[ とらみみ、はいりました ]




『うさみみ、はいりました』 の続きというか対になってるというか






朝、虎徹が目を覚ましたら、いつの間にか頭から、『とらみみ』 が生えていた。




だからといって最初から実感があって気付いた訳ではなく、
本人がその現実に気付いたのは、朝、浴室にてフンフンと鼻歌混じりに髪を洗っている真っ最中、
シャンプーの泡の中、手と指がそれに触れたときで。
「・・・・ン?」
最初は、シャンプーの泡アワの中、なんだかわからなかった。
「・・・・・・・・・・・・」
だから湯気でけむる鏡をごしごしと手で拭い、ザアアアとシャワーで咄嗟に泡を洗い流して、
よくよく目を見開いて確認してみれば。
「・・・・・・・・・・・・!!」
ピョコンと出てきたそれを慌てて自らグイ、と引っ張ってみる。 少し痛い。
もう片方も、グイグイッと引っ張ってみた。 やはり痛い。
と、いうことはやはりこれは自分の頭から生えているもので、
これは、
これは、
この症状は、
つい先日バーナビーが罹った、例の。
「・・・・・・・・・・・・!!!!」
ととととにかく、
とととととととととにかく、
このとらみみをどうにかしないと何とかしないと、
そもそもコレって 『伝染る』 モノなのか、
それとも別個に自分が罹ってしまったのか、
それともそれとも全く別の何かなのか、
浴室の中、
まだ完全には流しきっていないシャンプーの泡まみれで虎徹が慌てふためき始める一秒前。




ピンポーン、とインターホン、ドアチャイムが鳴った。































「なんだ・・・・そりゃ・・・・」
「・・・・ナンだ、って見ての通りだよ」


10分後、
リビングにて洗い髪のままの虎徹と向き合っているのはアントニオ。
先程訪ねてきたのも勿論彼で、
久しぶりに家呑みでもどうだ、と手土産に酒瓶数本、をぶらさげてやってきたところ、
「ナイスタイミング! よく来た! さすがウン年の友!!」
などとわめきながら、ほとんどすっ裸で目の前に飛び出てきた朋友の、
『それ』 、所謂とらみみを目にした彼の反応が、最初のあれである。
とりあえず最初はただ呆然とするだけだった彼相手、
虎徹は焦りながら慌てながらも、自ら端末を繋いで調べて、
以下が例のそれ。


【ウィルス名:TO1RA1型】
【性質:連続変異型→徐々に虎へと変質・変形】
【罹患条件:U1SA1型患者から伝染・罹患する】
【治し方:U1SA1と同様】


あああやっぱり!
やっぱりあん時のバニーから伝染っちまったのか、と一人騒ぐ虎徹を前に、
今になってやっと呆然状態から立ち直ったアントニオは、深い深い溜め息を吐いた。
「・・・・で、どうするんだ」
溜め息を吐きながら、どさりとソファーに沈む。
バーナビーの件の顛末は、ネイサンから聞いた。 否、無理矢理聞かされていた。
だから、
「今からバーナビーでも呼ぶか?」
まさか俺相手、ってことは無いだろう、とそこだけは妙な自信を持って虎徹を見れば、
何故か当の虎徹は、
「ん・・・・それも、なぁ」
イマイチはっきりしない。 その理由は定かではないが、
とりあえず腰タオル一丁はやめろ、何か着て来い、と告げ、
虎徹がごそごそと下だけでも履いているその姿(※とらみみ付き) を眺めやりつつ、
二度目の深い深い溜め息。
こりゃ家呑みどころの話じゃねえな、と当初の目的の諦めはすぐについたが、
「おい、」
本当にお前一体どうするつもりだ、バーナビー呼ぶなら今から呼ぶぞ、
と虎徹(※とらみみ) の背中に呼びかけてみた、 ところ−−−−−−−−。


「〜〜〜〜〜お前に、頼みが・・・・」


「・・・・あ?」


情けないカオをしているか、と思いきや、
何かとてもとても重大なことを決意したかの如くの表情で、
「頼む! 俺のカード渡すから××××、山ほど買ってきてくれ!!」
虎徹はアントニオに頼む。 頭を下げる。
一方で頼まれた昔ながらの友は、


