとするのだけれど、
目を閉じてしまうとその分、土方の姿が見えなくて余計に感覚だけが鋭利になった。
「ぅ、ん・・・・ッ!」
ふいに左側にも指が伸び、今度は腰がビクッと大きく跳ねる。
反応する沖田の細身でしなやかな身体、それを土方は丁寧に味わいたくて、
「んぁッ・・・!」
素早く薄い胸板に顔を寄せ、摘まみあげたままの左側の飾りを舌で舐めあげた。
途端にもう一度、ビクリと沖田は身体を大きく震わせて胸元にある土方の頭を押しのけようと、その髪に指を差し入れてくる。
けれど構わず、軽く舌先を使って熟れた果実を突付くたびに沖田の指からは力が抜けていき、
逆に土方の頭をかき抱くような形になってしまった。
「・・・ぁ・・・・っ、あ・・・・ッ・・・・」
やわらかな細い髪が、シーツの上で乱れる。
土方も実感するに、何度も何度も数え切れないほど沖田を抱いたが、熱のせいか格段に普段よりも感度がいい。
そんなことを思いながらも軽く果実を歯で引っ掛け、甘噛みしてやると力の入らない指で掴んだ髪を引っ張られた。
だが微かに震えて戦慄く指では結局なにも出来ず、土方は小さな赤い粒への愛撫を重ねていく。
「ふ、ぁッ・・・・、ぁ・・・・っ・・・!」
施される土方の愛撫。
強く強く痛いほど吸い上げられたかと思えば、真逆に優しくそろりと舐め上げられる、
土方の長い執着で生じた熱は下肢に直接向かって蓄積し、ずくりと腰を疼かせる。
「・・・っも、・・・」
いい、と言いたいらしい沖田の制止が聞こえたけれど土方は聞こえないフリをして、
それでも脇腹に彷徨わせていた方の手を降ろし、下肢をそっと擦ってやった。
「ッ・・・・!」
触れた沖田自身は、すでに過剰な熱を持っている。
胸への愛撫のみで熱を内包しているそれをしっかり確かめるよう、土方が丁寧に手のひら全体を使って撫でてやると、
声もなく沖田は白い喉を仰け反らせた。
「っあ、ぁ・・・・っ、・・・・!」
素直な身体は、軽く土方の手が動くだけで自身を震わせ、質量を増していく。
みるみるうちに蕩けるような甘く切ない快感が腰から沸き上がり、無意識に沖田は手元のシーツを強く強く握りしめた。
「もう濡れてんぞ、総悟」
「んッ、ぁ、ふ・・・・っ・・・」
言葉の端にちょっぴり意地悪気な響きを乗せた土方にそんなふうに煽られた途端、
それを切っ掛けにして先端から零れた蜜を自身全体に塗り込めるようにされ、本格的に扱かれはじめる。
相乗効果というのだろうか、扱かれて更に大量に零れ落ちてくる蜜でまた潤い、
その潤いを借りて更に更に激しく早く土方の手も動いて、
ぴくぴく震える先端からは先走りの蜜がとめどなく浮かんで伝い落ち、土方の手までをぐっしょり濡らしあげた。
―――っ、う・・・・!」
むずがるような、何かをガマンしているかのような沖田の濡れた声。
これは絶頂が、高みが近いことを表していて、
普段より格段に確実に、早い。

土方の掌中に収められている沖田自身も、すでに相応に張り詰めていてそろそろ限界だ。
「とりあえずラクになっとくか・・・・?」
「ッ、・・・・っ・・・!」
問いに、沖田が細い顎を微かに縦に揺らすと同時、一際強く沖田自身を手が往復した途端。
腰が芯から蕩けてしまいそうなほどの欲が生み出す熱を感じ、
がくがく腰が大きく戦慄くと、
「ッ・・・・ぁ、ぁ、――――ッ・・・!!」
堪えるものも遮るものもなく沖田自身は弾けて熱と白蜜を吐き出し、
土方の手と自らの腹部を少し、汚した。




