[ アマイミライ ]







「なんか・・・・悪ィな」
「・・・・え?」
二人分の体重のかかったベッドがぎしりと鳴る。
「俺にもっと余裕があれば、前回だって今回だってこんな済し崩しパターンじゃなくって、ついでにお前に色々言わせなくて済んだんだろうしよ、」
「僕は別に」
そんなこと気にしてません、と当のうさたんは言ってくれるけれど。
「それともう一つ、その・・・・アレだ、 ・・・・なんだかんだ言って結局こんなパターンに転ぶカンジになっちまって」
とは言いつつ、いわゆるここに到るまでの 『段階』 だって一応のところは踏んでいない訳じゃない、とも思う一方、
やはりどことなく何段飛ばしかで突っ走る展開に陥りまくってしまっているような、
妙にカラダだけが暴走してしまっているような、そんな思い込みにも似た錯覚。
正にワイルドさの片鱗も無く(・・・・)、もごもごと歯切れの悪い言葉でそう言うと、クスリと笑われた。
「一説によると、恋愛とは性欲と本質が異なるものではなく、より崇高な形の性欲らしいですよ」
「・・・・・・マジか?」
「それをこれから実証して、立証してみるのも悪くはないですよね」
「異議ナシ」
三十路、またも即答。
どちらにしろここまで来たら引き返す選択肢などある訳がなく、
バニーちゃん曰くの 『レンアイなるモノの真骨頂』 に没頭、耽溺しまくるコースを突き進むのみだ。
今日この部屋に戻ってきてからの自分のワイルドさの欠如っぷりと欠乏具合のペナルティは、
これからの時間の中で汚名返上するしかない。
そんな決意(?) を固めながら虎徹は、「そんじゃもう一回」 と再度、キスで襲った。




