[ Lovely Bunnnnny!8 ]







基本、いつだって引っ付いているのだけれど。
もとい、すでに年がら年中が蜜月でありもするのだけれど。
それでもここ最近に関しては、わりと三十路の中年にも余裕が出来てきたというか、
このうさたんは俺のモノだしここまで来たらもうどっか行っちまう危険性もねえし大体安心して見ていられるし、以前のような不安定さはすっかり影をひそめているし。
といった状況で状態で、正にハニームーンを地で行く今現在。
だから。
最近の虎徹は、ガツガツしない。 いつだって下心はあるが、なるべく隠すようにしている。
とはいえそれはそう、表向き&公共の場所でのことであって、
こうやって本日のよう、どちらかの部屋に入ってしまえば、そんなタテマエは一瞬にして吹っ飛んで、
イチャイチャする切っ掛け(直訳:寝室に転がり込む合図) を何とか得ようとアレコレ考えてしまうのはもう仕方なく、どうしようもない。
しかしそれも、前ほどオープンに誘って勢いと力ずくで縺れ込ませるというパターンではなく、
もう少しその、スマートにオトナ的に紳士的に、巧くベッド上に移動する手立てを画策する方向で進行させてみるのも良いかと思うのだ、たまには。


・・・・・・ようは、むっつりスケベになったというだけなのかもしれないが。















そんなむっつり中年ヒーローは、ことも無い様子を装いつつ、
バーナビー宅、リビングにていつものよう、日常会話を部屋の主と交わしていく。
「で? チャレンジしたコロッケはどうなったんだよ?」
「・・・・・・揚げましたよ、油で」
微妙に的外れなバニーちゃんの返事にも、虎徹はもう慣れまくった。
そりゃコロッケだしよお、揚げるよなあ油で、などという突っ込みなど一切入れず、
「そしたらどうなった?」
へらりと笑いながらただ先を促す。 すると。
何故か当のバーナビーは言いづらそう、というか答えづらそうに。
「外側はこんがりチャコールブラウンに揚がりました。 中はとろっと」
その返答に、虎徹はほんの僅か想像を巡らせたあと。
「・・・・・・・・・・そりゃ、生焼けっていうんじゃねえのか・・・・・・」
実も蓋もない一言で、いつまでたってもほとんど上達しない相方の料理の腕に、「あーもーバニーは!」 とか何とか嘆くフリをしつつ、
「きちっと下ごしらえしたか? イモの裏ごしとか」
助言を与えるフリもしつつ、
「裏ごし? ・・・・何ですかそれ」
きょとん、としたバニーちゃんに 「バニー・・・・」 と頭を抱えるフリまでしつつ、
ムクムク湧き上がりまくりの下心。 というか魂胆、を次第にあらわす。
さりげなくネクタイを解きながらバーナビーの肩に手をかけながら。
「んじゃ、今日はバニーに下ごしらえのイミも中身も実践をもって教えてやっから」
「・・・・え?」
だって今日は材料買ってきてないですよ、などと言葉をそのままストレートに受け取ってしまい、
最初は虎徹の言わんとすることをさっぱり理解していなかったバーナビーも、
「ばっちりしっかりねっちり下ごしらえしてやるから覚悟しとけよ?」
ニヤニヤ笑いながらの次のこの一言で、察したらしい。
「やめてください、そういう脂ぎった中年オヤジの発言・・・・!」
パッと微妙に顔を赤くしつつ、諌めてくる。
それでも虎徹は肩に掛けた手を、今度は腕まで伸ばしながら一切、退かず。
「なー、バニ〜〜〜?」
まるで猫科の動物のよう、ゴロゴロと後ろから背後からバーナビーに引っ付いてくっ付いて、
キレイな金髪の散る襟足に、顔を寄せる。
一方で真後ろから両腕を回されたバーナビーが律儀にも、「何ですか」 と聞き返してきたから、
「明日までヒマだろ? イチャイチャしようぜー?」
前言撤回。
やはりガツガツする。
今更隠したって仕方のないものは隠すだけ時間の無駄で、これはアレだ、ヒーローにも人生にも大切な正直っぷり、そして臨機応変っていうやつだ。
「・・・・本能だけで生きてますよね、虎徹さんは」
バーナビーの呆れたような響きにも、おじさん、負けない。
「そりゃ、本能なくしちまったら色々終わりだろ。 男としても」
あっけらかんと言い放つ。
「虎徹さんには、理性は無いんですか?」
「は? 何言ってんだよバニー。 どっからどう見たって理性のカタマリだろ、俺」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「俺に理性がなかったら、今頃バニー、口にも出来ねえくらい大変なコトになっちまってるぜ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「ま、ときどき暴走しちまうけどよ」
こんなふうに、と背後からぎゅう。 ギュウ。 細身の身体を抱きしめる。
だっておじさんはうさたんが大好きなのだ。 だからもう止められない。 やめられない。
「本能と理性との間で、これでも大変なんだぜ? 俺の方も」
「僕も大変です。 そんな虎徹さんが相手で」
はいはい、とバーナビーの溜め息に隠された、苦笑。
それに含まれる拒絶の意は、ゼロだということを確信して、更に虎徹は伝える言葉を増やす。
「あと忘れちゃいけないワイルドタイガー、野性もな? ・・・・ってコトで」
我ながら上手い言い回しだぜ、と自賛したら、腕の中のバーナビー曰く。
「そうですか。 それなら僕は、」
「ン?」
「惰性、で虎徹さんと一緒にいることになりますね。 その言い回しと韻を踏襲するなら」
「なッ・・・・」
酷い返事に慌てた虎徹が、目を瞠る。
と、すぐに振り返って向けられた翠色の瞳がやんわり細められ、
「冗談です」
即座に入るアフターフォロー。
知ってたけど。
うさたんだっておじさんのことが大スキで仕方のないことくらい、知っていたし知っているけれど。
「何だよ・・・・。 ひっでぇな、一瞬心臓止まったぜ?」
「止まってないじゃないですか」
「いーや止まった」
「よく言いますよ・・・・」
「呼吸も止まって息も絶え絶えだ。 何とかしてくれよバニー」
三十路ももう中間で、こんな蕩ける台詞を口にしてしまうほど、おじさんの方がうさたんにメロメロなのだ。
それはきっと、どちらがどれだけ、と比べるようなことじゃないけれど。
「それなら、」
すると笑み混じりでバーナビーが何を言うかと思えば。