「は・・・・っ、・・・っは・・・」
吐精の余韻に沖田は荒い息のもと、僅かに腰を揺らす。
絶頂の直後であるからか、その目許にはうっすらと涙が浮かんでいて、紅く染まった頬と相まってとてつもなく艶っぽい。
「おい、大丈夫か?」
「・・・・ん」
抱く土方には、熱がある身体の体温の高さがダイレクトに伝わっているらしい。
心持ち心配そうに、とろんとした瞳の沖田の顔を覗き込んできた。
「だいじょーぶ・・・・でさァ・・・・」
そう答えながらも、ただでさえ熱かった身体が達したことで更に熱を持ってしまい、
呂律までうまく回らない。
加えてすでに、頭の方はボーッとするをとっくに通り越してふわふわ浮いた状態、というかむしろ朦朧としていると言った方が正しいか。
「それならしっかり起きてろ」
「ん・・・・」
気を抜けば今にも眠りに落ちてしまいそうでいたら、ふいに唇を塞がれてぼんやりとだが意識が戻ってくる。
「ヤニくせェ・・・・」
「我慢しろ。 んでもってついでにそのまま力抜いとけ」
「っ、・・・・」
抗議混じりで言葉を紡いだ直後、前触れもなく奥まった箇所に土方の指が伸びてきた。
まだ固い最奥を、土方は数回指の腹で慣らすように撫で上げ刺激したあと、
ついさっき沖田が放った蜜を使って濡らした指先をおもむろにくっと突き入れる。
「ッ!」
突然の侵入に、無論のこと最奥は固く窄まってそれ以上の侵入を拒否、妨げた。
「力抜けって言ってるだろうが、・・・・総悟」
「・・・・ん・・ぅ、・・・」
そこを綻ばせるため、達したばかりの沖田自身に再度触れられ優しくさすられ、嫌でもゾクッと腰が震えて砕けそうになる。
何度も何度もさすりあげられ、その甲斐もあってか内側が僅かに緩みを見せてくると、
土方は埋めた指をもう少し、深くまで沈み込ませた。
「やっぱ熱、結構ありやがるな・・・・」
わかってはいたが、熱は随分と高く、柔らかで狭い内部は比類がないほど熱い。
埋めた指で燃えるような熱を味わいながら土方は、少しずつ指先を動かし蠢かし、内壁を更に蕩かしていく。
「あ・・・・っ、・・・・ん・・・・ッ・・・」
やわらかでしなやかな内壁、粘膜のいろいろな箇所を擦られるたび、沖田は甘い声をあげる。
そうして隅々までを知り尽くした土方の指先が最も悦ぶところに到達すると、
素直な腰は小さく震え上がった。
「く・・・・!」
「ん、ココだった・・・な」
「ッあ! あ、あ、・・・・ッ・・・・」
既知している土方は、内側の悦点をどこまでも正確に的確に攻めてくる。
性感帯のかたまりのようなそこ、前立腺を軽くだけれど撫でられるたび触れられるたび、
我慢できないほどの快感がそこから背筋を伝い、淫猥なものが腰に溜まった。
「・・・っん、ん・・・・!」
内壁、前立腺を絶え間なく刺激され、沖田の身体が小刻みだが不規則に震え始める。
それと同時に与えられるその快楽に、内壁が締め付けを緩くしたのを感じ、土方は埋める指を増やして蕩かす愛撫を重ねた。
「ん、・・・・あ・・・ッ・・・」
僅かな抵抗を残しながらも、程好く綻んできた最奥は二本目の指も難なく受け入れて、
熱に浮かされたかのように卑猥に蠢く。
「もう少し・・・だな」
一本と二本とではやはり圧迫感が違い、
痛みではないが思わず眉をきゅっと寄せた沖田の脚を大きく左右に開かせた。
普段ならもう少し指での慣らす作業と、快楽でいじめてやる愛撫とをを続けるのだが、
今回はあまりゆっくりしていると、今にも沖田が落ちてしまいそうな気がして。
そんな逸る心情もあり、土方は指を銜え込ませたままのそこに準備の仕上げをしようと、吸い付くように口付けた。
「・・・っひ、土、方さ・・・・ッ・・・・!?」
沖田は沖田で、そんなことを仕掛けてくる土方を慌てて振り払おうと身を起こしかけたのだが、
所詮組み敷かれてしまっている状態、内側に指をしっかりと埋められてしまっているため、ほとんど動けない。
ましてやぴちゃりという濡れた音と、湿った感触を自らの最奥に感じてしまい、
「んぅ・・・・ッ・・・・」
身を捩らせて喘ぐだけに終わってしまった。
そんな間にも、柔らかく濡れて熱い土方の舌は容赦なく、二本の指で広げられた最奥に入り込んでくる。
「っひゃ・・・・ッ・・・! や、・・・・っ・・・!」
愛撫によって蕩けて甘く爛れた繊細なその部分を舌先で舐められ、
いつまで経っても慣れない感覚とどうしても沸き上がってきてしまう羞恥とがない混ぜになり、
制止のために言葉を紡ごうとしても喉をついて出る声は掠れた嬌声になってしまう。
土方の舌が彷徨うと、そこから疼くような快楽がじわじわと広がって、
一旦は力をなくしていた沖田自身が再び勃ちあがり始めた。
みるみるうちに新たな先走りの蜜を湛え始めた先端に土方は気づき、
器用にも最奥を片手と舌で弄りながら、空いている片手で震える沖田自身までも擦りあげていく。
「ッ・・・・ふっ・・・」
前と後ろを一度に刺激され、弓なりに仰け反る沖田の身体。
内側の特に弱いところを集中して愛され、土方の手の中で自身は瞬く間に欲を持った。
「あああ・・・・ッ・・・!!」
可愛がりたさと悪戯気質とが半々、それによって動いた土方の指が括れのあたりを狙って揉みあげる。
と、それによって沖田自身はビクンと震え、先端から少量の白蜜が弾けた。 軽く達したらしい。
ゆっくりと土方は舌と指とを引き抜く。
「このまま挿れるぞ」
「ん・・・っ、・・・」
告げて、唾液と蜜とでとろとろの最奥部に猛った自らを宛がい、
沖田がコクンと小さく頷いたのを確認すると、一気に腰を進めて埋め込んだ。
――あ、あ・・・・ッ・・・!!」
熱く濡れた内壁を擦りながら貫かれていく激しい衝撃に、追い上げられていた沖田自身が蜜を吐き出す。
同時、侵入した土方自身にも痛いほど強く粘膜が絡み付いてきて、
「ッ・・・・加減しやがれ・・・総悟・・・・ッ・・・」
土方も荒く息をつきながら、その刺激が過ぎ去るのを待った。