「、」
シャツの釦を上から一つ一つ外していきながら、はだけられていく胸に顔を寄せると、
バーナビーが軽く息を飲む様子が感じ取れた。
少しばかり気になって、僅かに顔を上げれば裸眼の、翠色の目と目が合う。
「・・・・高くついてしまうかもしれませんよ、僕は」
「一生かけて支払うって」
「それでも足りなかったら?」
「すげぇ長生きすりゃどうにかなるんじゃねえかな・・・・」
そんな他愛無い無駄口のやり取りに、虎徹は妙に安心する。
それはバーナビーも同様らしく、
「利息も日に日に膨らんでいきますが」
「分割手数料くらいはバニー負担にしてくれよな」
軽口に更なる軽口で返しておいて、
「腕、抜けるか?」
続いたその言葉におとなしく腕をあげたバーナビーの、袖を抜き取って上半身を裸にさせる。
すっかり露わになった素肌は色素が薄く、しっかり鍛えられているにも関わらずとてもキレイで。
細く柔らかな金髪の散る首筋に口許を持っていき、ぺろりと舐めると、ぴくんと反応した。
前と変わらず、敏感な肌。
そのまま唇ごと上に滑らせ、耳朶をやんわりと食む。
「ッ、」
途端、咄嗟に首を竦められた。
そんな姿はまるで本物のうさたんが長い耳をいたずらされて煩わしそうにしているかのようで、
メルヘンフィルター全開、な自分の思考に虎徹は苦笑が込み上げてくるけれど、以下しつこく続行。
「くすぐっ、たい・・・・です、・・・、待・・・・っ・・・」
そう訴えてくるバーナビーに、そう言われても悪ィ待てねえ、と言い放って今度は耳の先端を軽く噛む。
すると一度大きく身を震わせ、きゅっと唇を噛んで堪えていた。
今気付いたのだけれど、その両手は虎徹のシャツの裾をかたく握り締め、
ほんの僅か震えていて。
「・・・・バニー」
Sex自体にはそれほど抵抗も嫌悪もなく、バーナビー的にはむしろ全然大丈夫です的な展開と姿勢でいたはずであるのに、そんな姿も見てしまい、思わず名前を呼ぶ。
「・・・・はい、」
至近距離で合う目線。
虎徹が読心術を持っているはずもなく、テレパシストの才能なんてものもあるわけもなかったが、
その目を見ただけでなんとなく、なんとなくわかった。 
バニーちゃんは、
ただ素直じゃないだけだ。  ・・・・と言ってしまうと語弊を招いてしまうかもしれないが。
簡単に言うなら、行為に抵抗はたぶんほとんど無い。
自分に、虎徹に身体を開くことにも彼の中で納得はできている。
行為自体に問題は見受けられない。 それは本日、ここに至るまでの展開でもわかりきったことだ。
けれど、決定的なことに快楽に弱い。
快楽に慣れていない。 それも他人から与えられる性感だから、尚更。
そうでなければ、たかだか耳への挨拶代わりの愛撫でこんなに大人しくなるはずがない。
でも羞恥が邪魔をして、あんまり素直になれない。
ただそれだけのこと。
そういえば前回、初えっちの時なんて正にそのものだった。
あの時は多大に互いにアルコールと勢いに飲まれていたこともあり、
とにかく力技でグイグイ進めていってしまった一夜だったけれど、
今なら、今夜ならまた別の、また違った丁寧な可愛がりかた&愉しみかたに持っていけそうで、
本当にバニーちゃんを愛でられそうで。
そう気付いて、口許が緩む。
緩みついで、名前を呼んでおきながら黙りこくったままの虎徹を怪訝そうに見るバーナビーに、
「やっぱ何でもねーや」
一言でさらりと片付けておいて、今度は顔を胸元に移動させた。
そうわかってしまえば、手の打ちようなんていくらでもある。 段取りだって虎徹が仕切れる。
角度的にバーナビーから虎徹の表情は窺い知れないのを幸い、最大限ににやけながら(・・・・) 手のひらを胸に這わせ、薄い肌を労わるように数回撫でていくと、淡く色付いた肉粒に指先が触れた。
形作られ始めてはいるものの、小さなそれはまだやわらかかったため、
軽く指先で弄ればすぐに硬さを持って立ち上がった。
「、ん・・・」
軽く何度か肉粒をつついて転がせば、上半身が僅かに身じろいだ。
「・・・・く、・・・・ッ・・・っ・・」
バーナビーの息に、甘いものが混ざり始める。 まだ抑えているようだが、熱は誤魔化せない。
まだ胸しか触れていないというのに。
あくまでも他を知らない虎徹の勝手な憶測ながら、
前回、そして今回のこの様子を見るに、やはり相当相応に敏感な体質のようだ。 三十路としては、意味もなく妙にウレシイ。
長々と構いながら、今度は反対側の肉粒に唇を寄せて舌先で突く。
「ぁ・・・・!」
途端、ビクンと跳ねた上体の隙をついて腕を伸ばし、背中まで大きく抱き込んで逃げられないようにしたあと、またしつこく舐め上げた。
自らの唾液で濡れた小さな粒は滑ってしまい、なかなか捕らえられない。
その不器用具合にいい加減焦れてきて、大雑把にちゅくっと大きく強く吸うと、
「っは・・・・っ・・・!」
たまらず漏れてしまったらしき、甘い声。
年甲斐もなくそれに煽られ、何度も繰り返し吸い上げていたら、
先程の虎徹とは別の理由で焦れたのか、バーナビーが片手で頭を退けてきた。
「子供、じゃ・・・・あるまいし・・・・っ・・・」
しつこいです、と言外に諌められてしまう。 しかし。
「コドモじゃねぇから、こーやって味わってるんだろうが」
笑いながら言い訳。 というより屁理屈。
普段、通常の場所で正論を交わすなら十中八九虎徹の負けになるだろうけれど、
こんなときこんな状態での会話であれば、適当に解釈してまさしくテキトーに返してしまう虎徹に分がある。
それでもいい加減、自らも逸ってくるのを感じていたがゆえ、惜しみながらも胸を解放し、
まだ取り払っていなかった下肢のワークパンツに手をかけ、一挙に引き下ろして下着ごと膝から抜く。
それから自分も急いで脱ぎ去り、ばさばさとまとめて床に落としておいて、
裸になったバーナビーをすぐさま背中からベッドに押し倒した。
照明を消したままのロフトは暗いけれど、階下の明かりが多少なりとも届いているため、目は利く。
「相変わらず、どっこもかしこも細ぇよなあ」