「はあ!? ちょっと待てどうして俺が!!」
「頼む! 頼むからひとっ走り行って買ってきてくれって!」
「自分で行け! そもそも(バーナビーに走った(※ココロの声)) お前の趣味も好みも俺が知るか!」
「任せる・・・・そこは任せるから、頼む! こんな頭じゃ帽子もかぶれねーし、なんつーか、そろそろマジでヤバくなってきたような気もしてんだよ・・・・!」
「ヤバイって、何が」
「このウィルス、発情効果もあったりしてだな・・・・」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!! カードよこせ!!」




果たして牛さんが虎さんに頼まれた 『コト』 は。




頼まれた、『牛さんのおつかい』 とは−−−−−−−−。































「どうして俺が・・・・」
虎徹宅から二つほど角を曲がった先の、少し大きめの書店内の一角。
ブツブツ言いながら、
【いわゆるエロ本】 を山のように抱えてレジに向かうアントニオの姿がそこにはあった。
正直、中身なんていちいち選んでなんぞいられない。
目に付く 【それ系】 のものを、
グラビアだろうがコミックだろうが大衆誌だろうが片っ端から重ねてレジ上に積み上げ、
応対した店員があからさまに 「ええええええええ」 という表情をしたが、
気付かないフリをして、まとめてカードで清算。
ペンを渡され、無論サインは虎徹名義で。 と、『鏑木・T』 までペンを滑らせた、そのとき。




「・・・・何ですか、それは・・・・」




「うおッッッッ!!!!?」




突然、背後からかけられた、思ってもみない人物の声。
冗談抜きで、心底、本当に心底驚いた。
驚いて、そして。


最悪のタイミング、
最高の間の悪さに、背筋から一気にドッと冷や汗が伝う。
レジカウンター上に積み上げられた 【山のようなエロ本の数々】 は当然にして未だ袋にも入れられておらず、
「どうして貴方が、虎徹さんのサインを・・・・」
滑らせていたペンが書いている真っ最中の、サインの名前もしっっっかり!!
たぶん 『今、一番会ってはいけないor見られてはいけない』 であろう彼、
つまり、
バーナビー・ブルックスJr. 当の本人に思い切り目撃され視認され、




「こ・・・・これは・・・・つまり、   〜〜〜〜〜〜〜〜虎徹本人に聞いてくれ!!」




無理矢理カードをバーナビーに押し付け、正義の味方ロックバイソン、逃亡。
まさかハンドレットパワーで追いかけて来ねえだろうな、と恐怖感を覚えながらも、
全速力で角を五つほど曲がり、
後ろからバーナビーが追って来ていないのを何度も何度も確認して、
ようやく足を止める。 止めた。
そして。
ぜえぜえと切れる息のもと、
「虎徹・・・・悪い・・・・」
方向的に虎徹のアパートの方角を向いて。
別に敬虔なクリスチャンでも何でもなかったけれど、
「・・・・頑張れよ」
胸元で、神妙に十字を切った。

































アントニオが出てから、約四十分強。
それにしても遅い。
(吟味しているにしろ?) いくらなんでもそろそろ買って戻ってくる頃だよな、
と虎徹が時計を見上げた途端、
インターホンも何も鳴らないまま、ガチャリと玄関のドアが開く音と、誰かが入ってきた気配。
咄嗟振り向きざま、
「遅えよ! −−−−−−−−て・・・・・・なんでお前が・・・・!!!!?」
「それはこっちの台詞です!! 一体なにを・・・・!!」
以上、
二人の台詞が示す通り、
突然乱入してきたバーナビーに驚愕する虎徹と、
「説明してください! 今すぐ!」
とりあえず全て返品しておきましたから、
とアントニオに押し付けられたカードを虎徹に突きかえすバーナビーと、
アイツ、バニーと遭遇して逃げたな、と事実をほぼ正確に推し当てる虎徹。
現在、虎徹宅リビングはそんな状況だ。
下手をすれば相棒、ヒーロー同士野郎同士の修羅場、
に突入してもおかしくない状況に陥りそうだったのだが、
一秒後、
「、虎徹さん・・・・その・・・耳は・・・・」
虎徹の 『とらみみ』 を目の当たりにし、逸早くきちんと気付くあたり、
さすがは経験者(・・・・) とでも誉めればいいのだろうか。
聡いバーナビーはそれで大体を悟ってしまう。
「もしかして、僕のときと同じ・・・・ですか」
「・・・・まあ、そういうコトでだな・・・・」
「治療方法も、」
「同じ、だった・・・・」
だから居合わせたアイツにオカズ買ってきてくれって頼んだんだよ、と徐々に小さくなる声で、
それでも言い訳めいた説明を、虎徹はせざるを得ない。
であるからして納得して、それで済ませて貰えるかと甘い考えを打ち破るかのよう、
「わざわざ彼に頼まなくても・・・・」
僕というものがありながら、とまさか(!) 口走る(!!) かと思いきや、
「そういう本の一冊や二冊、持ってたりしないんですか!?」
三十路やもめなら数冊所持しているのが普通でしょう、
と、どことなく的外れな質問を投げかけてくるあたり、バニーらしいといえばバニーらしい。
そしてそんな質問をされて、
「〜〜〜〜確かに少し前までは持ってた! こっそり隠してた! けど捨てた!」
「どうして・・・・」
たぶん虎徹も半ば投げやりになっていたのだろう。
もしくは発情効果がますます高まってきていたのかもしれず、
もうここははっきり、当人を目の前に、思い切りストレートに。