「・・・・っは、ぁ・・・・っ、・・・ぁ・・・ッ・・・」
時折小さく身体を震わせながら、吐精する沖田。
土方は吐精と共にきゅうきゅう締め付けてくる内壁が一旦おさまるまで、腰の動きを止めておく。
でないと気を抜けば簡単に自分の方が持っていかれてしまいそうなほど、沖田の身体は好くて、悦すぎて。
そうやって少しの間、余韻に喘ぐ沖田の顔を見ていると、向こうもぼんやりと見上げてきた。
「・・・気持ちい・・・」
「・・・・、そりゃ何よりだ」
こんなふうに沖田が素直に言ってくるのは珍しい。
いつもは 『サイズたけのこの里』 だのなんだの、悪言雑言しか口にしないのに。 やはり熱のせいか。
「なら、サービスしてやるよ」
「あッ・・・・、ぁ・・・・っ・・・」
全部出せ、と吐蜜直後の沖田自身に指を絡め、
全体的に扱いてやってそれから後ろの双珠を余すところなく揉み上げる。
促され、残滓までもを吐き出すたびに細い下肢はふるふる震え、
「・・・っ、ぅ・・・」
吐き出し終えると、くったりと沖田は全身を沈ませた。
けれど、自らの中に感じる土方自身の先端が悦点を突いていて、その刺激と熱量に吐精を終えても、自身はまだ欲を持っていて。
「その若さが羨ましいよ、ほんと」
「ばッ・・・・、ッバカ土・・・・ッ・・!」」
ニヤリと笑って気づいた土方に、達したばかりのそれにまた触れられて焦った刹那、
突然ぐいっと腰を深く抉られ、身体が跳ね上がった。
「こ・・・っ・・の、バカ土方・・・・ッ・・・・」
「あ? そのバカでよがってんのはてめーだろうが」
あ、あ・・・・――――ッ・・・・!」
軽く流して土方は一度自らを先端だけ残す程度に引き抜き、狙いを定めて奥の悦点を強く突き上げる。
「・・・っあ! あ、あぁッ・・・ッ・・・」
快楽に耐えようと沖田の握りしめたシーツの端。
けれど、堪えきれず唇から断続的に零れる声はもう我慢できない。
すると上体をギリギリまで倒した土方が、その唇を塞いできた。
「・・・ん、ぅ・・・・」
深く口付けられ、素直に開いた口腔の中を隅々まで舐め回される。
そんな間も土方は腰の動きは止めず、
絡められた舌を強く弱く吸われると内側の土方自身を思わず自然と締め付けてしまうのが自分でも感じ取れた。
「く・・・・」
容赦なく快楽を返してくる内壁に、土方も息を詰める。
ずぐ近くのそんな表情が、ぼうっとした沖田の視界にも映って見えた。
もうそれほど土方も余裕が残っていないらしい。
「ぅあ、あ・・・・っ・・・・!」
性急にぐっと片脚を肩の上に抱え上げられ、中を貫く土方自身の角度が変わる。
偶然かそれとも計算してのことなのか、それはちょうどまた別の弱いところに当たっていて。
「ん、此処もイイ、のか・・・・?」
「っ、んあ・・・・ッ・・・・」
察知され、土方は沖田のその悦点を的確に押し上げてくる。
「ッ・・・! あ、あぁっ、あ・・・・っ・・・」
気持ちいい。
渦巻く熱で、まるで全身が性感帯になってしまったかのようで、もう零れ落ちる声なんかどうでもいい。
聞こえる土方の荒い吐息でさえ、鼓膜を通して快感になる。 それくらい、とにかく感じてしまう。
互いの身体の間にある沖田自身から溢れた蜜は零れ落ち、結合部までを濡らしていく。
「悦さそうだな」
「・・・っ、う、ぁ・・・・!」
膨れあがり、張り詰めた自身に指を絡められた。
今にも弾けそうなそれに触れられて、大きく身体が戦慄き腰が跳ね上がった。
たまらずきつく目を瞑って髪を乱してかぶりを振って、強い強い刺激に耐える。
けれどそんな仕種は土方からしてみれば、まるで否定の意を示しているかのようで。
「ん? 悦くねーか?」
「っひ、あぁ・・・・ッ・・・・!!」
最も感じるところを連続して突き上げられ、息さえうまくできない。
土方の手の中では沖田自身が激しく限界を震えて訴える。
「んん・・・・っ・・・、あ、あ! ッ、も、・・・・ぁッ・・・・」
前立腺を抉られながら、一際強く自身を乱暴なほどきつく扱かれた。
「い・・・・ッ・・・!!」
痛いほどの強い強い快感刺激。
内壁を攻められているだけで息も絶え絶えなのに、更に最も感じてしまう自身まで同時に刺激されてしまい、
一瞬意識が途切れた。
加えて、律動を続け強く奥を突き上げられながら、
沖田自身に絡ませられた指で今にも弾けそうな括れの部分を指の腹で揉み込まれて。
「あ・・・あッ!!」
絶頂寸前で、透明なものに混じって先端からとろとろ白蜜が滴り落ちる。
がくがく揺らされすぎて、もう腰が砕けてしまいそうだ。
「ッ、・・・出す、ぞ」
互いの限界を読み取った土方の低い声が聞こえたかと思ったら、
ッ!! ぅッ、ん――――っっ・・・・!!」
自身の先端を軽く爪の先で突付かれると同時に前立腺を穿たれ、否応なく絶頂に追いやられる。
一瞬の間を置いて、続いて土方も堪えることなく沖田の内部に欲を吐き出したのだが、
達すると同時に意識を飛ばした沖田には、ほとんど感じ取れなかった。














