[ Lovely Bunnnnny! ]


おじさんがバニーちゃんのことスキすぎですのでご注意。
しかしバニーちゃんは流石にそこまででもないカンジ(笑)なので更にご注意。







「バニー」




シュルテンビルト式のプロポーズの仕方なんて知らなかったから、とりあえず日本式に言ってみた。




「これから毎朝、俺のために味噌汁を作ってくれねーか」
そうしたら、『??? 味噌汁って何ですか』 と真顔で聞かれた。




そうかそうかそうだよな生粋の金髪碧眼バニーが味噌汁なんて知ってるワケがねーよなと考え直し、
今度は直球を投げてみた。




「俺のパンツを毎日洗ってくれ」
そうしたら、「・・・・・・・・・」 と無言でドン退かれたあと、そそくさと早足で逃げられた。
あっヤベーやっぱ言い方がマズかったかと反省し、
三度目の正直、




「お前のパンツを毎日洗いたい」
面と向かって言った直後、「いつからそんな変態に成り下がったんですか!」 と怒鳴られた挙句、
能力まで発動させて逃げられた。




脱兎に上方射出、そのスレンダーな後姿さえ 「相ッ変わらず半端ねぇバックシャンだよなぁ・・・・もちろん正面から見ても上物過ぎっけど」 とか死語丸出しで呟きながら見上げて見送ろうとした直後、
ハッと我に返って慌てて追いかけ何とか捕まえて、
「違う! そういうストレートな意味合いじゃねぇんだって! 誤解すんな!」
アレはそういう比喩、そういう表現をもってしてプロポーズの際、
言いまわすことが日本にはあってだなあ、とか云々etc.
言い訳倒して謝り倒して何とか無理矢理誤解をといてみたのだが(・・・・解けたのか?)。
それでも疑わしき&胡散臭そうな表情を隠そうともしない相方、
カワイイかわいいバニー曰く。


「・・・・わかりました。 話半分で一応、胸の中に留めておきます」


とか何とかかんとか、YESなんだかNOなんだかさっぱり不明、
さらりとスルーされたかの如くの返答をされてその時はそれで終わってしまったのだが、
おじさん(三十路) はそう簡単にはへこたれない。
とはいえ。
そんなウサちゃんに対し、こりゃあワイルドタイガーの名前が廃っちまうよなあホント、
と自ら呆れ返るほど、大した暴走もできずじまいのままココまで来てしまったというか、
謙虚すぎるほど謙虚、いいやむしろ自分のヘタレさ加減については、
いやいやそれがオトナの余裕ってもんだろ自分、と無理矢理自らを納得させる毎日で。
何しろ相手、その当の本人がカワイイくせにやたらと堅物でやたらと真面目でヘンなところで融通のきかない難物で、
なのにそんなところがこれまた可愛くて可愛くてたまらなく映ってしまう(・・・・)
ラブリーフィルター(・・・・・・・) が虎徹の中では日々常々全開で炸裂してしまっていて、
なあバニー、ホントそろそろ頃合だろーが俺たち、とともすれば滲んできてしまうシタゴコロを意識的に封じ込め欠片もみせず、そこそこ真面目にその都度迫ってみては、
上記のよう、自らの言い回しの失敗やその他いろいろな外部要因(例えば先週などは誰もいないと思っていたトレーニングルームで求婚していたら、すぐ脇の椅子が折紙だった。 しかし何故そんなものに擬態していたのかは不明) もあり、
結局いつもいつもほぼ確率9割9分9厘方、スルー。
一言で言ってしまえば、まず報われないおじさんの日々ではあるのだけれど、
その程度であきらめたりするはずもない。
いとしのバニー。
何を隠そう、おじさんは可愛いものが、大好きだ。
(最近はそうでもないが) どれだけ冷たくあしらわれても、
(つまり1クール目あたりのことである) どれだけつれない態度を取られようとも。
バニーは、バーナビーは可愛い。 とことん可愛い。 誰がなんと言おうとカワイイ。
彼をカワイイと識別してしまった自分の目と感覚と感情とを、
虎徹はたぶん、世の中で一番喜んでいる。
