裸体を眼前にした思わずの呟きに、
「それは、虎徹さんだって大して変わらないんじゃ・・・・」
あなただって十分細身のはずです、と真っ当に返され、ああ確かに、と納得。
それなら言い換えてもいい。 もっと素直に。 率直に。
「じゃ、撤回。  ・・・・・・相変わらず、色っぽいよなあ?」
「な・・・・っ・・・」
実直に感じた事実のみで構成された短い虎徹の一言に、バーナビーの頬に血が昇ったのが一瞬で見て取れた。
それでも事実なんだから仕方がない。
白い肌は僅かに上気して、少しだけ汗ばんでいる上、虎徹が先程までいじっていた胸の肉粒は唾液で濡れて赤く染まっている。
加えて視線を下ろして追った下腹部は、先日の初見のときと同様、心もち頭をもたげ始めていた。
「・・・・・・・・」
思わず虎徹はまたもまじまじと凝視してしまい、危うくバーナビーにまた止められるかとココロの隅で危惧したのだが、意外にもその気配は無く。
「・・・・・・・・」
代わりに彼は黙って顔を背けているだけで、
「バニー、」
そんな姿に、たまらず息が荒くなり、気が逸った。
自分と大して変わらない、男の身体。 であるにも関わらず、バニーちゃんの身体だというそれだけで欲が増す。
「――――ん、っ・・・」
我慢も何も出来ず、手を伸ばして中心部に持っていった。
触れられて、その細い腰が跳ね上がる。
けれど構わず、勃ち上がりかけのそれを掌中に収めて軽く擦ると、
「っ・・・は・・・・」
零れる熱い吐息と甘い声。
擦りながら、次第に上下させていけば、
「・・・っう、・・・く・・・・っ・・・」
手の中でバーナビー自身が確実に膨れ上がり、育ってくる。 そしていつしか芯を持ち始めたそこの先端部分から、じんわりと透明な蜜が滲みはじめ、虎徹の手の動きに合わせてつうっと肉棒を伝って零れ落ちた。
「ぁ・・・・、っ・・・あ!」
それでもまだまだ蜜を滲ませ続ける先端部分の孔を拭うように、親指の腹できゅっと擦ると、バーナビーがかぶりを振った。
虎徹が弄り続けている先端部は、嫌でも血液を集めて濃く染まり、溢れる先走りの蜜もどっと増え、扱き上げるたびに濡れた水音が響くようになった。
「蹴るなよ?」
頃合を見計らい、冗談半分、本気半分でそう伝えておいて(実際彼の耳に届いているかどうかは不明だが)、今度はバーナビーの両膝に手を当て、大きく左右に開かせる。
当然、前回と同じく、思い切り抵抗されるかと思った。
また、恥ずかしさゆえの罵声を浴びせられるかと覚悟していたのだが。
「・・・・っっ・・・・、!」
当のうさたんは、僅かに上半身をよじって顔を背ける仕種は見せたものの、
それ以上の抵抗はして来ない。 拒否もしてこない。 拒絶もされていない。
と。 いうコトは。
「お前・・・・」
つぶやきながら、ごくり、と虎徹は唾を飲み込まざるを得ない。
合わせて、以前と比較して少しながらも従順な態度を見せてくれたバーナビーの、その部位から目も離せなかった。
すっかり勃ち上がってひくひく震えている色濃く染まった彼自身。
その先端から滴り落ちて止まらない体液。
そんな媚態を前に、どくん、と一挙に自らの下肢にも熱が集まり始め、自分の気も急いてきたのも充分承知の上だけれど、そりでもそれよりも先にバーナビーを悦くしてやりたくて仕方がない。
崇高な形だろうが何だろうが、互いが悦くなれないSexなんて、ただの交尾と一緒だし。
そして何より、可愛いバニーちゃんのもっともっとアレでアレでアレな姿を見たくて知りたくて。
「っぁ、ぁ、あ・・・・っ!」
がっつくように顔を埋めながらもとりあえず軽く、一旦宥めるように先端をそろりと舐めてやって、
周囲までを一旦軽く舐め終えたあと、ゆっくりと限界まで口中に含み入れる。
喉の奥ギリギリのところまですっぽりと収め、全体を口腔粘膜で締め付けるようにして強く扱いてやると、
逃げる気はないのだろうが、たまらない感覚に細い腰が揺らめいた。
それをしっかり抑え付け、前回こっそりと覚えていた弱い裏筋を繰り返し舐め上げ、刺激を送る。
「〜〜〜〜んっ、く・・・・ッ・・・・、っっ・・・・っ」
抑え切れない、熱を孕んだ喘ぎ。 鼓膜に心地好いそれをもっと聴きたい。
バーナビー自身を口内で余すところなく扱き、もう膝を割り開いていなくてもよくなった空いた片手で根元の部分を揉んで愛撫を送る。
と、腰の揺らぎが大きくなったことを咥えた彼自身の動きで知る。
構わず舌で激しく嬲ってやれば、バーナビーの呼吸がみるみる乱れていくのがわかった。
「っは・・・・っ、ぅ、あ・・・・、あ・・・・ッッ・・・・」
溢れ出る蜜の量が目に見えて多くなる。 それを啜るように舐め取り、それだけでは足りなくなってちゅくちゅくと吸い付くと、
「んぁッッ・・・・!」
喉を仰け反らせて上げる甘い声がきけた。
「・・・・・・ん・・・・、んッ・・・・っっ」
追い上げられ、腰が戦慄く。
括れのところに舌を絡め、そこを狙って丁寧に扱い上げ、
続けて根元から先端部にかけては、指をも使ってしっかり擦り上げて刺激する。
「あ、あ・・・・っ・・・! 虎、徹・・・・さ・・・・っ・・・」
バーナビーの、立たせた膝頭ががくがく震え始めた。 太腿も、身体も小刻みに震えている。
今にも達しそうなのだろうか、
名前を呼んできたのは、おそらく 「離せ」 と伝えたいのだろうが。
気がつかないフリをして、口淫に夢中になっていると、本格的に口中のバーナビー自身がヒクヒクと戦慄き出した。
それを合図に、虎徹は更に愛撫を激しくする。
「んぁッ・・・・、ぅ、ぁ・・・・、あ・・・・っっ・・・・!」
上擦るバーナビーの声。 吐く息との間隔の短い、そんな切ない声は絶頂が近いしるし。 これも前と同じだ。
「虎徹・・・・っ、さ・・・・っ!」
前兆に、細腰がぶるっと震える。 わかっていたから虎徹は、吐蜜を促すように舌先を使い、
先端の孔をくいくい突ついて絶頂を促してやった。
「、っっ・・・・!!」
たまらず大きく仰け反る背中。
同時に虎徹の口内に吐き出される温かな体液。