「、総悟・・・・?」
自らを身体から引き抜いても何も反応せず、布団にくったり横たわったまま指一本動かさない沖田に、
やっと土方は今になって慌て出す。
「・・・おい」
その肩を軽く揺らして呼びかけてみるけれど、さっぱり応答はない。
そしてふと思い当たってみれば、目の前で昏々と意識を失っているこのカワイイ沖田には、思いっきり熱があったのだ。
途中まではそれなりにきちんと意に留めてそれなりに気遣いもしていたのだけれど、
最後の方にいたってはとっくに抜け落ちていた。 忘れ去っていた。
「やべェ・・・・よな・・・」
がしがしと頭をかく。
煙草に手を伸ばし、一服しながら少々待ってみるが沖田が目を覚ます気配は全くなくて。
「・・・・ま、何とかなるだろ」
紫煙を吐きつつ、目が覚めるまでゆっくり待つことにした。



























一転、土方は苦虫を噛み潰したような表情でいた。
ただでさえも宜しくない目付きがこれはもう尋常でない域に達している。


――――――― 翌日のことである。








「てめェ・・・・」
この上ない、といった形相でぎろりと隣を睨み付ける。
もちろん隣にいるのは沖田で、熱も下がって飄々とした様子。
「はい?」
「はい? じゃねェよ!! どう始末つける気だコラァァァ!!!?」
「さあ・・・・」
「総悟ォォォォ!!」




