[ デフォルト ]






「また、散らかっている・・・・・・・・」
「あ? ま、まあ・・・・な?」




新年早々、またも一緒にいる。 とか、
いやいや正しくは正確には昨年末のうちからずっと二人でいたりする、とか、
そのあたりを端的に(?) 詳しく(??) 一言で(???) 云ってのけてしまえば実際のところ、
クリスマスあたりからほとんどどちらかの部屋でお泊りの毎日、であったとか、
そんなあたりはもういっそこの際、どうでもよくて。


今、現時点で重要なのは、
バーナビー宅からの同伴(・・・・???) 出勤前、
入用のものを取りに揃って立ち寄った虎徹宅。
玄関のドアを開けた途端、
そのリビングの細々としたものの散らかりよう、
至るところに置かれた(というより放置された) 食器類の雑然っぷり、
そしてこれまた脱ぎ散らかされたのかそれとも洗濯後、
畳まれていないのかきっと当人ですら定かではない衣類の散乱っぷり。
それをニューイヤー早々目の当たりにしたバーナビーに、
「・・・・前回、片付けたはずですよね。 ・・・・主に僕が」
「あ、ああ、確か、そうだっけ、な?」
バニーちゃんの呟きに、
三十路やもめ、どう言い訳・・・・否否、対処すれば最善なのか、その一点で。
「けどよ、片付けてもらった次の日から、ほら、ずっと残業だったろ、で、ちょーっと気ィ抜いてるうち、それから何日か、そのまま経っちまって・・・・」
あわあわと恐る恐る言い訳という名の弁明と弁解とを始める虎徹の言葉をシャットダウンするかの如く、
「ゴミも捨てていませんね」
キレイ好きバニーちゃんは部屋の片隅、
どすんと鎮座したままのゴミ袋(一応袋の上部は固く縛ってあるのだが) まで目敏く見つけてしまう。
「ゴ、ゴミがあったって、だからって別に死ぬワケじゃねえしよぉ、」
ゴミに埋もれて死んだヤツぁいねぇよ、とボソボソ呟く台詞も極論に走り込みつつある中年に、
青年はビシッとバシッときっぱりと。
「その第一号になるつもりですか?」
まるで1クール目を彷彿とさせるかのような口調と視線を向けてきた。


「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」


僅かな沈黙のあと、


「・・・・・・・・・・・・・・んじゃ、今から片付けっか・・・・・・・・」
「二人でやれば、15分足らずで終わりますよ。 そうすれば遅刻もしないですみます」
「・・・・ん」