迷わずそれを嚥下して、途切れ途切れにまだ止まらない残りをも飲み尽くす。
その味も温かさも何も前回と変わらない。 嫌悪感なんて一切無い。
だからしつこくちゅ、ちゅ、と啜っていると、
「も・・・・っ・・・、離・・・・・」
おさまらない息の下、達したばかりの過敏すぎるところをしつこく構われるのがツライのか、
力ない声でそんなふうに言ってきた。
同様に力の入らない手で、虎徹の頭をそこから押しのけようともしている。
そこで漸く顔を上げ、身体ごとそこから退くと、
ベッドに片肘を付いて上半身を起こしたバーナビーだったのだが、
「どうして・・・・」
離さないんですか、と言いたいらしいけれどそこから後は言葉が続かない。
今更だがよく見れば耳のふちまで真っ赤だ。 やはり羞恥はどこまでも付きまとってしまうらしい。
それでも目のふちは快楽ににじみ、うっすら潤んでいて、あまりに似通いすぎていながらもの二律背反に三十路、今にも 「ガオー!」 と暴走しかける。 が。
「、」
我慢した。 我慢して辛抱に忍耐をかさねて凌いで、
なんとか、堪えた。 でも全部が全部そうできたわけではなく、
抑え切れなかった勢いで、またも襲い掛かるかのごとく、激しいキスで唇を塞ぐ。
下手だとどれだけ言われようと構わない。
今更気付いた。 このキレイな唇にキスをするのが自分はやたらスキだということに。
互いの混ざった唾液が唇の端から零れ、顎まで伝い落ちるのも構わず、バーナビーの舌を絡めて吸い上げる。
「は・・・・、っふ・・・・」
途中、息継ぎの呼吸は唇がわずかに離れた合間に済ませ、すぐまた別の角度で口付ける。
野郎同士、イイ歳をしたオトナ二人。 ましてや両方の職業がよりにもよってヒーロー。 しかも相棒。
もうどうにも出来ねぇなこりゃ、言い訳のしようもねえし、とこの上なく前向き(!) に諦めて腹をくくり、
再び呼吸のため、一瞬だけ唇を離す。 その途端、互いの吐息がぶつかり、それをかき消すようまた喰い付いた。
「っ・・・・! ん、っ・・・」
何度も何度もキスを繰り返しながら、先程達したばかりのバーナビー自身をそっと撫で上げると、
翻弄されて一気に呼吸が苦しくなったバーナビーが首を振って唇から逃れていき、そこでやっと虎徹も息をつく。
「平気、か?」
今にきてここに来て、はからずともそう訊ねてしまうのは何故なのか自分でも不明なまま、
ついついそんな言葉をかけてしまう。
「・・・・・・ええ、」
驚くほど素直にこくんと頷いたバーナビーだったが、しどけなく開いたままの脚は未だ時折戦慄きがおさまらず、形の良い眉も切なげに寄せられたままで、吐息もまだ荒い。
眼前の、一度吐精を終えた彼自身は濡れ落ち、一旦力を失くしていた。
それとは対照的に、猛った虎徹自身はこの先の展開を早々に待ち望み、次の段階へと行動を進ませる。
「バニー、」
伺うよう名前を呼べば、
「・・・・大丈夫です」
「苦しかったら、すぐ言えよ?」
「はい」
「ホントにすぐ! 言えよ、ガマンとかするなよな」
「・・・・はい」
とりあえず、互いに一度は経験済みなのだ。
初めてだった前回、充分に慣らしきれていなくて、少しだが出血させてしまった。
バーナビーは何も言わなかったが、それに伴う痛みと苦しみだって、そこそこ与えてしまったことは明確で明白で、だからこそ今回は今夜はこれからは。
軽く息を吸って吐いたあと、どちらのものともつかない体液で濡れた指先を使い、
晒させた最奥、その周りを一撫でして、つましく窄まった狭いそこに宛てる。
多少なりとも挿入させようと、探ってみたものの、きつく閉じたそこは前回虎徹自身を受け入れたことがまるで信じられないほど固く、指先一本すら入らない。
力抜け、と思わず口にしそうになったものの、そんなこときっと彼本人が一番よくわかっているはずで、
それでも適わないのだから、今更虎徹がどうこう言うべきことじゃない。
出来ることといえば、
「っ、!?」
一旦そこから違うところに気を向けさせようと、萎えていたバーナビー自身に舌を絡めた。
絶頂を目指す愛撫ではなく、宥めるようにいろいろなところを舐めてやる。
「・・・・っ、は・・・・、・・・ぁっ」
すると優しい快感に自然と下肢から力が抜けたらしい。
あるタイミングで無理なく指が第二関節まで埋まり、バーナビーが身体を震わせる。