「お前がいるから、不要になったから処分した!」


「・・・・っっ・・・!!」
そんな台詞を真ッ正面から口にされたバーナビーはしばし唖然呆然、
いくら事実とはいえ思わずハズカシイコトを口走ってしまった虎徹も愕然、


「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」


二人揃って微妙な間に、
しばらく間の悪い無言、でいるしかなかったのだが。













「・・・・・・・・・・・・・・虎徹さん」
「お、おう」


確かいつかどこかで交わしたのと、まったく同じ言葉の応酬。


先程まで妙な誤解と嫉妬(?) に息巻いていたバーナビーは、息をついて。
一方の虎徹は、そろそろ本当に拙いことになってきた自分の下半身を懸命に抑えるため、
まごつきつつ。


「・・・・あなたに、本当の虎に変化されても困ります」
「・・・・ん。 俺もサーカスに売り飛ばされるのはイヤだ」


「・・・・協力、しますよ」
「バニー」
「何ですか」
「先に言っとくけど、ホント、自制とかできるレベルじゃなくなっちまうかもしれねーぞ」
わかっている。
あえてわざわざ虎徹が言わなくとも、
先に罹患済みのバーナビーは、身を持って知っている。
であるからして、畢竟。
「だから本で済ませようと?」
「・・・・そうだよ。 必死でお前呼ばずに我慢してたのに・・・・・・・もう知らねぇからな、どうなっても」
軽い口調だが、隠し切れずに沸き上がる情欲の滲んだ、
最後少し掠れた虎徹の声に、
「・・・・大丈夫です。 虎徹さんなら」
意を決して、小さく笑った。








ああ、またしても。 こうなる。






































とりあえず、「本日は二人とも有給で、」 とアニエスに一応連絡は入れた。
その際なにやら電話の向こうでいろいろ喚かれたけれど、それはもう仕方がない。
もし何か起きたとしてもその分は逃亡したアントニオに頑張ってもらうことに(勝手に) 決め、
まだ午前中、いつものロフト上、散々身体を重ねてきたいつものベッド上。
ただ普段と違うのは、
ベッド上、腰掛けている虎徹に対し、
バーナビーは床に両膝をついて跪く形になっているというあたりで。