只今の外気温、おおよそ10℃。
しかし強く強く吹き付ける北風により、実際に感じる体感温度は更に低い。
秋の初め、というには少しばかり遅い10月中旬午前4時、
虎徹とバーナビー、現在二人が居る場所は名もない(厳密にいえばあるのだろうが) 公園の中、
それも思いきり冷え込みを見せている、大きな泉型の噴水の前である。
その前を横切りながら。


「さみー! マジで寒ぃ・・・・!!」
「そんな薄着で出歩くからですよ」
「だってまさか帰りがこんな時間になるなんて思わねぇだろうよ・・・・」
流石にこの時期この時刻、いつもの格好、例のシャツにベストのいでたちはキツイ。
ブルブルと震えながら、寒さから生ずる鼻水をずずずと啜り込んでいたら、
「せめて上着の一枚くらい、用意しておかないと」
いい歳した大人なんですから、と顔をしかめたバーナビーに小さく窘められてしまった。
「へいへい。 明日からコート常備で出動しますよー。 て、さみー!」
「・・・・・・・・・・」
「うう・・・・老体にはこたえるぜ・・・・凍える・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「こんなとき、あったかバニーちゃんが寄り添って温めてくれたら最高だよなあ」
「・・・・・・・・・・寝言は寝てから言ってください」
「こんなトコで寝たらそれこそ死ぬだろーが!」
「充分元気じゃないですか・・・・」
軽くタメイキを吐かれてしまったけれど、実際、真面目に、寒い。
全ては先述通り、仕事帰りなのは間違いない。
それが今回は真夜中帰り、しかも出先から直行したものだから、
バイクも車も所謂アシの類といったものを何ひとつ準備できず用意できず、
帰りは互いに徒歩、そして事件のあった場所の立地が悪いのかそれとも本日たまたまこんな天気こんな強風に見舞われてしまったのか、いやいや普段の自分の日ごろのバニーへのラブ妄想(?) ゆえの天罰なのか、とにかく、10月とは思えないほど、寒い。
普通だったら通常ならば、こんな夜更けにバニーと二人でご帰宅ロード、
しかも場所が場所、かなりの僻地である人気のない公園を横切っての帰宅途中、
ともなればそこそこイイ雰囲気、
頑張ればイケんじゃね虎徹さん? ワイルドタイガーさん? 的(・・・・) 展開(!) に、
持ち込めなくは無いシチュエーションのはずなのだが、
今はもうそんなこと言っていられないくらい、とにかく寒い。
おまけに見上げた夜空は星一つない曇天で、
しかもこの公園がやたらとだだっ広いくせ、いま居る中央の広場にやたら大きいこの噴水がどでんと設置されているだけで、他はがらんと何もないものだから、更に寒さが倍増、
それでも昼間になれば多少は印象も違って映るのだろうが、
とにかくこんな木枯らしの吹く真夜中は、佇めば佇むほど侘びしさが増していく・・・・という状況だ。
「とにかく、さっさとココ抜けて早く帰ろうぜ・・・・うおッ突風!」
びゅううう、と真横から襲って来た突風に首を竦めながら、
しかしこの身にしみる寒さを差っ引いてみても、こうやってバーナビーと一緒に(途中までだが) 帰宅できることは実に実に喜ばしいことで、実はそれほど嫌だという訳でもなく。
そんな気分で、夜明け頃にはこの噴水もガチガチに凍っちまうだろうな、とひょいっと噴水の周りを取り囲む、浅い浅い池にも似たプール部分を覗き込めば。
「お、」
こんな暗い中でもわかる、その中に投げ込まれた色々な硬貨の数々。
「あー・・・・、小銭、小銭と・・・・」
身を切る横風の中、がさごそとポケットの奥を探って、
一番最初に掴んだ硬貨、二枚を手の上に取り出したところで。
「虎徹さん?」
何を? と、怪訝そうに問いかけられた。
見れば自分がポケットを探っている間にバーナビーは歩を進め、二メートルほど先にいる。
「ちょっと待ってくれって、すぐ終わるからよ」
「?」
「叶うか叶わないかはアレだけど、一応、な」
倣って放り込む予定の硬貨を風に飛ばされないよう、ピンと親指で弾いて弄びつつ、そう答えたら。
「そんなところに放り込むより、募金箱に入れた方が世間の役に立ちますよ」
すんなりと、そんなふうに返されてしまった。
「〜〜〜〜、ま、ソレはソレ、コレはコレだって」
苦笑しつつ、ひらひらと手を振って硬貨をみせる。
「しかも、ただの公園の噴水に投げ入れたところで叶う程度の願いなら、少しの努力で成就するものだと思いますけど」
「それをお前さんが言うかよ・・・・」
願いなんて一つしかないのに。 どのツラ下げて言ってくれるんだバニー、と苦笑がより深くなる。
しかしまあ、そこらへんは気付かないフリ(たぶん) 気付いていないフリ(お互いに) をして明るく流して笑ってみせた。
「ただの願掛けってやつでイイだろ。 星に願いを。 って、星も出てねーか」
「他力本願の極みですね」
「そう言うなって」
こんな会話を交わしてはいるが、引き続き寒い。 実はずっとずっと、寒い。
と、なれば、何はともあれ風邪をひいてしまう前にとりあえずは形だけでも。
そしてそして、どうせならかけるなら目の前の。
「ま、信じるモノは救われるって昔っから言うしな。 願いっつーか・・・・」
指先の硬貨を、弾いて水の中に放り込みながら。