「キツイな・・・・」
入ることは入った。 が、それでも、きつい。
慎重に慎重に内部で指を進め、根元までやっと埋め込んで、再び確認。
「痛くねえか?」
「・・・・何、とか」
それなら。
前回知って、ちゃっかりバッチリ覚えていた、その箇所に狙いを定め、前触れもなく軽くクイっと押し上げた。
「ひ、あっ・・・・!!?」
前立腺を内側から刺激され、突然の直接的な性感にたまらずバーナビーの声があがる。
続けざま、もう一度同じところを押してみれば、
「あっ、あ、うぁ・・・・!」
明らかに感じて悶える喘ぎ。 初めてのときもココを攻めたら甘く鳴いてくれた。
よしよし俺の記憶力もまんざらじゃねーな、と虎徹は軽くほくそ笑む。
でもまだしっかり解れるまでには程遠い。
だから見つけた前立腺をここぞとばかりまたも指先で刺激を与え、集中して快感を紡いでやれば、
「っは、あっ、うぁ・・・・っ・・・っ・・・」
惜しげもなく甘い声をあげ、バーナビーは身体を波打たせた。
次第に腰までもゆらりと揺らめき出す。
「・・・・っ、んっ・・・、ん・・・っっ・・・」
甘い声に連動されるかのように、痛いほど指を締め付けてきていた内側も徐々にだが柔らかさを連れてきて、少しだけ余裕が出来た。
気付けば前立腺を触られたせいか、バーナビー自身も再び勃ち上がりの様相を見せている。
その先端から滴る液の助けも借り、
もう一本、今度はより奥まで届く中指を滑り込ませようとしたところ、
「・・・・っ、く・・・!」
制止ではないが、苦しげな声が漏れた。
さすがにまだ尚早、二本目はまだ早かったらしい。
先端だけはなんとか含ませられたものの、そこから後が入らない。
「っと、悪ィ・・・・!」
即座に中指を引き抜き、人差し指だけを引き続き内部に残したまま、虎徹はその箇所に口許を持っていった。
「っ!? な・・・・何、を・・・・っっ・・・・!!」
そんなところに当たる虎徹の息遣いに、一瞬にしてバーナビーは虎徹が何をしようとしていたのかを悟ってしまったようで、
思いきり焦りながら、まさかそんな、と信じられない表情でここにきて初めて、抵抗し出す。
「やめ、て下さ・・・・ッ、そん、な・・・・っ」
何とか逃れそうと身体を捩られたけれど、実際のところ脚はしっかり虎徹が抑え込んでしまっているし、
指も一本、内側に埋められている。 おまけにポイントまで定められ、そんな状態で抵抗したって、どうにかなるはずもない。
「駄目で・・・すっ、そこまで・・・・っ・・・ッあ・・・・っ!!」
「イイから」
制止されながらも聞いてやらず、ぐいぐいと内側のポイントを強めに刺激すると、
バーナビー自身からとろりと蜜が滴り落ちた。 本人の言葉とは違い、身体は正直だ。
へらりと破顔してもう片方の手で軽く弄りつつ、
「や・・・めッ・・・・! っふ、あ・・・・あ・・・・!」
最後は甘い喘ぎにしかならなくなってしまった拒絶も虎徹は全く気に留めず、
唾液を乗せ、潤いを絡ませた舌を迷わず、こじ入れるようにして指の横から滑り込ませた。
同時に、埋めていた指で慎重かつ丁寧にゆっくり、拡げていく。 そうしながら、少しずつ、
少しずつ舌を奥まで進めて行き、内部をほぐしながら味わう。
く、と軽く舌先に意識を集中させ、ポイントらしきところに到達すると、ビクン、と内部が痙攣した。
「あ・・・・あ! っく、ふ・・・っ・・・!」
虎徹の片手に包まれたバーナビー自身は、止まらない蜜を溢れさせ続ける。
伝って落ちてくるその温かな蜜は、虎徹が舌を挿し入れているそこまで濡らし上げ、
その滑りを使って指を軽く動かすと、ぴちゃぴちゃと小さな音が響いた。
「ッ・・・・!! ん、ぁ、ぁ・・・・」
バーナビーの声も、もう抵抗をあきらめたのか、ただ掠れただけのものになっている。
時間をかけ、舌と指で奥までしっかり軟らかく解したそこに、再び二本目の薬指を挿入させた。
今度はくぷ、と難なく飲み込まれ、その二本の指で更に拡げた最奥に限界まで深く舌を挿し入れ、内壁を舐め上げる。
ついでに心もち尖らせた舌先で、弱いところをぐいぐい押してやると、
バーナビーの全身がビクビク震え、その先端から零れる蜜に白色が見えはじめてきた。
それを切っ掛けに、虎徹は舌だけでなく、唇全体でちゅぷっとそこに吸い付く。 口付ける。