虎徹としても、今まで一度だって彼にさせたことのなかった、
否、してもらったことのなかった、口での×××××。


バーナビーだって、一度だってそんなこと強要されたことはなくて、
(・・・・・・自分は毎回毎回、前戯という名の愛撫として、イヤというほど施されてはいたけれど)
けれど今回は本当にちょっと拙くてパターン外のケースであって、
それはバーナビーとしても、もうとっくに理解済みで承知済みなのだ。
だから自ら、「頑張ってみます」 と言ってみた。
結果、「・・・・悪ィ、フツーにやったらなんかお前の腰、突き破っちまいそうだ俺」 と、
オソロシイ台詞を真顔で(!) 呟かれた果てが、
この、お口での御奉仕開始寸前、に至る。
「・・・・・・・」
それじゃ始めますよ、と言うのも何だかおかしいような気がしたから、
跪いたまま、あえて顔も合わせず俯いて、無言で虎徹のジッパーを下ろしていく。
一方で虎徹には、その指が僅かに逡巡している様子も見て取れてしまって、
今更、そしてやたら一方的に罪悪感に似たようなものまで覚えてしまったけれど、
もうどちらにしろここまで来たら止められない。
むしろこんなところでもしもバーナビーが躊躇などはじめようなら、
『ガオー!』 とまさに猛り狂ってしまいかねない勢いで、欲は増している。
無論、バーナビーもそれはわかりきっているから、
ジッパーと共に着衣と下着まで下ろし終え、すでに猛って何もせずとも上を向いた虎徹自身を取り出し眼前にすると、
小さく息を吸って、一瞬だけ逡巡したあと、そっと口唇を寄せてきた。
そうして這わされる、温かく濡れた舌。
「ッ・・・・!」
瞬間、そこから背筋に熱が走るのを虎徹は漏らした吐息で表し、
開始される奉仕に、それだけで今にも達してしまいそうな錯覚に捕らわれながら、
どこか頭の隅、端っこの方で、
(この舌、絶対35.7℃以上・・・・あるよなあ・・・・)
などと薄ぼんやりと推測してみたり。
「っ、は・・・・」
そんなことを思いながらも、零れる息は収まらない。
丁寧、というよりは戸惑いながら続けられる愛撫。
バーナビーの、温かな口腔に先端が含まれ、吸い上げられる。
施すバーナビーは、虎徹にいつも自分がされていることを、一つ一つ思い出しながら施すかのよう、
強弱をつけてゆっくりと。
が、
何はともあれバーナビーは初めてで、
虎徹にされるのと自らが施すのとでは大違い、なかなか思うように行かず。
途中で、この後どうすれば良いのか迷ってしまった挙句、酸欠状態に陥りそうになって口腔から虎徹を離してしまったり、
唐突に裏筋を通っていた舌が、行き先をなくして先端に這わされたり。
客観的にみてしまうば、とてもとても巧みとはいえない、
むしろ拙い愛撫ではあったけれど、普段なら決して見ることの出来ない、
そして間違いなく自分以外は誰も見たことの無い、そんなバーナビーの姿に否応無く虎徹の欲動は煽られていき、その自身は更に猛りを増した。
「・・・・っ、・・・ん・・・・っ・・・」
咥えているバーナビーの口許から、くぐもった吐息混じりの苦しげな声が漏れる。
合わせて、金髪の下の綺麗に整った眉も苦しそうに寄せられて、
それを見るに、虎徹は 「悪い・・・・」 と思いながらも、
「・・・・バニー」
「ん・・・・っ・・・ぅ・・・・!」
「も少し、奥・・・・」
欲に突き動かされた衝動のまま、伸ばした手を使い力ずくでぐい、と彼の頭を押さえ込み、
更に深くまで咥え込むことを強要。
「ん、んッ・・・!」
喉の奥を突かれ、時折むせ返りながらも逆らわず、
懸命に続けようとするバーナビーの様子は、同時に虎徹の情欲を一挙に押し上げて。
「・・・・く、・・・・ッ!」
前触れもなし、すでに限界まで膨れていた虎徹自身は、
絶頂を予測することも出来ず、咥え込んだままのバーナビーの喉の奥深く、
大量の白濁を吐き出した。
「・・・・ッ、・・・う・・・、ご、ほ・・・っ・・・!」
咄嗟のことで、口できちんと受け止めるほどの余裕も持つことのできなかったバーナビーは、
たまらず咳き込み、その白濁の半分ほどを口許から零してしまう。
それでも何とか、なんとか口中に残った分だけは努力して飲み込み終え、
手の甲と指先とで口許を拭いつつ、自然と虎徹を見上げてみれば、
『とらみみ』 はまだまだしっかり健在、そして一度精を放ったばかりの眼前の虎徹自身も、
まだまだしっかりばっちり元気! そのもので。
「・・・・もう一回、」
頑張ります、と呟いて独断で、再びそれに口を寄せる。
と、口腔に含み入れた直後、
はっきり分かるほど虎徹自身はますます膨れを増して、
先程より更に深く、強く喉の奥を突かれ、バーナビーが施す前に口腔内までも蹂躙されて。
そして気付けば自ら腰を前後させてくる虎徹に、いつもの余裕と気遣いはほとんど見られない。
「ん・・・・ッ、ん・・・・!」
だから苦しくて、それでも離すことは出来なくて、
否応がなバーナビーが涙目を隠すこともできなくなった頃。
ようやく虎徹は二度目の限界を迎え、息継ぎのため僅かに喘ぐ口中に、
またも白蜜を吐出させた。