事の顛末は端的に言えばこうだ。 バレた。 何が、って昨日の勤務中エッチがバレた。
そりゃああれだけガサゴソギシギシイチャイチャ(・・・・)やっていれば、あの時屯所内にいた奴らにはバレて当然、という向きも無きにしもあらずではあるが、
それはそれ、なんとかなるとどうにかなると思っていた。
自分で言うのも何だがそっち方面に限ってはバカばかりの真選組、うまく誤魔化せると、切り抜けられると思っていた。
いざとなったら力ずくで脅しでもかけれぱいいと、そう軽く考えていたのだが。
なのに本日、たまたま屯所に来ていた松平にまで、見事にバレた。 リーク先は言わずともがな山崎であるらしい。 奴は後で半殺し決定だ。
だが、
だが土方が問題にしているのはそこじゃない。
つい先程、松平に突然二人して呼び出され、まず最初に沖田が真偽を問い詰められた際、
とにかく白を切り通せ、何でもいいしらばっくれろと目線で訴えかけまくっていた土方の懸命の努力に対し、口を開いた沖田の一言。




「だってとっつァん、土方さんが無理矢理・・・ ぐすっ」




しらばっくれるどころか、肯定も肯定、
それもこんな短い返答なのに、たったこれだけの言葉数なのに、何故か土方が一方的な悪者になっている。




そこから後は推して知るべし、
違う! 違うだろーがバカてめェ総悟・・・・!! との叫びも言い訳も所詮は後付けになってしまい何の役にも立たず、
一方的に松平に怒られた挙句、危うく減俸にまで話が及びそうになった土方の機嫌がとことん悪くなっていたとしても、無理はなくて。
「テメー一人だけ逃れやがって・・・・」
屯所の廊下、今にもキレそうな土方の雰囲気と空気を察したのか、
普段ならわらわらいるはずの他の奴等の姿も気配もない。
結果から言えば(松平も深く考えるのがきっと嫌だったのか) とりあえず今回は不問に処す、とのことではあったけれど、
一方的に襲ったとされてしまった土方としては、とてもとても気が済まない。
なのに沖田は普段と変わらず、あっけらかんとしている。
「だってそろそろ」
「あァ!!?」




「そろそろとっつァんの耳にも入れておいた方がいいかと思って」




「な、」




何を、だ、と聞き返そうとして、斜め下から見上げてくる瞳に思わず固まった。
そんな土方に、沖田はどこまでもさりげなく。




「その方が仲人も頼みやすいってモンです」




「な・・・・」




「でしょう? 土方さん?」




「・・・・・・・・・・・・」




固まった土方の硬直は数秒で解けた。
解けた途端、それまで付き合わせていた顔を慌てて急いでくるりと反対側に背ける。
「? なんでいきなりそっち向くんですかィ???」
不思議そうに沖田に問いかけられるけれど。
「・・・・ほっとけ」




そう答えておくしかない。
やばい。 ニヤケが止まらない。 顔の緩みが止められない。
今、沖田と顔を合わせてしまったらきっと死ぬまで言われ続ける。
それほど締まりのないカオをしている。 この鬼の副長ともあろう自分が。




「土方さん?」




「いいからほっとけっつってるだろーが。 な、何はともあれ熱が下がって良かったじゃねーか総悟」




早口で言いながら頭の隅でぼんやり考える。
よく知らないが仲人というからにはきっと二人必要で、松平とやはりあと一人は近藤あたりか。
そうなると式は和式にするのかそれとも洋式か、いやちょっと待てその前に結納やら何やら、一体何から手を付ければ良いのか。
おまけにこの職場、新婚の片方が副長でもう片方が隊長などという二人が居ても良いものだろうか他四の五の云々。
考え始めたらキリがない。




とりあえず一応手始めに互いの預金・貯金額の確認でもしとくか、
などと一人あれこれ思案するすぐ隣。




土方とは真逆、くるりと反対側を向いた沖田が、




「チョロイもんだィ」




と、こっそり舌を出してアカンベをしていたことには全く気がつかない土方だった。












――――――― チョロイ。












タイトルは 「誘惑」 とかけてみました。 誘惑、 ゆー、わーく・・・・。  ← ダ レ モ 聞 イ テ イ ナ イ ヨ ソ ン ナ コ ト 。
沖田の例の 「土方さん・・・ ぐすっ」 がやりたかっただけなんです・・・ただそれだけなんです・・・・。
そうそう、熱があるときにえっちしても実際は余計悪化するだけなのであしからず。
このサイトはうその作文ばかり書く嘘っこサイトです。 騙されないように気をつけて!(爆笑)