「マウストゥマウス、人工呼吸で」


そんな囁きの後、互いに教え、教えられるマウストゥマウスの甘すぎるレクチャー。


ああやっぱり紳士で格好良く、なんてとてもとても我慢できない。 やっていられない。
そんな時間もないし、
バーナビー相手にそんな余裕ぶった真似もできない。
Not紳士、でも真摯。





























【ワイルドタイガー流 : うさたん料理レシピ】


ひとめぼれしたので猟期を見計らって捕獲します(※丸々1クールかけました)
お風呂で洗います(※これとこの下のは時と場合により後回しでも可)
水分をはらってやります(※髪をかわかしてあげます)
ベッドというまな板の上にのせます(※本日はバニーちゃん宅)
毛皮を剥ぎ取ります(※服を脱がせます)
おじさんの腕のふるいどころです(※さあ存分に!)
素材の新鮮さを確かめます(※程好くぴちぴちで 程好く熟してます)
下ごしらえも丁寧に行います(※ばっちりしっかりねっちりと!)
味見をします(※どんな味かは内緒です)
お肉をやわらかくします(※時間をかけて)
もう一度味見をします(※お味は絶対内緒です。 おじさんだけが知っていれば良いのです)




―――――――――― いただきます!












尻切れとんぼな話でスミマセン。
あまりにイチャってるんで途中で我慢できなくなってこんな短くなってしまいました(・・・・)。