「・・・・、は・・・っ・・・」
決して飲み込みやすくはないそれを、彼は懸命に嚥下しようとする。
「耳、は・・・・」
虎徹を見上げてきて、
まだ、ありますね、と呟くバーナビーの、たどたどしい言葉と、上気に赤みの差した目許、
涙目のあと、しっとり濡れた翠瞳。
「・・・・ッ、」
ただでさえ、欲情に暴走する下半身を持て余しまくりのこんな状態状況の真っ只中、
バーナビーの未だ喘ぐような呼吸の落ち着かない口許と、細い顎先は、零した自分の白蜜と、
彼の唾液で濡れていて、
潤んだ目尻の睫毛は相変わらず長くて、
「・・・・虎徹、さん?」
急に押し黙ってしまった自分を、下方から跪いたまま、そんなカオで、
甘く掠れた声と共に、見上げられてしまったら。


(とらみみ付き) 虎徹が、
(とらみみ付き) オジサンが、
(とらみみ付き) 三十路やもめが、


我慢できるはずもなく。


「後で、イヤってほど怒ってくれてイイから・・・・」
そう低く、まるで唸るかのよう、独り言よろしく告げて直後。


「バニー・・・・!」
「なッ・・・・!!?」


がばあっ、と全身にバネをきかせて床の上のバーナビーに襲いかか・・・・・否否、
床の上のバーナビーに腕を伸ばして力技で脇から掬い上げ、自分と同じ場所、
ベッドの上に持ち上げてその上に圧し掛かる。
そんな虎徹に慌てたのはバーナビーの方で、
「待・・・・、待ってくだ、さい・・・・ッ!」
束の間、両手で虎徹を押しとどめようとするのだが。
「〜〜〜〜〜どうなっても知らねぇって、初めに言ったよな・・・?」
暴走状態、とらみみをピンと立てた中年の言の方が、あるイミ正しい。
それはわかっている。
頭ではわかってはいるのだが、あまりにいつもと違う状態の虎徹、
荒い息と欲情にいきり立つ身体を眼の前に、やはり躊躇いを否めなかったところ。
「待・・・ッ!・・・・」
制止も振り切られ、強引に下肢に片手が滑り込んできて、触れられる。
と、バーナビーのそこは、自分でもあまり気付かずにいたのだが、
虎徹への奉仕に自然と熱を持ち、ゆるく勃ち上がり始めていた。
「ん・・・・ッ・・・!」
触れられ、大きく身を震わせたバーナビーの頬が一挙に赤く染まる。
「何だよ・・・・お前だって・・・・」
充分その気じゃねーか、と軽く擦ってみると、小さく全身が跳ねた。
「違い、ま・・・・っ、っあ・・・・!」
否定してバーナビーは首を横に振るけれど、どうしたって身体の昂ぶりは誤魔化しようがない。
俺の咥えて反応しちまったのか、俺ってば愛されてんなあバニーに、と妙に感慨深く(?) 思いつつ、
虎徹はバーナビーの体勢をどさり、と変え、組み敷く態勢になる。
「協力する、って言っただろ?」
「ッ・・・・!」
耳元で囁いて、指先に力を入れる。
それでいて焦らすような手付きで愛撫を送ってやれば、着衣越し、
なのにはっきり濡れた水音がそこから響いて。
「それは、そうですけど・・・・ッ・・・・」
再び繰り返す。
わかってはいる。
頭でも心でも、わかってはいるのだ。 きちんと、しっかりと。
ただ、そういう状態とはいえ、あまりに淫欲と色欲に溺れた声音の虎徹の様子に、
理解は出来てもまだ追い付けない、そんな窮地。
「ん、ん・・・・ッ・・・・」
バーナビーはもがいて、何とか虎徹の身体の下から脱しようとするのだが、
一度こうやってしっかり抑え込まれてしまっては、それもかなわない。
まだ午前中、いくらブラインドが下げてあるとはいえ、明るい日差しが隙間から差し込む中、
虎徹は性急にバーナビーの衣類を剥いでいき、
何も覆うもののなくなった下肢をぐいっと開かせると、
空気に晒された彼自身はすでに勃ち上がり、先端からはとろりと透明な蜜をこぼしていた。
「バニー・・・・」
ごくり、と虎徹は唾を飲む。
正直、ツライ。
二度、バーナビーの口中に吐き出しているとはいえ、とらみみが物語る通り、
虎徹の欲はいまだ収まることなく、むしろバーナビーの身体を前にして漲る一方だ。
だからツライ。 出来るなら今すぐ彼の中に押し入りたくてたまらないのだけれど。
さすがにバーナビーのことを考えるとそこまで自分を見失うことにはならず、実行には到らず、
ともかく早急に彼の身体を慣らすべく解すべく、