「ひ、っ・・・・!!」
舌だけでなく、ちゅぷ、くちゅ、と唇ごとそんなところに吸い付かれ、
バーナビーは仰け反って喉を引きつらせる。
一層の潤いを与えようと唾液を送り込まれ、侵入中の舌に合わせて唇でも周囲をやわやわと揉まれ、
許容量を大幅に超えさせられた羞恥に、もう何も考えられない。
やめて下さいと言っても聞き入れて貰えず、駄目だと制止してみても構わず続行され、
そして今も、虎徹がこの行為をとめる気配は無くて。
「ん・・・・っ・・・、く、ぅ・・・・っ・・・」
そんなところを口で解されて愛される刺激に、全身がぞくぞく戦慄いて粟立つ。
わかっている。
彼がここまでするのは、これからの行為による自分の痛みを消すための、どうしたって必要な準備で、
確かにこの前は多少なりともの出血を伴う傷があったことは否めないし、
その後はやはり、それなりに辛かったし。
けれどそれと恥ずかしいのとは全く別だ。 わかっている。 わかってはいるけれど、
どうしたっていたたまれない。 唾液を送り込まれて蕩けていくそこを自分でも意識してしまって、
羞恥と混乱のあまり、いっそ意識を手放してしまいたくなる。
なのに身体は与えられる快感を見つけ出し、快楽を追ってしまう。
「っは、は・・・・、あ・・・! あ、あぁ・・・・っっ・・・っ・・」
弱いところを舐められて、甘く絡む声が止まらない。
悦くて、悦すぎて、思考より何より先に身体の方がもたない。