今までバニーちゃん相手に虎徹が培った処世術。
それは、妥協することではなく、適応することである。



























「一体どうすればここまで洗濯物を溜め込めるんですか!?」 ←ロフト上 byうさたん


「畳んでねぇだけだって!」 ←階下 byおっさん




そんなやり取りがあったかと思ったら、虎徹の頭上、突然ロフトからバサバサと何かが降ってきた。
「うおッ!!」
一瞬何が起きたのかと焦ったのだが、見てみればそれは自分がベッド横に溜め込んでいた、
否、無造作に置いておいた衣服諸々で。
「一応、全部洗って干して取り込んだやつなんだけどよぉ、」
あるイミ彼にしては随分な力技(・・・・?)、でバーナビーが落としたシャツやらタオルやらにまみれつつ、一応伝えてみるけれど。
「もうこれはもう一度洗濯しないと駄目です、全部洗濯機に入れてきて下さい」
「・・・・へいへい」
虎徹はタメイキ混じり、階上からの声に相槌を打ちながら、大人しくそれらを洗濯機に運ぶ。
「まだここにも!? もう一度落としますよ」
「・・・・へいへーい」
頷いた直後、どさどさと落ちてくる第二弾。
今度もくしゃくしゃのタオルやらよれよれになったネクタイやら諸々、まとまって降ってきたそれらを一抱えにしたそのとき。
「ン?」
パッと見、どう見ても自分のものではないインナーが一枚、目に留まった。
それは、どう見ても。
「バニーの?」
首を捻りつつ、少し前を思い出して途端に思い当たった。 思い出した。 判明した。
それはいつかの××××後のシャワー後、
『おかしいな・・・・どこに行ったんだろう・・・・』
『そのうちヒョイッと出てくるだろ。 買い置きあるから、それ履いとけ』
『・・・・どうしてそう都合よく買い置きがあるのか不思議で仕方がないんですが』
『買い置き、っつーか予備だな。 主にお前向けの』
『あんまり嬉しくないです』
『しっかり役に立ってるだろが。 現に今☆』
『・・・・・・だから余計、困ってるんじゃないですか・・・・・・』
という会話を交わした際、行方不明になっていた当のそれ。
なんで今になって出てきたんだ、と疑問に思いつつもまあ探しモノなんて大抵そんなモンだよなあ、
と強引に納得し解釈し、
ひょっこり見つかったバニーちゃん’sインナーに苦笑しつつ、これ使って少しからかってやるかな、などという考えが僅かに頭を掠めたのだけれども。
きっと顔を真っ赤にされて照れながらまた怒られる。 ということが想像しなくてもイヤというほどわかりきっていたがため、止めた。
止めてそのまま、黙って一緒に洗濯機に放り込む。
いつかきっと、 ・・・・・・使う・・・・・・・・・否否否!
いつかきっと、ごく自然に 「そういやあん時のお前の、見つかったぜ」 とすんなり返せるタイミングも来るだろう。
それとも 「見つかったけど予備でココ置いとく?」 との提案になるのかもしれず、
まあいずれにしても、「・・・・えっ・・・・」 と絶句されたあと、バニーちゃんがまた耳まで赤くなるであろうことは間違いなく。
そのときには思いっきり茶化してやろうと心に決め、オジサン、洗濯機のスイッチを入れた。






















「何とか、15分以内でとりあえず片付きましたね」
「やるときゃやるんだよ、俺だって」
「ほとんど僕が指示を出していたような気がするのは気のせいですか」
「さあなぁ〜? おっ、ベッドメイキングまで完璧じゃねぇか、さっすがバニー」
「あからさまに話を変えないでください」
「まあまあまあ」
ピシッと皺一つない、綺麗なシーツとその上の四角く畳まれた毛布に目尻を下げつつ、
「・・・・な、折角キレイにしたところで」
「はい?」
「・・・・ちょっ早で頑張ってみちまったりしてみるか」
「!!? 新年早々、遅刻するつもりですか!?」
「だーかーらー、ちょっ早だって」
「遠慮します。 断固として絶対に」
「倒置法・・・・」


虎徹は軽く肩を落とす。
駄目元で思い付きで言ってみたが、
やっぱりダメだった。


当然といえば当然だ。


























「少し急がないと、本当に遅刻してしまいます。 もう8時半を回りましたよ」
「なぬ!? もうそんなか!?」
ドア口で、取っ手に手をかけて待つバーナビーに急かされ、虎徹が慌てて帽子を手に取って頭に乗せた直後、ふと、靴の紐が解けていることに気がついた。 しかも左右両方。
それをしゃがみ込んでギュッと結びながら、
「確か、今日は一日、デスクワークなんだよなぁ。 気が重いっつーか、気が乗らねぇぜ」
ぼやいたら。
「そうですか? 僕はデスクワークも嫌いじゃないです。 いえ、むしろその方が性に合ってます」
穏やかに一日を過ごせて良いじゃないですか、と虎徹の苦手区分を全く苦にしないバーナビーを心底羨ましく思い、
「その成分、半分くらい俺に分けてくれや・・・・」
それほどの他意も無く、つぶやいたら。


「・・・・・・・・それなら、」


「へ?」


靴紐を結んでいる途中、腰を落とし頭も視線も落としていた虎徹の上、




「それなら、経口摂取で」




そんな一言に反射的に顔を上げた途端、バニーちゃんのキスが降ってきた。




本気で新年早々遅刻させる気かお前、
つーかそうなっちまったらお前だって道連れなんだぞわかってるかバニー? と呆気に取られながらも。




出勤前、新春デレうさたんのチューを味わった。








でもよくよく考えてみれば、冒頭に記した通り、クリスマスから年末年明けまで、ずっと一緒にいた。









結局、ニューイヤーも何も大して関係なし、いつもの如く爛れて始まるJanuary.








今年もおそらく、こんな感じで始まり年末もこんな感じで終わる。
そんなものである。












ただ 【経口摂取】 て言葉が使いたかっただけの話です(え・・・・)。
ひめはじめ(・・・・え) を期待してた方、すみません(笑)