「心配すんなって、・・・・出来るだけ堪えるからよ」
「・・・・あ、・・・っ・・・」
安心させるよう、口にしながらバーナビー自身の形を指の腹で辿ると、ふるりと震えて吐息があがる。
「っ、あぁ・・・・!」
何度か繰り返し、同じように辿ってやれば、その細い腰が大きく揺らめいて、
虎徹は前だけではなく、後ろにも本格的に刺激を与え始めた。
「キツく、ねーか・・・・?」
「あ・・・・ぁッ・・・・」
低い問いかけに合わせ、くぷりと最奥に埋めた指先を上下に動かしながら、
ゆっくりと奥まで探っていく。
虎徹の指が進むにつれ、屹立したバーナビー自身の先端から零れる透明な蜜は一層量を増し、
肌を伝ってシーツに落ちるほど。
同時、後ろの虎徹の手指までもしとどに濡らし、
その力を借りて更に奥まで入り込んだ長い指先の感覚に、
噛み締めたバーナビーの口からは堪えきれない甘い声が漏れた。
「・・・・っぁ、・・・・ッく、ぅ・・・」
虎徹は気遣ってくれるが、いつからか、すでに挿入の際の痛みなんて大して感じなくなってしまった。
それは彼と自分との努力、というのも多かれ少なかれあったのだろうけれど、
結局、身体まで相性が絶好に好かったのだと思う。
だからこの荒い吐息も、噛み殺す声も、
苦痛や緊張から来たりしているものではなく、ただ純粋に快感が齎すもの。
バーナビーの快楽に潤んだ瞳は霞み、その端には僅かに涙が浮かんで。
「・・・・は、・・・・虎徹、さ・・・・」
もう、いっぱいに膨れたバーナビー自身。
せがむかの如く名前を呼べば、
見て取った虎徹は、とろとろ密を零し続ける先端を最後に指先で一撫でした後、
浅く荒い息のもと、バーナビーの両脚を大きく抱え上げた。
「・・・・ッ、」
猛った先端が入口に触れた瞬間、細い腰が僅かに跳ねる。
「あ・・・、あ・・・・ッ!」
挿入の際、自制は充分にした、つもりだったが、やはり途中からは些か乱暴に貫いてしまったらしい。
「ぅあ、ああ・・・・っ・・・・、」
少しだけ眉根を寄せられてしまったが、もう仕方がない。
今回はコトがコトだけに、大した前戯も、きちんとした愛撫も送ってやれなかった。
Sexというより、性欲処理に近いかたちの情事になってしまっている自覚もありながら、
埋めたバーナビーの中は柔らかく、ちょうどよく綻んでいて。
悦さに、思わず自分を見失いそうになりながら腰を細かく動かし始める。
「っあ、あ・・・・ッ・・・・あ・・・!」
最初から、濡れた甘い声があがるのは快楽のしるし。
猛った虎徹に内側から擦り上げられる感覚がたまらないのか、バーナビーは小刻みに内腿を震わせる。
絡み付いてくる内側。
中を知り尽くした虎徹が、意識して先端でとある箇所をぐいっと押し上げた途端、
「ひ・・・・ッ!?」
先端から蜜を落とし続けていたバーナビー自身がビクンと戦慄き、とろりと大量に白いものを混じらせた。
同時、虎徹を包む内側の肉が急速に収縮し、虎徹にもたまらない快感を分け与えてくることを知っているから。
虎徹は既知している内側の弱い箇所、先程押し上げたところを今度は遠慮なしに強め、
加えて何度も何度も続けて押し上げる。
たまらず耳に届く、バーナビーの甘い哀願。
「ぁッ、・・・・そこ、ッ、・・・やめ・・・・っぁあ・・・ッ・・・!・・・・・」
「無理」
虎徹にだって、もう余裕なんて一切無い。
快楽を貪って腰を押し上げるたび、すでに限界近いバーナビー自身は膨れを増し、
互いの身体の間で天を向き、ヒクヒク震えている。
かたかたと震えて何の役にも立ちそうに無い両手はシーツを掴むだけで頼りなく、
そんな姿はより、愛欲を煽った。
「あぁぁっ・・・・!」
「・・・っは、バニー・・・、」
虎徹は自らの欲も吐き出したかったが、
言わずもがな、バーナビーの快楽もより深いところまで追わせてやりたくて、
張り詰めたバーナビー自身を素早く片手で包み込み、
ごく強く扱き上げた。
ひ、と短く喉の奥であがる叫び。
「っあ、あぁ・・・・! ッ・・・も、う・・・・ッ・・・・!」
「・・・・ん、俺も・・・・」
追い討ちをかけるかのように、虎徹は腰の動きを激しくさせる。
互いに齎しあう性感に、二人、そうそう堪えきれるはずもない。