「も・・・・っ・・・、や・・・・・です・・・・っ・・・っ」
訴えるかのような、途切れ途切れの声。 
堪えきれない羞恥のため、両腕で顔を覆ってしまっている彼の表情は(体勢的にも態勢的にも)見て取れなかったのだが、すでに涙声に近くて、それは快楽を認めてしまっている他でもないしるし。
その響きを感じ取って、虎徹の背筋もゾクリと逸った。
バーナビーの、絶頂が迫った細い身体はがくがく震え、浅くせわしい呼吸は荒さを増していく。
そこでようやく虎徹は舌を引き抜き、唇をそこから離した。
その代わり、今度はバーナビー自身にぱくりと喰い付く。 同時に潤った最奥部には、三本目の指、より奥まで届く中指を足す。
元々埋めていた人差し指と薬指で中を押し広げつつ、中指でポイントを押し上げる。
「ッ・・・・ぅ、あ、あ・・・・っ、ま、た・・・・っ・・・・!」
指を押し包む内壁が強く締まる。 柔らかいくせに弾力の強いそれに抗うよう、揃えた指三本まとめて強めに出し入れすると、感極まったような声と共に腰が浮いた。
「んっ・・・・! っ、ッう・・・・・ッッ・・・・!!」
「出せよ」
「、―――ッ!! ・・・・ッ・・・!」
強く中を擦り、見計らって口中の先端も鋭く吸い上げてやると、二度目。
バーナビーは喉の奥で声にならない声をあげ、ぶるっと震える先端が白蜜を放った。
それを再び口中で受け止め飲み干して、虎徹は身体をずらし、彼の顔を覗き込む。
覆っていた両腕を解かせて、その表情を窺えば、紅潮してその息は荒い。
目許も、今にも泣き出しそうなほど潤みきっていて、なのにどこか放心状態のようで。
「バニー?」
平気か、起きてるか、と思わず問い掛けてしまうと。
「・・・・・・・・はい」
とろん、としつつも素直にコクンと頷いた。
なんだその仕種。 果てしなく可愛い。 その姿はまたも虎徹の下半身に直結・直撃して、
「挿れるぞ」
もう我慢も効かない。
虎徹はバーナビーの脚を抱えなおし、最後の確認として指先で最奥に触れてみる。
そこは濡れて、くちゅ、と音をさせて指を迎え入れようとするほどにやわらかく、とろけていたから。
指を離し、再び体勢を整えてその箇所に猛った自らを宛がった。
ゆっくり腰を進め、まず先端を飲み込ませる。
「・・・・っ、・・・・」
息と共に、僅かにバーナビーの身体に力が込められる。
けれどそれは痛みを感じている様子ではなく、ただ挿入に対して体が緊張したがゆえのことのようで。
ゆっくり、ゆっくり残りも埋めていき、根元まで挿れたところで動きを止め、身体が慣れるのを待つ。
内側は、虎徹を痛いほど締め付けてくる。
その感覚が齎す快楽に翻弄されながらも、ここまで何とか残すことが出来た最後の余裕のひとかけらを持って、
「ツライ・・・・か・・・?」
身体を倒し、至近距離から気づかいつつ訊ねれば、
バーナビーはぎゅっと目蓋を閉じたまま、小さく首を横に振った。
それから、その長い睫毛を二、三度まばたかせながら目を開いて、照れ隠しのような苦笑いのような、
面映そうな表情を浮かべた。
「・・・つらいのは、虎徹さんの・・・方、ですよね・・・・」
落ち着かない不規則な呼吸の中、しっかり見抜かれている。
「そんなに、堪えなくても・・・・、僕は、なんとかなったのに」
「・・・・なるべく、キツイ思いさせたくねーんだよ」
行為に伴い、どうしたって負担がかかるのはバーナビーの方で、だから余計。
「大丈夫、・・・・です」
「ん。 なら、」
そう伝えてくるバーナビーにほっと胸を撫で下ろし、
虎徹は彼の両膝に軽く手を添え、静かに自らを抜き差ししてみる。
「・・・・、っ」
すると、その動きにバーナビーが小さく反応して息を飲んだ。
咄嗟にシーツを握ったその手に気付きながらも、虎徹は律動を開始する。
一度ゆっくり先端まで引き抜いて、それから奥まで一気にずぷりと突くと、
「あ、あ・・・・っっ!」
大きくその背中を仰け反らせる、細い身体。
平熱が低いとか本人は公言していたけれど、そんなこと信じられないほど、上気して熱を湛えている肌。 そして内部は上回って熱い。
無理だ。 看破されていた通り、我慢も辛抱も限界だ。
「く・・・・!」
バニーちゃんの身体の誘惑に負けて、虎徹は激しく腰を使い出す。
「あッ、あ、うあ・・・・っっ・・・・!」
と、バーナビーの下肢が激しい打ち付けと快感から逃れようと、角度を変えようとしたのか捩ろうとするのを力ずくで止めて引き戻し、弱いところを狙って何度も何度も突き上げを繰り返した。
「ひ・・・・ッ、あぁっ、あ、ぅ・・・・っ!」
「ッ・・・・!」
ポイントを突くたび、内側の濡れた粘膜がきつく締め付けてきて放さない。
絡み付いたまま、搾り取ってくる動きに翻弄されつつ、唇を噛みしめて律動を重ねる。
激しい打ち付けに、バーナビーがかぶりを振って悶える。
「んんッ!! ・・・っく、ぅ・・・・ッ、は、あ、あっ・・・・」
「すげー・・・・、な・・・イイ・・・・」
思わず感嘆の声を漏らしながら、行き着くところまで腰を進め抜き、
「ココ、だよな・・・・?」
「――――― く、はッッ・・・・!!」
奥の奥、一番弱いところを先端で容赦なく擦り上げると、上を向いて反り返っていたバーナビー自身が少量だが白蜜を飛ばした。 どうやらその衝撃で軽く達したらしい。
それでもまだ硬さは失わず、膨れ上がったままのそこに手を伸ばす。
指を絡め、裏筋を中心に軽く揉み込んでやれば、
「あ! あ・・・・ッ!! 離・・・・し・・・・っ・・・・っっ」
後ろに加えて前からも与えられる快感を受け止めきれない様子で、必死にバーナビーがその手を止めようとしてくるけれど。
「っ・・・・く、ぅ・・・・あっ・・・・っ、あっ・・・・!」
構わず、今度は先端を指先でしつこく弄り倒しながら、中では深く埋め込んだ状態で、腰全体を使って大きくグラインドさせてみると、肉壁がこの上なく波打った。
「バ、ニー・・・・」
「は・・・・っ、ん、ん、・・・・っ・・・っっ・・・」
あまりの悦さに、思わず名前を呼んでもバーナビーには返事をする余裕もない。
それも承知のうえで、深く浅く、強く弱くを織り交ぜて内部を掻き回していくうち、
バーナビーの腰が虎徹の動きに合わせるよう、次第に揺らめきを見せ始めた。
同時に、内側の柔らかく狭い粘膜がうねり出し、虎徹の絶頂を促してくる。
「・・・・バニー、 ・・・・ッ・・・、」
掠れた声。 今度はその熱を帯びた呼び声が届いたのか、
「っあぁっ、あ、・・・・っ・・・・も、う・・・・!!」
白い喉が仰け反る。 虎徹に揺らし上げられている身体が、小さくだが不規則に戦慄きはじめ、それが止まらなくなっている。 互いにもう、限界だ。
高みを求め、虎徹は乱暴なほど激しく腰を打ち付けた。
「!! うあ・・・・!!」
涙声にも似た、濡れた声がバーナビーからあがる。
内部は急激に収縮し、痛いくらいに虎徹を捕らえて絶頂を促してきた。
「ッ・・・・!」
あと僅か。 ほんの少しだ。
もう隠すことも出来なくなった荒い息を絡ませながら、虎徹はラストとばかり、
奥の奥をグイッと突き刺すよう、強く強く穿った。
「んっ・・・ッ・・・、く、―――――あぁぁっ・・・・ッ・・・・!!」
途端、全身をぴんと強張らせてバーナビーが絶頂に達する。
温かな蜜が虎徹の胸元にかかり、それは胸から腹までを濡らして吐き出されたあと、
くたりと脱力するバーナビーの身体の中、
追ってどくん、と脈打つ虎徹自身。
「・・・・ぅ・・・ッ、 ・・・・ッ・・・・!」
押し殺した声と同時にずるッと中から自らを引き抜き、
虎徹は眼前の白い肌の上に、白濁を散らした。