「バニーがもっと俺に優しくなってくれますよーに! もっともっと俺だけのモノになってくれますよーに! で、叶うならそんなバニーちゃんとずっと一緒に暮らせますように!」


願いを全部丸投げにして、願掛けどころか、
願掛けに見せかけた本人への陳情、至願と切願。 もしかしたら、・・・・・・愚願。


「・・・・虎徹さん・・・・」
当然、夜明け前とはいえ堂々と往来ですぐ目の前で(しかも風にも負けないような大声で)、
そんな阿呆な願いを口にされたバーナビーは一瞬呆気に取られ、
その後は込み上げる大きな大きな溜め息をふううううと吐くしかなく。
反面、怖いもの無しの虎徹はといえば今は今だけは寒さも忘れ、
そのまま大股で一歩、二歩。 バーナビーに近寄った。
「流石にアレだ、結婚するのはまあ・・・・無理だとしても、またあったかくなる頃にはだ、おんなじ住所に帰れたらいいな、ぐらいは真剣に思っちゃいるんだが」
「ルームシェアってことですか?」
「違う! 同棲!」
「・・・・・・・・・・」
つれないウサちゃんの、はあ、という溜め息は聞こえないフリ聞かなかったフリ聞いてないフリ。
ここはビシッと一発、決めてやるつもりで。



「で、来年の今頃はお前のファミリーネームを 『鏑木』 に変えている、ってのが俺のこれからの野望と希望だってのも、一応言っとく」


ビシッと一発、決め、て、やる・・・・つもりで、いた・・・・・のだ、が。


「・・・・・・・・・・無謀、ですよね。 同じく韻を踏ませてもらうと」


「バニー〜〜〜〜!!」
あっさりきっぱり、否定で打ち消されて、思わず頭を抱えるリアクションを起こしているうち、
あろうことか彼は虎徹を置き去りに、「寒いですから早く行きますよ」 とか口にして、
くるり踵を翻し、すたすた歩き出して行ってしまう。
「バニー・・・・・」
あまりのつれなさに、のろのろと頭をあげて、その後姿を数秒眺めて目で追ってみてもバーナビーの歩みは止まらず、立ち尽くす虎徹との距離は次第に離れていくばかり。


途端、またもやゴォォォと物凄い横風が吹いてきて、
「寒ィーーーー!! って、バニーーーーー!!」
慌てて自分も走って追いかけて、急いで隣をキープしてその肩に手をかける。
そしてその肩と、一秒だけ指が何かの拍子に触れた頬が虎徹が想定していたより、
ずっと冷えていたことに今更気が付いて。
だが。
なんだお前の方がよっぽど身体冷えてんじゃねーかもしかして、とか、
そういや体温が低いとかってどこかで言ってたような気もするな、とか、
ライダースジャケットって実際、たくさん重ね着しねーとそんな暖かくねーんだよな、とか、
そんな無作法な台詞は決して決して口にせず、
もう最初から初志貫徹、終始一貫、
「な、提案なんだけど」
今夜(?) はもうすぐ来る夜明けと共にバニーに願いを。