「−−−−−あッ、ぁ・・・・っっ・・!!」
シーツを掴んだ爪の先が、白くなるほどきつく全身に力が入って、
バーナビーが細腰をがくがく戦慄かせた瞬間。
「く・・・・ッ・・・!」
小さく呻いた虎徹が先に中で弾け、熱いものが自分の奥深くに撒き散らされる。
と、次の瞬間、バーナビーにも訪れる絶頂感。
「っ・・・・あ、−−−あッ・・・・!!」
放たれた白蜜は、自分と、虎徹の腹部を汚す。
「・・・・耳・・・」
達した余韻に、ふらふらする頭と回らない呂律ながらも、懸命にうさたんが確認してみれば、
とらみみ、まだ健在。
「・・・・・・っ、」
まだある、と息を詰めるバーナビーに対し、
虎徹はまだ身体に溜まったままの、消えない熱に翻弄された結果、
無言で再び動き出さずにはいられなく。
「ま・・・・っ、待っ、てください、本当、に・・・・!」
無論のこと慌てたのはバーナビーで、達したばかりなのにまたもや、
しかも抜かず(・・・・) 連続で、
しかもしかもウィルスのせいか、虎徹自身は先程よりもぐんと力と硬さと質量が増していて、
「虎徹さ・・・・っ・・・」
必死で抑止しようとしてくるけれど、もうこうなってしまったら止められない。
こんな展開、所詮は最初からわかっていたような気もしないでもなし、
だから。


「後でセキニン取るから・・・・」
「責任・・・・て・・・・!」
一体何ですか、どうやって取るつもりですか、とバーナビーは反駁してやりたいのだが、
「っ、うぁ・・・・ッ・・・」
小刻みに腰を使われて、結局喘いでしまう。
「、は・・・・っ、バニー・・・・」
汗の伝う、虎徹の余裕のまったく無い表情と、切羽詰まった声。
それは鼓膜と、下半身に響いて疼いて、
バーナビーの腰も戦慄きが止まらなくなってしまい、
一度掻き回された内壁は、一層強く刺激を欲して蠢いて、連動して虎徹自身を締め付けて。
狭く、熱い内側を猛った虎徹が強引に突き上げ、擦り上げる。
「ぅ・・・あ・・・・!」
先程、内部に撒き散らされた白蜜が濡れた淫猥な音を立て、滑りを良くしたそこは、
息を飲むほど柔らかいのに弾力を持ち、絶妙な収縮加減をみせる。
「んッ、っああ・・・・!」
絡み付いてくる内壁を擦り上げ、また先端で凶暴に突き上げると、
痛みを覚えるほど膨れ上がって張り詰めた虎徹自身を、バーナビーの喘ぎと共に肉壁はきつく包み込み、絶頂を促す。
「・・・・ッは、また・・・、・・・!」
がくがく戦慄く腰を抑え込み、虎徹はまたもや中で吐精する。
「・・・・ん・・・っ、あ、あぁ・・・・っ・・・っ・・・」
再びバーナビーの内部に熱が放たれる中、
熱い飛沫が内部にかかる感覚に、無意識のうちに逃げ打つ腰をしっかり抱えて離さず、
まだ硬く、力を失わない虎徹自身は何度も強く弱く挿引を繰り返し、
濡れ落ちた身体の中、快楽を追う。
そのたびにバーナビーは身悶え、彼自身も再び力を取り戻し始めた。
「あっ、あ、・・・っ・・くぅ・・・ッ・・・・」
揺らし、また突き上げていくうちに、バーナビーの腰も律動に合わせて揺らめき始め、
互いに抱き合い、貪り合う形になる。
「っ、・・・んぁッ・・・・!」
追い上げ追い上げられ、相応に二人とも、熱い。
衝動に駆られるまま、突き上げられたバーナビーの背中が仰け反って、
虎徹の視界に映った胸元の、硬く尖って色付いた乳首に、口付け、思い切り吸い上げる。
「んぅ・・・・ッ・・・・ッ!!」
まさか今になって胸にそんな愛撫を送られるなんて思っていなかったバーナビーは、
思い切り反応してしまって。
「っあ、あ・・・ッ、っは、・・・・っ・・・」
濡れ落ち、せわしない吐息混じりの声が、互いの鼓膜に響く。
もう、それがどちらの声なのかも定かではないほど。
何度目かの高みが近くなり、全てを持っていくかのように虎徹は腰を速めると一緒、
屹立するバーナビー自身に手を添える。
「ひ・・あ・・・ッ・・・!」
途端、ビクンと痙攣する内腿。
自ら吐き出した蜜で、濡れてより敏感になってしまっているそれを、
虎徹が手のひらで数回、上下に擦ってやると、
吐き出された白濁でぬめる後ろが一層締まりを良くして、内壁がぐいぐい収縮した。
「く・・・・!」
あまりの搾り取る強さに、たまらず唇を噛み締めた虎徹が、
負けじと最奥を乱暴に強く強く抉ると同時。
「あ・・・・あッ、っあぁぁぁ・・・・ッ・・・・!!」
一際大きくバーナビーの身体が反り返り、虎徹の手の内に白濁した蜜が吐き出され、
虎徹も三たび、最奥に熱い迸りを叩き付けた。

