しばし互いの荒い吐息だけが充満するロフト上、
雨はいつの間にか止んでいた。

































夜明けは、思いのほか早くやってきた。
ナイトランプを点けずとも、差し込む朝日でほの明るくなってきた中、
片肘をついて上半身だけ起こし、隣で眠る歳若いうさたんをただ眺めていたら。
はっきりわかる夜明けの訪れる気配に、バーナビーもつられて目を覚ましたらしい。
小さく身動きしたあと、その目蓋をあけた。
「・・・・・いつ、から起きていたんですか」
「あー、寝てねえな・・・・」
全然寝付けなかったからバニーの寝顔ながめてた、と告げる。
「ずっと、ですか」
「ああ。 ずっと見てた」
今更隠す必要もなく、取り繕う理由もなく。 照れも悪びれもせず事実を答えると、
「・・・・よく飽きませんね」
何だか少しだけ呆れたかのよう、呟かれてしまった。 だから。
「そういや、なんか寝言いってたぜ」
「え・・・・?」
「『虎徹さん愛してます』 って100回くらい」
「〜〜〜〜言ってません!!」
「・・・・・・んな力いっぱい否定されちまうと、ヘコむんだけどよ・・・・」
しかもほぼ即答。 で返された返事にタメイキを吐きつつも、
よしよしいつものバニーだな、とオジサンは嬉しそうに笑う。


さすがに100回というのはデタラメだけれども、
寝言で一度、名前を呼ばれたことは実は本当だ。
しかしそれを告げても恥ずかしがりで照れ屋のバニーちゃんのこと、
おそらく 「呼んでません!!」 とこれまた頑なに否定されてしまうだろうから、
代わりに。


「こうやって、五年後も十年後も似たようなコト言ってられるとイイよなあ」


今になってゆるゆると感じはじめた眠気の中、
うさたんの頭ごとその金髪を撫でながらそう言うと。
子供扱いしないで下さい、
とか、
その頃になると虎徹さんは本当に200%オジサン、の歳ですよね、
とか言われるかと思いきや。


「大丈夫ですよ。 ・・・・きっと」


思いきり素直で嬉しい返答に、一瞬で眠気も吹っ飛んで、危うく再びむしゃぶりつきそうになった。






























数時間後。
バーナビーの服は前述通り、昨夜のうちに洗濯機の中に放り込まれ、
一応きちんと洗いからすすぎから脱水まで、一通り洗濯自体は終わっていたのだけれど。
その後のもう一手間、『干して乾かす』 という作業を二人揃ってうっかり失念、
さっぱり忘れて洗濯機の中で朝まで放置されてしまっていたため、
結局彼は虎徹の服を借りて着て、自宅まで帰ることになったのだが。


「僕にこんな似合わない服を着て、道を歩けと・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・お前ホントに俺のコト好きか・・・・バニー・・・・?」


そんな会話を交わしつつ、
だったら服が乾くまでココにいて、乾いたら午後から一緒に出勤すればいい、
という簡単な事実に二人、ほぼ同時に気がつくのはもう少し後のことである。





















たぶん、未来は滴るほどに甘くて、 優しい。









結局いつもと変わらん中身になってしまいましたガクリ。
別にね ヤらなくても いいような気もしたんですが

・・・・・まあいいや(笑)