「走って急いで帰って、一緒に風呂入ってあったまろうぜ?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


やっぱり半年後の妄想より来年の抱負より、一時間後のイチャイチャが欲しい。
一度お願いしただけじゃ、
一回お誘いしただけじゃ、
無言のままで思案しているのか戸惑っているのか、
傍目にはわからないバーナビーに何度も何度も頼み込み拝み倒し、
最後はもう何か、
どちらが年下かわからないような状態になってしまったような気もしないでもなかったけれど、












数時間後、
揃って帰宅すると同時に昇りかけていた太陽が、
頭上に輝くようになった頃には、同じ毛布の中で引っ付いていた。





























「なあ、バニー」
「・・・・何ですか」
「俺のコト、スキって言ってくれるか?」
毛布の隙間、細い身体に腕を回しベタベタくっ付いて反応を待つ。
こんなふうに、肉体関係は結んでしまっているというのに虎徹が思い出す限り思い返す限り、
彼の口からその言葉を聞いたことはたぶん、一度もない。
だからいつものよう、今日も適当にはぐらかされて流されて、終わる。
けれどそれでも構わない。 こんな会話が出来ることと、こうやっていられること自体が平和とシアワセの証だから。
と、思っていたら。
「好きです。  ・・・・こんな感じで良かったですか」
「なッ・・・・」
心臓が跳ねた。 慌ててバサッと毛布を跳ね上げ、まじまじとバーナビーを見つめる。
「? どうしたんですか」
やばい。 ヤバイ。
これはマジで、やばい。
ベッドの中、きょとんと自分を見上げてくる瞳も、剥き出しの素肌も、何もかもがその言葉の威力で半端ない破壊力を相乗効果で発揮している。
「いや・・・・ホントに、お前が言ってくれるなんて思ってなかったから・・・・ももももっかい言ってくれ!」
「え? ・・・・好き、ですよ」
「ホントに? ホントにか? 今まで一度も言ってくれたコトなかった・・・・よな・・・?」
情けないが心臓がばくばく言っている。
「だって、わざわざ言わなくても、・・・・・・・」
「あ゛ー! もー! そこでなんで先にお前が赤くなるんだよ! そこで赤くなるくらいなら、おとなしく婚姻届にサインしろっての! もう味噌汁も毎朝俺が全部作るし、パンツでもシャツでも何でも洗濯機に俺がぶっ込んどくから!!」


「・・・・・・・・前向きに善処して検討、しておきます」


「えッ・・・・・」


なんだかまるでどこかのいつもの政治家の、
全くアテにならないその場凌ぎの模範答弁みたいな返事ではあったけれど。
馬鹿みたいにぽかんと虎徹が呆気に取られているその隙に、
頭からバッサリ毛布をかぶってしまって、
狸寝入りならぬ兎寝入りを決め込んだバーナビー・ブルックスJr.
その後は虎徹がどれだけ声をかけようが揺り動かそうが、
再び起きて帰り支度を整えるまで、視線さえ合わせてくれない、見事な 『デレた後のちょっとアレでアレでアレな感じ』 モード全開、だったそうな。


















いつか、「愛してます」 なんて言われる日なんかが来たら、
歓喜と興奮のあまり、おじさんは心臓が爆発を起こして死んでしまうかもしれない。

















おが栗湖様からのリク、「思いっきりの虎→兎で! 報われなくてもいいので虎が兎を好きで好きで仕方がない感じで」 というお題でございました。
一体何話目あたりのスタンスで読んでいただければいいのか、自分でもわかりませんすみません!!
しかも他の話とは全く繋がってないものとして解釈いただけましたら幸いです。
けど結局・・・・デレた・・・・(笑)。