「うう・・・・・」
ぐったり、と臥せって呻いて、
もう目も当てられないほど体液で濡れ乱れたベッドの中、ダメダメ感丸出しでいるのは虎徹である。
幸い、『とらみみ』 は消えていた。
が。
「腰が・・・・立たねえ・・・・」
力なく呟いて、今にも干乾びそうな面持ちでいる、その横で。
「責任、取ってくださいね・・・・」
同じくくったり、伏すバーナビー。
彼の場合、干乾びるどころか下半身はどろどろ(・・・・) で、
あと少し体力が回復しないことには、バスルームにも行けそうになく。
「・・・・ん。 ニンシンしちまってたら、すぐ嫁に貰う・・・」
「しませんよ!!」
「わからねえって。 来月にはもう仔うさぎが沢山いたりするかもしれねーし」
「いませんって・・・・」
体力はゼロ状態なのに、無駄口だけは叩いてくる虎徹相手、
バーナビーは溜め息を吐かざるを得ない。
「そんなことより、揃って有給の言い訳を、」
どう報告、どう言い訳しましょうか、と現実方向に話を持って行こうとしても、
「あー、バニーの子供なら楓に負けず劣らずカワイイよなあ〜♪」
オジサン、現実逃避(?) の一環なのか、さっぱり話にならず。
仕方がないから、
「・・・・・・・・、」


バーナビーは口許に手を当て、時間にしてきっかり五秒だけ考えて。


「虎徹さん」
「あ?」
「僕がそちらの籍に入るんじゃなくて、虎徹さんが婿入りする、という形でしたら考えておきます」


あっさりと、しかし一概には看過できない台詞をさらりと言ってのけ、
それに虎徹が 「ホントか!? ホントだな!!」 と喰い付いてくる前に。


「治って、良かったですね」


素直にそう告げて、笑った。









『ワイルドに吼える』 というより、
ワイルドに猛る(?) 虎徹さんもちょっと悪くない、と思っていたことは、
知れたら絶対に調子に乗るから、極秘中の極秘、である。




































三日後、
今度は同時に 『とらみみ』 『うさみみ』 が復活、
揃ってぶり返してしまう(・・・・) という最大級の災難に見舞われるということを、
二人はまだ、知らない。





近子様からのリク、『うさみみ』 おじさんバージョンな話、でございました。
偶然にもマルまる様とお友達、ということでしたので前後編みたくやってみました。

ちなみに、オチの 『ダブルみみ』 は書く予定はありません(笑)